千乃会長がフットボールフロンティア1回戦西ノ宮中に勝ったらサッカー部を認めると言って去った後、サッカー面談の話も済んで、僕は笹波君に話さないといけないことを話した。
「笹波君、サッカー面接をすると言ったけど、1人だけ部員候補にはいないけど推薦したい人がいるんだ」
「分かりました」
単刀直入に聞く。
「笹波君、暁光君は知っているかい?」
「名前は聞いたことがあります。学校のSNSでプロモーションになる部員候補のリストアップしていた時に…。東京に彼女がいると噂されてるってことと毎日早々に帰っているということを知ったぐらいで、忍原先輩ほどのプロモーションにならないと思って、リストから外しました」
「私もそれぐらいだなぁ。光君で聞いたことあるの。あ、授業中困ってたら助けてくれるし優しい人だよ」
どうやら彼がサッカーをしていたということをやはり知らなかったみたいだ。暁君と同じクラスの忍原さんも普段の彼のことしか知らない。
「暁君は学校のSNSを使っていないし、どの部活にも所属していないからね」
笹波君が決闘を申し込んだ翌日クラスメイトにその話を振られていたが、全く知らない様子だった。彼は学内の話題を知らないし、誰かに彼のことを知られることもない。
「雲明のデータでも把握されてないって逆にすごいなその人っ!」
「生徒会は元々笹波君と暁君が接触しないか見張っていたんだ。サッカーが問題ないと分かった以上、暁君のことを話しておこうと思ったんだ」
「昨日試合が終わった後、あいつ雲明に話しかけてなかったか? 何言われたんだ?」
桜咲君の発言に驚く。昨日接触したのか……。どうやらそのときに入部するとは言っていないようだ。
「え? あの人なんですか⁉︎すごくキザっぽいこと言われましたけど。どうして生徒会は接触しないように監視していたんですか?」
暁君は笹波君に何を言ったんだ? 彼は自信家で大口をさらりと言うものだからこっちが恥ずかしくなるのも分からないわけではない。
「彼は自信家なところがあるからね。彼は1年前の入学式の日に早々サッカー部の申請をしたんだ。東京から来た彼は知るよしもないからね。生徒会は却下したんだが、その日から毎日ずっと学校の裏山で1人サッカーをしている。忍びたちからの報告もあるしそれは確かだ」
これは副会長になってから知ったことだ。先代から忍びを使って見張っていたそうだ。
「この学校に隠れてサッカーしてた人いたんだ。サッカー一筋すぎて逆に雲明のデータから溢れてたんだ……」
「もしかして光君がSNSしてなかったのって、SNSで話せることはサッカーだけで学校はサッカー禁止だからやらないじゃなくて、やれないんだったんだ」
木曽路君はなぜか感動し、忍原さんが納得していた。
「生徒会はサッカーが久しぶりや素人の中に、1人でサッカーやり続けてたやつが混じっていたら、野球部が負けてしまうことを危惧して接触の警戒してたってわけか」
柳生君が生徒会が2人を遠ざけようとした理由を考える。
「でも、サッカーやってたっても。本当に生徒会が警戒しなけれゃいけないようなやつなのか?」
桜咲君が疑問を投げかけた。確かにそうだ。サッカーを続けたとしてもそこまで上達していない場合もきっとあるだろう。だけど、僕は知ってしまっている。なぜ彼が要警戒人物なのかを!
