ゆらぎ荘の呪術師君   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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前話、少し修正しました。
オリキャラ出ますけど、物語には無関係です


入学式と、理事長先生に挨拶

夜の帳に覆われていた空が白み始めた早朝四時頃、枕元に置いていたスマホのアラーム音と共に陽葵はゆっくり目を覚ますと大きく背伸びをしてストレッチをする。

 

 

「うーん、よく寝た・・・。あ、そうだ・・・。今日から、学校が始まるんだった。」

 

 

そう呟きながら、眠気から完全に覚醒すると陽葵は階段を下りて共有スペースに向かう。するとそこには、朝から元気に掃除をするちとせが居た。

 

 

「あら。陽葵さん、おはようございます。よく眠れましたか?」

 

 

「仲居さん、おはよう御座います!!よく眠れましたよ、御布団もフカフカで最高でした!!」

 

 

「フフッ、それは何よりです。朝は御強い方なんですか?」

 

 

「朝が強いと言いますより・・・。こういった時間帯に起きるのに、慣れている感じですかね。そもそも、呪術機関って結構なブラックですから・・・。夜遅くに眠っていたところを、任務だなんだのと言われて叩き起こされるなんてザラですから。」

 

 

そう困ったように笑う陽葵に対して、ちとせも困ったように眉を八の字にしながら苦笑いをする。

 

 

「私も幾度か、呪術師と呼ばれる方に御会いした事がありますが・・・。なんと言いますか、大変そうですね・・・。」

 

 

「えぇ。でも、僕はあんまり睡眠が必要無い体質なので、そこまで苦にならないんです。術式の影響で、短時間睡眠でも筋繊維損傷や神経疲労を癒す事が出来るので。」

 

 

そう言いながら苦笑いをする陽葵であったが、何かを思い出したようにポンと手を叩くとちとせに向かってとある御願いをする。

 

 

「あの、ちとせさん。一つお願いがあるんですけど・・・。」

 

 

「どうしました?」

 

 

「少しだけ、台所を御借りしても良いですか?今日の御弁当を作りたくって。」

 

 

そんな遠慮しがちに放たれた陽葵の言葉に目をパチクリさせると、ちとせはニコリと柔らかい笑みでそれを了承する。

 

 

「構いませんよ~。それにしても、陽葵さんは御料理が得意なんですか?」

 

 

「はい!昔から、料理は結構得意で・・・。昨日、大型商業施設で買ってきた食材が有るのでそれを使いますね。あの・・・御米だけ少しお借りしても良いですか?御金はその分払いますし、御借りした調理器具は後で洗って干しておきますので・・・。」

 

 

「えぇ、大丈夫ですよ。調味料も自由に使ってくれて構いませんので。それでは、私は御掃除をしてきますので火元にだけ注意してくださいね。」

 

 

「分かりました!」

 

 

そう言うと、陽葵は厨房の中に入ると昨日スーパーで買っておいた材料を取り出して料理を始める。

 

 

そんな彼の目の前にあるのは、鯖が一切れに卵が2つ。赤ウィンナーに枝豆とブロッコリー。最後に真っ赤な林檎が1つ転がっており、調味料として未開封の蜂蜜が置かれていた。

 

 

まず陽葵は初めに卵をパカッと割ると、その中にマヨネーズと白だしを入れて卵の白身を切るように掻き混ぜる。そして混ざり終わった卵を温めておいたフライパンに少量流し入れると、クルクルと巻いていきそれを数回繰り返して卵焼きを完成させ、別皿に盛って冷ましておく。

 

 

卵を冷やしている間にブロッコリーと枝豆を塩茹でし、卵焼きに使ったフライパンに端っこに切れ目を入れた赤ウィンナーを並べていく。そうして完成したタコさんウィンナーを、これまた卵焼きが乗っている別皿に移しまた冷ます。

 

 

次に鯖をフライパンに敷いて、皮がパリッとするまで蒸して焼き上げる。

 

 

そうこうしていると、料理をしている陽葵の足元に何者かが現れた気配がした。そんな気配にチラリと足元を見ると、そこにはチョコンと床に座った夜々が居た。

 

 

「えっと・・・。夜々ちゃん、おはよう?」

 

 

「おはよう・・・陽葵。・・・良い匂いする。」

 

 

「うん、御弁当作ってたからねー。夜々ちゃん、御腹空いてる?」

 

 

「うん・・・。」

 

 

「それじゃあ、ちょっとだけ味見してくれないかな?味はもちろん保証するよ?」

 

 

そう言いながら、夜々の口元に冷ました鯖を持っていくと。彼女はそれをパクリと食べ、モグモグと咀嚼し飲み込むと目を輝かせる。

 

 

