正真正銘の初投稿です。
マナー等が分かっていません。
感想、意見等頂けると、筆まめではないので返信しませんが、幸いです。
小説をある程度読んでいることを推奨します。

オリ主が、レイドボスさんと戦う話です。

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捏造展開、ご都合展開、オリ主等々、苦手な方はブラウザバックを推奨します。
それでもいい方は、ノウもハウもよく分かっていませんが、お楽しみ頂けたら嬉しいです。
シャングリラ・フロンティア要素はゼロです。


第1話

男は無慈悲である。

武士道も騎士道もへったくれもない心で刀を持ち、その判断基準は命が残るかどうかにかかっている。

 

「天誅!」

「お返し天誅ッゴフ!」

「串刺し天誅」

 

つまり、彼の事物に対する姿勢は己の益足るかどうかの二択から選択するものになる。そして、生きるために人を殺すのならその考えは「暗殺者」に依ったものになる。或いは漁夫の利を狙うような卑怯者が近いだろうか。

仲良く天誅しあっていたプレイヤーの胴体をまとめて貫き、彼は無事に長屋から出て来た。そして、一休みしようかと呟いて、ぶらぶらと適当に通りの店を見ながら歩いているように見える格好で往来の真ん中を歩き出した。

 

「辻斬り天誅!」

「辻に、何も無しで、出るわけねぇだろ…天誅」

 

ゆったり、ゆらゆらと歩いていればどれだけ怪しくても斬りかかりたくはなるもので、隙を窺っていたプレイヤーが彼に斬りかかった。

一方、彼も即座に反応して迎撃の構えをとった。歩いていたとき、彼の両手は着物の袖に隠されていたが、斬りかかられる直前に出した両手には包丁が握られていた。基本、平常心さえ失わなければ人間はそれなりの能力を発揮することが出来る。彼とて例外では無く、敢えて隙を晒していた理由は相手の懐に潜り込むためだった。

 

反応を示すと同時に、右手の包丁で相手の刀を受け流し、左手に持つ包丁で相手の鳩尾を抉った。うっ、と声を漏らしてのけ反る相手の左手首を極め、反抗しようと出してきた足を引っ掛けて地面に転がして相手の喉に包丁を投げた。頸から地面に縫い止められた相手はその次の刀の一閃に反応できず、天誅された。

 

プレイヤーからアイテムが溢れ出る。彼はすぐにそれらを回収すると、先程の戦いを思い返した。

一人で来た相手の動き、警戒力からして恐らくは初心者の粗を削り切れていない中級者であることを改めて確認した彼は、天誅した相手の来た道の後ろから来る無数の人の気配(殺気)()()()()()()()()と思案し始めた。

そして、ひゅうと吹く風にカラカラという音が混じった瞬間に彼は音がした方向と反対の方向に飛び出した。

次の瞬間、彼の背後に爆炎が上がり、しかしその衝撃と風圧を推進力に変えて彼は更に加速していった。

 

「天誅っ!…ちっ、逃した!」

「馬鹿!止まるな!さっさと追いかけるぞ!」

「今日こそあの首を刎ねてやる…!」

 

彼の背後を、姿を隠していた十数人が一心不乱に追い縋る。爆薬を仕掛けた仲間ごと天誅しようとした一人が、鬼のように恐ろしい形相でその失敗を叫んだ瞬間に彼らも走り出していたのだ。

各々、過去に一度のみならず、ことあるごとに彼に天誅されていた。無作為に現れる彼と不運にもバッティングする機会が多かったり、初心者の頃から彼に天誅されまくっていたり、彼の、ひたすら、執拗なまでの粘着天誅にあったり、様々な境遇を味わってきたそのプレイヤー達は、この『幕末』において非常に珍しい連帯感で以って彼の天誅を敢行しようとしていた。

彼も、いつものように追いかけてくるプレイヤーを確認すると、より人間(NPC)の密集したエリアに駆け込んだ。

 

「クソ、どこ行った!」

「また逃げられた!」

「チクショウ!今度こそアイツの土下座を拝んでやろうと思ってたのに!」

 

プレイヤー達は彼の姿を見失うと、怨嗟の声を上げた。

 

「チッ、てめぇらが悪いんだぞ!天誅だっ!」

「おい!何しやがる!」

 

