パッチワークとハートの私   作:月日は花客

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この小説におけるSCPの扱いについて
・財団にも手に負えない、世界終焉をもたらす系のSCPの制限(存在してると数日でワンピ世界が終わるので)
・特定の土地に出現、発生するものの制限(ワンピ世界にその地名が存在しないので、扱いに困る)
・ネットミームや極度の下ネタ系のSCPの制限(身内ネタが強い&下ネタはちょっと…)
などがあります。
数えきれないほどのSCPが存在する以上、諸々漏れや情報ミスが発生するかもしれません。その時はそっと教えていただけると幸いです。

擬人化系の追加に関しては後書きにアンケート置いておきます。





報告10:刺青

 

 次の島へはなかなか距離があるらしく、数週間の船上生活を経て到着しました。

 船旅というのはやはり新鮮で、潮風に当たりながら日々を過ごすというのは気持ちの良いものです。

 

 医務室で救命の本を読んだり、ハニカムさんの筋トレを眺めたり……案外、暇じゃないです。

 海賊が襲ってきたことも何度かありましたが、素早く鎮圧する船員さんたちの姿はカッコよかったです! 海賊さんも、命を落とした人はおらず、あくまで撃退したり海軍に引き渡したりしてましたし。

 流石に、人が人を殺す場面は見たくないものです。

 私は、たとえ襲ってきたからとはいえ、相手が重傷を負ったら治す覚悟なのですから。

 

 船員さんたちは、グレイッシュで見せた私の能力については、深く入り込んできませんでした。ただ、危ないのでどこかに行く時は護衛を連れて行くことと約束しました。

 確かに、海賊と船員さんの戦いを見ていると、私の自衛能力なんて無いも同然ですから。

 次の島はそこそこ治安が悪いそうなので、ハニカムさんの隣を離れないようにしましょう。

 

 グランドラインの気候は予想もできないような現象ばかりで、特に空から飴が降ってきた時は驚きました。大量に、案外速く落ちてくるものですから、霰のように当たると危ないのです。

 飴自体は、ごく普通の甘いキャンディで、カラコロと口の中で遊ばせて楽しめました。幾つか懐に入れたのは内緒です。

 

 グレイッシュの近海よりも、少し気温が下がったと感じた頃、アラクネに着きました。

 アラクネは、海賊の入れ墨を彫る町として有名だそう。隠れ家と呼ばれてはいますが、別に島全体が隠されているわけではなく、ただ海域自体が迷いやすい潮の流れをしているだけだそう。

 あまり海軍の目も届かないため、荒くれ者なんかの集まる場所でもあるようです。

 

 そんな所にも商売に行くとは、商人というのにも胆力が必要なのですね……。

 私も、気を引き締めないと。

 船から降りない選択肢もありましたが、船乗り初心者は降りれる地面があるならなるべく降りたほうが良いそうです。メンタル面や身体の慣れのためにも、少しずつ慣らしていくことが大切と、タンポポさんは語っていました。

 

「今回は取引場所が複数あるので、別行動となります。船番は、治安上警戒を強めてください。ああ、カイロス様にはハニカムが付きますので」

[わかりました。ハニカムさん、よろしくお願いします]

 

 下船前の連絡をよく聞き、私はアラクネに足を踏み入れました。

 全体的に荒れた土地で、石材や砂岩で建物が造られているようです。町行く人も、あまりお行儀がよろしいとは言えない姿勢ですね。

 中には路上に座り込んで酒を呷っている人も……。

 

 生活が荒れているのか、生活習慣病やタバコによる肺の汚染に罹っている人がちらほら。

 まだ日頃の見直しや禁煙によって回復できる範囲なので我慢できますが、大病を患っている人がいたら我慢できずに治してしまうかもしれません……。

 トラブル予防のため、治療の特異性はできる限り隠したほうが良いと言われているので、なるべく周囲を見回さないようにしないと。

 

 私の力は、この世界でも前世でも破格の能力ですから、悪い人に見つかったらただじゃ済まないでしょう。

 自衛手段に乏しい以上、避けられるトラブルは回避していかないと。

 そう、足元を眺めるようにしていると、私の近くを何匹かの猫が通り過ぎました。

 

 周りの、地面に注目してみると、あちこちに猫、猫、猫。

 飼い猫らしくはない、おそらくは野良猫がたくさんいます。中には、どこからか盗んできたのか、肉厚のハムを齧っている猫もいました。

 

[猫、多いですね]

「外敵が人間くらいしかいない。増え放題なんだろう」

 

 なるほど、島全体で管理している……わけでもなさそうですし、本当に好き勝手生きているらしいです。

 交配も様々混ざっているのか、色んな柄や模様の猫ちゃんが、歩いたり寝転んでいたり。

 集まって団子になっている姿はかわいいですね。私はクマ派ですが。

 

 微笑ましく猫の塊を眺めていると、一匹のサバ柄の猫が、私の足元で見上げてきました。

 愛嬌があるくりくりとした金色の目が、何か期待するように見つめてきます。

 あいにく、魚は持っていないのですが……動きが人慣れしていたので、なんとなくバスケットを置いて、手を差し伸べてみました。

 猫を怖がらせないよう、しゃがんで触れようとすると──

 

「!?」

「おっ」

 

 バスケットに巻かれていたスカーフを咥えて持っていってしまいました!