「美味しい・・・!」

 

 

「良かった〜。味見してくれてありがとうねー。」

 

 

そう言うと、陽葵はリンゴをカットし変色しないように蜂蜜を溶かした水に晒しておく。

 

 

リンゴを晒している間に陽葵は御櫃(おひつ)から握り飯を作る分だけの御飯を拝借すると、ボウルの中に入れ塩茹でした枝豆と一緒に掻き混ぜる。

 

 

そして、塩水に手を浸し熱々の枝豆おむすびを握りサランラップに包むと、これまたスーパーで買ってきた御弁当箱に詰め込んでいく。

 

 

そうしてフーッと一息ついた彼の目の前には、栄養バランス抜群の彩り豊かな御弁当箱が完成していた。

 

 

「よし。我ながら、良い出来かも。コガラシ君は・・・、御弁当どうするんだろ?一応、予備用の御弁当箱も買っておいたし、詰めててあげよっかな。」

 

 

そう言うと陽葵は、昨日買っておいた予備用の弁当箱にも詰め込み終わると使用した食器を洗って水を切り、ちとせが指定した場所に干しておく事にする。

 

 

それが終わると、陽葵は自室へと戻り制服に着替えると、鏡棚の前で保湿の為のフェイスクリームを塗ったり、爪に透明のクリアネイルを施し身支度を始める。といっても、派手過ぎないナチュラルメイクなのだが・・・。

 

 

そして、最後にヘアアイロンを掛けると再び階下に降りる。するとそこには、既にコガラシも降りてきており朝食をいただいていた。

 

 

「あ。コガラシ君、起きてたんだ。おはよー。」

 

 

「おう、おはよう。随分早く起きてたみてぇだけど、何やってたんだ?」

 

 

「御弁当作ってたんだ。一応、コガラシ君の分も作ったんだけど・・・。良かったら要る?」

 

 

「良いのか!?サンキューな!!」

 

 

そう礼を言うコガラシにニコニコしていると、朝御飯を食べる陽葵のもとにまたしても夜々やって来る。そんな彼女も、陽葵たちと同様に湯煙高校の制服を着ていた。とはいえ、制服が少し違うので恐らくは中等部のものだろう。

 

 

「えっと・・・。夜々ちゃん、御飯中だから座って食べようね?」

 

 

そう困ったように笑いながらやんわりと指摘する陽葵だったが、夜々は陽葵の隣にぴったりとくっついてくる。

 

 

「陽葵の御飯、美味しかった・・・。今度、また夜々と猫神様に作って。」

 

 

「え?あ、うん。良いよ。・・・そういえば雨野さんを見かけないけど、何処に行っちゃったんだろ・・・。」

 

 

そう言いながら、黙々と朝御飯を食べていた陽葵とコガラシ。そんな彼等は食事を終えるとスクールバッグを持って、ちとせに『行ってきます』の挨拶をするとゆらぎ荘の玄関を出て、高校目掛けて走り出したのだった・・・。

 

 

そうして数十分後、陽葵とコガラシは桜舞い散る立派な学校の校門前にたたずんでいた。その学校こそ、今日から二人が通う事になる"湯煙高校"である。

 

 

「とうとう着いたね・・・!コガラシ君!」

 

 

「あぁ、湯煙高校・・・。ここが、今日から通う俺達の学校・・・!!」

 

 

「楽しみだね!」

 

 

「あぁ!今日此処から、俺達の真の青春が始まるんだ!!」

 

 

そう言い合いながら、人生初の学生生活にテンションが上がっている陽葵。そして小中学生の頃とは違い、霊能力が使えるようになって平穏な学生生活を送れることに胸を膨らますコガラシだったが・・・。

 

 

「わ~!此処が、コガラシさんと陽葵さんの通う学校なんですね~。」

 

 

そんな声に二人が驚いて振り向くと、そこにはフヨフヨと宙に浮かぶ女の子・・・。ゆらぎ荘の地縛霊である、湯ノ花幽奈が居たのだ。そんな彼女の登場に、陽葵は驚きながらも周囲に聞こえない程度の声量で話し掛ける。

 

 

「うわっ!び、びっくりした!えっと・・・。ゆ、幽奈さんだよね?」

 

 

「はい!こうして御話しするのは、初めてですよね!!初めまして陽葵さん、私は湯ノ花幽奈って言います!今後とも宜しくお願いしますね!」

 

 

「う、うん。よろしくね。」

 

 

そう言い合いながら、初めましての挨拶をする二人を見ていたコガラシが我に返ると、彼も同様に小声で幽奈に質問を投げ掛ける。

 

 

「ゆ・・・幽奈!?どうして此処に・・・!?」

 

 

