Metalnova   作:アグナ

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ACT-7 英雄

 聖杯戦争において、聖杯が参加者たる七名の魔術師に結ぶ七つの縁はそれぞれ七つの枠組みによって分けられる。

 まずは剣の英霊(セイバー)槍の英霊(ランサー)弓の英霊(アーチャー)。七つ存在する枠組みの中でも優良なスキルや能力値を有するため、三騎士と通称される花形のクラスである。

 次に騎兵(ライダー)暗殺者(アサシン)魔術師(キャスター)狂戦士(バーサーカー)。前述した三騎士とは異なり、それぞれ多少の瑕疵を抱えているものの、専門分野において他の追随を許さない強みを持つクラスだ。

 以上の七つの枠に七騎の英霊が当て嵌められ、聖杯戦争は行われる。

 

 そして召喚されるサーヴァントはそれぞれ得意分野が異なるため、基本的に全てのサーヴァントが同じ壇上に上がることは非常に稀なことだ。

 例えばアサシン──暗殺に特化した英霊が賜るこのクラスは隠密行動、暗殺行為を得意とする者たちであり、言うまでもなくセイバーやランサーのように真正面から堂々と戦うような存在ではない。当然ながら彼らが正面から戦闘を行うようなことは基本的にあり得ないといえよう。

 似たような理由でキャスターも同様だ。拠点を構え、潤沢な魔力と魔術の粋を以て聖杯を狙うこのクラスの英霊の戦い方は専守防衛。向かってくる敵を返り討ちにするのが基本方針となる。そのため自身が堂々と敵に姿を晒す機会はやはり多くない。

 加えてアーチャー……三騎士の一角にも数えられるサーヴァントのクラスだが、遠距離戦に特化した英霊が据えられるこのサーヴァントの真価は距離を取ることで発揮される。少なくとも限られた空間で向こう正面に敵を見据えて戦うという風なことは敵に接近されない限りはしないだろう。

 

 このように聖杯戦争に参加するサーヴァントはクラス適正に合わせた振る舞いと戦闘行動を行う。

 ──だからこそ、この状況。聖杯戦争序盤にも関わらずサーヴァント全てが一つの戦場に揃うというのは異例中の異例と言える。

 

 セイバーとランサーの決闘をきっかけに乱入してきたライダー。

 ライダーの挑発に乗じて現れたアーチャー。

 そして今宵の主演らを監視する形で知られず参戦するアサシンとキャスター。

 

 既にこの場に揃っている六騎の英霊。

 その気配に釣られたか、互いに睨み合いの拮抗を演じる祭りの中心に、最後の乱入者は怨念のような叫び声を上げながらその姿を現した。

 

「▇▇▇▆▆▆▅▂▂▂──!」

 

「バーサーカー!?」

 

 その出現にいち早く気付き、驚愕の声を上げたのはセイバーだ。

 彼女は相対していたランサーに警戒を向けながらも、素早く立ち位置を調整して己がマスター──と周囲には印象づけている本来のマスターの代行者、アイリスフィールを背後に庇う様にして新たな敵に向き直る。

 

「なぁ征服王。アイツには誘いをかけんのか?」

 

 セイバーと向き合っていた筈のランサーの方も、乱入者の出現に二本の槍を構え直しながら剽軽な軽口を最初に決闘に水を差してきたライダーの方へと差し向ける。

 態度こそ涼やかだが、そこに油断や隙は介在しない。

 

「誘おうにもなぁ。ありゃあ、のっけから交渉の余地なさそうだわなぁ」

 

 軽口に応じながらライダーは顎に蓄えた赤い髭を顔を顰めながら撫でる。勇猛な者に対しては見境なく勧誘の言葉を投げかける王者にしても、明らかに言語を介さぬ唸り声と怨念にも似た陰惨な気配を感じ取り、対応に困っていた。

 

「……で、坊主よ。サーヴァントとしちゃどの程度のモンだ? あれは?」

 

