南雲原の勇者御一行様   作:ペンギンとクマ

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西ノ宮戦開始です!そんなに光目線ではないかもです。


第7話 サッカーモンスター襲来!!

 いよいよ試合開始だ。

 

 フォーメーションは

  桜咲 忍原

 小太刀  柳生

桃井 木曽路 重沢

古道飼 縷楠 暁

  四川堂

となっている。

 

 西ノ宮中からのキックオフ。月影蓮から円堂ハルへボールを渡す。

 速攻を仕掛けて、次々にFW、MFを抜いていく。

 

「ミスしそうで怖いです……」

 

 亀雄が不安を口にする。

 

「安心せぇ。いくらでもミスしてもええ。ワイらがカバーするさかいな」

 

「あぁ。だから落ち着いてプレイしていこう! ……にしても、あれが円堂ハルか……」

 

 亀雄に声をかけつつ、円堂ハルのプレイを見る。俺たちも一応守るそぶりを見せながら、円堂ハルに抜かれる。

 

「ひとつ……」

 

 円堂ハルが呟いて1点目が入る。我流もボールの威力を抑えきれずに飛ばされる。

 

「やっぱり生で見る円堂ハルは違うな……」

 

「大丈夫かい? 我流」

 

 我流に手を差し伸べる。

 

「あぁ、ありがとう。たったの1発で手がすごくヒリヒリするよ……この圧倒的な重み……これが円堂ハルか……」

 

 

 

 それからというものの、前半終了間際までに3点入れられて0-3だ……。ここを耐えれば、きっと2人は下がるはずだ。そう願いながら、試合が再開する。丈二から来夏へのパスが円堂ハルにカットされる。そのまま、円堂ハルが上がってきた。

 

 まずい……4点目を取られる。円堂ハルは亀雄とジークを突破して、もうペナルティエリアだ……シュートブロックするために、逆サイドのペナルティエリアまで動き始める。

 

「ひとつ」

 

 だめだ……間に合わない……

 俺は逆サイドに行くことを諦め、我流の近くまで移動する。この試合、円堂ハルをずっと見ていたが、あの力の入れ方だと3点目までのパワーはなく、少し緩めている。右足で行けそうか……。

 

 我流は反応したがゴールの左側に構えており、右側にきたボールに届かなかった。

 

「届けぇ‼︎」

 

 叫びながら、右足を上げて伸ばす。なんとかボールには届いたが、手を抜いていてもこのパワーか……すごいな……力負けするわけにはいかない‼︎絶対に4点目は入れさせないっ‼︎

 

「うぉっー‼︎」

 

 ボールが飛んでいく。

 なんとかカットできた……。あそこで力負けしそうになったら、手を使わないワームホール使おうと思っていたけど、蹴り返せた方が嬉しい。

 ホイッスルが鳴り前半終了だ……。

 

 シュートを止めたことに観客が沸き上がる。

 

『なんということだー!! 西ノ宮4点目ならず‼︎公式戦デビューから、誰1人止めることのできなかった円堂ハルのシュートを止めたのは‼︎できたばかりの南雲原のDF暁光だぁ‼︎』

 

『よく片足だけで止められましたね。それだけ彼のこれ以上はやらないという執念が伝わってきます』

 

 ベンチを見ると雲明がサムズアップした。

 

 

 

 ────

 

 ハルのシュートを止められて沸く歓声の中、俺はハルに声をかける。

 

「初めて止められたな……ハル」

 

「そうですね、蓮さん……。でも、まぐれですよ。ダメ押しの4点目で少し手を緩めましたし……ベンチに戻りましょう蓮さん」

 

 その少し手を緩めたシュートすら止められなかったゴールキーパーは沢山いるんだけどな……

 

 俺たちはベンチに戻る……

 

 そこで西ノ宮の監督から告げられる。

 

「円堂ハルさん、月影蓮さん。ありがとうございます。我が校の勝ちはこれにて確定しました! あとはゆっくり休んでおいていただいて」

 

 なんだって……

 

「……え? 下がれってことですか」

 