「ああ。僕もそう思って彼のこと調べたんだ。彼稲妻町出身なんだ」
「稲妻町! 伝説の始まりの地じゃん!!」
そう、木曽路君の言うようにあの雷門中がある稲妻町だ。
「これを見て欲しい。彼が6年生だったころの試合の得点シーンなんだが」
「待てよ。このユニフォーム……」
「「稲妻KFCじゃねぇか!!」」
「しかも暁エースストライカーだぞ!」
映像冒頭のシーンを止めていた状態で、桜咲君と柳生君は驚愕して画面に見入る。
「稲妻KFC……? 何それ?」
サッカーを始めたばかりの忍原さんにはピンと来ていないようだ…。
「ジュニアリーグの中でもトップを誇るチームです。ほとんどの人は近所にある雷門中に進学する。見てください。今映っている人たち。どちらも今年のスプリング杯で雷門のレギュラーやっていますよ」
笹波君の解説の通り、暁君と雷門中の赤袖さん、星村さんが映っている。
「ほんとだ! イナコードのスタンプの人たちだ‼︎」
「なんでそんなエースストライカーの光君が雷門じゃなくてサッカー禁止の南雲原に来たんだろ?」
忍原さんが疑問を投げかける。僕は動画を再生した。
『ジェネシスセイバー』
3人合体技から放たれる無数の光の刃がゴール目掛けて飛んでくる。キーパーはなす術もなく点が入った。
『オルタナティブサン』
今度は暁君1人だけの必殺技だ。こちらもキーパーは反応できていない。
「なんだ! あのシュート‼︎」
「破壊力が全然違ぇ」
柳生君と桜咲君は画面に食い付きながら技をじっくり見た。
「あのシュートを打てる人が雷門に誘われないわけがないと思います。でも、素行が悪いわけでもない。雷門からスカウトされていた、でも、南雲原に行かなければならない理由があったからこっち来たって感じでしょうか」
笹波君は忍原さんの疑問に答えた。そう…彼は父親の転勤で南雲原に来て、運悪く南雲原にはサッカー部がなかっただけだ。
「バランスブレイカーだな。通りで生徒会が接触を警戒するわけだ。サッカー禁止でもなお1年間練習を怠らなかったんだから、あれより衰えてる訳がない。これを相手したら俺たち野球部はボロ負けだ」
柳生君が決闘でもし暁君がいたらどうなっていたか想像して戦々恐々とした。
「彼は空を裂き大地を割る次世代最強ストライカーって言われていたそうだ。だが、ジュニアリーグは中学サッカーほど有名ではない。そして、南雲原に来たことと円堂ハルの台頭によって、その話題は今や消失している…」
「暁先輩に会いに行きます。みんなはそれぞれのメニューを行っていてください」
笹波君は直接会いに行きたくなったみたいだ。
そのとき、ちょうど扉が開く音がした。
ーーーー
千乃会長にすれ違いざまに、サッカー部の場所とフットボールフロンティア1回戦の相手を教えてもらい、扉を開けた。良かった……みんないたみたいだ……。
「ここがサッカー部の部室だよね。入部したいけど、生徒会からまだサッカー部が受理されていないから、直接言ったほうが良いかと思った来たんだ」
雲明が俺をじっと見つめる。どうやらちょうど俺のジュニアリーグの動画を見ていたようだ…。
「分かりました。よろしくお願いします」
良かった。入れるみたいだ。昨日見た雲明の覚悟はやっぱり本物みたいだ……。雲明なら安心して背中を任せられる。
「そうだ。みんなのポジション聞いておきたいんだ。昨日の試合を見た感じ、丈二と来夏がFW、兵太がMF、亀雄がDF、我流がGKだよね? 駿河はどこにつくつもりなんだい?」
「あ……俺か? 俺はMFだ」
名前で呼んだことに驚いたのか、返事が遅れる。
「オッケーありがとう。じゃあ俺はDFにするよ」
「えぇー‼︎」
みんなから声があがる。まぁそうだと思う。あの映像見たらFWやると思うよね。
「FWじゃないんですかぁー」
「入部テストでDFとMFを集めるだろうけど、今のメンバーだとブロック・ザ・キーマンがあるとはいえディフェンスが薄いでしょ?スリートップにすれば、余計に……それに、どのポジションでだって点は取れるしね。このポジションだからこれ以外はしないって言うことに拘らないサッカーが俺のモットーなんだ」
