さて・・・。理事長室から自身がこれから学業に励む教室へと向かい、意気揚々と入ろうとした彼だったが・・・。そんな彼のいる教室では、コガラシが顔を真っ青にしており、彼の目の前ではオレンジ髪のショートヘアの女の子が怒りに満ちた顔を真っ赤にしていた。
「さいってー・・・。」
そうショートヘアの女の子が呟いた瞬間、教室中が騒めきに包まれる。その騒めきの内容は、コガラシに対する侮蔑や軽蔑する様なものだった。
「おい、アイツいきなり千紗希ちゃんのスカート捲ったってよ!!」
「えー!?千紗希ちゃん、可愛そう!!」
「あぁ!?ふざけんなよ!!」
「誰だあの野郎!!」
そんな怒りの声が響く中、陽葵はコガラシの方へと駆け寄ると彼に対して質問を投げ掛ける。
「コガラシ君!?入学早々、何しでかしたの!?なんか、スカート捲ったって聞こえたけど!?」
「い、いや!違っ・・・!!」
そう言いながら、陽葵にだけ分かるようにチラッチラッとアワアワしている幽奈に目線を遣るコガラシ。
そんな彼の必死のジェスチャーに理解を示したのか、陽葵は額を抑えて溜息を吐くとコガラシの頭を背伸びしながら押さえつけると被害に遭ったであろう女子生徒に頭を下げる。
「ごめんね!僕の友達が、失礼な事しちゃって!!ほら、コガラシ君も謝って!」
「わ、悪かった!」
そうコガラシと共に頭を下げる陽葵は、どんな暴言が来ても良いように腹を括っていた。しかし、そんな彼の頭上から降り掛かった声は、予想に反する困惑した声だった。
「え・・・?あ、あの・・・。もしかして、昨日の・・・?」
「へ・・・?」
そう言いながら、恐る恐る顔を上げる陽葵。そんな彼の目には、オレンジ色の髪に澄んだ青い瞳をした女の子が映っていた。
「えっと・・・?」
「あ、あの!覚えてないかな!!昨日、助けて貰ったんだけど・・・。」
そう言いながら何処か期待する様な顔をする女の子に、陽葵はしばらく困惑していたがハッとした顔に成ると大きな声を上げる。
「あ!もしかして、昨日酔っぱらったおじさんに絡まれてた子?」
「あ、覚えててくれてたんだ!!」
「うん!昨日の事だったから・・・。昨日は大丈夫だった?ちゃんと、無事に御家に帰れた?」
「うん・・・。あのときは、ちゃんと御礼を言えてなかったから・・・。改めて、ありがとうね。アタシ、宮崎千紗希っていうの。宜しくね。」
「ううん!どういたしまして!僕は、美空陽葵っていうんだ!同じ学校に通うなんて思ってもみなかったよ!これから宜しくね!!」
そう言いながら持ち前の人懐っこさと、ぺカーッと擬音が付きそうな程に下心ゼロの無邪気な笑顔を浮かべる陽葵に先程までの怒りが収まってきたのか、スカートを捲られたらしき千紗希という名の女の子からも怒気が消えていく。
そして、そんな二人の朗らかな空気にコガラシに敵意と注目の目を向けていた生徒達も二人の関係に疑問符を浮かべ始める。
「え!?な、何あの二人知り合い!?」
「何だアイツ、千紗希ちゃんに馴れ馴れしく・・・!!」
「いや、けど結構可愛くね?背も低いし、男装してる女の子?」
「んな訳ねーだろ、まな板クラスの胸だぞ!?男に決まってんだろ!!」
「いや、でもアイツを見てると何でか全然妬めねぇ・・・。何でだ?」
「女顔だし、実質百合だからじゃね?」
そう話し合う彼等も、段々下世話な話で怒りが収まってきたのか視線をコガラシから陽葵へと向け始める。そんな彼等・・・主に男子達から送られてくる妬みや羨望の視線に陽葵は内心で溜息を吐く。
(物凄い、妬みとかの負の感情が渦巻いてる・・・。これだけで、特級呪霊が一体発生しても不思議じゃないかもね。)
そうぼんやり考えつつも、これからの学校生活をどう過ごそうか考えていると急に教室内に異変が起こった!!なんと、周囲の椅子や机。そして、生徒達が一斉に浮遊し始めたのだ!!
