サッカーでの決闘の翌日、練習を終えて俺は家に帰ってすぐに寝た。
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4年生のころ、茉莉とナオと一緒に下校して別れたあと、1人で歩いているとき、公園で1人の子がサッカーをしているのが見えた。あまりにも上手いものだから、声をかけた。
「ねぇ君、一緒にサッカーやろうよ! 俺は暁光」
「うん‼︎いいよ!! 俺、園崎アイル!」
そうして、サッカーをするようになったけど、圧倒的な才能を前に心がへし折られた。
「すごいな、アイルは。勝てる未来が見えないよ……。ジュニアリーグでも大活躍間違いなしだよ。でもいつか絶対越えてみせる‼︎」
俺は越えると決意した。そのためにも今度から、師匠たちにお願いしよう。
「そんなことないよ。光の跳躍力もすごいよ。ねぇ、俺たち中学で一緒にてっぺんとろうよ!!」
「あぁ、そうしよう!! 中学入って1年後まで待っておくよ。でも先走って優勝しても怒んないでね」
「アイル。迎えに来たよ。おや、こちらの子は?」
アイルに迎えが来たようだ。お父さんかな?
「父さん、紹介するね。稲妻KFCに入っている暁光だよ。すっごくサッカーが上手いんだ‼︎」
「そうか、僕は乙女仙次郎。アイルの父親です。雷門中で監督やっているんだ」
雷門中の監督だって‼︎ここで知り合えたのは大きい。
「暁光っていいます。稲妻KFCでFWやっています」
「そうか、アイルもこう言っているし、雷門に来てくれるのが楽しみだなぁ。じゃあ僕たちは行くよ」
それからと言うものの、月に1回くらいのペースでアイルとサッカーすることになった。たまに乙女監督が来て、俺のメニューにアドバイスをくれることもあった。だけど、ある日を境に急に公園にアイルは来なくなった……。
そして6年生のある日、俺の南雲原に引っ越すことが決まったことを中々茉莉やナオに言えずにいた。下校するときに、突然アイルからメッセージが来た。
『今日、今から久しぶりに公園で会いたい。いけるかな?』
「ごめん、茉莉! ナオ! 急用ができた‼︎先に帰る‼︎」
何か嫌な予感がする。そう言い残して、走り出す。
「あ」
「行っちゃった……」
公園に着いたが、そこに居たのは乙女監督だった。
「乙女監督‼︎アイルは? アイルはどうしたんですか?」
「ごめんね。光君。急に呼び出して……。君にメッセージを送ったのは僕なんだ」
「え? アイルに……何かあったんですか?」
恐る恐る聞く。
「アイルはね。亡くなったんだ……」
「そんな……どうしてですか?」
「光君。君は円堂ハルを知っているかい?」
「もしかして、円堂守さんの息子ですか?」
一応噂には聞いていた。とんでもないプレイヤーだって。
「そうだよ。アイルはその円堂ハルとの試合で、怪我をしたんだ。ただの怪我ならまたサッカーができるけど、そのときの怪我で2度とサッカーが出来なくなったんだ。アイルは円堂ハルを越えられる存在だった‼︎サッカーができない苦しみから、自ら車に飛び出したんだ……円堂ハルを恨みながら……」
「そう……ですか……」
そんな‼︎再起不能の怪我をしたのかアイルは……。サッカーができなくてもサッカーと向き合うことはできるはずだ……。向き合えないほど絶望したのか、やりたくてやりたくて仕方のないサッカーを……。本当にアイルは円堂ハルを恨んでたのかな? そこは疑問だ。俺はどうすればいい……俺は。
「俺がアイルの思いを継ぎます! あいつの分まで頑張ります」
アイルの思いを継ぐ。それぐらいしか俺にはできない……。アイルとの優勝する約束も、円堂ハルを越えるためにも、明日から猛特訓だ……。
「そうかい。その言葉を聞けてアイルもきっと喜んでいるよ……ねぇ光君。雷門中に来ないかい? フォワードとして。推薦するよ」
監督からの直々の推薦だ。そうなれば、入部テストも問題なく合格できるだろう。だけど……
「すみません。すごく嬉しいんですが、雷門中には行けません。父が長崎に転勤することになって……。雷門に寮があることは知っているんですが、父さん心配なんで付いて行きます」
初めて誰かに引っ越すことを言えた……
「そうか、君を雷門に入れられないのは残念だけど……応援するよ。長崎でもサッカー頑張ってね」
次の日、学校で茉莉とナオに伝えることにした。2人とも驚いた。茉莉はナオ以上にショックを受けている……。
「そんな……中学でも当然一緒にサッカーやれるって思ってたんだけどなぁ」
「そう……」
「じゃあさ、約束しようよ‼︎中学に入ったら絶対に一緒にまたサッカーやろうよ‼︎今まではチームメイトだったけどさ‼︎今度はライバルとして‼︎」
ナオから提案される。
「お! いいね」
「分かった……」
放課後、茉莉に呼び出された。どうしたんだろう?