プレイヤー達の一部が、目的を見失って仲間内の天誅をし始めた。混乱は波及し、その一帯が騒然となった。

 

彼はそんなプレイヤー達を横目に、町の少し外れにある火薬庫の一つへとその足を踏み入れた。普段ならこの火薬庫はランカーである『紅蓮寧土』の拠点の一つな訳だが、今現在かのプレイヤーの姿はそこにはなく、大量の火薬(撒き餌)のみが保管されていた。

 

「おい!居たぞ!」

 

同士討ちをしていたプレイヤー達の内、逃げてきたと見られる一人が彼の姿に気付いた。その瞬間、彼は右手に刀を持ったまま、左手に持つものを小刀から拳銃に変えた。しかし、火薬庫の暗がりと、持つ手と相手の車線上に自らの体を挟んだことで、その動作がプレイヤー達に気付かれることは無かった。

そのまま彼は建物ごと包囲された。

 

「かかってこいよ。何でもいいぜ」

 

彼は、無言で視界内に居る全員を睨みつけてから突然挑発した。

プレイヤー達はそれに歯軋りしながら、然れど入り口から先に入ることが出来ないでいた。全員、その空間を土足で踏み荒らすことを躊躇したのだ。

その瞬間、致命的な隙を晒している一瞬を彼は見逃さず、左手に持つ拳銃を迷いなく発射した。

 

「うおお!爆発するぞ!」

「巫山戯んな、馬鹿野郎!」

 

仲間一人が銃で撃たれたことも気にせず、プレイヤー達は一斉に建物から離れた。彼はそれを確認すると、()()着火した火薬の一つを手に取り、入り口の外に放り投げた。同時に、行動不能に陥ったプレイヤーの襟首を掴み、目の前に構えながら火薬庫の外に飛び出した。

彼はドン!という音が混乱していたプレイヤー達の中から聞こえ、衝撃が響いたのを確認すると、肉壁として利用しようとしたプレイヤーの服の中に、もう一つくすねた着火済みの火薬を捻じ込んで地面に投げ捨て、火薬庫の入り口に向かって拳銃を数発ぶっ放した。

そして、彼は即座に火薬庫の向かいにある長屋の裏に隠れた。次の瞬間、火薬を捻じ込まれたプレイヤーと、そのプレイヤーを傍から見て天誅しようと近付いていたプレイヤー達がまとめて爆散した。そして、一泊遅れて火薬庫の爆発するとんでもない轟音が周囲の長屋地帯一帯に鳴り響き、彼の隠れた長屋など、火薬庫周辺の十数軒がまとめてなぎ倒された。

圧倒的な火力で炎が燃える暇すらなく、衝撃が駆け抜けた凄絶な環境下で彼は瓦礫から這い出し、辺りの喧騒の一切が静まったことを確認すると、そのまま長屋地帯を後にした。

 

後にしようとした。

 

 

 

 

不意に、彼は視界の端に違和感を覚えて、刀を振るった。

 

 

 

 

今回のイベントについて、彼にとってこのイベント、「極限月下」は都合のいい話だった。彼とてヘイトを振り撒き続けているわけではなく、例えば先程の爆発に巻き込まれた十数人は彼の天誅を目的としてはいるが、同時に彼にとっては仲間(私兵)同然の間柄であり、それ以前に対処した二十以上の団体と、居合わせた野侍や志士を合わせて、彼一大勢力を築いていた。

しかも、現在イベントの状況は大きく動いており、ランカーや「祭り囃子」といった化け物が数瞬にして消えた現在、彼の順位は今回のイベントでの十位以内は確実なものになっていた。

つまり、残る問題はどうやって一位以外のランカーが消えた『幕末』(独擅場)を生き抜くかであった。

 

彼自身の体、とりわけ心臓と頭を集中的に守ることを意識して振るった刀は数発の弾丸を捉え、弾き、避けきれない弾丸も彼の腕や足を多少抉る程度の傷を付けることしかできなかった。通り過ぎる弾丸と共に鼓膜を叩いた銃声の数が、より彼の心を安堵させた。不意の奇襲による損害はほぼゼロといってもいい。

