南雲原の勇者御一行様   作:ペンギンとクマ

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第6話 空を裂く

 雲明から練習を始めようといったので、部室を出て練習再開しようとしたとき雲明から個別に声をかけられる。いきなり対西ノ宮の突発的な指示かな……。

 

「暁先輩、練習では、本気で取り組んでいることは見ていて分かるんですが、力抑えてますよね。力を解放している状態の今のデータが取りたいので、あとで10人を相手にして試合してください。あ、でも部練習終わりの練習でやっている状態でのプレイはやめてください」

 

「分かった。もちろんだ。円堂ハルから4点以上取られないように立ち回らないといけないからね。それも兼ねてるんだろ?」

 

 みんなが西ノ宮戦で前半円堂ハルを相手するけど、どのラインまでが攻めすぎていないのか……必殺技なしで防戦できるか……。4点以上取られないためにも分かっておかないといけない。あれはまだ、試合でずっとできるような形にはなっていない……。

 

「円堂ハルの動きを真似しなくてもいいです。真似する時間もないですし、先輩の映像を見てみて、円堂ハルクラスのプレイヤーと分かっているので……。圧倒的な実力差があるときにいかに防ぐかを身につけてもらいます。先輩は先輩のサッカーをしてください」

 

「了解」

 正直言って、円堂ハルの真似をしなくても良いのは助かる。スプリング杯での円堂ハルを見ていたが、純粋なパワーとサッカーセンスは円堂ハルに劣っている。あれを再現するのは厳しい……。遠くからハジャイッセンノヤイバを打てば、パワーは超えられるだろうけど、それだと我流しか特訓できないし……。そもそもスプリング杯で1つも必殺技を使っていなかったからな、必殺技も加味したパワーは底知れない。円堂ハルお得意の相手の死角に入り続けて、ボールを取ることはできなくはないが、今回は1対10だ。全員俺を意識することになるから意味がない……。たとえ、死角にいようが、意識しているならば、見えているも当然なのだ。

 

「今からみんなには暁先輩のデータを取るのも兼ねて、西ノ宮前半の対円堂ハルを想定した15分サッカーバトルをしてもらいます。なので、暁先輩1人に対して10人で戦ってもらいます。作戦通り、必殺技は使わないでください。暁先輩はデータ取りたいので必殺技を使っても大丈夫です」

 サッカーコート前でみんなを集めて雲明が説明して、1対10の15分の試合を始める。

 

「おいおい、サッカーはチームスポーツだぜ、いくら暁がとんでもなくても、1人だけなら止められるだろ」

 

 駿河の言いたいことは分かる。実際、決闘で駿河は思い知ったからな。円堂ハルがいくら突き抜けていても、独りよがりのプレイはしないし、味方にパスはしていた。北陽戦で、1人で全員抜くことはなく、ときにはパスもした。だけど、想定よりも最悪の状態を1度見ておいた方が良いし、南雲原は円堂ハルにパスせざるを得ない状況を作り出さなくてはいけない。

 

 

「じゃあ、始めようか」

 

 丈二からのボールだ。来夏にパスして、ペナルティエリアで来夏が再び丈二に渡すところを後ろから走ってカットする。西ノ宮戦、1回ぐらいは攻めておかないと不審がられる。攻めないのではなく、攻めすぎないが肝心なのだ。

 

「速すぎっ!!」

 

 来夏の声が聞こえて、前から駿河がスライディングでボールを取ろうとする。

 俺は高く跳び出し、前に進む。

 

「高すぎんだろっ!!」

 

 地面に着いたらすぐにまた高く跳び、着いたらまた跳ぶことを繰り返す。兵太と鞘先輩が着地狩りをしようとしたが、それは対策している。

 

「プロミネンスリボルト」

 

 フレイムベールから発展させた技だ。火柱の対象範囲はフレイムベールよりも広い。プロミネンスリボルトの衝撃でボールが高く上がり、もう一度俺も跳び、DFの亀雄とジークを超えて、我流と1対1だ。空中から、ゴール目掛けてシュートする。

 

「オルタナティブサン」

 

 我流が反応できず1点入る。

 

「嘘だろ……あれが暁のサッカー……」

 

 丈二が呟いていた。

 

「試合が始まってから、地面にいる時間より跳んでる時間の方が長かった……」

 

「試合開始2分で、もう1点だよ」

 

「次はこちらも跳んで取りに行かないと……」

 

 試合再開。

 

 すぐにボールを祥子から奪って跳んだ。

 

「今度は止めますわ」

 

 零由先輩が跳んでボールを取りにきた。嘘だろ、先輩の跳躍力凄すぎるな……上を取られた……。重力の支配者と言われるだけある。上を取られることは、今までなかった。でも、あるかもと思って対策はしている。

 

「鳳凰天舞」

 

 鳳凰天舞で突破した。そのまま勢いで2点目を取る。

 

