千紗希との一件が終了し、一段落が付いた陽葵。そんな彼は、今日は学校が休みだからという理由で、街に繰り出していたのだが・・・。道端で眼帯を付けた白髪の少年を従えた、褐色肌の偉丈夫から求婚をされていた。
「御主を、余の妻に
「あの・・・、僕は取るに足らない一般人ですよー。」
「虚を申し立てるな!御主程の、圧倒的な呪力量を持つ術師は見た事がない!もはや御主は、余の妻となる為に生まれてきたと言っても過言ではないぞ!さぁ!余と婚姻を結び、
「なっ・・・!白昼堂々と、何を仰ってるんですか!?それに、僕は男ですよ!?」
「それでも構わん!余は、衆道文化にも理解は示している!」
「あの、取り敢えず話を聞いてください!」
そう困惑する陽葵の意見を無視して話し続ける男に、彼は内心で溜息を吐いていた。・・・事の発端は、数時間前に遡る。
この日の午前7時頃・・・。陽葵は、久しぶりの休暇という事で呪術高専へと出向いていた。そして、そんな彼はというと内心ルンルンの気分であった。何故なら、とある男の子に出会えるからである。その男の子の名はというと・・・。
「恵くーん!!」
五条悟が学生時代に殺した術師殺しの男、伏黒甚爾の息子である伏黒恵という少年だった。そんな彼は現在中学生であり、卒業後に高専に入学する手筈と成っている。
そして高専内で名前を呼ばれた恵は陽葵の方を振り返ると、スンとした表情でペコリと頭を下げる。
「美空さん・・・、御疲れ様です。」
「うん!御疲れ様、恵君!脱兎を調伏したんだってね!夜蛾さんも、喜んでたよ!!」
「はい。本体を見つけて叩くのに、少々手間取りましたが調伏が出来ました。」
「うんうん!偉い偉い!!」
そう言いながら、笑顔で恵の頭をヨシヨシと撫でる陽葵。そんな陽葵の手つきに、恵は相変わらずの仏頂面だが手を払い除ける事はしないようだ。
「美空さんは、御変りありませんか?」
「無いよ!!強いて言うなら、物凄い自我の強い地縛霊の子に会っただけ!!」
「は・・・?地縛霊って、過呪怨霊じゃないですか!?もちろん、祓ったんですよね!?」
「祓って無いよ?良い子そうだったから!!」
そうぺカーッと無邪気な笑顔を浮かべる陽葵に、呆けた顔をした恵は眉間の皺に手を置くと揉み始める。
「良い子そうだからって・・・。マジで言ってるんですか?」
「うん!それに僕以上に上手くやってくれそうな霊能力者のコガラシ君って子が、地縛霊の子・・・幽奈さんをしっかり見ててくれるから、大丈夫だよ!!たしか、今日は二人でデートに行くって言ってたよ!」
「過呪怨霊と霊能力者が、デート・・・?はぁ〜、いや・・・もういいです。」
そう言いながら、ウインクをしつつドヤ顔をする陽葵。そんな彼に対し、恵は大きな溜息を吐く。恵は、陽葵の事を嫌ってはいない。だが、考えがあまり相容れない。
そもそも、恵の術師としてのモットーは"少しでも多くの善人が平等を享受できる様に、不平等に人を助ける"というものだ。
それに対して陽葵は、"なるべく、大勢の人に生きて貰いたい。罪を犯した悪人でも、反省しているのなら救いたい"というのが彼のモットー。
つまりは、目指しているモットーに関しては反りが合わない事がある。だが、それでも恵は陽葵の事を尊敬している。何故なら、間違いを犯した者も極力許そうとする陽葵は、恵にとっては善人に映るからである。だからこそ、恵は陽葵を尊敬しているのだ。
「それで、美空さんはどうして高専に?」
「んー?今日は潜入中の学校が御休みだから、フリーダムデイなの~。」
「そうですか。俺も、今日は中学が休みです。」
「そうなんだ~。それじゃあ、フリーダムデイで御揃いだね~。」
そう言いながら、のんびりとした雰囲気を醸し出す陽葵。そんな彼だったが、恵の言葉に一気に意識が覚醒する!!