「仲居さんに聞いたんです。陽葵さんに初めましての御挨拶がしたかったのと、コガラシさんと陽葵さんの入学式の御祝いがしたくて!!・・・御迷惑でしたか?」

 

 

そう言いながらも、何の事前連絡も無しに訪れた事に対してオズオズと詫びを入れる幽奈だったが、そんな彼女にコガラシは頭を掻き、陽葵は苦笑いをしつつもフォローを入れる。

 

 

「いや。迷惑っつーか、誰かに見られたら・・・。」

 

 

「まぁまぁ、幽奈さんも悪気があったわけじゃないし。来ちゃったものはしょうがない・・・。」

 

 

そう話していると、陽葵とコガラシ同様に入学式に来たであろう学生が幽奈にぶつかりそうになったのだが、幽体である幽奈には影響はなくスルリとすり抜ける。そんな幽奈の体質に、若干驚きつつも改めて陽葵は目の前にいる女の子が生者ではない事を確認する。

 

 

(改めて考えるとすごいよね・・・。普通死んじゃったら、禍呪怨霊に成るのが当たり前なのに・・・。此処まで自我を保ってられるの・・・。)

 

 

そう感慨深そうに幽奈を見る陽葵に、彼女は心配そうに彼の顔を覗き込む。

 

 

「陽葵さん、大丈夫ですか?」

 

 

「あ、うん。大丈夫だよ。ところで幽奈さん、一つ悪いんだけど御願いしても良い?」

 

 

「どうしました?」

 

 

「あのね、学校に入ったら極力御話しするときには気を付けてね。僕達は幽奈さんが見えるけど、他の人達は幽奈さんの事が見えないかもしれないからね。人通りの多い所で御話しなんてしたら、僕もコガラシ君も何もない所に話し掛けるイタい人に成っちゃうからね。」

 

 

「そ、それもそうですね!気を付けます!!」

 

 

そう元気よく返事をする幽奈に微笑むと、一応コガラシにも幽奈から話し掛けられた際は小声で返答するように忠告する。

 

 

その忠告にコガラシからも了承を得ると、陽葵とコガラシと幽奈の三人は入学式が行われる体育館に向かい、校長先生の有難い長話や、在校生の歓迎の言葉や新入生代表の決意表明に耳を傾け・・・。

 

 

それらが終わると、三人は教室に向かって・・・。はおらず、陽葵だけは理事長室に向かっていた。何故なら、陽葵は呪術高専を通して潜入任務という名目で来ている以上、今回の窓である湯煙高校の理事長に挨拶をする義務があるからである。

 

 

そうして、理事長室に辿り着いた陽葵はコンコンとノックをすると理事長に迎え入れられる。そして、陽葵は理事長と二人きりになると彼女に挨拶をする。

 

 

「御初に御目に掛かります。都立呪術高専および、呪術総監部の命により参りました。特別特級術師の、美空陽葵と申します。宜しくお願い致します。」

 

 

「こちらこそ初めまして。私は湯煙高校の理事長を務めさせていただいております、春野羽奈と申します。」

 

 

そう名乗った理事長に対して、陽葵は再び丁寧に御辞儀をし返すと改めて事情を説明する。最近この付近で、呪詛師や呪霊による被害が頻発している事や、呪術師の人手が足りていないので今年からちょうど高校生になる特級術師である自分が配属された事を事細やかに。

 

 

「・・・という事ですので、校内周辺はもちろん、学校内で仮に呪術的被害が発生した場合には迅速にこちら側で対応させていただきます。宜しいでしょうか?」

 

 

「はい、もちろんです!まさか、こちら側としても特級術師様の御手を借りる事が出来るとは思わなく・・・。本当にありがとうございます。」

 

 

「いえいえ、仕事ですので。では、これにて失礼いたしますね。」

 

 

そう挨拶をすると、陽葵は自分の振り分けられているクラス表を確認しに行くと自分の名前が書いてあるクラスを発見する。

 

 

「あ、僕は一年四組なんだ。というか・・・学校って、クラス分けされてるんだね。五条先生曰く高専には、クラス分けなんて概念は無いっぽいけど・・・。人数の問題とか?高専は、一学年が多くても五人程度らしいし・・・。うーん・・・ま!いっか!!」

 

 

そう独り言を言いながら、いよいよ始まる学校生活に胸を躍らせる陽葵。そんな彼は、自分のクラスの教室に到着すると律儀にノックしてから入室する。

 

 

「失礼しまーす・・・。え?な、何この状況・・・。」

 

 

そう言いながら引き戸を開けた彼だったが・・・。目の前に現れた光景に、ポカーンとする。その光景とは、先程まで一緒に居たはずのコガラシが何故かクラスメイト達にドン引かれている様子だった。

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