ゆらぎ荘の呪術師君   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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飲んだくれ術師と、眼鏡っ娘が登場


合同任務開始

狭霧からの依頼を受けた陽葵とコガラシであったが・・・。そんな彼等は私服姿の格好で、公園前で待ち合わせをしていた。

 

 

「なぁ、陽葵・・・。」

 

 

「ん?どうしたの?」

 

 

「今回の一件だけどさ、俺って必要か?霊的存在は狭霧で対処できるし、呪霊は御前がやればよくないか?」

 

 

「念には念を入れてだよ。それに、第二公園と噴水広場っていう二箇所で発生してるらしいし・・・。人手はあるに越した事は無いでしょ?それに、おじ様にも御願いしてるから・・・。」

 

 

「おじ様?」

 

 

そう陽葵とコガラシが話していると、彼等の目の前に大きな黒塗りの車が停まった。そう、伊地知清隆が運転する高専の車だ。そして、その車からは伊地知ともう二人・・・。白髪交じりの髪に特徴的な髭の男性と、緑掛かった黒髪をポニーテールにして眼鏡を掛け、オフショルダーにロングスカートを履いた顰めっ面の女の子が降りてきた。

 

 

「着きました、禪院直毘人術師。禪院真希術師。」

 

 

「うぁぁあ・・・。ようやくか、やはり車ん中は狭くて敵わんわ。術式を使って来た方が、速かった気がするがな。」

 

 

「んな事したら、非術師の目に付くだろうが!御三家当主が、規定を破ろうとしてんじゃねぇよ!!」

 

 

そんな両者の前に陽葵は駆け寄ると、ぺこりと頭を下げて挨拶をする事にする。そんな彼に対し、直毘人と呼ばれた初老の男は豪快に笑い始める。

 

 

「御久し振りです!直毘人おじ様!!」

 

 

「美空の!!上からの任務で、地方に飛ばされたと聞いていたが息災だったか!?」

 

 

「はい!それにしても、真希ちゃんも連れて来たんですか?高専生でもないのに・・・。」

 

 

「うむ!!なんでも今回の一件・・・うら若き男と女が居なければ、呪霊も集まらんのだろう?ならば、こやつを連れて来るのは道理というものよ!!」

 

 

そんな直毘人の隣で、薙刀袋を背中に担いだままブスッとした表情をしている眼鏡姿の少女。そんな彼女にも、陽葵は朗らかに挨拶をする。

 

 

「久しぶり真希ちゃん!!」

 

 

「あぁ・・・、久しぶりだな・・・。」

 

 

「三年ぶりくらいかな?前に見た時より、大きくなったねー。」

 

 

「うっせぇよ!久しぶりに会った、親戚の叔母さんか!!」

 

 

「今回の任務は大丈夫?真希ちゃん、まだ高専生じゃないけど・・・。」

 

 

「舐めんな。せいぜい出たとしても、三級程度の雑魚だろ?これでも躯倶留(くくる)*1に居たんだ。戦闘慣れはしてるっつーの。」

 

 

そう言い合いを続けている真希と呼ばれた少女と陽葵を横目に、直毘人はコガラシの方へと目を向けると興味深げにしげしげと眺め始める。

 

 

「ほぅ・・・。貴様が、術師に非ずとも妖を祓える霊能力者か?」

 

 

「お、おっす!!冬空コガラシっス!!」

 

 

「ぶわっはっはっ!!成程成程!!たしかに、それなりの気迫というものが感じられるわ!!」

 

 

そう酒臭い息を吐きながら、コガラシの肩をバシバシと叩く直毘人にコガラシは眉を寄せながらも愛想笑いを浮かべる。そんな直毘人の首根っこを真希は引っ掴むと、グイッと引っ張ってコガラシから引き離す。

 

 

「非術師にダル絡みしてんじゃねーよ。おら、さっさと行くぞ。」

 

 

そんな真希の言葉に頷いた陽葵とコガラシは、狭霧との待ち合わせ場所に移動する。そして、件の場に到着した四人だが・・・。

 

 

「来ないね・・・。雨野さん。」

 

 

「一応、此処で待ち合わせの筈なんだが・・・。」

 

 

そんな二人の言葉に、やる気のなさそうな顔をしながら直毘人は大欠伸をして愚痴を溢していたが真希に軽く脛を蹴っ飛ばされる。

 

 

「まさか、此処で待ち続けろと言うのか?ふぁぁ・・・。老体には堪えるぞ・・・。」

 

 

「やる気がねぇなら帰れよ。つーか、何で付いてきた?」

 

 

「呪霊と妖怪の混合被害、これ以上に面白そうな事が他にあるか?因みにワシは戦わんからな。御前が生き残ろうと、死のうと知った事では無いし。せいぜい死なんように、頑張れよ真希。」

 

 

「マジで、何で付いてきたんだ!?このジジイ!?」

 