 こ、困ります、あれは村の人が厚意でくれた名前入りの大切なものです。

 慌ててバスケットを持って立ち、ハニカムさんに視線を送ります。

 

「……追うぞ」

 

 確認を得たので、今度こそサバ猫を追って走ります。

 荒っぽい男の人や派手な刺青を入れた女の人が歩く大通りを、エプロンドレスの少女と大きなクマさんが走っていくのは、なんかだかコメディじみていたことでしょう。

 

 サバ猫は猫らしく素早く、身軽な動きを駆使して私たちの手からスルスル流れていきます。

 砂岩の街は入り組んでいて、迷路のように路地を廻ります。夢中で駆けていますが、後で同じ大通りに戻れるでしょうか……?

 

 絶妙に、見失わない速度を保っているのが、なんだか遊ばれてる感じです。

 何度も角を曲がり過ぎて、もはや今自分が通っているのが来たことがある道なのかなんなのか、わからないです。酔うことはありませんが、目が回りそうな程複雑な道を通っていきます。

 そこは、地元の人もそうそう来ない場所なのか、人の気配は全くありません。ただ、猫はあちこちの屋根から、こちらを眺めてきています。

 誘導させられている気もしますが、スカーフを取られている以上引き返すわけにもいきません。人質ならぬスカーフ質です。

 

 そして、数えるのも忘れた右手への曲がり角を、曲がった時でした。

 

「──!」

「……なんだ、お前ら」

 

 そこは、今までの細めの通路からは少し開けた、公園未満の広場のようでした。

 砂岩に囲まれてはいるものの、小さな水場が、レンガに囲まれて造られています。

 そこに、沢山の猫たちに囲まれた、男の人がいました。

 白いモコモコの帽子を被っていて、目元には深い隈が刻まれています。側には、私の背より高い刀らしき剣が、壁に立てかけられていました。

 座っていたところを立ち上がりましたが、足元には沢山の……あのサバ猫も混じった、猫の集団がいます。猫集会に、ひとりだけ人間が混じっているような光景です。

 

「退がれ」

「その服の色……宝石の鱗商会のやつか。こんな所に何の用だ?」

「それはお前にも言えることだ、トラファルガー・ロー」

 

 ハニカムさんが警戒を露わにして私の前に立ちました。

 トラファルガー・ロー。と、この人は呼ばれているそうです。虎さんですか、同じ猫科として、猫さんと仲良くなる方法を知っているんでしょうか?

 私はクマ派ですが。

 

 ローさんは、壁にあった刀を肩に乗せて、にやりと笑います。

 

「ここは海賊御用達の島だ。おれがいて何が悪い?」

「……こちらに敵対の意図はない」

「そうだな、おれも、商会の奴にわざわざ手を出すほど馬鹿じゃない」

 

 ハニカムさんたちが話している間も、私はハラハラとサバ猫を見つめることしかできません。ここで逃げられたら、また長い鬼ごっこの始まりです。

 変わり映えのしない砂岩の通路を、ひたすら走るのは気が滅入ります……。

 

「で、何の用でここまで来た。ここに商売できるような奴はいないぞ」

「……そこの、サバ柄の猫を追っていた」

「は? ……コイツか」

 

 ハニカムさんが指差した猫に、ローさんは一瞬呆けた顔をしましたが、咥えられたスカーフに納得がいったようです。

 ローさんがスカーフを取ろうとしますが、フイと避けられてしまいました。そして、先ほどまでの逃げっぷりとは正反対に、素直に私の手に返してくれます。

 な、なんだったんでしょうか……。私たちで遊ぶのが目的だったんでしょうか。

 

「商会はいつの間にか子守りも始めたらしいな」

「彼女は客人だ。手出しは許さん」

「別に興味は──あぁ?」

 

 スカーフをバスケットに巻き直した後、私は改めてローさんを見ました。

 背も高くて、なんだか隙のない雰囲気が恐ろしげですが……それよりも、私は彼の中身が気になったのです。

 ()()という意味ではなく、本当の意味での身体の内側が。

 

「っおい!?」

 

 ハニカムさんの前に出て、私はローさんにメモを見せます。ハニカムさんが慌てて間に入りますが、メモはローさんの手に渡りました。

 そして、そこに書かれた文章を読んだのでしょう、ローさんは目を見開きます。

 私は、人がある程度の努力で自然治癒できるものなら、治すのを我慢できます。

 ですが、どうにもならないものは、我慢できません。

 

[脾臓の機能低下について、ご自覚していますか?]