「あの、美空さん・・・。」
「どうしたの~?」
「少し、御願いが有ります・・・。近接格闘の訓練を、付けてくれませんか?」
その言葉に、陽葵の世話焼きモードが発動する!!そんな彼は恵の両手をギュッと握ると、キラキラ目を輝かせながら大きな声で了承する!!
「任せて!!それじゃあ、道場にレッツゴーだよ!!」
そうして、道場へと向かうと陽葵は恵と近接格闘訓練をする。そして、訓練の結果はというと・・・。もちろん陽葵の圧勝であり、自分より背の高い恵の腕を取り、肩と肘の関節を極めていた。
「はい・・・。今日も僕の勝ちかな?これで通算、百二十五勝零敗。」
「ですね・・・。有り難う御座いました。」
そう言うと締めから解放された恵は、顔を上げると陽葵から差し出された手を受け取って道場の床から起き上がる。そんな彼に、柔らかい笑みを浮かべながら陽葵は彼の頭を撫でる。
「どういたしまして!でも、僕に一本取られるまでの時間が長くなってるね!!これも、立派な成長かな?」
「それ・・・。成長なんですか?」
「もちろん!だって、生き残れば次もまた誰かを助ける為に戦えるでしょ?」
そんな陽葵の朗らかな笑みに、気が抜けてしまったのか恵は珍しく笑みを浮かべる。そして、そんな恵にニコニコしながら陽葵は乱れた道着を整えてやると、とある提案を持ちかける。
「ねぇ、恵君!ちょっと、今から御散歩に行かない?」
「散歩・・・。ですか?」
「うん!折角の御休みなんだし、プラプラとウィンドウショッピングにでも行こう!!さぁ、行くよ!!」
それだけ言うと、陽葵は恵の腕を掴むと陽脈調律で高専の山を一気に駆け降りる!!・・・恵を御姫様抱っこした状態で!!そんな陽葵の行動に慣れているのか恵は眉一つ動かさずに、そんな扱いを甘んじて受けている。
そして麓まで降りるとタクシーを捕まえて都心に着くと、陽葵はブラックカードで支払いを済ませてしまう。そしてタクシーから降りた二人は、ウィンドウショッピングを楽しみ始める。
「見て見て、恵君!!この人形さん、玉犬に似てないかな!?白と黒で、セットになってるし!!」
「そうですね。」
「買う?」
「・・・自分の金で買います。」
そう言うと、恵は人形を大事そうに持ち上げるとレジまでもっていってそれを購入する。そして、人形が入った紙袋をぶら下げる彼の顔は心なしか嬉しそうだった。
そうして、しばらく歩いていると突然二人の前にツッパリ頭をした、私服姿の男の子達が現れた。しかし、そんな彼等は二人・・・というより、恵の前に立つと深く御辞儀をする!!
「御疲れ様です!伏黒さん!!少々、御時間宜しいでしょうか!?」
そんな男の子達の登場に陽葵が首を傾げていると、恵は彼にツッパリ頭の男子達との関係を説明する。どうやら恵にボコボコにされ、その強さに惚れこんだ不良や半グレ達が勝手に恵を
「それで・・・?どうした?」
そう気怠そうに質問を投げかける恵に対し、ツッパリ頭の男子達は息を切らしながら説明する。
「実はB組の、佐藤って女が居るじゃないですか!!あいつが今、路地裏でヤベェ男共に絡まれてるんス!!」
「彼女さんとデート中のところ申し訳ないっスけど、今すぐに来てください!!」
「この人は彼女じゃねぇよ・・・。美空さん、すみませんけど行ってきます・・・。」
そんな彼の言葉にツッパリ頭のヤンキー達とはいえ、恵がちゃんと学生生活を送れて友達も作れていると安心した陽葵。そんな彼はニコニコ笑いながら恵の買い物袋を受け取り、それを了承する。
「大丈夫だよ。終わったら、連絡入れてね~。」
そんな言葉に頷きつつも不良男子達に連行された恵を見送った陽葵は、恵の持っていた買い物袋を持ちながらブラブラと色々な所を巡り始める。
そして数十分後・・・、桜並木が舞い散る場所を歩いていた陽葵。そんな彼の周りには人がそこまで居らず、絶好の花見スポットであった。
「フフッ、穴場発見って感じかな?」
そう言いながらも、桜並木をゆっくりと歩く陽葵。そんな桜の花弁が舞い散る中、耳に掛かったミディアムヘアのもみ上げを指でソッと下ろす陽葵。そんな彼の立ち姿は腕の良い絵師なら真っ先にデッサンするほどの、幻想的な儚さと可愛らしさを内包していた。
