The Rite of Depth 関連小説集   作:白銀 小虎

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③ 神殿騎士

「騎士、ラインハルト・ビューゼマン。其方を斬首とす」

 

後ろ手に黒鉄の手枷を嵌められ、麻の襤褸を着せられたラインハルトは、爛々と輝くその瞳を、ただ無言で声の主へと向ける。かつては丁寧に整えられていた濃紫の体毛は、今や泥と血に塗れ、暗くも鮮烈だった威容は、罪人の外殻として晒されているに過ぎず、今やどこにもその面影はない。それとは対照的に、周囲の白石は、汚れ一つない静謐を保っていた。

…ここは法廷。教会に身を置く者を審問し、処罰する場。周囲は堆い壁であり、その上には教皇庁と、その数名の枢機卿たちが見下ろしていた。

 

「その罪業はもはや述べるに能わず。いかなる手段によるものか、ピュセ・ハルマトロス・トゥ(  枢   機   院  )・ヒエロスュングラフェオス卿(  第   七   席  )を神の身許に誘いしは、疑うべくもなし」

 

淡々とした声だった。真っ白な法衣に身を包み、立派な角を拵えた鹿の老人―――本来ならば「厳かなる自然」を体現するはずのその姿は、今や秩序の番人としての冷たさしか宿していなかった。そこには糾問も、詮索も無く、ただ一つの事実のみをもって結果のみが宣告される。

 

「であるからして、其方の行いは神意に反する背任と断じられる。弁明の機会は与えられぬ。沈黙は、すでに十分であろう」

 

枢機卿である彼が僅かに身を乗り出す。その老いた瞳に浮かぶのは、怒りでも悲嘆でもない。あるのはただ「秩序を乱された」という不快さだけだった。

 

「ラインハルト・ビューゼマン。神殿騎士として授かりし祝福、恩寵を、その長である立場に関わらず穢したその罪、身命をもって贖うことだ」

 

法廷の空気が僅かに歪む。祈祷文が判決を述べる鹿の唇から漏れた。それは救いのための祈りではなく、罪ある者に裁きを下す、神の行いの一節。此度の裁判が主の意志であり、そしてそれそのものを正当化するための言葉だった。

―――それでも。ラインハルトは、何も言わなかった。いや、言えなかったのではなく、もはや言う必要すら無いと知っていたのだ。彼の視線は、ただ正面を見据えていた。その奥…石壁の向こう、天井のさらに上。かつて、見習いたちに恩寵を授けたあの「光」を、確かめるように。

唇が、わずかに歪む。笑みとも、嘲りともつかぬ、静かな表情。彼ら枢機卿らの身には何も起きず、裁かれず。過ちを正す怒りすら降り注がない。そのさまに、ラインハルトの心は「懐疑」で埋め尽くされる。主の絶対性に対する、その真正性を。

 

(主よ。あれは罪でないと申されるのか。幼き子を褥に連れ込み、守られるべきその身を汚すということが)

 

その瞬間、彼の胸奥で、何かが静かに、しかし確実に決壊した。

それは信仰か、誓いか―――神殿騎士であろうとした自分、その全てだ。そして、判決は続けられる。

 

「明朝、日の出とともに断頭刑を執行する。その首、その身は聖火によって灰となるまで焼き尽くす」

 

木槌が鳴り、法廷は閉じられる。枢機卿らはそのままその場を去り、ラインハルトもまた、付近の神殿騎士に連れられ、退場させられる。彼を地下牢へと連れていく道すがら、その二人の神殿騎士はラインハルトを心配そうに見て、声をかける。

 

「団長、本当に、どうにもならないのですか?」

「…私はもう、団長などではない。騎士ですらない」

「しかし!私たちにとっては、貴方こそが手本となる正義であり、団長なのです!それなのに…こんな…」

 

自分たちではどうしようもないことに、神殿騎士の彼らはその悔しさから歯を食いしばる。

そんな彼らを見て、己の育て方は間違っていなかったと、ラインハルトはふと優しい笑みを浮かべた。

 

「貴殿らを残して行くのはあまりにも心残りではある。だが、私が居なくとも職務は全うできよう。願わくば…次の神殿騎士団長が模範的であることだが…」

「それは!……いえ、確かに今回の一件から『的確な者』を据えられるでしょう。しかし、それでは正義とは…一体何なのですか?」

「…それ以上口を開かないことだ。私は貴殿らが背信で裁かれることを望まない。…いいんだ、少なくとも、私は私にとって正義を成した。であれば、そこに何の心残りも間違いも無いのだから」

「団長…」

 

まもなく、牢の前と着くと、ラインハルトは大人しくその中へ入る。

そして、その場に打ち捨てられていたのは、彼が嘗て着ていた鎧だ。その鎧は、いまや傷だらけとなっている。―――面前での見せしめのために、あえて汚くしたのだろうとあたりを付ける。

いそいそとその鎧を身に着ける団長に、騎士の二人は牢屋の前で無言で敬礼をし、そのまま去っていった。

 