だが、十分すぎる隙が生まれた。

彼が刀を振るうと同時に後ずさろうとした瞬間、拳銃を握り締めていた左手を、殆ど偶然に腹の横に構えた。刀を振った方向には何も見えないのに、まるでそこにいる敵を捉えるように、銃を構えた。その瞬間、持っていた拳銃から金属同士がぶつかるような甲高い音がして、彼の体はくの字に折れ曲がり、真横に吹っ飛んでいった。

 

「ぐっ!」

「惜しい」

 

もんどり打って、地面に打ち捨てられるように着地した彼は思わず呻いた。

 

「惜しい、ね」

 

そして、誰かが呟く声が彼の耳に届き、声の方向に視線を向けると、彼は自分の計画が完全に失敗したことを悟った。

彼自身の後を追う亡霊とは異なる亡霊が見え、その先頭には『レイドボス(金魚鉢のジョーズ)』が彼の目の前にいたのだ。彼も「レイドボス」のことは知っている。言葉を交わした経験は少ないが、「幕末(蠱毒)」の頂点に君臨する(?)プレイヤーだ。周りにキラキラと光って見えたエフェクトは、『錆光』の残骸だった。「錆光」は、クリティカルの場合のみすべてのモノを切り裂くことができる特性を持つ。そして、それを外せば「錆光」は粉々に砕け散る。

つまり、今回は拳銃で受け止めることができたので、クリティカル(致命打)を彼は避けることができたらしい。

 

そして恐らく、二度は無い。次の攻撃を半端に受ければ己の命は確実に仕留められるであろうことを、彼は悟った。

 

「いけたと思ったんだけどな、気付いてたの?」

 

彼が思案していると、唐突に「レイドボス」が話しかけた。

彼の聞くところによると、「レイドボス(ユラ)」という人物は会話に癖があり、一定のリズムを崩されると発狂するとのことだった。つまり、彼にとっては、この思考時間すら自殺行為に等しく、すぐに応えを用意しなければならないらしい。

 

「いえ、そんなことはありませんよ。刀が当たるまで全く分かりませんでした」

「へえ」

 

そうなんだ、とでも言いそうな「彼」は別種の納得を得たようで沈黙したが、彼にとっては完全に事実である。ただし、彼に弁明の機会は訪れないのだが。

そんなことよりも、彼にとって重要なのはどう生き残るかだ。

現在、彼の心は焦燥に支配されている。彼自身は小耳に挟んだ程度だが、「彼」の会話のリズムを崩すということは死を意味する以上、この沈黙がとてつもなく危険なものであることは間違いない。兎も角も逃げ出したいが、生憎なことに一帯の遮蔽物は彼自身が消し飛ばしている。

つまり、彼は「彼」を倒さなければ、その場を離脱することすら出来ないのだ。

 

「どうする?」

 

皮肉なことにも、彼自身の思考でさえ、逃亡による離脱が最善だと告げていた。そして、彼はこの脳内の議論(本能の警鐘)に従いたくは無かった。武器を奪われたくないとか、天誅されたくないとか、そんな理由では無い。

 

「会って機嫌が悪かっただけで天誅されるなんて、許せないですね。許したくもありません」

 

彼も数度、「彼」とは会ったことがある。

曲がり角で、茶屋で、団子屋で、竹林で

会話が成立した記憶も朧気にある。そして、無音の天誅をもらった記憶が、多分にある。

訳の分からない人物だった。大別すれば、「彼」について記憶にあるのはのんびりと話すか、狂い咲く笑顔の前に天誅されるかの二種類の姿だった。

どうにもならない訳ではなかった(熱殺蜂球等)が、会えば死線を前後するのだ。

まるで天災のようだった。

 

「どうしたい?」

 

コミュニケーションとは、互いの知識と理解と熱量があって成り立つものだ。

今まで彼の周囲で冷めていた空気が、熱を帯びていく。それを感じる「彼」の口角も自然と上がっていく。

 

「やるならとことん、最後までやり切りたいですね」

 

出た言葉は、奇しくも「祭り囃子」が「レイドボス」に宣戦布告したものと同義だった。

同時に、彼は手に持つ刀を中段に構えた。彷徨っていた視線もその一挙手一投足に釘付けになり、体もそれに呼応して反応している。

文字通り、雰囲気が変わった。

 