 続けてライダーが向けた疑問は、戦車に同乗する傍らのマスターに向けたものだ。狂戦士に視線を固定したまま、ライダーはマスター──ウェイバー・ベルベットへと声を投げかけるが……返ってきたのは首を振る動作を共にした呆然とした言葉。

 

「……判らない。まるっきり判らない」

 

「なんだぁ? 貴様とてマスターの端くれであろう。得手とか不得手とか色々と観えるものなんだろう?」

 

 サーヴァントのマスターとなった魔術師にはサーヴァントのステータスを閲覧する透視力が与えられる。見える形はそれぞれ数値であったり、色であったりと様々だが、そのサーヴァントが概ねどれ程の能力を秘めているか、マスターは一目見れば判るようになっているのだ。しかし……あのバーサーカーに限って言えば。

 

「見えないんだよ! あの黒いヤツ、間違いなくサーヴァントなのに……ステータスも何も全然読めない!」

 

「ふむう?」

 

 マスターの言葉に改めてライダーはバーサーカーを凝視する。全身を甲冑に覆う黒騎士。その姿をよくよく観察してやれば、黒い靄のようなものが視界に掛かり、本来観察で認識できるはずの特徴や個性に繋がる手掛かりがない。

 認識阻害──それに該当する宝具かスキルか。

 

「どうやら、アレもまた厄介な敵みたいね」

 

 何にせよ、この場に居合わせた者たちが共有する感想としてはその一言に尽きる。譫言の様に呟いたアイリスフィールの言葉を肯定する様に、三者三様新たな敵を前に膠着する。尤も──そんな注視する視線の中にあって、バーサーカーはそれらを一切意にしていない。

 甲冑越しに不気味に輝く赤い眼差しはただ一点……街灯の上から戦場を見下す黄金の王にだけ向けられていた。

 

「──誰の許しを得て(オレ)を見ている? 狂犬めが……」

 

 セイバー、ランサー、ライダー……その三騎を見越して中空に展開されていた剣と槍、宝具の切っ先がバーサーカーへと向けられる。

 黄金の王ことアーチャーは傲然と、虫でも払うかのように眼下に狂戦士を見下しながら。

 

「せめて散り際で(オレ)を興じさせよ。雑種」

 

 冷厳なる宣告と共に、この場の均衡を破る攻撃を解き放った──。

 

 

 

 ──奇襲ポイントに身を移したカルキは、様変わりした戦場を検めながら獲物との間合いを測る。

 

“あの黒いサーヴァントは……バーサーカーか?”

 

 つい先刻まではセイバーとランサーが決闘を行う場であった戦場は、今や異なる役者を据えて展開されていた。

 セイバー、ランサー、ライダーが見守る中、死闘を演じるのはアーチャーとバーサーカー。街頭の上に君臨するアーチャーが次々と射出する宝具を掴み取り、迎撃し、打ち払っていくバーサーカー。

 理性を無くした狂戦士に有るまじき凄まじいほどの武威を以て、爆撃も斯くやといったアーチャーの猛攻に拮抗している。

 

“受ける方も大概だが、攻める方も大概だな”

 

 宝具は英霊一人につき、一つか二つ。その逸話、伝説に象徴するものに限られる──そんな聖杯戦争における常識を鼻で笑うかのように、幾つもの宝具がバーサーカーに降り注ぐ。剣、槍、矢、斧、鎌……統一性も節操もない煌びやかな武具の雨嵐。

 一つ一つが間違いなく希少とされるだろう宝具を、まるで打ち捨てるかのように射出するアーチャーの姿にカルキは呆れとも感嘆とも取れる感想を漏らす。

 

 バーサーカーがその肩書に反して常軌を逸した武芸者ならば、アーチャーは常軌を逸した物量の使い手であった。アーチャーの背後の空間に展開される黄金の波紋のような揺らぎからは何種もの宝具が飛び出してくる。

 残弾など考えない、底なしの財を証明するような無尽蔵さ加減。

 並みのサーヴァントであればあの物量だけで押し潰されてしまうだろう。

 