(え!?な、なに!?早速、呪霊の仕業!?)
そう思いながら呪霊が居ないかキョロキョロしていた陽葵だったが、ある一点を見た瞬間彼の顔が真っ赤に染まる!!何故なら、目を向けた先では何故か素っ裸の幽奈が顔を真っ赤にしていたからだ!!
(ななな、何で幽奈さん裸になってるの!?も、もしかして幽奈さんの仕業!?)
そう考えながらも、何とか体を動かして幽奈の方へ近づく陽葵。そんな彼は顔を真っ赤にしながら、幽奈の傍に居るコガラシと共に小声で必死に呼びかける。
「幽奈!」
「幽奈さん、落ち着いて!!」
「はっ・・・!!」
そんな二人の必死の呼びかけにハッと冷静になった幽奈は、ポルターガイストを解除すると周囲の生徒達が悲鳴を上げながら床に落下する。
「きゃっ!」
「どわぁっ!!」
「な・・・なんだ!?」
「手品か!?」
そう騒めく生徒達だったが、そんな戸惑いの空気をぶち壊すかのように4組の担任が入って来る。
「騒がしいぞ!御前等!!」
そう怒鳴り声を上げる担任教師だったが、机が椅子が散乱している教室を見て唖然とすると・・・。数秒フリーズした後に、更にデカめの怒声を上げるのだった・・・。
「入学早々、たるんどる!!」
そこから数時間程、担任教師からのありがたーい御説教が開始され・・・。気付けば、時刻は13時前を示していた。そんな説教から解放された数人の生徒達から、不平不満がこぼれ始める。
「ったく、何だったんださっきの・・・。」
「さぁ・・・。入学早々、延々二時間説教かよ・・・。」
「あの手品やった奴、マジふざけんな・・・!」
「宮崎のスカート捲った奴もいるしよぉ・・・。」
そんな彼等の怨嗟などの負の感情が籠った反応の所為か、いつの間にか教室には四級呪霊が二体と、三級呪霊が一体フヨフヨ紛れ込んでいた。・・・が、そんな呪霊達も陽葵がバレないように呪力を飛ばして祓ってしまう。
(入学早々、四級呪霊と三級呪霊が生まれるって・・・。不安でしかないよ・・・。御願いだから、余計な事言わないでよコガラシ君・・・。)
そう思いながら、人知れず消滅していく呪霊を眺めていると自己紹介タイムが始まる。そして、一人づつ生徒が自己紹介をしていく。そして、遂にコガラシの番がやって来た。
「次!冬空!!」
「冬空コガラシです!先月この街に引っ越してきたばっかりなので、色々教えて貰えると嬉しいっす!」
此処までは、よくある様な順調な自己紹介だった為に陽葵もホッとしながら彼の自己紹介を聞いていたのだが・・・。
「・・・それと、俺は霊能力者です!」
そうコガラシが言った瞬間、周囲が一気に冷え込んだような空気になる。先程までの蔑みの言葉が止まってしまう程に。
「さっき色んなものが浮かび上がったのは、俺と俺が連れてきた幽霊が引き起こしてしまったポルターガイストです!お騒がせして、すみませんでした!!」
「コガラシ君、何言ってるの!?」
そうとんでもない事を言い続けるコガラシに、遂に陽葵は立ち上がってツッコミを入れてしまう。
それもその筈、コガラシの様な霊能力者と違って呪術規定という規定により無闇やたらに非術師に正体を明かしてはいけない陽葵からすれば、公衆の面前で素性を明かすコガラシの行動が信じられない物だったからだ!!
「え?いや、ケジメを付けようと・・・。」
「だからって、こんな公衆の面前でいきなり霊能力者だって言う!?皆、引いてるよ!?」
そう柄にも無く大声を上げながら、少し席の離れたコガラシに注意するが時既に遅し・・・。一瞬の静寂の後、教室中に大笑いが響いた!!
「霊能力者ぁ!?」
「スカート捲りの次は、厨二病かよ!!」
「超痛い奴来ちゃったな!!」
「もしかして、陽葵っていう子も霊能力者なんじゃね!?なんか、色々把握してそうだったし!!」
そんな大声に、コガラシはもちろん関係のない陽葵でさえも共感性羞恥からか一気に顔に熱が昇る感覚に陥る!!