彼が相対するのは、何時の間にかその両手に握られている拳銃だ。間合いの差で言えば圧倒的に彼が不利である。そして、正面から向かい合う状況で死角は無い。

近距離かつ乱戦ならともかく、中距離単騎の特攻には戦場が一切合わない。

仮に接近に成功したとして、無手でも闘える「彼」に勝てる見込みは低い。

彼自身も考えることには、これは馬鹿野郎の所業なのだ(だから楽しい)

 

『幕末』云々に関係なく、昨今のゲームに必要なものは、イメージする能力だ。例えば、現実に身体の柔軟でない者がゲームの世界でも身体の柔軟性に欠ける場合がある。これは、単純にイメージできないからだ。自分自身の身体の可動域が広がっても、それがどんな曲がり方をしていてどれだけ力を込められてどこまで応用可能であるのかを理解するのは難しい。

携帯電話からスマートフォンに変わっても、連絡以外に用途が変わらないようなものなのだ。

 

つまり、イメージできればいい。彼の結論は単純明快だった。

『「レイドボス」に近づき、その首を切り落とす。』

それだけを指針にする。

 

「参る」

 

先ず、彼は()()()()()()()()()()()()

「彼」も反応し、銃弾を放つも、彼は放たれた弾の内、頭部と頸部、胸部に飛来したものを斬った。

他の部位は、直撃を避ける程度に弾を避け、最短距離を突っ走った。

 

「彼」はその動きが止まらないことを確信すると、手に持つ武器を再び「錆光」に変えて彼を迎え撃った。

彼が刀を振るう。初手から大上段。一切の加減もない一撃を振り下ろそうとするも余裕といった様子で避けられ、逆に返す刀で片耳を削ぎ落とされてしまった。衝撃に仰け反りつつ、それでも彼は「彼」の姿をその目に捉えて攻撃の機を待とうとする。その瞬間、間髪を入れずに「彼」の姿が搔き消えた。彼は、その目がギリギリで捉えた挙動から「彼」の動きを予測し、右に避けつつ左側に刀を振るった。するとそこには、左手首から先を切り飛ばされつつ、()()()()()()()()()()()()()()()()()を右手にもつ「彼」がいた。

 

「あぁ」

 

その瞬間、「彼」の口から出た声から、感嘆が滲み出た。

「彼」は期待していた。このイベントのラスト、偶然にも殺し残すことになった最後のプレイヤーは、態々火薬庫を爆発させてまで「彼」を挑発したのだ。「彼」の始めた

「彼」に見つからなければ、生き延びるのは容易であったであろうことが明白だからこそ、挑発に乗って「彼」は火の粉の舞い散る火薬庫跡地にやって来たのだ。

 

蓋を開けてみれば、そこに居たプレイヤーにランカーほど突出したものは無かった。しかし、数度の攻防から、彼は反応も経験も十分に足りていることは理解できた。

そして、二人の間にどうしても埋めがたい差が横たわっていることも、理解できた。

 

 

彼らの間に奇妙な沈黙が流れる。「彼」と違い、彼は次の一手を打ちあぐねていた。左肩から先が無くなり、身体全体のバランスが崩れている。新たな刀を右手に持つと、それだけで体が傾きそうになる。とても「彼」に有効な攻撃が出来るとは思えない。そして、彼が隙だらけの満身創痍であるにも関わらず「彼」が攻撃する素振りを見せないことがとても不可解であり、同時に不気味だった。

 

「少し、」

 

「彼」の声が沈黙を破る。

言葉を発すると同時に、「彼」は手に持つ「錆光」を彼に向かって投擲した。

 

「本気出すね」

「──ッ!」

 

投擲された「錆光」は当然のように彼の目のあった場所に吸い込まれるのだが、彼はその直撃を間一髪で回避した。

そして、その眼前には抜き身の刀が迫っていた。

 

「あっ、ぶない!」

 

恐ろしく速い斬撃に無理矢理といった様子で刀を合わせ、彼の体は完全に制御を失った。左腕が無くなり相対的に重くなった右半身が弾かれ、あらぬ方向に体が吹き飛ばされる。そのまま地面を転がり、無様を晒した。

 

「『斬干竿(きりぼしざお)』…」

 