「でも……監督、おかしくなかったですか。南雲原はわざと抵抗していなかったように思うんです」

 

 マネージャーが疑問を呈する。確かにそれはありそうだ。さっきハルのシュートを止めたDFは前半特に動くことなく、ずっとハルを見ていた。ハルと戦いたそうだが、我慢しているような目の動きだった……。

 

「ええっ? わざと抵抗しなかった? どこの世界にみすみす得点させるチームがあるんですか。ここにいるお二人の活躍に戦意を喪失したってことでしょう」

 

「戦意を喪失……」

 

 本当にそうか? 戦意を喪失していれば、わざわざハルの4点目を止めにこないような気がする。

 

「流石にここまでやっていただければ、我が校の選手たちも、なかなかに優秀ですので」

 

「しかし……」

 

 黙って聞いていたハルが口を開く。

 

「蓮さん、これをひっくり返すなんて無理ですよ。うちらの攻めに何もできずにいた平凡なチームです。これ以上やったら弱いものいじめですよ」

 

 確かにそうなってしまうかもしれない……。本当は俺もハルも残った方が良いかもしれないが、妥協してハルを下げて俺は残る。

 

「……。そうだな……。円堂ハルは後半下がります……。でも俺は、念の為残ります……」

 

「え、えぇ。わかりました……」

 

 

 ────

 

 ベンチに戻って、みんなから声をかけられる。

 

「最後ありがとう、暁君。君が止めてくれたおかげでなんとか3点差を維持できた」

 

「ほんまやで、光」

 

「あぁ、ありがとう。後半みんな頑張っていこう」

 

「本当に後半雷門の2人下がってくれるといいなぁ」

 

「俺たちで、4点取り返すぜ」

 

「そうですね。後半は必殺技を解禁します‼︎勝ちに行きましょう‼︎」

 

 雲明からの必殺技の許可も降り、コートに入る。

 

 西ノ宮もコートに入ってきた……。ん? 

 

「円堂ハルは下がったけど……」

 

「月影蓮が残っとるやないか……」

 

 亀雄とジークの声が漏れる。

 

「作戦は半分成功で、半分失敗か……」

 

 もしかして、やりたいオーラが漏れてたか……? だけど、円堂ハルじゃなくて月影蓮だけが残っているのが幸いだ。まだなんとかできる。

 

 ちらっとベンチを見る。雲明から指示が飛ぶ。やっぱりその指示だよな。

 

「亀雄、ジーク、デフェンスは任せたよ! 俺は月影蓮をマークする」

 

「分かりました」

 

「おう‼︎任せとき‼︎頼んだでぇ、光」

 

 後半開始のホイッスルが鳴る。

 

 丈二から、来夏にボールが渡る。

 

 俺はすぐに月影蓮の元に移動する。

 

 

 

 ────

 

 

 俺はハルの代わりにFWを出すと言うこともあり、MFに下がった。

 後半開始、すぐに俺にボールを奪いに向かったが、気が付いたときにはすでに目の前に暁がいた。いくらなんでも速すぎる‼︎ハルより速いんじゃないか……? 

 

「雷門のキャプテンとこうして戦うことができて光栄だよ」

 

 俺をマークするのに、余裕があるのか。話しかけてきただと!? 

 

「それはありがたいが、俺は君1人のマークで十分なのか?」

 

「うちの監督が後半下がらなかったらマークしろって言われたんでね。ひどいんだぜ、円堂ハルもいたら2人とも1人でマークしろって言うんだよ。まぁ、結果的に君だけでよかったよ」

 

 ひどいんだぜというが、全くそんな風に思っていない口振りだ。

 

 こうしている間にも南雲原がパスを繋いでいく。

 

「分身フェイント」

 

 木曽路が抜いて、桃井にパスする。

 

「ウォーターベール」

 

「柳生先輩‼︎」

 

 ボールは柳生に渡る。もうペナルティエリアだ。俺は全く動かせてもらえない。ふとハルに目をやると南雲原のベンチを見ていた。

 

「ふっ、まずは1点目だ‼︎天空サンダー‼︎」

 