「…どうか、彼らにも。正しき道が照らされ―――」

 

そこまで言いかけて、続きを言うのを止めた。

所詮、この場に正しさなどどこにもありはしないと、この一件から理解してしまったからだ。主は、完全ではない。主は、正義たりえない。主は―――彼の中で、呪いのような思いと怒りが膨れ上がる。それは、今まで信じていたものからの裏切り等しかったからだ。

ふと、体から何かが抜けるような感覚がした。…恐らく、このタイミングで「破門」されたのだと推察する。もはや恩寵は失われ、祝福すらもその身には宿していない。

失意の中、まるで己の心のように地下牢は静まり返っていた。暗い、洞穴のようなその牢で、ラインハルトは今後の彼らに思いを馳せる。湿った石壁と、わずかな灯りだけが残る空間、ラインハルトは鎧を身に着けたまま壁にもたれかかるように座していた。

 

―――ふと、耳が小さな足音をひろう。

それは、看守のものではなかった。重さを殺した、しかし迷いのない足取り。鉄の擦れる音が小さく鳴る。鉄格子の前には、立派に成長したグランツの姿があった。

鎧姿では隠密が難しいのであろう。その容姿はひどく簡素な私服だ。

 

「…団長」

 

抑えた声。ラインハルトはゆっくりと顔を上げ、その声の主を見た。

 

「…来たか、グランツ」

「はい…どうしても、お話を…」

 

鎧を着けたままのグランツは、見張りの目を盗んだことが明らかなほど息を詰めていた。

しかし、その瞳に宿るのは恐怖ではない。困惑と、理解できないという思いだけ。

問いは、直截だった。

 

「なぜですか、団長。どうして…どうして枢機卿を…。あなたが、そのようなことをなさるはずがない」

 

ラインハルトは、しばし沈黙した。低く息を吐き、そして淡々とした声で、端的に答える。

 

「…私はもう、団長などではない。肩書も、役目も、すべて終わった。今ここにいるのは、ただの罪人だ」

「そんなこと!」

 

思わず声を強めかけ、グランツは口を噤むが、意を決して震える声で続ける。

 

「団長は…!私たちに教えてくださったではありませんか…守ることを。正義を。己の芯を失うなと…!」

「…ああ。教えたとも」

 

その視線は、グランツを見ていない。遠く、どこか別の場所を見つめている。

 

「だからだ」

 

短い言葉だった。

 

「だから、斬った」

「…!」

「神殿騎士として、の行いではない。そも、人は人として、生きとし生ける者として、尊厳は踏み躙られてはならない。だからこそ、私は斬った」

 

グランツは言葉を失うが、それでも何とか、絞り出すような声で言葉をつづける。

 

「…それでも…それでも、裁きは…神の…教会の…」

「裁き?」

 

ラインハルトは、かすかに笑った。

 

「裁きとは、秤だ。だが、あの場に秤はなかった。あったのは、腐り果てた黄金の実、ただそれだけだ」

 

拳を、ゆっくりと握る。

 

「幼き願いが踏みにじられ、祈りが歪められ、罪が見過ごされる。それを『許されている』のが主と言うのなら…、その許しは唾棄すべきものだ。」

「…団長…」

「もう、いいだろう」

 

静かに、しかし強く言った。

 

「私を見てはならん。おまえの正義をもって、私の行いに正当性を見出すな。私は、私の正義で事を成した。それはお前の正義の道とは違うものだろう?お前は…お前たちは、まだ歩みを違えてはいない。それこそ、あってはならない。」

「しかし……!」

「グランツ」

 

名を呼ぶ声が、初めて真正面から向けられる。

 

「お前が信じる正義は、お前自身のものだ。そして、私の正義は、私だけのものだ。…私の影に、それを置くな」

 

その言葉に、グランツは何も返せなかった。ただ、唇を噛み締める。

―――最中、足音が、近づく。

 

「……番が戻る」

 

ラインハルトが低く告げる。

 

「行け」

「団長…」

「…さあ、行け」

 

重ねて言った。

 

「見つかれば、お前も裁かれる」

 

わずかな逡巡の後、グランツは深く頭を下げた。そして、何も言わず闇の中へと身を滑り込ませる。布のすれる音が僅かに静かに響いた。

…ほどなくして、隠す気のない重い足音とともに声が響く。

 

「日が昇った。刑を執り行う。ラインハルト・ビューゼマン、出よ」

 

ラインハルトは、ゆっくりと立ち上がった。鎧の重みが今は不思議と軽い。

牢の扉が開かれ廊下へと導かれる。朝日が山巓から差し込んでおり、その眩しさに思わず目を細める。

 

―――……光は、等しいな。

 

小さく、独り言のように呟く。罪ある者にも、無辜の民にも。選ばれし者にも、棄てられた者にも。

 

(……まるで)

 

喉の奥で、言葉が転がる。

 

(太陽の方が、よほど神のようだ)

 