地面を転がりながら彼が確認したのは、「彼」が持ちかえた装備についてだった。「斬干竿」という刀、それには刀を振る際の空気抵抗を0にするという効果がある。このゲームを理解し、利用する「化け物」がその刀を振るえば、不可視に近い斬撃をするのも不可能ではなくなるだろう。正に鬼の金棒である。

彼の胸中を歓喜と困惑、そして絶望が埋め尽くす。彼にその刀を抜かせたということは、少なくとも本気かその一端を出させたということである。(先の攻防のどこに本気を出させる要素があったのかは彼には分からなかったが)ともかく、一つの快挙であり、彼自身の目標の一つを達成させるほどの偉業(当社比)であった。

 

つまり、地面に寝転がる暇を貰える筈が無い。

彼は感情を抑え、即座に頭を冷静に戻すことに専念しようとする。それでも、彼の頭は感動と絶望、そして極度の緊張によって一種のトランス状態に入っていた。

最早、壊れていてもおかしくないほどに酷使した刀を構えながら彼は起き上がり、迫ってくる「彼」の()()を捉えた。

 

そして、まるで自然な動きで、左から迫る視えていない「彼」の斬撃を避けて、その間合い(ゼロ距離)に入った。

 

彼は左腕をもがれており、攻撃を受け止め辛い筈だった。同様に、不可視の攻撃に対処するのは、彼の能力を完全に発揮出来たとしてもほぼ不可能に近い筈だった。

致命の一撃だった。彼が()()()()()()()()()()()()()していなければ、避けられなかっただろう。

 

致命の一撃を見舞おうとした「彼」は、避けられるという考え得る限り殆ど可能性の無い行動に少なからず隙を晒した。

 

「最っ高ッッッ!」

「同感」

 

それでも、その斬撃が掠ることも無かった事実を確認するより早く、「彼」は懐に飛び込んできた(死地に両足を突っ込んだ)彼に蹴りを放った。目的は彼の右腕を弾くこと。可能であれば、その右手に持つ刀を弾き飛ばし、打つ手の無い彼の隙を突くつもりだった。

しかし無防備に懐に突っ込んだ彼はその一打を避けず、寧ろ「彼」の体に全身で体当たり(タックル)をした。

 

「うわっ……!」

「……ふぅ」

 

そして、彼は仰向けに倒れた「彼」の上に馬乗りになった。つまり、彼の考え得る中で最も理想的な状況(即座に「彼」の首を斬れる状況)が、そこに現れた。

 

「ふ、ふふ、はははっ、初めてだよ、こんなの」

 

もう抵抗は出来ないことを理解した「彼」が、不意に笑い出した。「彼」の両腕は彼の足に挟み込まれて動かすことはできない。両足も、馬乗りになった瞬間に太股の筋肉を彼が斬っており、脚を根元から上げることができない。下手な抵抗をしようとすれば、その瞬間に「彼」の首は刎ねられるだろう。

この状態に至って、やっと「彼」は『敗北』を認めたのだ。

 

「そうですね…まさか“こう”なるとは」

 

実の所、彼もあの意識外からの一撃を避けられるとは思っていなかった。普段の彼であれば、攻撃を予測した上で刀で受け止めようとしただろう。しかし、無意識下での覚醒状態が彼に攻撃を避けさせ、最終的に最適解に導くことを成功させたのだ。

 

「ふふふ、本当に楽しかった…」

 

「彼」にとってこの一戦は、テンションの上がりきった末の「デザート」だった。美味しければそれでよし。不味くとも、近々始まる大乱闘(一位報酬争い)が捗るのみ故に、それはそれでよかった。

そして、今回のこれは最後にしては悪くないものだった。

 

「…辞世の句は?」

 

彼が刀を構えて問い掛ける。

 

「そうだな…『またやろう、首を洗って待っててね、次は必ず、僕が勝つから』」

「スゥ─……」

 

彼は来る厄災(ランカー報酬争い)避けられない死(レイドボスとの再戦)が加わったことを悟って絶望しつつ、「レイドボス」の首を斬った。

 

かくして、イベント(『極限月下』)は終了した。

 

ここから、一位報酬をかけた熱いリンチと、その最中に行われた「レイドボス」と彼の再戦が始まるのだがここでは割愛する。




戦闘シーンが大変でした。
続きは書かないと思います。

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