「ねぇ。光……光はいつも私たちを色々振り回していたけどさ……。光の楽しそうな顔見てたら、私も嬉しかったんだ……。光と一緒にサッカーができてよかった……。約束はしたけど、このまま疎遠になりそうなのが怖い……。光モテるから、長崎でもきっと……。だから、今まで勇気なくて言えなかったけど、振られるよりもこのまま疎遠になる方が嫌だ……。好き……光。私と付き合ってください……」
茉莉から告白された。確かにお互いのサッカー部で色々していくうちに約束が薄れて、忘れていくかもしれない……。茉莉はその恐怖があって、それを止められる繋がりが少しでもほしいというのもあるのだろう……。俺はどうなんだろ茉莉のこと……。いつもひたむきにサッカーやっていて……感情はそんなに動かないけど、確かに茉莉が楽しんでやっていたのは伝わってきていた……。俺はそんな茉莉を見て、茉莉やナオとサッカーができて嬉しかった……。背中を任せてサッカーができた。茉莉が勇気を出して告白してくれたんだ。俺もそれに応えないと……。
「分かった。茉莉。付き合おう‼︎でも、すぐに遠距離になるけど本当にいいのか?」
「うん。大丈夫、ありがとう……」
そうして、茉莉と付き合うことになった。それから4ヶ月後、俺は南雲原に降り立つ。
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朝になり、目が醒める。夢だったかぁ。懐かしい夢だったな。
支度して家を出る。
今日はサッカー部に行こう……。
放課後、先生に頼まれたことを片付けて、サッカー部に向かっていると千乃会長とすれ違った。
「あら、暁君。これからサッカー部の部室に行くのかしら?」
「そのつもりだよ。会長。みんなとサッカーやりたくなったからな」
「そこの扉を開ける前に1つ教えてあげるわ。フットボールフロンティア1回戦の相手は西ノ宮中よ。同じ進学校として負けられない……。負けたら廃部よ」
「学校間のプライドって大変なもんだな。西ノ宮も何か用意してるんじゃない?勿論負けるつもりは1mmもないけどな」
「そうね。きっと仕掛けてくるでしょう西ノ宮は……」
ん?
「ねぇ、暁君。あなた、ジュニアリーグのころ世代最強FWって言われていたそうね……その圧倒的なプレーで西ノ宮をボコボコにしてきて頂戴!!」
そう言い残して去っていった。無茶言うなぁ。俺のワンマンプレーは逆に南雲原にとってよくないだろう。みんなが俺頼りになって成長しない。本気で全国優勝するなら、みんな成長しなきゃいけない。
よし、部室行くか‼︎
俺は、サッカー部の扉を開けた……。
暁光
園崎アイルと出会い、彼の才能にへし折られる。それを機に猛特訓するようになり、KFCでエースストライカーになるまで成長した。アイルの思いを継ぎ、改めて優勝することを決意。
園崎アイル
円堂ハルを越えうる存在。乙女仙次郎の息子。再起不能の怪我をした。絶望し、亡くなったそうだが……。
赤袖茉莉
暁が引っ越すことになりショック。意を決して告白し、実る。南雲原でもモテないか心配……。