ゆらぎ荘の呪術師君   作:雨を呼ぶてるてる坊主

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御悩み相談を聞こう

唐突なる貴方しかいないのという発言に、幽奈が驚きコガラシがあんぐりと口を開けている中、宇宙猫状態からようやく意識を取り戻した陽葵は改めて千紗希に質問を投げ掛ける。

 

 

「えっと・・・。僕しか居ないって、どういう意味かな?」

 

 

そう困ったように微笑む陽葵に、千紗希はグッとした表情で事情を説明し始める。

 

 

「最近、アタシの身の回りで変な事が起こってて・・・。この前、独りで御風呂に入ってたんだけど、そのときにチャプンって物音がしたの・・・。」

 

 

「うん。続けて?」

 

 

「それで、天井の水滴が落ちた音かなって振り向いたら・・・。そこに、御部屋にあったはずのヌイグルミさんが浸かってたの!!ねぇ!美空君!冬空君も!これって、心霊現象だよね!!」

 

 

「あー・・・。まぁ、そうかもな・・・。陽葵はどう思う?」

 

 

そう言った類の心霊現象に慣れているのか、ポリポリと頬を掻きながら陽葵に尋ねるコガラシ。そんな彼の言葉に、陽葵は一応確認を取る。

 

 

「それは・・・、間違えて持ってきたとかじゃなくって?」

 

 

そう確認する陽葵だったが、千紗希はそんな彼の問いにフルフルと首を振る。

 

 

「最初は寝ぼけて、ヌイグルミを持って入っちゃったのかな?って思ってたけど、いつの間にか箪笥とか鞄の中に入ってたりもしてて・・・。それに・・・、アタシ見たの。夜中・・・ウチのぬいぐるみ達が、部屋の中を飛び回ってるのを・・・!流石に怖く成ってきちゃって・・・。」

 

 

「成程な・・・。陽葵はどう思う?呪術的なモンとか、関係してたりする可能性ってあるのか?」

 

 

そう訊いてくるコガラシに対して、珍しく顔を顰めて考え込んでる陽葵はボソッとだけ呟く。

 

 

「うーん・・・。僕は、もしかしたら呪詛師か呪霊が一枚噛んでそうとは思うかな?」

 

 

「そうなのか?」

 

 

そう訊き返してくるコガラシに、少しだけ困ったような顔をする陽葵。

 

 

「うん・・・。断定は出来ないけど、そういった術式に心当たりがあるから・・・。」

 

 

そんな彼の頭に浮かんだ人物・・・。それは、呪術高専東京校の学長である夜蛾正道である。そんな彼の使用する術式は、傀儡操術・・・。つまりは、ヌイグルミなどの傀儡を操る術者なのである。

 

 

(とはいっても、夜蛾さんが犯人の筈は無いんだけどね。あの人、曲がった事は物凄く嫌う昭和気質な人だし・・・。でも、夜蛾さんなら何か知ってるかも。)

 

 

そう考えながら、陽葵は夜蛾に電話をするのは呪力の残穢が有るか否かを確認してからにしようと決めると、改めて千紗希の方を向き直る。

 

 

「取り敢えず、千紗希さんの証言を信じるよ。そもそも、僕達はこういった事象に慣れっこだからね。」

 

 

「ふ、二人共信じてくれるの!?」

 

 

「うん!そもそも、呪術被害に遭ってるかもしれない非術師を助けるのは呪術師として当然の事だし!!だよね、コガラシ君!」

 

 

「あぁ!!クラスメイトが困ってんのに、放ってなんかおけるかよ!!」

 

 

そう力強い返事をする二人に、千紗希は胸が熱くなる。そもそも、千紗希はこんな頼みを受け入れてくれるか不安だったのだ。

 

 

それもそうだろう。普通であれば、高校生にもなって心霊現象に遭っているなどを相談すると、今朝の二人と同じ様に厨二病扱い・・・。最悪の場合は、頭の病院を紹介されるのがオチだ。

 

 

だが、この二人は違った。無論、陽葵とコガラシが超常的な現象に慣れているからという事も有るが、二人は千紗希の悩み事を笑い飛ばすことなく真摯に受け止めてくれたのだ!!