 現に遠坂邸に忍び込んだアサシンは、アレを前に一方的に殺されたと聞く。

 

“まあ、いい。やることは変わらん”

 

 そんな壮絶な戦いを前にしてもカルキの心には恐怖も動揺もない。

 見据えているのは自らがやるべき事のみ。

 定めた目的に徹し切り、カルキは好機を伺う。

 

 幸いなことに件のアーチャーは未だ、街灯の照らす街路から少し離れた倉庫の影に隠れ潜むカルキに気づいている様子は無い。

 戦いに夢中であるというのもあるだろうが……元より対神秘に対するカルキの隠密行動は早々見破れるものではない。

 

 カルキ自身の体術や気配遮断が卓越しているというのもあるが、基本的に魔術師にせよ、サーヴァントにせよ、魔力反応を探知材料に気配を追うものである。

 そのため生来、魔術回路も魔術刻印も持たない(・・・・・・・・・・・・・・)カルキは平時には一般人とそう大差がない。

 なので、この手の奇襲においてカルキは絶対的なアドバンテージを有しているのだ。

 

 とはいえ、今回に限って言えば現状は仕掛け所に迷う障害が一つ。

 

“……あの位置は厄介だな”

 

 狙うアーチャーは今も街灯の上からバーサーカーを見下して攻撃を行っている。その場から動く様子は無く、高みから見下ろすばかりだ。

 カルキの身体能力を以てすればあの高さまで上がることは容易だが、察知されずにとなると途端に難易度は跳ね上がる。

 

 もし、高さが同じならば直線に跳ぶだけで良いが、相手の方が高みとあってはその足元まで駆け寄って跳ぶ必要がある。

 そうなればまず道半ばであの場に集うサーヴァントたちに察知されるのは勿論のこと、あのアーチャーとて気づくだろう。奇襲の途中で迎撃されることは確定事項。

 折角の先制攻撃が無意味と化す。

 

“せめて同じ高さならば……”

 

 息を殺しながら腰を落とす。腰に差した軍刀に手を当て、居合切りの要領でその瞬間を待ち受ける。幸い敵は交戦中、あのバーサーカーの奮戦具合によってはアーチャーが街灯から叩き落とされる可能性は低くない。

 狙うは着地の瞬間──いや、それではバーサーカーの追撃と重なる可能性がある。その場合は仮にアーチャーを倒せたとしても、次瞬即座にバーサーカーと……それも近距離で接敵する危険性が発生する。

 ならば逆に乱された態勢を整え直した瞬間、というのはどうか──。

 

 奇襲が最も効果的に発揮される局面を見定めるカルキ。

 その眼前で遂に事態が動く。

 バーサーカーがアーチャーの武具を迎撃する最中、両手に掴み取っていたアーチャーの武具を投げ返したのだ。狙いあやふやなまま放たれた槍と斧の宝具はそのままアーチャーの足下、街灯を両断し、夜の闇へと投げ捨てられる。

 

 足場を切り飛ばされたアーチャーは街灯が地面に崩れ落ちるより早く跳躍。バーサーカーに向き合う形で距離を取りながら何事も無かったかのように着地する。

 ……が、何事もなかったのは所作のみだ。

 バーサーカーの行為を前に、アーチャーの憤激を浮かべる。

 

「痴れ者が……。天に仰ぎ見るべきこの(オレ)を、同じ大地に立たせるかッ」

 

 気位が高い人物だからこそ、バーサーカーの行動に対して凶相を浮かべながら。アーチャーは周囲の空間を歪ませ、また新たなる宝具の群れを現出させる。

 その総数、三十二。

 サーヴァントとしての常識を蹴破るその物量を前に、二人の交戦を眺めていたセイバーとランサー、ライダーたちが息を飲む。

 

 マスターのみならず英霊さえも見入る。

 壮絶な光景。立ち竦まずにはいられない脅威。

 それらを前にして──。

 

「此処か」

 

 カルキは遂に、地を蹴っていた。

 

 

×  ×  ×

 

 

 ──ガキン!