誰に聞かせるでもなく、そう思った。その光を眺めながら、彼は神殿最奥へと連れていかれる。白い石壁に囲まれた執行室。祈りのためではなく、終わりのために用意された場所。

 

その中央には黒い石材で作られた断頭台(ギロチン)と、それ本体。すぐ奥には聖火本体からの分火が勢いよく燃え盛っていた。死体をすぐ焼却し、アンデッドとなることを防ぐためだろう。

ラインハルトは、最後まで背筋を伸ばしたまま、断頭台へあゆみを進める。恐怖はない。後悔もない。ただ一つ、胸に残るのは―――

 

(……あの若者たちが、己の正義を見失わぬことを)

 

その願いだけだった。

断頭台にたどり着き、粗い手つきで頭を下げられ、断頭台に体を据え付けられる。鎧のままでも使えるように、特殊なつくりをしているようで、ガチャガチャと金具を付けるのに手間取っていた。

間もなく終わった様子で、作業者は離れていき、執行官は断頭台のレバーに手を添える。

執行確認のために訪れていた枢機卿の一人が、観覧席から声をかける。

 

「最期に述べることは?今改心するならば主も死後、無碍にはされないであろう」

「無い。…人の身でありながら人を食い物にするその悪性、汝らこそに災いあれ」

「…執行官、刑を下せ」

 

執行官がその言葉と同時に、断頭台のレバーを下げる。瞬間、大きな鉄の歯が勢いよく下がり―――

 

 

 

……

………

 

 

 

「なあ、グランツ。ラインハルト元団長の事なんだけどよ…」

「ん?団…元団長がどうかしたのか?」

 

時は流れ、数年の歳月を経る*1

グランツも今では立派な神殿騎士となり、中央教区の業務に勤しんでいた。

 

「最近、ラインハルト元団長が使っていた鎧や剣を持ったアンデットが現れたっていうんだ。」

「―――何だって?冗談にしては、随分と笑えない話だな?」

「いやいや、冗談じゃないんだ。実際に襲われた被害者…それも枢機卿で一人大けがを負って、危うく死ぬところだったらしい。」

「…あの方がそんな―――アンデットになっていると思うのか?それに…遺体は処刑後直ぐに聖火で燃やされた。アンデットとなるタイミングすらないはずだ。」

 

グランツは驚きに目を見張った後、訝しげな表情で教会の天上に座す光に目を向ける。それは今も昔も変わらずに、ただじっとグランツを見ている。即ち、聖火の本体…でもある。

 

「んだもんで、俺たちに討伐依頼がそろそろ下されるらしくってな。」

「…悪趣味だな。わざわざ私たちに、か?」

「ああ。明らかに当てつけだって俺たちも話をしてるんだが…だが、もし団長がアンデットになっているなら、せめて俺たちでカタをつけたいだろ?」

「……それは、確かに、そうだが…。」

 

教区内の道を歩く。今日はポルトン外壁の周辺警邏と、必要に応じて敵性勢力の討滅を命じられている。

 

「だから、俺は依頼を受けるつもりだ。もし、本当に団長だったなら俺たちはこんな立派になったって、ちゃんと伝えたいしな!」

「…、そう、だな。」

 

グランツは、ラインハルトとの最期の会話を思い返し、苦い顔をする。あの選択は、少なくとも自身の正義を否定するものだった。しかし、その正義を掲げ続けるには()()()()()()上、もし無理に押し通すのなら団長の正義を否定し、そして己も死ぬという結末しか起き得なかったからだ。ゆえに、あの時の選択―――団長を尊重したはずのその選択が、今も胸の奥で重く燻っていた。

果たして、己の正義とは何なのか。尊敬する相手を死なせて己がのうのうと生きている、この結果が本当に正義と言えるのか?と。

 

共に従事している相方…珍しい(黒)鼬獣人である彼―――ラリアースは、その後も言葉をいくつか続けるが、グランツの表情を見て、さしもの彼も話しかけるのを止める。…少なくとも、この話を続けるべきではないと。それ以上踏み込んだ話となれば、彼の感情の行き場がなくなると、なんとなくも理解したからだ。

そのまま、二人はスプリーマの通りを抜け、ティエーラの詰所へと向かう。任務の引き継ぎを済ませ、形式的な確認を受け、巡回証を受領する―――いつもと変わらぬ流れ。だが、その背後で、視線が突き刺さる感覚を、グランツは拭えずにいた。

 

(…見られているな)

 

天上に座す光、主の威光。あるいは―――形而上学的存在。

 

今まではなかった、意図して此方を見つめてきているような感覚。まるでこちらを吟味するかのようなその視線を意識するたび、胸の奥に、あの地下牢の冷えた空気が蘇る。…そんな内心の蟠りを抱きつつ、ポルトンから外郭へと抜けると街の様相は徐々に変わっていく。石畳は荒れ、草地の面積も減り、荒れた土が表出していく。

 

「さて、ここから先は敵性生体も出やすくなってくるな」

 

