南雲原の勇者御一行様   作:ペンギンとクマ

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いよいよ11人揃います!!


第5話 悪い知らせ。もっと悪い知らせ。

 みんながサッカー面談をやっている間、俺は言われた通りグラウンドで来夏の練習に付き合っていた。

 

「昨日、初めて必殺技を見て、私も必殺技作ってみたーいって思ったけど……うーん、必殺技ってどうやって作ればいいんだろ……」

 

「何かイメージないのかい?」

 

「光君の技、ジェネシスセイバーとオルタナティブサン……だっけ? すごかったなぁって」

 

「あぁ。あの2つはサッカーを始めたばかりの来夏には良くない参考例だったかもしれない」

 

「やっぱ難しいの? あれ」

 

「完全に会得するまで、結構かかったよ。でも、始めたばかりのころに1番大事なのはいきなり難しい技に挑戦するんじゃなくて、自分の特徴にあった技を考えるか、真似してみるかして、自分の体の動かし方を理解することだと思うな」

 

「来夏のシュートは回転がかかるからね。それを利用した技とか、忍術を使った技にしていくのがベストなんじゃないかな?」

 

「そっか、今までシュートが曲がらないように練習してたけど、必殺技はむしろそっちを活かした方がいいのか……。掴めた気がするよ。ありがとう光君! でも、忍術って使っても良いの?」

 

「戦国伊賀島中は伊賀島流忍法を必殺技としてバンバン使ってくるから、道具なしの忍術は問題ないな」

 

「忍原ー! 暁ー! サッカー面談が終わったから来てくれ‼︎」

 

 丈二から招集がかかった。

 

「分かった‼︎すぐ向かう‼︎」

 

 返事して、練習の手を止めて向かうことにする。

 

「どんな子が来るか、楽しみだね!」

 

 来夏が楽しみにしている。これで11人揃うのだ。

 

「あぁ」

 

 俺たちは部室前に行った。

 

 

 

 

「では、これからサッカー部に入部する4人を紹介します」

 

 雲明がそう言って、4人を前に呼び寄せた。

 

「あたくしは、重沢零由。どんな相手も飛び越えてみせます!!」

 

 陸上競技部でハードルをやっていたそうだ。重力を支配しているかのように飛び越えるらしい。

 

「ウチは小太刀鞘。よろしく頼みます」

 

 剣持部に所属し、数々の大会で結果を残してきた人だ。俺が1年のころからよく表彰されていたのを知っている。

 

「私は桃井祥子です……ここに海坊主がいると噂を聞いて来ました」

 

 どうやら、雲明と兵太のクラスメイトで席も後ろらしい。なんでも、オカルトに興味津々で、最近は海坊主について聞き込んでいるらしい……。マネージャーが海坊主の正体というのは黙っておこう……。

 

「ワイの名前はジーク・B・(アルティメット)・玄武!! 極と書いてアルティメットと読むっ! 南雲原最凶のサッカープレイヤーや‼︎よろしく頼むでぇ‼︎」

 

「私、厨二病……? の人初めて見た‼︎しかも、左眼に眼帯してるっ‼︎」

 

「なんや、これが気になるんか……。ふっ、ええとこに気い付いたな。これはやなぁ……闇を突き邪を祓う伝説の眼!! 覇王の心眼や‼︎めちゃくちゃ強力やから滅多なことで解放せぇへんのや!!」

 

 思わず、来夏が反応する。あれほど強烈なやつもそうそういないからな……。そんな彼だが、本名は縷楠冨理翔。やっぱり来るに決まってるよな。ジークは……。

 

「なんだ、邪眼かよっ」

 

 丈二が突っ込む。実際は左眼のコンタクト払うお金がないからなんだけどね……

 ジークはKFCにいたときに1度九州遠征で戦ったことがある。『雷轟のジーク』と呼ばれるほどに強い。実際……突破するのにかなり手こずった……。まぁ邪眼は邪眼だけど……

 

「残念ながら、ジークの覇王の心眼は本物だ……解放したら速度もパワーも比べ物にならないぐらいアップする……中学入ってからたまに一緒に練習するけど、1回見せてくれたんだ……」

 

「ジーク先輩はすごいですけど……いつもの発言はみんな無視して良いですよ……」

 

 雲明辛辣だなぁ。

 

「まぁそれはええわ……。それよりもひどいなぁボンは……。ワイこの学校おるの知っとったのに……なんで野球部の決闘、声かけてくれんのや……ジュニアリーグで同じチームおった仲やろ……」

 

 雲明もジークと同じチームに所属していたのは初耳だ……。ジークと戦ったの5年の春だったから、まだ入ってなかったのかもな……。

 