 

 

そんな彼等の対応に泣きそうになりながらも千紗希は彼等に礼を告げ、幽奈も隣で誇らしげそうな顔をしていた。

 

 

「わぁ!流石は、御二人です!!」

 

 

「二人共・・・!本当に、有り難う・・・!!」

 

 

「気にしないで、これも御仕事だから。それじゃあ・・・早速だけど、宮崎さんの御家に行っても良い?もちろん、千紗希さんの予定に合わせるけど・・・。」

 

 

しかし、そう遠慮がちに尋ねてくる陽葵の言葉に千紗希は一瞬フリーズすると一気に顔を赤らめる。

 

 

「え・・・?な、なんで美空君が、アタシの家に?」

 

 

「ごめんね!でも、現場に行ってみない事には呪詛師や呪霊が関与してるか分からないから・・・。コガラシ君もそうでしょ?」

 

 

「あー。まぁ、霊視しねぇ事には分かんねぇからな・・・。」

 

 

「え、えぇ!?ふ、冬空君も来るの!?」

 

 

そう驚いた顔をする千紗希のリアクションは、陽葵とコガラシで少し違っていた。一応、幽奈がスカートを捲ったと説明はしたものの・・・。誤解だったとはいえ、一度発生してしまった疑いが中々晴れないのは人間の性である。

 

 

「美空君はまだいいけど・・・。冬空君はちょっと・・・。」

 

 

「は、はぁ!?だ、だからあれは俺の所為じゃないって!!」

 

 

「コガラシ君・・・。一応誤解はなんとか解けたけど、やっぱり一度芽生えた疑惑はなかなか消えない物なんだよ?寧ろ、キッチリ終わらせて汚名返上しよ?ね?」

 

 

そう言いながら穏やかな笑みを浮かべつつ、コガラシを宥めるように背伸びをして彼の頭を撫でる陽葵。そんな彼の手つきに落ち付いたのか、コガラシも一旦冷静になる。

 

 

「う・・・。分かった・・・。」

 

 

「うん。良い御返事。宮崎さんも、コガラシ君を完全に信用しろとは言わないけど、取り敢えず今朝の件は水に流してくれないかな?」

 

 

そんな彼の懇願に、頷くとスカート捲りの件から話を逸らすように千沙希は話し始める。

 

 

「う、うん・・・。それは兎も角さっ、この場で御願いできる事ってないのかな・・・?霊能力者とか呪術師って、漫画とかでよく人の守護霊とか悩みの原因が見えたりするんでしょ?」

 

 

「うーん・・・、一応見えるね。でも、式神は呼び出せても降霊術は専門外かな。式神も、本体の僕から離れたら消滅しちゃうし。コガラシ君は?」

 

 

「いやー、俺はそこまでは出来ないかな。」

 

 

そうと御回しに却下された第一案だったが、千紗希はめげる事無く第二案を提示する。

 

 

「そ、そうなんだ・・・。じゃあ、悪霊から身を守る結界とか御札を授けてくれたりとか・・・。」

 

 

「そういうのは持ってねーんだよな。陽葵は?」

 

 

「一応、結界術は出来るけど・・・。現場に行って展開しないと意味が無いんだよね。御札とかも、普段から使わないし・・・。」

 

 

そう言う二人に、第二案すらも却下された千紗希は冷や汗をかきながら恐る恐る質問をする。

 

 

「じゃあ・・・。やっぱり、アタシの家に来ないと解決しない感じ・・・?」

 

 

「うん・・・。でも、安心して!!絶対に、解決するって約束するから!!」

 

 

「取り敢えず悪霊だろうが、呪霊だろうが呪詛師だろうがぶん殴れば良いだけだしな!!」

 

 

「コガラシ君、一応言っておくけど・・・。基本的に、呪霊は呪術師にしか祓えないからね?」

 

 

「え!?そうなのか!?」

 

 

そう漫才コンビの様に言葉の応酬を続ける、陽葵とコガラシ。そんな陽葵の事を、宮崎は酔っ払いの一件から大いに信頼を置いていた。

 

 

そして、コガラシの事も陽葵の友達だからと少しばかりスカート捲りの件を忘れようとしていたのだが・・・。

 

 

(大丈夫なのかな・・・?)

 

 

そう一抹の不安を感じずにはいられない、千沙希なのであった・・・。

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