ラリアースが呟く。

 

「件のアンデットはさすがに正門じゃ見かけないらしいけど、そうだなぁ…。教会裏あたりは門もないし、人目もほぼない。もし居るならそのあたりじゃないか?」

「…まさか。探しに行くつもりか?」

「まさか!まっ…居たらそれはそれでだな!」

 

悪戯を思いついた子供のように笑う姿に、グランツは苦笑する。

…教会裏。教会を強固に守るために築かれたポルトンを覆う最外周の大壁、その正門から最も離れた、威光が届かぬ暗部とされる場所。スラムの者ですら寄り付かない、危険地帯。人目につかず、しかし完全に忘れ去られた場という訳でもない―――云わば、聖/光()邪/影()の曖昧な境界地点、地上の辺獄(リンボ)ともいえる、最も(教義的に)死に近き場所。

確かに、そこであればアンデッドも聖属性(神や日光)にさらされることがないからして、生存するにはうってつけの場所ともいえる。

 

「よし、じゃあ警邏開始だな」

「ああ。気を抜かずに、だ」

 

二人は、外郭巡回路へと足を踏み出す。いつもの通り、危険な兆候がないかをただ見まわるだけの業務。中央教区周辺は基本的にスラムも存在せず、またその『威光』の都合からか敵性勢力もほぼ存在しない。

正直なところ、カルド師父の許で務めを果たしたかったが、元団長直々に教えられた自分達を目の届かぬ所へ配置するのをためらった為であろうからして、全員中央教区勤めが決定され―――こればかりは仕方がないものの、未だ騎士になったという報告を手紙でしかできていないことが心残りとなっている。

中央教区を少しでも離れれば、強力な魔物なども跋扈している。だからこそ、力ある身となっておのれの大切なものを手づから守ることができないこの立場に、もどかしい思いも抱いていた。

巡回路はやがて緩やかに傾斜を下り…中央教区の真裏、その大壁を頂く崖下へとたどり着く。

大壁の影が長く伸び、太陽も徐々に沈み始め…光の届く範囲は確実に狭まっていった。前方には、荒れた土と低木が混じる不整地が広がっている。

 

「…静かすぎるんじゃないか?」

 

ラリアースが、ぽつりと呟く。

 

「そうだな」

 

ここ最近の警邏では決して感じることのなかった、空気の重さ。

風は吹いているはずなのに、音がない。草が揺れず、虫の羽音も聞こえない。まるで、この一帯だけが世界から切り離されているかのようだった。

グランツは、無意識のうちに歩調を落とす。盾に手を添え、周囲を注意深く見回した。

 

(…嫌な感覚だ)

 

敵性生体―――つまり魔物などの事だが―――は、神殿騎士が近づくと往々にして”気配”を隠す。それは強力な祝福や恩寵の賜物で、それらを警戒しての事だが…それとは別種の静けさが、違和感を伴って皮膚の内側をなぞっていた。

 

「なあ…」

 

ラリアースが、声を潜める。

 

「気づいてるか?」

「ああ」

 

返答は短い。

 

「…視線だ」

 

その言葉に、グランツの喉がわずかに鳴った。天上からのものではない。

もっと低く、もっと近い―――地上からの視線。二人は、ゆっくりと歩みを止める。

巡回路の脇、崩れかけた石垣の向こう。古い巡礼路のその奥には、教会裏の奥の雑木林へと続く細い旧道が、半ば土砂に埋もれた状態で残されていた。

 

「あそこか」

 

ラリアースが、小さく息を呑む。

旧道の先、教会と森の影が重なり合う地点。そこに、何かが立っていた。

 

人影に近い輪郭。だが、動かない。呼吸も感じられない。

 

「…鎧、だよな」

グランツは、目を凝らす。薄闇の中でも判別できる、重厚なシルエット。

見覚えのある形状。胸甲の意匠、肩当ての曲線、そして―――

 

「……嘘だろ」

 

喉の奥から掠れた声が漏れた。

濃紫の体毛、無数の戦痕を刻んだ鋼鉄。

そして、かつて幾度となく背中を追い、守られてきた彼の―――あの特徴的な紋様の大剣。

間違えようがなかった。

 

「…団長、の…」

 

言い切る前に、影の中の“それ”が、ゆっくりと動いた。

―――ガチリと、金属が擦れる音。兜の奥、鎧の隙間から、怪しく光る二つの光点が覗く。

生者の眼ではない。祝福を宿した瞳でもない。ただ、冷たく、獲物を睨めるような光。

 

「…話、通じると思うか?」

 

ラリアースが、かすかに問いかける。

グランツは、答えなかった。答えられなかった。胸の奥で、何かが静かに軋む。

 

(…もし、あれが…)

 

最後まで思考を結ぶ前に、()()は一歩、前へ踏み出した。

重い足取り。だが、迷いはない。その瞬間、グランツは悟った。

 