そう、円堂大介がリトルギガントで築き上げたサッカー……。
「う……それは確かに……」
兵太は言葉に詰まる。
俺1人で点を入れても意味がない。みんなも強くならないと。俺頼りのチームになる。そうなったら、俺がいないとき待っているのは焼け野原だ……。強い光は周りを焦がす。
「それでいいかい? 雲明?」
「えぇ 構いませんよ」
雲明からも了承をもらえた。
「じゃあ改めて、俺の名前は暁光。俺がいれば、どんな敵にも勝てる! ……ってのは大げさかもしれないけど、大活躍を約束するよ。よろしくな」
微笑みながら挨拶した。どうしてみんな顔が少し赤くなっているんだろう……。
「そうだ。イナコードやってますか。そこで情報共有を行っているので入ってください」
そう言われて、雲明から招待コードが送られる。
「分かったよ。オッケー。これで入れたかな」
雲明は頷いた。これから部活として特訓し始めるけど、事前に確認したいことがあるんだ。
「そうだ。俺の今やっているメニューを送るよ。部活の練習ももちろんやるけど、こっちも続けておきたいんだ」
どんなときでも最大値を出せるように……毎日やっておかないと……。
「え……なんですかこれ。とんでもない無茶苦茶じゃないですか!!」
雲明に驚かれた。俺にとっては普通だけど、よくよく考えてみれば中学サッカー界でこれをやっているのは間違いなく俺だけだな。
「そうかい?」
「さも普通だという顔しないでください。やってもいいですけど……」
良かった…許可が降りた。
「ありがとう」
「そんなにやばいのか雲明?」
丈二は気になるようだ。
「見ない方がいいと思います」
別に減るもんじゃないしいいんだけどな……。
「そうか……」
丈二…引いてないかい?
「では、暁先輩も加入したことですし、練習始めましょうか」
「「おう!!」」
いよいよ俺の少年サッカーが始まるんだ‼︎
練習後、雲明に声をかけられる。
「明日のサッカー面談ですが、暁先輩はその間忍原先輩の特訓に付き合ってください」
みんなには強くなってほしいから喜んで承諾した。
──雷門中──
「どこか行くんですか?」
キャプテンがこれからサッカーしそうにない準備を始めていたので声をかけた。
「ああ、赤袖。俺とハルの2人で帰属校の助っ人システムで長崎に行くことになったんだ。行くのはもうちょっと後だけど先に準備しておこうと思ってな」
「そうですか。でもどうしてキャプテンとハルさんが行くことになったんですか?」
長崎に行くなら私が行きたかった。光に会いに行けるし……。
「理事長から言われたんだ。でも、ハルが了承したのは意外だったな」
「きっと母の頼みは断れなかったんだと思いますよ」
サッカーモンスターといえど、人の子なので母親には逆らえないはず。
「ハハっ、そういうものか」
「いいですね長崎」
「なんだ? 長崎に知り合いでもいるのか?」
「まぁそんなところです。どこの中学に助っ人に行くんですか?」
「西ノ宮中ってところだ。どうしても勝ちたい中学校があるみたいだ」
「そうなんですね。頑張ってください」
南雲原じゃなかった…。そりゃそうか。南雲原ではサッカーに人権はない。光はこっそり練習しているみたいだけど、サッカー部は設立できない。
光がスプリング杯見たって言ったけど。やっぱり生でキャプテンとハルさんのサッカーを見てほしい。光にとっても何か得られるかもしれない。そうだ、光にメッセージを送ろう。
『フットボールフロンティア、長崎の西ノ宮中に帰属校助っ人システムで円堂ハルと月影蓮が来るって』
『1人で練習してるけど生のハルさん見たらきっと何か良い刺激になるから見に行きなよ』
すぐに返信が来た。
『なんと!』
ナオのスタンプだった。最近追加されたサッカーのスタンプだけど、知ってる人のスタンプを送られるとこっちが恥ずかしくなる。
暁光
ついにサッカー部に入部。チームプレイも1年ぶり。
赤袖茉莉
南雲原が先に知っておきたいことを教えてくれた。
笹波雲明
暁のメニューを見て驚愕。西ノ宮の対策とサッカー面談どうしようか考えている。
四川堂我流
暁のプレイは前に見たことはあったが、まだ驚く。