 

そんな二人の言い争いにコガラシが戸惑いながら陽葵の方を向いてきたが、禪院家を訪れる度に真希と直毘人の言い合い合戦を見てきた陽葵は『好きに言わせ合ってた方が良いよ』とでも言う様に首を振る。

 

 

「それにしても、どうしてゆらぎ荘で集合じゃなかったのかな?」

 

 

「さぁ?なんか準備でもしてんのか?」

 

 

そう話し合っていると、彼等四人から少し離れた場所から声が聞こえてきた。そんな声の方向に顔を向けると、そこでは二人の男が女の子に絡まれている光景だった。

 

 

「ねっ、ねぇキミ可愛いねぇ~!」

 

 

「俺等と遊ばない!?」

 

 

「他に約束あるので・・・。」

 

 

そんな男女間のトラブルに、周囲の人間は見て見ぬふりをするばかり。そんな周囲の反応に、退屈そうに欠伸をしながらゲップをする直毘人以外の三人は顔を見合わせると駆け付ける!!

 

 

「ちょっとちょっと、何してるんですか?」

 

 

「おい!離してやれ!!」

 

 

「おい!その子困って・・・!!」

 

 

そう言いながら、男女間のいざこざの仲裁に入ろうとした三人だったがそんな彼等の目の前で信じられない事が起こった!!なんと、女の子が男の一人を投げ飛ばしたのだ!!

 

 

「馴れ馴れしく触るな!!」

 

 

そんな鮮やかな制圧術に、陽葵とコガラシは目を丸くしポカーンと佇む。そして真希も女の子の立ち姿から格闘術を修めていると気付いていたものの、『さっきまでの困ってそうな御淑やかさは何処に行ったんだ?』とでも言いたげな怪訝そうな顔をしていた。

 

 

そして、倒れた男に片脚を乗っけている少女・・・。それは黒いタイツにミニスカートを履き、フワリとした柔らかい服を着た狭霧であった!!そんな彼女は、陽葵達の方を見ると声を掛ける。

 

 

「雨野さん!?」

 

 

「来たか、美空陽葵に冬空コガラシ・・・。それから、そこにいるのは・・・。」

 

 

そう言いながら、直毘人と真希の方へ目線を遣りながら怪訝そうな顔をする狭霧。そんな彼女に、陽葵は軽く説明を入れる。

 

 

「この人達は、僕の知り合いの同業者だよ。禪院真希ちゃんと、禪院直毘人さん。二人共、業界の名門である禪院家の出だから実力は折り紙付きだよ。」

 

 

そんな陽葵の説明に狭霧は真希と直毘人の方を見ると、礼儀正しく頭を下げて挨拶をする。

 

 

「そうか・・・。始めまして、雨野狭霧です。此度は、御協力頂きまして感謝申し上げます。」

 

 

「・・・禪院真希です。本日は宜しくお願い致します。」

 

 

そんな真希に改めて会釈をすると、狭霧は直毘人にも声を掛けようとしたのだが『呪術師で無い女なんぞに、興味も抱かんわ』とでも言いたげに腰にぶら下げていた酒が入った瓢箪(ひょうたん)を飲みながら大欠伸をする直毘人。そんな彼に代わって真希は頭を下げる。

 

 

「ウチのジジイが、申し訳ありません。あの酔っ払いは、置物とでも思っててください。」

 

 

「な、何故ですか・・・?」

 

 

しかし、狭霧は知る由もない。呪術界が、どれだけ腐っており録でもない人間が多く在籍しているのかを。そんな中、直毘人は緊張感の欠片も無い様な声を出す。

 

 

「おーい!真希!酒!!」

 

 

「・・・ああいったタイプのクズなんです。構ってたら、こっちの精神が持ちませんので。」

 

 

そう眉間の皺を揉みながら、特大の溜息を吐きつつに話す真希に大体の事情を察したのか狭霧は少し同情するような眼差しを向ける。

 

 

「・・・分かりました。」

 

 

そんな二人の顔合わせを確認すると、陽葵は場を締めくくるようにパンパンと手を叩いて号令を掛ける。

 

 

「それじゃあ、非術師に聞かれるのも(はばか)られるし・・・。伊地知さんの車の中で話そうか。」

 

 

そんな彼の言葉に、四人は頷くと伊地知の車に一旦乗りこんで御互いに作戦をすり合わせる事にする。そして、陽葵は紙の地図を広げると話し始める。

 

 

「今回の呪霊と妖怪による、被害現場なんだけど・・・。この地図に乗ってる、第二公園と噴水広場。どちらも共通点は、男女の逢引きによく使われてる場所だね。」

 

 

「あぁ。そして、夜間に訪れた人が黒い霧に襲われる・・・。」

 

 

そんな陽葵と狭霧の解説に、直毘人が合点の言ったようにケラケラ笑いながら話し始める。そして、そんな直毘人に頷くように陽葵も説明を続ける。

 