―――これは、団長ではない。

その姿、形は確かに敬愛し、尊敬した騎士の姿それそのものだが、その歩みは全くとして異なっていた。少なくとも、生前の堂々とした歩みではなく、どこかふらつくような、浮ついたような…安定しない足取り。

しかし、こちらへの強い敵意、殺意だけは明確に、そして強固に感じ取れるほどに発せらている。肌を焼くような感覚に、グランツは盾を構え、ラリアースは小剣を引き抜く。

 

「…これ、やばいな」

「もし、あれが団長なのであれば―――とてもそうは思えないが―――私たちは死ぬかもしれないな」

「冗談やめてくれよ…つっても、マジで死ぬかもな、コレ…」

 

目前数百メートル。ふらふら、ふらふらとした足取りでこちらに向かってくるかと思った瞬間、突然加速し―――その姿が描き消える。

 

「後ろッ!」

 

ラリアースは大声で叫び、横に避ける。

グランツは咄嗟の事でありながら、そのきわめて大きな盾を、重さを感じさせない速度で後ろへと突き出し、瞬間、重い斬撃を受け止めた。盾越しに、怪しく光る眼が見て取れる。

その色は、まぎれもなく敬愛した団長の、その瞳の色であった。

 

「ぐっ…ぅぉぉおおお!?」

「『Aspice et intende(汝、刮目せよ): haec est dextera Domini, digitus qui nubes scindit(これは主の右手にして雲を割る指先である)!』」

 

ラリアースが高速で聖典句を引用宣誓する。勢いよく剣を振り、その存在へと「飛ぶ斬撃」を浴びせつけるが、少し体の重心がブレただけで、大きな傷はつけられない。

グランツが盾で力強く剣を弾くと、それは緩慢な動きで、ラリアースを見つめ、一言。

 

יהא(イェヘー) דינא(ディーナ)*2

「…なんだって?」

「ッ…!『Ille est sine vitio(汝、瑕疵なき者なり); ego sum Dominus(私は主である)!』」

 

叫ぶようにグランツが宣誓する。

ラリアースは聞きなれない言葉に一瞬虚を付かれたが、グランツはその言葉を理解()()()()()。その言葉は―――もっと古い、原典たる言葉。それは主の意思を直接反映する、正しく神言であると。

瞬間、ラリアース目掛けて太く束となった黒雷が直撃し―――その雷は、グランツがラリアースに張った防御魔法を黒い炎で焼き尽くした。その威力に、ラリアースは震撼し、たたらを踏んで一気に跳躍し、推定『ラインハルト』から距離を取る。

 

「なんだよ、今の攻撃!」

「気を抜くな!次が来るぞ!」

 

続けざまに、ラインハルトのようなものは言葉を放つ。

そのたびに、グランツが必死に張った防御魔法を焼き払っていく。パスを通して魔法が焼き払われる感覚を直に味わい―――徐々にその威力が強くなってきていることに背筋が凍る。同時に、その感覚は―――ラインハルト卿の恩寵『灼滅』で己の防御を焼き払われた時と、同じ感覚だった。

 

「ラリアース!連発されると持たない!」

「くっそ、あっちは無尽蔵か…!?10秒持たせる!」

「任された!」

 

グランツは盾に強く魔力を注ぎ込む。同時にラリアースは全身に魔力を漲らせ―――跳躍。ラインハルト卿を高速で切りつけ始める。

ラリアースの恩寵『殲光(せんこう)』。戴冠時間を何十倍、何百倍と早め、超高速駆動を可能とするものだ。それに対し、ラインハルトの様なものは煩わしそうに、何度も何度も黒雷を放つが、そのたびにラリアースは除け続ける。

その隙に、グランツはその場から離れたところまで移動し、()()()()の詠唱を開始する。

 

「『Audite, filii tenebrarum(不徳の者らよ、聞くがよい). Iam enim sensistis(汝らはすでに、) praesentiam maiestatis eius(その威光の臨在を感じたであろう). Per lumen rectum gratiam accipietis(正しき光を以てその恩寵を受け取るであろう). non maculatam(それは瑕疵なく), non imminutam(不全なく), non impossibilem(不可能なく), Splendor viventium gemmarum tenebras disperget(生ける宝石の輝きは闇を打ち払い), et quod impossibile putabatur(不可能も), factum erit luce eius(その光によって成る). Propterea(ゆえに、) in plenitudine perfectionis veniam largitur(それは完全をもって、それを許そう); tantum sursum aspicite(ただ仰ぎみよ). Ego sum Dominus(私は、主である)!』」

יהא(イェヘー) דינא(ディーナー) גבריתא(ガヴリーター) דמטרא(ドマㇳラー) מלחא(マルハー) דעמודא(ダッムーダー) לית(ヴェリート) שופרא(ショフラー) דכפרנא(ドカフラーナー) אף(アフ) בשאול(ブシェオール)

*3

 