 

 刹那に木霊した金属がぶつかる衝突音。

 すわアーチャーが全力でバーサーカーを叩き潰さんとした、その瞬間。

 この場に居合わせた全ての者にとっての想定外は成されていた。

 

 ……アーチャーの両脇からアーチャーを庇うようにして二本の槍が交錯する。

 それはアーチャーが有する謎の力──異空間より幾つもの宝具を召喚する能力に起因するものだろう。それは良い、何の問題もない。

 それよりも重要なのはその宝具が受け止めたものの方──突如としてアーチャーに向けられた脅威の方だ。

 

 軍刀──材質は鋼ではないようだが、微かに魔力の気配を帯びていることから、それが魔術師の『礼装』の類であることは歴然である。

 となれば当然、使い手は魔術師である。

 問題なのはそれの担い手はキャスターのような魔術師としてのクラスを当てられたサーヴァントなどではなく、本当に魔術師──即ちただの人間によって成されたということ。

 

 サーヴァントに対してマスターが奇襲を行うという非常識も極まる状況を前に、誰もが言葉を失い、呆然とする。

 

「……獲れると思ったが、そう甘くはないか。中々どうして器用な守り方をする」

 

「──よもや、そこな狂犬以上に弁えぬ下郎があろうとはな」

 

 己が奇襲が失敗に終わった事実──それに絶望するでも失望するでもなく、淡々と事実だけを受け止めるカルキ。

 対してその奇襲を受けたアーチャーは瞑目し、静かに肩を揺らしながら底冷えした声音で侮蔑と憤懣を乗せた言葉を紡ぐ。

 

 この瞬間──バーサーカーに向けられていた筈の殺意、敵意、憎悪にも似た怒りはただ一人の人間へと降り注ぐ。

 

「死肉を貪る獣の如きその卑しき目論見──万死すらも生温いッ! 肉片一つ残らぬと知れ雑種ぅ!!」

 

「────!」

 

 バーサーカーに向けられていた三十二の砲門。

 その全てがカルキ一人に目掛けて打ち放たれる。

 この数、バーサーカーとて容易に捌き切れぬであろう絨毯爆撃が、サーヴァントでも何でもないただの魔術師に対して向けられたのだ。

 

 傍から見ていた誰もが間違いなく死んだと確信した。

 

 爆発、雷鳴染みた衝撃音。

 アスファルトで舗装されていた街路は忽ち灰燼と化し、その場に埋もれる形で原型すら無くした魔術師の死骸が転がっている光景が広がる──その予感はしかし。

 

「何……」

 

 訝しむ声は刑の執行者たるアーチャー。

 彼は自らの攻撃に手ごたえがなかったことに疑念を覚え、眼前を凝視する。サーヴァントならばいざ知らず、あの攻撃を前にただの魔術師が生き残れるはずなどない。それが道理の筈であるのに。

 

「──まあいい。奇襲が失敗したならば仕方がない」

 

 コツン、コツンと響き渡る軍靴の音。

 土煙の最中に浮かび上がる有り得ざる人の影。

 

「ならば此処から先は聖杯戦争の流儀に従い、真っ向から」

 

 大地に突き刺さり、沈黙する宝具群。

 その何れも返り血に濡れることは無く。

 

「貴様を殺すとしよう、サーヴァント」

 

 爆撃の痕に瓦礫の山と化した大地。そこに無傷のまま君臨する魔術師は翼を広げる大鷲のようにして二本の軍刀を構えた。

 ……魔術師は健在であった。それどころか無傷のまま、身を隠すでも遁走を測るでもなく、真正面から堂々と、アーチャーに向けて戦意を放っている。

 

 その異質さに対してアーチャーは胡乱な眼差しを突如として現れた謎の人物へと向けるが、一連を見送っていた周囲の反応はその程度では済まされない。

 

「な、ななな、なん、何だよアイツ!? アイツもサーヴァン──ふぎゃあ!」

 

「落ち着け馬鹿者。貴様の目は何のためについておる。ありゃどっから見ても貴様と同じ魔術師だろうに。まあマスターかどうかはサーヴァントが近くに居らんから判らんが」

 

