D×D? あのギャグ小説がどうしたって? 作:名無しのごんべい
やっぱり頭をからっぽにした方が早く書けるんだね。
ドウモ、ミナ=サン。この度転生しましたアヤ改め『小野木 文』です。
前世と同じ女の子。年は15歳の駒王学園一年生。身長は150センチ体重は……仲良くなっても教えない。
趣味はネタトークで好きなものはギャグ。彼氏いない歴は年齢+前世の年齢!
特技は……たらいを落とせるってことかな?
この世界に転生してはや15年。
長かったようで短かったこの年月、私はどうしていたと思いますか?
実は退屈だったんです。
いやね? ギャグ小説だと思って転生したんですけど全然ギャグが無いの。
みーんな普通。前世とちっとも変らない。
相変わらず2th用語やらアニメネタやらを言えば冷めた目で見られるしどこかで人が「鼻毛神拳!!」とか叫んで大空を舞うわけでもない。
街中へ散歩に行ってみてもハプニングがあるのかと思えば何もない。
東京のど真ん中で自分の頭にたらいを降らしてみてもだーれも笑わない。
「そこは爆笑シーンでしょうがッ!!」と叫んだ私は悪くないはずだ。
誰もボケないから私のもう一つの能力「ハリセンを生み出す能力」は全く役に立たない。
三つめの能力? 知らない子ですね。
とにかく、私は今ネタに飢えている。
学園内でも優秀なツッコミ要員を探したり話の合う人を探したりと忙しいのだ。
今のところ候補は数人。
まず同じクラスの塔城さん。親しみを込めて小猫ちゃんと呼びたい。
あの無表情を笑いに染めたいし、彼女には突っ込みの素質がある! たぶん。おそらく。きっと。きっとかっと。
次が一学年上の変態三人組こと兵藤先輩、松田先輩、元浜先輩の三人だ。
あの三人のボケなら私も容赦なくツッコミを入れられると思う。ようやくハリセンが日の目を見そうだ。
そして最後が最上級生の姫島先輩。朱乃お姉さまと周囲は呼んでいる。
断言できる。彼女はSだ! しかもドの付くくらいのS、つまりドSだ! 私の虐めてくださいセンサーが反応している。きっと彼女とならドMの私も満足できるはず……!
これくらいじゃなきゃ満足できねぇぜ! 満足先生……満足したいですッ……! なら満足タウンに来るんだな。一緒に満足しようぜ?
ハッ!? 危ない危ない。一瞬満足しに行くところだった。
とにかく、この人たちとなら私も充実した学園生活を送れそうだ。主にネタ的な意味で。
と言ってもいきなり突撃してネタを披露してもどうにもならないだろうし、どうしたもんかな~。
そんなこんなで今日も今日とて面白いことを探して街を探索! 奥さん見てください! 真っ暗ですよ!
いつもはお昼に歩き回るから今日は日が落ちてから探索してみました。これで私も不良です。
家族が心配するって? 残念ながら私の両親は両方とも海外出張中です。帰ってくるのはいつになる事やら……。
家族で思い出すのはやっぱり前世の家族の事。
死んだときのことを覚えていないからどうにもならないけど、みんな元気にしているだろうか。
父さん、生え際を気にしてたけど私が死んでしまったことでさらに後退していないだろうか?
母さん、できれば私のパソコンのハードディスクは中身を見ずに業者に処分してもらってね?
兄さん、私をこの道に引きずり込んでくれた兄さんには感謝してます。おかげで私は二次元に行けました。
私が死んでしまった代わりに、みんなにはどうか長生きしてほしい。
もう会うことはできないけど、私はいつもみんなの幸せを願ったり願って無かったりしてます。
と、そこで私はいつの間にか人気の全くない廃工場の近くまで来ていたことに気付いた。
「あるぇ~? こんなところまで来る気はなかったんだけどなぁ~……ん?」
そこで気付く。
バリバリと、何かを咀嚼する音がする。
硬い何かを無理やり噛み砕いたかのような音。
これは……まさか!?