グランツの詠唱に気づいたのか、合わせるように、先ほどより長くおどろおどろしい言葉を詠唱し始める。ラリアースの剣戟にびくともせず、詠唱には寸分のブレもない。グランツが詠唱を終えた瞬間にラリアースはグランツの元へと飛びのき―――瞬間、轟音。閃光と共に辺りに灼熱が飛び散る。

 

「ま、間に合ったか…!」

「や、やりぃ、さ…さすがグランツ…」

 

光が収まったころには、グランツの居る周囲数メートルの地面は溶解していた。

ツンとするような硫黄臭が少し漂い、凄まじい熱気にさらされるが、グランツを中心とした球体の遮蔽は熱気すら防ぎ、息を整えるのに十分な守りを与えていた。

 

「何なんだよあの威力…。恩寵だって云われたほうがまだマシだぞ?」

「正直、一瞬この防御魔法も軋みかけたほどの威力だ。冷や汗をかいたな…。」

 

遠目に映るラインハルトのようなものは、大剣を下ろし、ただこちらをじっと見つめている。その視線には憎々し気な雰囲気を漂わせ、予断を許さないことを明確に示していた。

盾と剣を構えたまま、二人は動けずにその場で立ち構える。距離は、そう遠くない。踏み込めば届く。だが、踏み込めない―――余りにも技量の格が違う。

 

鎧の隙間から覗く二つの光は、瞬きひとつせず、ただこちらを見据えている。

殺意は、確かにある。だが…意志がない。そこにあるのは、命令に従う刃のような、空虚な敵意だけだった。

 

(…違う、アレは…違うはずだ)

 

グランツは、歯を食いしばる。

ラリアースと繰り広げた剣戟の応報。あれは確かに、ラインハルト卿のソレであった。だが、あれは、かつて自分たちに言葉を与え、背中で示した騎士ではない。名を呼んでも、教えを語っても、決して応えない存在だ。

 

「来ないな」

 

ラリアースが、かすれた声で言う。

剣先は下げていない。それでも、先ほどの勢いはない。

 

「…ああ」

 

グランツも短く応じる。

盾を構えた腕が、じわりと痺れているのを自覚する。力を抜けない。だが、力を込め続ける理由も見えない。

 

沈黙が、長く伸びた。

 

ふと、風が吹いた。完全に止まっていた空気が、ようやく動き出す。

辺りの熱気は収まり、どろりと溶けた周囲の地面も固まりはじめ、あとは席熱を残すのみとなっていた。草が揺れ、低木が擦れる音が戻ってくる。

その瞬間。

 

―――ふっと、影が、消えた。

 

音もなく、気配もなく。

まるで、最初からそこに存在していなかったかのように。

鎧の重みも、殺意も、視線も、すべてが一瞬で霧散する。

 

「…は?」

 

ラリアースが、思わず間の抜けた声を漏らす。

 

「消え、た…?」

 

グランツは、無言のまましばらく盾を下ろせなかった。

周囲を見回し、地面を確認し、旧道の奥を凝視する。…辺りには、何もない。ただ、激しい戦闘跡だけがそこに広がる。

 

「…離脱、か」

 

そう言ってから、ようやく盾を下ろす。

腕が重い。膝の力が、遅れて抜ける。ラリアースも剣を下げ、深く息を吐いた。

 

「…あー、今の…結構ヤバかったよな?」

「…否定できないな」

 

二人の間に、遅れて緊張が解けた実感が広がる。

鼓動が耳に響く。汗が、背中を伝っていた。

 

「しかし……」

 

グランツは、もう一度だけ、影が消えた場所を見る。

 

「…あれは、此方を殺す気でいたのか?殺意はあったが…、何というか、そこまでの熱意は感じなかったな…。」

「アレでかよ?マジで言ってんのか?」

「あの技量。少なくとも、もし本当に団長だったのならば…詠唱中に確実に殺しに来ていたと思うぞ」

「うわ、やめてくれよ。背筋寒くなる」

 

ラリアースは肩をすくめるが、その表情は冗談めいていない。

 

「なあ」

「なんだ?」

「これ…報告、しないとまずくないか?」

 

グランツは、少し考え、ゆっくりと頷いた。

 

「…それは、当然そうだな。隠す理由がない。いや、此処まで騒ぎになったんだ。隠し立てすることも難しいだろう。」

「何より、絶対応援が来るだろ、あの騒ぎ。そもそも教会からも見えてただろ、あの閃光―――って言えば、来るよなぁ。」

 

もし、あれが本当に―――

もし、あれが再び現れたなら。

 

「合流しよう。記録も、証言も、すぐにまとめなければ」

「了解…。はあ、今日は眠れそうにねえな」

 

二人は、遠くからやってきた仲間の騎士たちの許へ引き返し始める。背後を気にしながら、それでも振り返らずに。

近い将来にでも、アレは止めなければなるまい。例え、懐古を促し、苦しい記憶を呼び起こすものであろうとも。このままではいけない、アレは絶望と死を振りまくもので、下手をすれば罪のない教徒でさえ、アレの餌食になってしまうかもしれない。