「スウェットスティルネス。うわぁー」

 

 ゴールが破られて南雲原に1点目が入る。

 

「じゃ、また後で」

 

 そう彼は言い残して元のポジションまで戻って行った。

 

 次はこっちからだ。点を取りに行こう。

 

 金星と糸居が上がっていき、俺も上がった。

 

「自力でボールを取りに行かない限り、西ノ宮の選手からのパスは来ないよ」

 

 また暁にマークされる。マークされているから取りに行けないのだけどな。パスが来ない理由もおおよそ察せられる。

 

「君にマークされているからな」

 

「前半2人が暴れ過ぎたからね。そりゃ西ノ宮の選手も活躍しているところを見せたいはずだよ……学校には学校のプライドもあるけど、選手にもプライドはあるからな。このままだと、プライドに傷が付く」

 

 確かにその通りだ……。ボールを取りに行くために、何度か無理矢理抜こうとするが、すぐに対応される……。俺だけマークし続けて、ほとんど攻撃に参加していないのに、楽しそうに試合を眺めている。暁は1人で少し距離を離してマークしているというのに、最初から俺に全く目をくれない。完全に気配だけで察知している。死角に移動してもすぐにバレる。いや、もしかして……

 

「ダンシングタートル」

 

 金星が古道飼にボールを奪われた。大柄ながらなかなか速い……。そのまま上がっていく。

 

「小太刀先輩‼︎」

 

 古道飼から小太刀にボールが通される。

 

「アトラスソード、桜咲君‼︎」

 

「よっしゃあ、剛の一閃」

 

「スウェット……くっ!!」

 

 力強い一撃は再び西ノ宮のゴールを破る。

 

「じゃあまた会いましょう」

 

 そう言ってまた戻っていった。

 

 西ノ宮がもう一度攻める。金星、糸居、真地米とボールをつなぐ。

 

「なぁ、ずっとボールに目を追い続けてるけど、仮にも俺をマークしてるなら、俺の方を見なくていいのか?」

 

「サンダードゥーム、重沢ぁ!」

 

 ジークがカットして重沢にボールが渡る。南雲原のDF陣は暁含めてみんな速いな……。

 

「ボールを見ておかないと、最適な動きができないからな。キャプテンを誘導するために、わざと抜けそうな隙をつくるなりしてね」

 

 全く見ずに気配だけでそんな芸当をやってのけるのか、この男は……。

 

「イリュージョンボール」

 

 重沢が元部鳴を突破した。

 

「もしかして、話しかけているのは余裕があるからではなく、見ずに俺の声で場所を特定するためか」

 

「暁さん‼︎」

 

 重沢からの高く上がったボールがこっちに来た。よし、ボールをなんとしてでもカットする。俺は跳ん

 

「ナイスパス‼︎決めろ!来夏‼︎」

 

 ……だ。この男は、俺よりも高く跳んで、そのまま空中でパスした……。

 

 暁は振り返って俺を見た。

 

「バレちゃいました? まぁ、声かけなくても気配で分かるんですけどね」

 

 彼はもう一度ボールに目をやった。

 

「いっちゃえー、ぐるぐるシュート‼︎」

 

 忍原がシュートを打つ。

 

「途中、死角に入ろうとした動きは良かったですよ。でも、死角以外にあるフィールドの盤面全てが見えているなら、それはもう……」

 

 シュートが決まり同点に追いつかれた。もう……なんだ? 

 

「死角は見えているも同然ですよ」

 

 そう言ってまた元の位置に戻っていった。

 

 もうすぐ試合終了だ。エクステンドタイムに入っている。どちらかが1点を入れれば、それで決まりだ。

 

「俺からすれば、ハルが雷門にいるから、お前の方がサッカーモンスターに見える……それに良かったのか? ほとんどプレイに参加してないが……」

 

 

 彼はベンチで指揮している少年を見ながら答えた。

 

「サッカーモンスター? いやいや、魔王円堂ハルを倒すために勇者に付き従う、勇者御一行様って呼んでほしいな。俺は別にそこまで参加しなくてもいいんだ。俺とキャプテンが欠けて実質10人同士での戦いだけどさ、俺には信じるに値する仲間たちがいるから」

 

 そうか……そのレベルにありながら、サッカーが楽しいのか……。ハルとは逆だな。

 

「シーフアイ」

 

 金星が重沢を抜く。その先は元々暁の位置だ。俺をマークしているからガラ空きだ。決めるんだ‼︎決めて西ノ宮の勝利で終わろう! 