(僕・・・。一応、霊能力者じゃなくて呪術師なんだけどな・・・。)
そう思いつつも、呪術規定の影響でそんな事すら説明できない現状に頭を抱えながら陽葵は歯痒さを感じていた。そんな中、羞恥の熱が引いたコガラシは再び話し始めながら自己紹介を続ける。
「信じられないなら、それでいいさ。ただ一言、謝っときたかっただけだ。俺が霊能力者だっていうのは、ガチだから。もし悪霊や妖怪に悩まされてる奴が居たら、俺が相談乗るぞ。なんだったら、陽葵に相談しても良いぞ!アイツは呪術師だからな!んじゃ、一年間よろしく!!」
そんな最後の最後で突然の爆弾を投下された陽葵は、ガタンと椅子から立ち上がると慌ててコガラシに突っ込みを入れる!!
「ちょっと待って!なんで、僕も巻き込むの!?」
「え?だって、御前呪術師じゃ・・・。」
「・・・っ~!コガラシ君、もう何も話さないで!!みんな、コガラシ君が言った僕が呪術師だって事信じなくて良いからね!!」
そう言いながら周囲を見回す陽葵だったが、周囲のクラスメイト達はコガラシから一斉に陽葵に視線を向けていた。
「え~?冬空君が霊能力者なら、陽葵君は呪術師なの~?」
「マジかよ!御札とか式神とか使って、御祓いしてくれんの~?」
「えー。でも美空君みたいな可愛い子になら、御祓いに来てもらっても良いかも~。」
「私、今度曰く付きの心霊スポットに行くから御祓いしてもらおっかなー。」
そう騒ぎ続けるクラスメイト達の反応に、収拾が付かないと判断した陽葵はがっくりと肩を落とすとそのままの勢いで自己紹介を終わらせてしまう。
「・・・もういいや。もうこのまま自己紹介しちゃうね。美空陽葵だよ、コガラシ君同様に最近ここら辺に引っ越してきたばっかりなんだ。訳あって、小学校と中学校には通えてなかったから、学校自体が初めてで色々御迷惑を御掛けしちゃうかもしれないけどよろしくね。あと、さっきのコガラシ君の台詞に関しては、信じなくても信じてもどっちでも良いからね・・・。」
そう疲れ気味に自己紹介を終えた陽葵に対して、クラスメイト達はひとしきり笑ったあと揶揄ってくるが、どうやら本気で信じてはいないようで一先ずは安心する。
「よろしくー!!」
「小中と行けて無かったのって、呪術師として忙しかったから~?」
「小さいのに超能力者とか、漫画の世界かよ!」
「ヤベェな!俺らのクラス、霊能力者と呪術師がいるとか!!」
「ちょっ!笑ってやるなよ!!」
そんな彼等の笑い声に、半目で乾いた笑い声を響かせる陽葵。しかし、殆ど投げやりになっていた彼は気が付かなかった。
呪術師として紹介された陽葵だけではなく、自らを霊能力者だと名乗ったコガラシの事をじっと見つめてくる存在が居た事を。
そうして数時間後・・・キーンコーンカーンコーンというチャイム音と共に、学園生活初日が終わりを告げる。本日は入学式とオリエンテーションだけであった為か、通常よりも早く学校が終わったようだ。
「じゃーなー、冬空!それに、美空も!!」
「御化けに、気ぃ付けて帰れよー!」
「冬空ー、明日からはスカート捲るなよー!」
そんな彼等の揶揄いに、コガラシは顔を真っ赤にしながら否定する!