「ジーク先輩だから……ですよ。先輩にはチームでよく面倒見てもらいましたけど、先輩が最初からいたら僕の戦略に色々不都合が生じてしまうので……」

 

 多分生徒会が俺との接触を警戒していたのと同じで、野球部戦でオーバースペックだからだろう。そんなことになれば、駿河のサッカーへの思いも再熱しなかったと思う……。他にも入らない人もいたかも知れない……。ジークもジークで、俺との練習以外で海カモメの子たちとサッカーやってたらしいし。

 

「そうか……。まぁ、サッカー部に入ったことやし、またボンとサッカーできて嬉しいで……」

 

 

 雲明は香澄崎先生に呼ばれたので職員室に向かった。

 面白い人たちが入って来て、ワクワクする。11人揃ってサッカーができる……。

 

 

 戻って来て、キャプテンを決めることになった。

 みんなが雲明を推薦した。俺も異論はない。丈二が言うように、彼はこのチームの要だ……。来夏の一言でキャプテンの一言を言うことになった。

 

「必ず日本一にしてみます‼︎」

 

 噛んだことには目を瞑るとして、その宣言を聞いてみんなが湧いた! 

 あぁ必ず届くよ……。みんなとなら……。

 

 裏山での特訓後、忘れ物を取りに部室に戻る。雲明が声には出ていないが何か見えない存在と話している。何話してるんだ……。

 

(「確かに桜咲先輩の足や木曽路のテクニック、四川堂先輩の反応力……全国で通用する可能性はある。古道飼君、ジーク先輩、暁先輩のDF陣のスピードディフェンスが完成すれば全国に通用する。だけど優勝するには……」)

 

 考え込んでいるから作戦でも考えているのかな。気付いてなさそうだし、声をかけるのはよしておこう。よし、帰って夕御飯作るかぁ。

 

 

 

 

 ──翌日放課後──

 

「では、西ノ宮中戦の作成会議をやっていきましょう」

 

 雲明の一言で作成会議が始まる。一旦作戦を聞いてからにしよう、茉莉が言っていたことを言うのは。

 

 最近勝ってきているチームみたいだ。ゲームメイカーをブロック・ザ・キーマンで潰して、攻撃力を封じる。そして、必殺技を習得してスウェットスティルネスを破ろうという作戦だった。だが、この通りやっても西ノ宮には勝てない。想定外がいるからだ。想定外の存在も先に知っておけば、想定内になる。

 

「この作戦に、水を差すようで悪いんだけど……」

 

「暁先輩、何があるんですか?」

 

「西ノ宮について、悪い知らせともっと悪い知らせがあるんだ」

 

「なんだ、まさか暁出ないって言うのか‼︎」

 

 駿河が聞いてきた。

 

「いや、俺は勿論出るよ。雲明……帰属校・助っ人システムって知っているか?」

 

「ええ、大会規定は頭に入れてますから……」

 

「何それ?」

 

 来夏が聞く。

 

「帰属校になったら、学校同士で選手の貸し借りができるようになるんです」

 

 雲明が答えてくれた。

 

「まず、悪い知らせからだけど……。西ノ宮は雷門の帰属校になった……」

 

「「え?」」

 

 みんな固まった。そりゃそうだ。普通に勝てそうな西ノ宮に王者雷門が紛れ込むんだから……。

 

「次、もっと悪い知らせ……。で、西ノ宮の助っ人に誰が来るかって言うとね……。サッカーモンスター円堂ハルと雷門中キャプテン月影蓮だ……」

 

「「え〜〜!!」」

 

 みんな驚く。そりゃそうだ。なんでよりにもよって、雷門でもトップクラスの実力を持つ2人が来るんだ……。

 

「こっちは負けたらサッカー部無くなるんだぞ‼︎」

 

「それだけ、向こうも負けたくないのだろう……」

 

 はっきり言って創部前最大の危機だろう。丈二の言いたいことも分かる。我流も相手の意を汲む。学校にもプライドはあるのだ……。大人の事情に巻き込まれて、絶対に向こうの選手は不満だろう……。

 

「要は、基本的にはその作戦でええけど、どうやって2人を下げさせるか練り直さないとあかんちゅうわけやな」

 

「どうやって暁君は、その情報を得たのかしら? 普通そう言うこと相手側は隠すんじゃないの?」

 

 零由先輩が当然の疑問を投げかける。茉莉がたまたま教えてくれたからなんだけどね。1人でサッカーをやっていた俺を気遣ってくれて、感謝しかない。

 

「それは、雷門の選手が教えてくれたんだ。南雲原にサッカー部がないことは知っていたから、1人で練習するのもいいけど、たまには生で円堂ハルを見ろって。彼女には悪いけど実際は、その西ノ宮の相手が俺たちだからね。有効活用させてもらうよ」