それを示すように、陽葵の周囲に居る数少ない花見客達は陽葵の方をチラチラと眺めてきていた。
そんな彼等の視線に気が付く事無く、柔らかな笑みを浮かべながら桜の舞い散る様を眺めていた陽葵。すると、そんな彼の後ろから二人分の人の気配がしたかと思うと、一つの声が陽葵に掛かった。
「そこの、可憐なる娘よ!!」
そんな声に、陽葵は反応一つせず桜の木をジッと見ている。決して、無視をしている訳ではない。後ろの声の主は、"娘"と言った・・・。つまり、男の自分の事を指しているのではないと思っていたのだ。
しかし、後ろから再び声が聞こえてくる。そんな声の主は、今度は的確に陽葵の身体的特徴を声に出して呼んできた。
「そこの娘よ!御主の事だ!!小麦色の髪の、そこの御主だ!!」
「え?僕?」
そう呆けた声を出した陽葵の目に映ったのは、項まで垂らした黒髪に金の瞳をした端正な顔立ちの偉丈夫であった。そんな彼の横には、眼帯を付けた白髪の少年も立っている。
「そうだ。余の名は、
「えっと・・・。美空陽葵です。」
そう反射的に名乗りながらも、陽葵は目の前に現れた男を注視する。そんな男の見た目は、確かに端正だ。だが、あまりにも整い過ぎていた。まるで、人ならざる者ではないように。
「陽葵とな!これはまた、名前まで可憐なのだな!!」
「え、えっと?あ、ありがとうございます?」
そう思いながらも、陽葵は玄士郎の正体を探り始める。そして、そんな彼の中に流れる僅かな呪力。それは、数ヶ月前に祓徐した堕ちた龍神とよく似ていたのだ。
「・・・龍神さん?」
そう聞こえるか聞こえないかの声で、ボソリと呟いた陽葵。しかし、そんな彼の声を拾ったのか玄士郎は驚きの声を上げる。
「何!?余の正体を、見破っただと!?」
「へ!?あ、当たってた!?」
「・・・っ!玄士郎様の正体を見破るとは、貴様・・・!何者だ!」
そう驚く陽葵だったが、突如彼の目と鼻の先に剣の切っ先が現れる!!眼帯を付けた少年の前腕が、一本の白刃へと変化したのだ!!しかし、そんな剣先を陽葵は指で挟んで止めてしまう。
「な、なんか・・・。武器を指で挟んで止めるなんて、物凄いデジャブ・・・。これって、体の一部なの?」
「何・・・!?この私の突きを、二指で止めただと!?」
そう言いながら冷静沈着そうな顔に、一瞬だけ驚きの顔を覗かせる少年。そんな少年に対し、陽葵は彼の力を分析し始める。
「君・・・、何者?視た感じ、非術師並みの呪力しかない・・・。でも、術式みたいなの使ってるし・・・。コガラシ君と同じ、霊能力者?それとも、ゆらぎ荘の皆みたいな妖怪?」
「私を、妖怪などと同列に並べるな。私の名は、神刀朧。玄士郎様の父親となる、先代黒龍神様の尾から生まれた神刀だ。」
そんな朧と陽葵の様子を見ていた玄士郎だったが、陽葵の方を見ながら興味深げな顔を覗かせる。
「ほぅ!!可憐な顔立ちに、華奢な体躯に似合わぬその反応速度!!天晴れだ!!貴様の様な者こそ、この玄士郎の伴侶に相応しい!!」
「え・・・?い、今なんて?」
「美空陽葵!!御主を、余の妻に娶りたい!!」
そんな言葉に、またまた簡易無量空処状態に陥ってしまう陽葵。しかし、ハッと我に返るとしらばっくれるかのように嘘を吐く。
「あの・・・、僕は取るに足らない一般人ですよー。」
「虚を申し立てるな!御主程の、圧倒的な呪力を持つ術師は見た事がない!もはや御主は、余の妻となる為に生まれてきたと言っても過言ではないぞ!さぁ!余と婚姻を結び、
「なっ・・・!白昼堂々と、何を仰ってるんですか!?それに、僕は男ですよ!?」
「それでも構わん!余は、衆道文化にも理解は示している!」
「あの、取り敢えず話を聞いてください!」
「話などする必要は無い!余は、御主を愛しているのだからな!」
そう話を続ける玄士郎に、陽葵は頭の中にとある人物を連想させる。
(あ・・・、既視感があると思ったら・・・。人の話を聞かないこの感じ・・・、五条さんに似てるんだ。)
「さぁ!余と夫婦に・・・ぬぉぉぉっ!?」
そう困惑する陽葵の腕を玄士郎が掴んだ瞬間である!!彼の身体から、防衛反応の様に途轍もない呪力が立ち上り玄士郎を吹っ飛ばしてしまう!!