急いで廃工場に足を踏み入れる。
音の鳴る方へ全力で走ると、そこには地面にうずくまって何かを食べる人が一人。
「あ? 誰だお前は?」
その人、女性がこちらを振り向く。
その手に持っているのを確認して、私の予感は当たった。
「あなた! いくらお腹が空いているからってほねっこを食べるのはよくないわ!」
「……は?」
「ほねっこは犬の餌であって人間の食べ物じゃないのよ!? そんなもの食べたらお腹をこわすわ。ここで見たことは黙っておくから、もっとちゃんとしたものを食べなさい!」
「……なんだ、お前?」
「口答えすんなぁぁぁぁぁあ!!!!」
「ぎゃぁ!?」
何かしゃべろうとした女性に対し、虚空からハリセンを生み出した私はそれで女性の頭をはたく。
「あなたに発言の自由はない! 返事は押忍かサー、イエスサーでしなさい! わかった!?」
「て、てめ」
「はぃぃぃぃぃ!! 指導!!」
「ぐぎゃぁ!?」
もう一発喰らわせる。とっておきのダメ押しというやつだ!
「お、おま」
「指導!!」
「ぎゃおん!!」
「まったく、嘆かわしいわ。なにもこんなところでほねっこを食べることはないでしょう? ちゃんと家に帰ってご飯食べてお風呂入ってあったかくして寝なさい。って私はお母さんか!」
「……なんだ、この人間?」
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はぐれ悪魔のバイザーは、目の前の人間に恐怖していた。
バイザーにとってその日はいつもと変わらない日だった。
いつも通りに人間を捕え、いつも通りに殺し、いつも通りに喰らう。
自らの空腹を満たすための単純な行為であり、主を殺して逃げた自分を追ってくるであろうどこかの悪魔を返り討ちにするために力を蓄えているのである。
そして今日もまた捕えた獲物を貪っているところに、新しい獲物の匂いがしてきた。
バイザーにとってそれは食事が増えただけであり、他には何の意味もなかった。
その食事が自らバイザーに一直線で向ってくるまでは。
現れたのは小柄な人間の少女。
訳の分からないことをわめきながらこちらに近寄ってくる。
その言葉を理解する前に、少女の持っていた武器が閃いた。
痛みに苦悶の声を上げるバイザー。
そう、痛いのだ。
ただの人間の少女が放った一撃が、バイザーに明確な痛みを与える。だが痛みを感じる場所を見てもどこも傷ついていない。
訳の分からないバイザーは、とりあえず目の前の人間を殺そうとした瞬間、またしても少女の武器で殴られる。
今度は避けようとした。だが、バイザーの反応できない速度で少女の持つ武器は閃いた。
正直訳が分からなかった。
頭がどうにかなりそうだった。
やがてどう口答えしても少女の武器がよけることのできない速度で振るわれるので、バイザーは考えることをやめた。
一方、文は今最高の気分だった。
実際文はバイザーのことをただの人間だと思っており、バイザーが人食いの悪魔だとは微塵も気付いていない。
ならなぜ文はバイザーをハリセンでたたき続けるのか?
それは、文がこのハイスクールD×Dの世界のことを今だにギャグ小説の世界だと思っているからである。
ギャグの世界であるのに、普通の行動しかとらない周囲の人々。自分の渾身のネタがスルーされる悲しみと、数々のネタを理解されないストレス。
そこでついに見つけた明らかに普通の人間がとらないであろう奇行をしている人。
深夜の真っ暗な廃工場で蹲って必死にほねっこを食べる女性(文視点。言わずもがな実際は違う)を見つけて、今まで我慢してきた芸人(自称)としての魂が「ここはツッコメ!!」と叫んで仕方がなかったのだ。
故に文は、ただひたすらバイザーにツッコミ続ける。今までの鬱憤を晴らすかのように、ただ自分に流れる芸人の血(もちろん自称である。実際はそんな事実はない)に従って。
「……………………どういう状況なの?」
「え? なんすかこれ? 悪魔ってこういう仕事なんですか?」
この光景を見たグレモリー眷属の5人の内『王』と『兵士』は後に語る。
『悪魔が何を言っているのかと思うけど、バイザーを笑いながらハリセンで一方的にいたぶる彼女はまさに悪魔だったわ』
『俺、この先にいるのは危険な奴だってリアス……様に聞いて少しビビったんですけど、楽しそうに一心不乱にハリセンで悪魔をシバキまわしてる彼女を見て「あ、これ俺でもできるんじゃね?」って思いました。ええ、思っただけですけど』
この日を境に、小野木 文の生活は一変する。
退屈で面白みもない日常から、波乱とギャグとカオスと危険が渦巻く非日常へと……。
ネタとギャグ一筋の文ちゃん。これから彼に合わせるのが楽しみだったりする。
文ちゃん視点はずっとこのノリです。
次回! 『「は? あ、熊? どこに熊が?」 「悪魔よ悪魔。あ・く・ま」』