 

グランツはひどく緊張した面持ちで、合流した騎士たちに事のあらましを伝え始めた。

 

―――そうして、ワティカヌスの歴史書に残るほどの長期襲撃敵性体として、アレは名を連ねることとなり…。

 

 

 

 

☆ ★ ☆

 

 

 

 

それをヴィルデンらが解決することとなるのだが、それはまたの話、だな。

…ふむ、結局それはラインハルト卿だったのかどうか、か?それだけでも聞きたいと。

 

結論から言うと、あれは「ラインハルト卿」その人で間違いない。ただし、理性が無いデュラハンとして再誕してしまったもの、だが。

灰にされたはずだと?その通りだ!だが、奇しくもその灰が捨てられた裏の森林で、「罪を罰する」という強い意思をもって死んだ者の遺灰に奇跡が降ってしまったのだ。

…そうだな、子供の頃に私を殺そうとした者たちに神の裁きが落ちたのと似たようなものだ。

強すぎる怒りと悔恨、そしてその情念が、「聖域」としてその場を定義してしまったのだ。

 

そして、実態はデュラハンでも魔物でもない。その存在、対面したその者の罪を、その罪の量に応じて裁きを下すという、『浄罪』の化身そのものだ。いわゆる「機械仕掛け」という訳だな。

何といっても、その罪が軽微なものであっても死罪になるというレベルの極端なものであったが…、ラインハルト卿がいかに現教会に対して深い失望を抱いていたのかが良くわかる。

―――同時に、どれほど教会を大事に思っていたのか、もだ。

 

さて、これ以降となると、私が教会から破門されかけたり、後輩だったはずのローレンスが飛び級で副団長になってしまったり…同室が宛がわれ、毎日小言を聞かされたりなどあまり面白い話は無いのだが…。

長くなってしまったしな!今日はここまでとしよう。

 

なあに、また機会があれば続きでも話すとしようか!

さあ、では夜も更けてきた。明日のために眠ってしまおう…。

 

それでは、良い夢を。

汝に主の祝福があらん事を。

*1
グランツの齢、約23歳ほど

*2
『裁きよ』、正しい表記は「יהא דינא」

*3
『裁きよ降れ』『硫黄の雨、塩の柱』『贖罪の鐘(角笛)は、獄にも在らず』。正しい表記は『גבריתא דמטרא』『גבריתא דמטרא מלחא דעמודא』『ולית שופרא דכפרנא אף בשאול』。作中の表記は、発音と単語が一致するように、文レベルでは左から右への表記にしてある。ただし、単語文字単位では右から左へ読む。なお、「贖罪の鐘」と訳している部分は、正しくは「贖罪の角笛」。古代ヘブライ世界では角笛が神的宣告(終末の宣告/懺悔の催促など)の象徴であることから、鐘に対応する言葉として角笛の単語を当てている。




・聖ワティカヌス神国
①カエルム :特区、教会が存在。中央教区のみ。

②スプリーマ:一等区。枢機、主教らが住まう場所。分教会もスプリーマに該当。

③ヌーベ  :二等区。主祭、騎士などの駐屯所及び住まい。

④ティエーラ:三等区。見習い騎士や守門、教徒の住まいの場所。(守門は騎士だが、仮住まいが与えられてここに住む。年制。)

⑤ポルトン :一般区。最外周。巡礼者及び国外からの来た観光者の地区。近代化に伴い、一種の観光資源としても活用され始めたため出来た新区画。

⑥サディム :山巓東の大規模スラム。
 ジョモラー:山巓西の大規模スラム。


・登場人物
①グランツ・ド・バッセンハイム/Glanz De Bassenheim : 本作語り手、白銀の虎

②カルド・グレギス/Κάρδο Γρηγίς : グランツの師、白い名前の語源はカルドス(Κάρδος)とグレゴリオス(Γρηγόριος)より。

③マケロス/Μακελός … カルドのライバルであった主教。名前の語源はそのままマケロス(Μακέλλος)より。ちなみに「マンガス」は比較的馬鹿にされるときに誰にでも使うが、マケロスは少し響きが似ているからという理由で殊更そう罵倒されることを嫌っていた。まあもう死んだけど。

④グラウコス/Γλαῦκος … グランツの幼少期の名前。淡く光る色、などの意。

⑤カリトン/Χαρίτον … 御者。グランツたちと一緒に育った一人、名前の語源は「Χαρίτων」より。

⑥フルーロス/φρουρός … 番兵の名/意。門番。ちなみに相方のほうはフラルケー(φρουράρχη)、番兵長(φρουράρχης)が語源。ちなみに兄弟である。

⑦ピュセ・ハルマトロス(・トゥ・ヒエロスュングラフェオス)/Φύσε Ἁμαρτρός (τοῦ ἱεροσυγγραφέως)… ἁμαρτωλός ἐστι φύσει 即ち「その者、本性は罪人にて」。トゥ・ヒエロシュングラフェオースは枢機卿であるものの称号に近い。「τοῦ:〜の位格の」「ἱερο+συγγραφεύςで聖別された+編纂者」。ちなみに枢機院から退位すると「τοῦ συγγραφέως」になる。綴りが違うのは、単語的に属格となるためだが、フレーバー的には全く関係のない話である。