 

「おっと、ここで4点目はまずい……すみません。マーク外します」

 

 そう言って、暁はマークをようやく外した。

 

「パーフェクトコース」

 

 金星がシュートする。暁が追いついた。

 

「ゴウマショウハザン」

 

 暁がシュートブロックした。あの範囲技を抜くのはたいへ……

 

 ビュン‼︎‼︎‼︎

 

 ピ──ー‼︎ピッピッピッ──‼︎

 

 んだな……。今何が起こった……なぜ、試合終了のホイッスルが鳴った……後ろを向くとゴールネットにボールがあった。4点目が入っているだと……。今確かに、俺の顔の横を何かが高速で通っていったが、まさか暁はブロック技を使いながらシュートしたのか……。

 

 

 俺には、暁が恐ろしいものにしか見えなかった……。改めて思うが、サッカーモンスターが襲来した。そんな試合だった……。

 

 ────

 

『試合終了──っ! 南雲原中、助っ人を迎え戦略強化を図った西ノ宮中を下しましたーっ!』

 

『先制で3点を取られてもうダメかと思いましたがまさかの逆転でしたね。南雲原は華麗な采配で西ノ宮を抑え込みました』

 

『南雲原の今後が実に楽しみです』

 

 ────

 

 大歓声が沸く。

 

「いやぁ危ない、危ない。本当にギリギリだったな」

 

 予想通りかなりギリギリだった。

 

「よっしゃぁ、初勝利やで」

 

「なんとか勝ったわね」

 

「勝ちましたわ」

 

「勝てた……」

 

「いっただき──っ!」

 

「ふぅ、初戦突破か……」

 

「うぉ──ーっ‼︎ハハっ‼︎」

 

 駿河が亀雄の肩を組む。

 

「雲明 やったな!」

 

「うん!」

 

 兵太と雲明は互いにサムズアップした。

 

「初勝利ですね」

 

「おめでとう、笹波君」

 

 各々が勝利を口にする。

 

 

 帰る準備をしていると、雲明がハルに話しかけられていた。何か気になることでもあったのか? 

 

 俺は俺で月影蓮に話しかけられる。

 

「まずは、勝利おめでとう」

 

「ありがとう、キャプテン」

 

「俺のことはキャプテン呼び固定なんだ……。俺やハルがいたのに前半からずっと冷静だったな。まるで最初から俺たちが来るのが分かっていたみたいに……おかげでハメられてしまったよ」

 

「まるでも何も知ってましたからね。最初から。キャプテンが残ってまずいとは思いましたけど、なんとか勝てて良かった。今度は全国大会のトーナメントで会おう、キャプテン‼︎」

 

「あぁ、南雲原を楽しみに待っている……」

 

 円堂ハルの恐ろしさを目にできて本当に良い経験になった。越えるために、帰ったらまた猛特訓だ。

 

 後で茉莉に怒られるのを忘れて、初勝利の喜びを噛み締め帰路に着いた。

 




暁光
月影蓮が後半残ったのは想定外だが、なんとか勝てて良かった。茉莉に怒られることを忘れている。早く気付け。

月影蓮
ハメられた雷門中キャプテン。円堂ハルよりも暁光の方がサッカーモンスターではと思っている。暁が味方なら臆面なく放つ大口は恥ずかしいものの、頼りがいがある。しかし、対戦相手からしてみれば、かなりウザく感じる。

円堂ハル
後半からこれ以上は何も起きないと思い、途中から笹波雲明の動きだけを見ていた。雲明とボールを追っていたので、蓮さんと暁光の動きはほとんど見ていない。
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