 

 多分、気付かれたら後で茉莉に怒られる。サッカー部ができたこと、全国大会で雷門と当たるまで秘密にしたかったけど無理そうだな。

 とはいっても、いきなりトッププレイヤーにぶち当たるのだ。何人かは諦めムードで悲壮感漂う。

 

「さながら、勇者が1番最初に魔王に出会ってしまうみたいな様子だね。大丈夫、大丈夫。そういう展開大体なんとかなるからさ。焦らずに今できることをやっていこう! 最後に魔王を倒すための大事な一歩だ。試合はまだ始まってすらない。最後まで諦めなかったやつに勝利の女神が微笑むんだ! だから絶対に掴み取ろう!」

 

「そうやでぇ。こっから始まるんや……ワイらの伝説がな!」

 

 励ますと、それにジークや兵太が乗って来てくれた。そうそう、盛り上がっていかなきゃ、勝てる試合も勝てなくなる。

 

「そうだよな。暁先輩の言う通り、最初から諦めてたら始まらないもんな」

 

「暁君、悪い知らせって言っておきながら、なんかちょっと楽しそうね」

 

 鞘先輩が微笑みながら指摘してきた。嬉しいものは嬉しいのだ。

 

「だって、そりゃ円堂ハルを同じフィールド上で見ることができるんだぜ。1年離れていた少年サッカーに、その最高峰に、今俺がどれだけ通用するのか試せるってなったら……。ワクワクする以外ないね」

 

「それで、雲明。今の南雲原が西ノ宮相手に後半だけで逆転できる点差は何点だい?」

 

 これは聞いておかないといけない。それ以上点を取られないように立ち回らないと……。

 

「そうですね……3点差だったら同点時の延長時間を入れるとギリギリ追いつけると思います」

 

 勝てるといってもかなりリスキーだ。延長時間に入れられたらそこで試合が終わって負けるのだ。最初の3点は、丈二、来夏、駿河に任せて4点目は取りにいくか…………。

 

「3点差で、相手は創部したばかりや……西ノ宮は勝ちを確信するやろな……油断できひんけど」

 

「勝ちを確信すれば、雷門の人たちを下げるでしょう」

 

 どうやら雲明も同じことを考えたみたいだ。

 

「下げさせるために前半3点取られる。でも、その間に攻める勢いがあれば、警戒されて下がらないかもしれないわ」

 

「点の取られ方がわざとらしすぎても下がらんだろうな」

 

 下げるためのアイデアを、鞘先輩と駿河が出す。俺やりそうだなぁ、あんまりやりたいオーラを出さないように心がけよう。

 

「ちょうどいい塩梅は、前半は攻めすぎずに、必殺技も使わない、なのかしら?」

 

 零由先輩が今の話をまとめた。それに雲明が答える。

 

「ええ、それが最善策だと思います」

 

「暁先輩もジーク先輩も、昔有名だったんですよね? 雷門の人たち、先輩たちのこと知ってるんじゃないですか? それだったら下がらないような……」

 

「ワイの名は全国に轟いているからなぁ……」

 

 祥子はそれでも下がらないこと心配している。ジークはそういうけど、九州だけじゃ……。ジークのいたチームあんまり遠征してなかったらしいし……。今の実力を鑑みても勝つためには、それ以上にいい策はないだろう。下げ方は負傷退場もあるけどそれは普通になし。そういえば、一度ナオが月影蓮に同世代のストライカーで知っているのは誰か聞いてみたことがあるようだ。その中に俺の名前はなかった。円堂ハルも一度も戦ったことがないし、年も下だ。知らないだろう。

 

「その時は、その時です。暁先輩に頑張って円堂ハルを抑えてもらいます」

 

 雲明がなかなかのことを言う。まぁ円堂ハルを止められるのは俺かジークだろうね。どこまで止められるか……。

 

「あぁ頑張るよ」

 

 どのみちそうなったら止めるしかないし、自信たっぷりと答える。

 

「では、西ノ宮に向けて特訓、始めて行きましょうか」

 

 いよいよ特訓だ。

 




暁光
ジークとはたまに練習する。試合を通して仲良くなった。円堂ハルとは、最後までやりたいなとは思っているが、途中で下がってもらうために我慢。

縷楠冨理翔(るくす ふりと)
通称ジーク・B・極・玄武。ジークは冨理翔のジーフリトから来ている。3年。ジュニアカップ時代、雲明は遅れてチームに入ったため気にかけて、世話していた。それ以来、雲明をボンと呼び見守っている。

南雲原イレブン
雷門中の2人がいることが判明して衝撃。試合開始前にはじめて知ることにならなかったので、当日までに作戦を練って、チーム全員に作戦意図が共有された。
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