「しねーよ!!」
すると、そんな彼の制服の裾をチョイチョイと引っ張る者が居た。その正体は、にこやかな笑みを浮かべる陽葵であった。
「コガラシ君・・・。ちょっと良いかな?」
そう朗らかな声で、にこやかに笑う陽葵。しかし、そんな彼からは小さな体躯と反比例するかの如く、とんでもない怒気が漂っていた。
そして、そんな怒気に気が付かないほどコガラシも馬鹿では無い。そんな様子に、コガラシの傍を漂ってた幽奈も驚いた顔になる。
「ど、どうした?陽葵・・・?」
「ひ、陽葵さん?」
「ちょっと、校舎裏まで行こっか。御説教するから・・・。良いよね?」
そう言いながら、可愛らしくコテンと首を傾げる陽葵。しかし、そんな彼の体からはどす黒いオーラが放たれていた。
そんな状況に、コガラシはおろか幽奈でさえも顔を青ざめさせていると、陽葵の後ろから声が掛かった。
「あの・・・美空君?」
そんな声に振り向くと、そこには宮崎千紗希が立っていた。そんな彼女は、少しばかり緊張した面持ちだ。
「どうしたの?宮崎さん。」
そんな彼女の緊張を解こうと、陽葵は持ち前の柔らかな物腰と笑顔で安心させる様に話しかける。すると、彼女はオズオズと話し始める。
「あの・・・。今、時間ってあったりする?相談したい事があって・・・。」
「え?相談事?全然大丈夫だよ!あ、その前に朝のコガラシ君の事、改めて謝らせて。ほら、コガラシ君も・・・。」
そう言いながら、自分の為にわざわざ頭を下げてくれた陽葵の気持ちを無駄にしない為にも、コガラシは綺麗な直角の御辞儀をする。
「み、宮崎!朝は、本当に済まなかった!」
「僕からも謝るよ、本当にごめんね。」
「そ、その事はもういいよ!美空君が、悪いわけじゃないんだし・・・。冬空君のアレは、最低だったけど・・・。」
「うっ・・・。」
そんな更に深まるコガラシへの不信感と、精神ダメージを受けているコガラシに、流石に不憫になってきた陽葵はどうしたものかと考え始める。
そう考えつつもなにか名案を思いついた陽葵は、自分の近くでフヨフヨ浮いている幽奈に、ボールペンとメモ帳を手渡す。
「幽奈さん。これで、宮崎さんと筆談とかって出来る?」
「・・・?あ!そういう事ですね!御任せください!」
そう言いながら陽葵からメモ帳を受け取った幽奈は、スラスラと文字を書き始める。そして、千紗希はそんな状況に目を丸くしていた。
「え!?ぺ、ペンが浮いて・・・!?」
そう驚く千紗希にメッセージを書き終えた幽奈はメモ帳を見せる。そして、そこにはこう記していた。
『コガラシさんは、悪くないんです!私が、千紗希さんのスカートを捲っちゃったんです!すみません!』
「う、嘘・・・。これって糸とかで吊るしてるとかじゃなくて?」
「うん。ちゃんと、幽霊の幽奈さんがここに居るんだよ。」
「本当だ・・・!糸とかも無いのに浮いてる・・・!じゃあ・・・、そこに私のスカートを捲った幽霊さん・・・幽奈さんが居るの?」
「うん、"女の子"の幽霊ね。・・・幽奈さんも謝ってるし、許してあげてくれる?」
そんな超常現象に呆気に取られつつも、逆に落ち着いてしまった千紗希はふぅと息を吐くと話し始める。
「取り敢えずは・・・、許すよ・・・。それにしても、こうやって皆に説明したら2人共信じて貰えるんじゃ・・・。」
そうオズオズと聞く千紗希だったが、陽葵は困ったように笑うとゆっくり首を振る。
「確かに、こうやって証明したら多少は信じてくれるかもしれないけど、信じない人はとことん信じないからね〜。コガラシ君も、そうでしょ?」
「あ〜、まぁな・・・。」
そう頭を搔くコガラシに、陽葵は苦い笑みを浮かべる。実際陽葵も、呪術師として活動をしているが、中々一般人からは理解をされないのが現状だということは嫌でも理解している。
しかも、呪術師はまだ日本政府の後ろ盾があるが、コガラシの様な霊能力者に後ろ盾が有るかは分からない。ならば、尚更証明する事は難しいだろう。
そう思考しながら苦い顔をしていた陽葵だったが、朗らかな笑みになると改めて千紗希に問い掛ける。