「あぁっ!す、すみません!!ど、どうしよう!非術師に、呪力で攻撃しちゃった!」
そして吹き飛ばされた玄士郎に駆け寄ると、僅かに額から血を流す彼の傷を反転術式で治し始める。すると、傷が治った玄士郎は更に笑うと陽葵に求婚を続ける。
「フハハハ!良い!!良いぞ!!その余の額に血を流させる強さに、仏の様な優しさ!それでこそ、余の妻に相応しい!!」
「ですから!僕は男なんですよ!?」
「この際、一向に構わん!!余の力で、御主を
「僕の意志は!?」
そうツッコミながらも、そろそろ何とかして穏便に済ませたいと考える陽葵。そんな彼のもとに、二人分の声が掛かったのだ!!
「五条さん!見つけました、あそこです!!」
「よし!恵!!フォーメーションB!!」
「フォーメーションBって、何ですか!!」
そんな声に三人が振り向くと、そこには陽葵目掛けて走って来る五条と五条を追いかける恵が居た。そして、そんな五条は陽葵に飛び掛かって来たのだ!!オカマ口調で・・・。
「ちょっと、陽葵ぃ!!誰よその男ぉー!!アタシの事は、遊びだったっていうのぉー!?」
「五条さん!?」
そんなふざけた事を
「貴様・・・!!玄士郎様の、邪魔立てをするな!!」
そう言いながら、五条目掛けて刀を振り下ろす朧。しかし、自身が危険と認識するものが自身に近づく程、速度が低速化し接触出来なくさせる術式・・・"無下限呪術"を持つ五条には、通用しない!
刀は五条の肉に到達する事無く段々と遅くなり、遂には静止してしまう!!
「何っ・・・!?まさか、防御特化型の呪術か!?」
そう言いながら、驚愕する朧に向かって更にオカマ口調で話し続ける五条。そこには、強者の余裕があった。
「んまっ!いきなり刀を振るうなんて、なんて野蛮な子なのかしら!?うちの陽葵ちゃんの、情操教育に悪すぎるわっ!気安く触らないでもらえるかしら!?泥棒猫ちゃん達ぃ!!・・・恵ちゃんと陽葵ちゃんは、これから私と一緒にピアノの御稽古なのよ・・・。さ、帰るわよ!恵ちゃんに陽葵ちゃん!!今日こそ、猫踏んじゃったの連弾をマスターして貰うわん。」
「五条さん・・・?どうしたんですか、その口調は・・・?」
「いや・・・。恋人設定なのか、息子設定なのかハッキリさせて下さいよ。」
そう呆れる陽葵と恵に、バチコーンとウィンクをする五条。そんな舐め腐った態度に、朧は怒りを覚えたのか攻撃の手を速める!