 2点目以降は流石に地上でやった方が良いと思い、ドリブルでみんなを抜いていく。ジークが立ちはだかる。

 

「おっと、光にはこれ以上好きにさせへんでぇ」

 

「じゃあ、これならどうですか……」

 

俺は回転をかけてボールをジーク目掛けて蹴る。ジークの真正面で曲がり始める。ジークを避けたボールを取ろうとしたが……ジークに読まれてカットされてしまった。

 

「あんさんもまだまだ甘いでぇ。祥子‼︎」

 

ジークが祥子にパスを出したところをすぐに跳んでカットした体勢のまま3点目を取る。

 

「やっぱ、やりよるなぁ」

 

 試合終了後、結果は5-0、みんなヘロヘロだ。俺を追いかけ回してたしな。

 

「ねぇ……、円堂ハルも……こんな……感じなの……?」

 

 息絶え絶えで来夏が聞いた。流石に跳んでこないと思う……。跳んで来ないよね……? 

 

「円堂ハルはシュートするとき以外は跳ばないからそこは大丈夫。だけど、地上ではより振り回されることになるからもっとヘロヘロになると思うな」

 

「えぇ、これよりきついの!」

 

「あんなに跳び回って、暁息切れ1つもしてないのか……」

 

 正直いうと、最小限の動きを心がけているから特別なことをしない限り、試合で体力切れを起こさない。

 

「空中移動を軸としたプレイ……どうやって思いついたんですか?」

 

「あれか? あれは、師匠の知り合いがやってたのを真似したんだ」

 

 零由先輩から聞かれた問いに答える。南雲さんがかつて沖縄で地上最強イレブン相手に1人でやってたらしい。実際は、真似というよりかは南雲さんに小さいころに指導してもらったんだけど……。

 

 

 

 その後、明日からの突発的な特訓内容の指示が出された。

 それから試合日の前日まで、西ノ宮のゲームメイカーを封じるために、決闘後に入った5人のブロック・ザ・キーマンや他メンバーの必殺技の練習相手になった。そして、俺の円堂ハルのマーク練習は、丈二とジークの2人に手伝ってもらった。

 

 

 二戸川中との練習試合も終え、いよいよ今日、1回戦だ……。コートに向かうため、スタジアム内を4人で歩いていると、雲明が立ち止まる。

 

「雲明。どうした?」

 

 丈二が聞く。

 

「今の……」

 

 雲明が1点を見つめながら呟く。その視線の先にあるものを丈二は振り返ってみる。

 

「西ノ宮か……?」

 

「円堂ハルと月影蓮だな。あの後ろ姿」

 

「マジでいんのかよ……」

 

「いやぁ、事前に暁先輩が教えてくれてよかったぁ〜」

 

「本当にそうだ……知らなかったら今頃みんな動揺していただろうね……ありがとう暁君、雷門中の人にも感謝しないと……」

 

後ろから我流も来た。ほんと、茉莉には感謝しかない……。

 

「あぁ、伝えとくよ」

 

そう言って俺たちはベンチに入って最終確認した。

 

「気持ちは分かりますが、ジーク先輩も暁先輩も、雷門中の2人にうずうずしすぎているオーラを試合中出すのやめてください」

 

「分かっとる、安心しぃや」

 

「俺たちが彼らに対してワクワクしだすのは、円堂ハルが下がらなかった場合の後半からにするよ」

 

雲明から釘を刺されてしまった。俺たちそんなに漏れていたのか……。円堂ハルのあのオーラを見て、アイルや茉莉、ナオとサッカーしていたころを思い出してうずうずしてしまう。

南雲原の初陣だ。初戦!!突破するぞ!!

 




暁光
久々に対人で力を解放した。グランのあれを裏で1人ルート・オブ・スカイと勝手に呼んでいる。ジュニアリーグ時代は使っていない。1回戦から数日後、円堂ハル推しのナオ経由で茉莉にバレて、怒られると思っている。

重沢零由
重力を支配している人。暁光もあそこまで跳んでくるのは想定外。

笹波雲明
力をセーブしていない暁光のデータを取れて満足。だが、映像で1度も使っているところを見なかった1人ルートオブスカイをやってきて驚愕。円堂ハルのプレイを真似しなくて良いから自分のプレイをしろとは言ったが、あそこまで暴れろとは言ってない……。

円堂ハル
南雲原戦をリフレッシュ程度だと思っている。

月影蓮
南雲原が新生チームとはいえ、油断しないカリスマキャプテン。

南雲さん
エイリア学園マスターランクプロミネンスキャプテンだった人。暁の師匠の知り合い。暁の跳躍力を見て指導することにした。暁が小さい頃、どういう選手として育てるかで、涼野さん砂木沼さんと言い争っていた。結果、師匠含めて7人に指導されることで、今の暁が出来上がった。
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