「それはそうと、僕に用があるんだよね?」
「あ!うん、そうなんだけど・・・。」
そう言いながら、キョロキョロ周囲を見渡す千紗希に陽葵は穏やかな声で確認するかのように話しかける。
「それは・・・。ここじゃ、しにくい感じ?」
「うん・・・。だから、こっちに来て。一応・・・冬空君も・・・。」
「お、おぅ。」
そんな千紗希の要求に顔を見合せた陽葵とコガラシだったが、逆らう義理もないので二人揃って千紗希について行く。そして、陽葵達は校舎裏の倉庫まで到着していた。
「ここなら、大丈夫かな・・・。あ、あのね美空君・・・。」
そう言いながら緊張した面持ちで話そうとする千紗希だったが、そんな彼女に陽葵は待ったを掛ける。
「その前にごめんね、宮崎さん。ちょっと一瞬だけ、時間を取らせてね。」
そう言うと、陽葵はクルリと半回転するとコガラシの方に向き直り、再び怒りの炎を燃え上がらせる。
「コガラシ君・・・。さっきの件だけどね・・・?」
「お、おぅ?」
「この前、コガラシ君と自己紹介し合ったときに、サラッと言っただけだったから忘れてるかもだけど、僕達呪術師には呪術規定っていう呪術師の法律があるの・・・。」
そうニコニコ笑いながら説明する陽葵に冷や汗を流しながら、コガラシは朧気に思い出す。そういえば、『呪術規定一条の脅威の排除に基づいて幽奈さんは
その事をコガラシが思い出している中、更に陽葵は御説教を続ける。
「その中の条項の一つ・・・。第八条には、非術師に対して呪術の存在を明かしてはいけないっていう"秘匿"の条項があるの・・・。つまり、何が言いたいか分かるよね?」
「あーっと・・・。もしかして、俺の発言が・・・その、八条に違反してたって事か?」
「うん。一応驚異が迫ってる場合は、その限りじゃないけど・・・。はぁ〜・・・。まぁちゃんと説明してなかった僕にも非はあるけど、気を付けてね。幸か不幸かクラスの皆は笑い飛ばしてくれたけど、僕達呪術師が戦ってる呪霊は非術師の負の感情から生まれるの。もちろん、呪術師でない以上コガラシ君からも。だから・・・。」
「もしも、今回の件で不安感を感じた奴がいたら・・・。そいつから、呪霊が生まれるって事か・・・?」
「そういう事。タダでさえ、学校は呪霊が生まれやすいんだから・・・。」
それだけ言うと、陽葵は千紗希の方に向き直る。そして、ぺこりと頭を下げたのだ。
「ごめんね宮崎さん、御時間取らせちゃって。それで・・・、僕に話って何?」
そう質問を投げかけながら、フワリと柔らかい笑みを浮かべる陽葵。そんな彼の笑顔に緊張の糸が解けたのか、千紗希は深呼吸すると覚悟を決めたかのように話し始める!
「・・・あの、美空君。美空君は・・・その、呪術師っていうの?」
「う、うん・・・一応ね。成り行きで話しちゃったけど、宮崎さんもあまり周囲にバラさないで・・・。」
そう陽葵が言い終わろうとした瞬間である!突然千紗希が、陽葵にズイッと近づくととんでもないことを言ったのだ!
「あたし、貴方しかいないって思ったの!」
「は・・・?」
そんな千紗希の言葉に、ポカーンとした表情になるコガラシ。
そして、そんなコガラシと陽葵の間では幽奈が顔を真っ赤にしてワタワタしている。
(な、何ですか・・・!?この空気は・・・!?ま、まるで告白の様な・・・!とと、というか・・・私とコガラシさんも居るんですけどぉー!?)
そして、唐突に告白じみた言葉を掛けられた陽葵はというと・・・。完全に脳内の情報が完結しない、擬似無量空処状態に陥っていた
(え・・・?僕しか居ないって、どういう意味!?もしかして、呪霊関係?宮崎さんって、呪霊が見えるの!?じゃあ、教室で呪霊を祓ったのも見られてた!?窓の才能がある感じ!?あ!そういえば結局、今日は御弁当要らない日だったじゃん・・・。)
そんな四者四様の反応が巻き起こる、校舎裏の倉庫内に吹く一陣の風。そんな風は、これから巻き起こる波乱万丈な夜を予見するかの様な風であったのだった・・・。