「貴様・・・!!見くびるな!!」
そう言うと、縦横無尽に途轍もない速度で刀の斬撃を繰り出し続ける朧。しかし、最強の術師こと五条悟の前では焼け石に水である。そんな攻撃に欠伸をしながら、普通の口調に戻った五条は呑気にぼやき始める。
「もー。すーぐ中学で喧嘩してくる恵然り、最近の若人って血気盛んだよねぇ?そう思わない?陽葵?」
「そ、ソウデスネー。それにしても、どうして此処に?どうやって僕の居場所が分かったんですか?」
「そんなの、決まってるじゃーん。恵から"全然陽葵さんに、連絡が付かない"ってメールが来たからだよ。そんで、陽葵のスマホに付けてるGPSを追ってきたんだ。」
「GPSを付けてたんですか?初耳なんですが・・・?」
そう言いながら、五条の無下限の中で朧の斬撃には目もくれず漫才染みた会話をする五条と陽葵。そんな朧を見かねたのか、玄士郎は彼に指示を出す。
「もうよいぞ!!そこまでにしろ朧!!」
「ですが・・・!!」
「その白髪の男は、御主が敵う相手ではない!!その白髪に、まるで視界を隠すかの如く掛けられた漆黒の
そうやけに詳しく話す玄士郎に、五条は驚く事もせずに薄ら笑いを浮かべながら軽薄な雰囲気で彼に話し掛ける。
「へぇ、僕の事を知ってるみたいだね。それにしても、一個聞いても良い?」
「何だ!!申してみろ!!」
「なんで、陽葵の事を攫おうとしたわけ?」
「ふん!!愚問だな!!陽葵を、余の妻に
「仮に娶ったとして・・・。その後はどうするつもりだった?」
「決まっておろう!!その者の身体を
次の瞬間、五条の全身から呪力が立ち上り始める。そして、フォーメーションBを展開しふざけていたときとは打って変わって、ガチめのトーンで話し始める。
「あっそ。まぁどのみち、陽葵は御前なんかにはやらないけどね。」
「何!?」
「若人から青春を奪うなんて、許されていないんだよ。御前が、神だろうが何だろうがね。」
「・・・フン、まぁ良いだろう。」
そう言うと、玄士郎は何かを陽葵のもとへと放り投げる。それは奇妙な形をした、金色の
「これは・・・?」
「これは、我が龍雅湖に繋がる門を開く為の神器だ!!気が変わり、余の妻に成ると決めた暁にはそれを指に叩くと良い!!虚空に門が開き、御主を龍雅湖へと誘ってくれるだろうからな!!では、行くぞ朧!!」
「はい、玄士郎様・・・。」
それだけ言い残すと、朧が腕を振る事で出来た黒いワープゲートの様なものを潜ると二人はその場から消えてしまったのだ。そんな様子に、陽葵がホッとしていると五条が彼を見下ろす。
「陽葵、怪我は無い?」
「はい・・・、助かりました。本来なら、僕が何とかすべきだったんですが・・・。」
「まぁ・・・確かに陽葵ならあの程度の男、ボッコボコに出来るだろうしね。」
「でも、悪い人じゃなさそうでしたよ?ちょっと、人の御話を聞かないだけで・・・。」
そう言いながら玄士郎を庇う陽葵に、後ろで控えていた恵が溜息を吐きながらツッコミを入れる。
「誘拐婚をする様な奴が、良い人な訳無いじゃないですか。高専に帰ったら、塩でも撒きましょう。」
「あぅ・・・。恵君が辛辣・・・。」
「まぁ、取り敢えず何事も無かったからよしとしよう・・・。それで、その神器だっけ?それどうするつもり?」
そう尋ねる五条に陽葵は、自分の手の上に乗った金の棒状の神具と呼ばれた物を指で摘まむと、天に
「・・・取り敢えず、保管しておきます。何かに使えるかもしれないので・・・。」
「そっか・・・。じゃっ!久しぶりに陽葵も帰って来た事だし、久しぶりにどっか晩御飯を食べにいこっか!!陽葵の高校生活も、詳しく聞きたいしね!!恵~!津美紀に連絡して!今日は、回らない御寿司の食べ放題だからね!!」
「分かりました。・・・もしもし、津美紀か?・・・あぁ、五条さんの金で寿司に行くぞ。美空さんも、久しぶりに帰ってきたからな。」
そう言いながら、姉に連絡を始める恵。そんな彼を見ながら陽葵は五条の横で、玄士郎から渡された神具をジッと見つめると懐にしまい込んだのだった。
なお、寿司屋で五条から『僕も学生時代に硝子と傑と一緒に、任務でゆらぎ荘に行った事があるんだよー。仲居さん、元気だったー?』という、とんでも情報を聞き陽葵が驚愕したのは別の御話・・・。