「は、はあああ!? 魔術師!? 人間!? ででででもだって、そんな、マスター本人がサーヴァントと戦うなんてそんな馬鹿な話が!?」

 

「ハッハッハ! 判らん! よく判らんが剛毅な奴であることは判る! ふふん、魔術師なぞ頭の固い連中ばかりかと思ったが、中々どうして骨のあるやつもいるではないか! のう! お前さんたちもそうは思わんか?」

 

「それは我が主に対する当てつけのつもりか征服王よ。だとすれば同意しかねるが……しかしまあ、剛毅な奴という意見には同意しよう」

 

「アイリスフィール、彼は……」

 

「……この場に居合わせた以上はマスター、のはずだけれどサーヴァントを連れてない以上は私も断定できないわ。ねえ、セイバー。彼の周りに別の気配は?」

 

「いいえ、サーヴァントらしき気配は感じられません。とはいえあの魔術師が召喚したサーヴァントがアサシンだった場合断言はできませんが……」

 

「ううん。アサシンのマスターはもう判明している。バーサーカーのマスターって感じでもないから、もしも本当にマスターならまだ未確認のキャスターのマスターである可能性が高いわ」

 

 予想外の登場人物に動揺しながら事の推移を見守る者たち。

 様変わりした戦場模様をつぶさに観察しながら、備える者たちを傍目に、交戦に割って入られたバーサーカーと、割って入ったカルキは、それぞれその関心をアーチャーにのみ向けていた。

 今この場において優先すべきはアーチャーの首。

 その意見が一致した結果である。

 

 但し、手を組むような意図は欠片もなく、どちらも純粋にその命を競争するように狙っているというだけの話。

 そして対するアーチャーと言えば、新たに現れた魔術師、カルキを頭部の頂点から足先に至るまで上から下へと胡乱に凝視した後……。

 

「……──く、くく」

 

 不意に肩を震わした。

 先ほどの様に怒りに打ち震えているわけではない。

 それは三日月を刻む口元からも明らかであろう。

 

 そして──遂に耐えきれぬとばかりにアーチャーは爆笑した。

 

「ハハハハハハハ!! 何だ貴様その()は! 愚行も愚行、正気を疑うありさまではないか! 死に急ぐにしても程度があろう!!」

 

 眼前の魔術師に何を見たのか、アーチャーは愚者の末路を嘲笑するような趣きで笑いながら、何処か珍獣を見るような目をカルキへと向ける。

 それに対するカルキの言葉は淡白なものであった。

 

「……別に死に急いでいるつもりはない。拾った命だ。これを粗末にするつもりは毛頭ないとも」

 

「そんなものを身に抱きながらよく言う。(オレ)の知る理とはだいぶ異質な気配ではあるが本質は同じであろう。(オレ)のような至高の肉体を持つものであれば飲み下すことも出来ようが、貴様程度の凡夫では耐えきれまい。そんな道理も判らぬほど阿呆なのか?」

 

「我が身に才無きことなど重々承知、その上でこう返そう──それがどうした? 下らぬ世界の欠陥が与えた道理なぞ、知ったことか」

 

「ハッ! 吠えたな雑種!! 面白い! その覚悟がどれほどのモノか──(オレ)手ずから測ってやろう! 我が試練を乗り越えることが出来たならば……貴様を『戦士』として認めてやる」

 

「裁定者気取りは結構だが……貴様の決定に興味はない。あくまで単なる敵として、排除するのみ」

 

 喜悦を浮かべながらアーチャーは宝具を展開していく。

 未だ傲りは在れど、測るべき対象と認めたアーチャーの視線はカルキを注視している。もはや逃げ場などなく、後退する隙も無い。

 サーヴァントに対して魔術師が我が身一つ晒した状態での交戦、それは絶望極まる状況であるはずだが、それでもやはりカルキの瞳に恐れはなく。

 

「征くぞ」

 

 襲い来る宝具の雨目掛けて、カルキは吶喊した。

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