⑧ラリアース/λαλιάς … おしゃべり、の意。文字通り彼は無駄口が多いのである。


・用語
【聖ワティカヌス神国】
名を失われた創世の神を崇める一神教の宗教。偶像崇拝は許容されている(そもそも実像の姿が存在していることは自明なため)。
作中では「主」と呼ばれつつも「神」という表記があるが、表記ぶれではなく表現の違い。
呼びかける場合は当然「主」であるが、世間から見れば宗教の最高位は「神」なので、その違いである。


【カザレウス】
カザレウス、つまり καθαρεύς 。掃除屋とよばれる処刑部隊の事。この場合「浄化する」という意味合いが強いが、やってることは死体量産機。
反乱分子や逆らう者などを、強権をもって消す場合なども動かされる。
なお、カザレウスに属する当人らは、自由意思は希薄で感情に乏しいが、みな望んで「そうなった」者である。


【聖域】
その土地そのものが祝福されており、敵対的な存在が入り込めない場所。神国全体(ポルトン内まで)が該当する。


【小聖域】
聖域から離れた地点にまれに生まれる、小秘跡が存在する周辺一帯を指す。聖域と同様に敵対的な存在が入り込めない場所。


【大秘蹟】
聖域(教会)の中央に存在する、最も強力な秘蹟。大きな燃える宝石を囲うように植わってる大樹。
枝からは常に赤い樹液(葡萄酒)が滴り落ち、根元からは清らかな水(泉)が、枝には黄金のリンゴが成っている。
この国で言う「聖水」と呼ばれるものはこの泉の水であり、飲むことで祝福が与えられる。なお、洗礼の際に用いられる水もこの泉の水であり、強力な破魔の力を持つ。
一般的な「聖水」は単純に魔物が嫌う成分が抽出された、特殊な無味無臭の水である。普通に使う分には大差ない。


【小秘蹟】
小さな泉や、葡萄酒の湧き出る大石などの形で存在する、小規模な秘蹟。
様々な種類があり、例えば上記の例の場合は飲む、浴びるなどをすると、おおよそ「癒し」や「聖別化」などの恩寵が時限的に与えられる。
なお、小聖域の中でも特に小さな規模のものに関しては中央教区の「礼地」的扱いとしてポルトン区画に広く点在している。
今回のサディムの泉も、これに該当する小聖域である。


【階級】
教皇 > 枢機院 > 主教職(府主教>大主教>主教) > 各種聖職(主祭>助祭≧輔祭{首輔祭≧長輔祭}>副輔祭≧神殿騎士/修道者≫教徒)あたり。
各種聖職以下はあまり厳密な序列はないが、あくまで「格式」として用意されているのみであり、実際はどれも同じようなものだが、下位職からはある程度の尊敬を払われる。
なお、神殿騎士内にも当然、序列に似た役職があり、ほかの聖職位のどの位に値するか…など細かくあるが、割愛する。表が必要になるからね。


【神殿騎士】
端的に言うと、主の名の許の暴力装置
勤務地が山巓の教会であるが「神殿」騎士なのは、単純に教会の中央部そのものが「秘跡/聖域」でもあるため。
まれに周辺に聖域が現れるが、その場合は簡易教会が立てられ、該当箇所は「神国の一部」として扱われる。
増えた聖域の管理・保護のために主教と神殿騎士が配置されることが多い。
なお、マケロスがスラムに近い地域を管轄にされていたのは、単純に内部から煙たがられていたかららしい。哀れである。
サディムの小聖域をどうしても管轄区に取り入れたかったのは、大変誉れなことであると同時に複数の管轄区を持つことで、配下に主教(複数の管轄)を持つ大主教になれるためであったから。


【サディムの泉】
別称「サディムの赦し」とも。小秘跡の一つ。グランツが居ることで以下の理由から;
①神が見える
②=人は神を仰ぎ見れないが、神は自信を見ることができる
③ =ならば彼自身も神の一部
④  =神聖な存在が居るのだからそこは神聖だ
という超理論が展開され、主への信仰≒神性魔法の無条件的発動により小聖域が発生した。つまり全部グランツのせい。もはや聖☆グラウコスである。
なお、この泉は「グランツの為」の泉であり、グランツが望めばその泉の発生場所も変えることができるが、
グランツ自身がそれを望まず、かつその仕組みを知らないため、未だ付近に水脈もない山巓の一部でこの泉は沸き続けているという…。


【聖蹟物】
アーティファクト。自然に魔法的要素を持ってしまった人の手による造形物を指す全般。
世間一般に言われる「アーティファクト」そのままの意味合いであるが、教会では主の奇跡であるという前提で「聖蹟物」と呼ぶ。
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