 

「ふむ・・・。逢引きに使われているという事は、呪霊の発生原因は良縁に見合えない非術師共が生み出したものと言ったところか。」

 

 

「かもしれませんね。それか・・・。」

 

 

「先に妖怪とやらの、被害が発生。それによる畏怖の感情が、呪霊を生み出して引き寄せたってところだろ。」

 

 

そんな真希の言葉に続くように、コガラシが何気ない疑問を投げ飛ばす。そんなコガラシに、真希と直毘人も首を傾げる。

 

 

「そういや、霧に呑み込まれた奴はどうなったんだ?」

 

 

「確かに・・・。生得領域に取り込まれたか?」

 

 

そんなコガラシと真希の言葉に、誅魔忍の仲間から情報共有されていた狭霧は慎重に言葉を選びながら話し始める。

 

 

「・・・全裸にされた。」

 

 

「は?なんて?」

 

 

「全裸にされたと言ってるんだ!!」

 

 

そんな彼女の言葉に、車内の空気に沈黙が訪れる。そして、そんな沈黙を突き破ったのは直毘人の酒臭い息を含んだ笑い声であった!!

 

 

「ブワハッハッハッ!!身包みを剥がす妖だと!?なんとも滑稽なものだな!!そんな妖に協力している呪霊も、程度が知れるというものだな!!」

 

 

そうゲラゲラ笑いながら、車の座席をバンバン叩く直毘人を横目に若年者四人組は作戦会議を続ける事にする。

 

 

「な、何で服を・・・?」

 

 

そう尋ねてくるコガラシに対して、狭霧は妖怪の特性を説明し始める。なんでも、フェロモンの染み付いた各種繊維を好んで食らう新種の妖怪のようだ。

 

 

「替えの服が必要って、こういう事かよ・・・。なんつーか、妖怪にも色々いるんだな・・・。」

 

 

「・・・だ、だね。」

 

 

そう言いながら顔を赤らめる陽葵と、遠い目をする真希の呪術師コンビ。そんな中、気まずい沈黙を打ち破るかのようにコガラシが改めて確認を取り始める。

 

 

「つまり、今回俺等と・・・禪院だったっけ?」

 

 

「真希で良い。こっちのジジイも禪院だから、ややこしく成っちまうだろ。」

 

 

そう言いながらも、何処か嫌そうに顰めっ面をする真希にコガラシは戸惑いつつも頷くと名前で呼ぶ事にする。

 

 

「分かった。俺等は、二人一組になって2ヶ所の公園に居る妖怪と呪霊を祓えばいいんだな?」

 

 

「そういう事!一応ペア割りなんだけど、呪術師と霊能力者が一組になって動く事になるからね。僕と雨野さんペアは第二公園。コガラシ君と真希ちゃんペアは、噴水公園で動いて貰うよ。それから、真希ちゃんはまだ等級が付けられてないから・・・。単独任務に成らない為の名目として、直毘人おじ様も一応付いて来る事になるけど・・・。」

 

 

「構いやしねぇよ。野郎に裸を見られたところで今更だし、何とも思わねぇからな。」

 

 

そう何の躊躇(ためら)いも無くサラッと言う真希に、何処か闇を感じたコガラシと狭霧ではあったが取り敢えず突っ込む事無く話を続ける事にする。

 

 

「よ、よし!それじゃあ、その作戦で行くか!!」

 

 

「そうだね!!皆、通信用のトランシーバーは持ったね!それじゃあ、それぞれ持ち場に向かおう!!」

 

 

そう言うと、現在車が停まっている場所から近い第二公園ペアの狭霧と陽葵は車を出て徒歩で向かい始める。

 

 

そして、コガラシと真希ペアは直毘人(酔っ払い)と伊地知を乗せたまま、車で噴水公園へと向かったのだった・・・。

*1
呪術界の御三家である禪院家にある、術式を持たない戦闘員集団




先日「浄天慈裁」への、対抗策に関する質問をいただきました。

「浄天慈裁」は「無量空処」の様に当たればほぼ勝ちの領域。ですが対抗策や対抗できる存在は有るには有り、主に下の四つです。

①領域が展開されてからは会話以外の行動不能の為、陽葵が領域を展開する前に予め簡易領域の類を展開する
(ただし、陽葵との実力差がある場合剥がされる可能性も)
②秤金次のような、押し合いに強い領域を使う術師
③シンプルに圧倒的呪力量で押し返す
④伏黒甚爾などの、呪力ゼロのフィジカルギフテッド(魂を持たない無機物と判定される為)

陽葵自身も領域を使わずとも術式と膨大な呪力量で大抵圧倒できるので、わざわざ領域展開をして術式を使えなくなったり呪力を対象消費するデメリットは背負いたくないと考えている。

その為、領域展開は滅多に使わない。
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