 

 彼の脾臓……血液のリサイクルや免疫を司る臓器は、一般に比べ半分ほどに機能が低下しているのです。

 何らかの病の後遺症、あるいは外傷によるもの……でしょうか。既に身体は脾臓の最大仕事量の低さに慣れているあたり、幼少期に何かあったものと推測できます。

 しかし、血や免疫を司る以上、その機能低下は他の病を呼び寄せる門となってしまうでしょう。

 可能なら、私が治したいのです。

 

「能力者か」

 

 ローさんは、私に不審の色を示して刀を握り直しました。慌てて、メモで敵意が無いこと、できれば脾臓を治させて欲しいことを伝えます。走り書きのメモは随分字が汚くなってしまいました。

 

「この後遺症とは一生付き合っていくもんだ。医者のおれでも治せねぇよ」

 

 なんと、お医者さんでしたか。お医者さんは感染症や身体の回復力を、万全に使うためのお手伝いができる職業ですが、臓器を完璧新品に、ドナー無しでできる事はありませんからね。

 現代日本では、もしかしたら完璧新品レベルに治療する術もあったかもしれませんが、この世界の医療レベルは、現代日本ほど発展していません。

 

「脾臓自体は機能が低下していても直接的に命に関わるものじゃない。他の器官で補える。一般に臓器移植対象にもなっていない臓器だ。恩を売りたいなら別のとこに行け」

「……トラファルガー・ローは億越えの海賊だ。無茶するな」

 

 あわ……とても冷たい視線を頂いてしまいました。治療を拒否されたのは初めてです。

 別の器官で補えるからといっても、低下していてメリットになるものでも無いでしょうに。でも、ご本人がお医者さんなら、治せるのなら自分で治したいのかもしれません。

 

 正直に言うと、問答無用で治したいのですが……本人は断ってますし、ここで強行して商会の皆さんにご迷惑をおかけするわけにもいきません……。

 悲しい、という感情と、活性化した異常性の行き場を失って俯いた所に、あのサビ猫が擦り寄ってきました。

 

「──?」

 

 なんだか、灰色の塊がもう一つあります。

 でも、なんか、ボリュームが少ないような……。

 

「なんだこの猫、下半身が無い……?」

 

 半身猫のジョーシー! 半身猫のジョーシーじゃありませんか!

 SCP-529“半身猫のジョーシー”は、下半身が無い猫です。それだけです。

 灰色の波模様をした女の子の猫ちゃんです。大人しくて、かわいらしい良い子なのです。下半身が存在しませんが、それ以外に特に異常性の無い、SafeクラスのSCPです。

 

 私は、ジョーシーを抱き上げて、そのすべての光を吸収するかのように真っ暗な断面を、優しく撫でてあげます。ジョーシーはゴロゴロと喉を鳴らしました。

 かわいいです!

 

「お前の仕業か?」

「動物虐待の趣味は無い。なんだこの猫」

 

 ハニカムさんが疑わしげにローさんを見ましたが、ローさんは猫の下半身を消せる力を持っているのでしょうか。能力者なのでしょうかね? でもジョーシーはこれがジョーシーの通常です。何もされていません。

 まさかこんな所で別のSCPに会えるとは。

 私以外にも、SCPがいると言う事は、まさかヤバい奴らもこの世界に来ている可能性があるって事なんですかね?

 えっと……もしかして、世界滅亡のカウントダウン、始まってませんか?

 怖くなってきました。

 

「ニャオ」

「……なんで、そのお嬢様は当たり前のように断面を撫でてるんだ」

「……さぁ」

 

 ジョーシーは断面を撫でてあげると喜ぶのです。撫ですぎるとひっかかれます。適度に撫でましょう。

 ローさんの臓器を治せなかった事は残念ですが、スカーフは戻りましたし、まさかの出会いもあったので、気を取り直せました。

 ジョーシーを人目の多いこの島に置いていくのは不安なので、パインさんに連れて行って良いか聞いてみましょう。

 ジョーシーも、私が同じSCPだとわかっているのか、とても懐いてきます。

 

 この島は治安も悪いですし、SCPであるジョーシーを野放しにしておくのも、なんだか不安ですから。

 私はジョーシーを抱き上げて、エプロンのポケットに入れてあげました。ジョーシーは大人しく収まってくれます。

 そして、ローさんに一度お辞儀をして、この場を去ることにしました。

 

 ローさんもハニカムさんも、なんだか困惑から抜け出せていないようでしたが、あんまり遅くまで外にいるとパインさん達を心配させてしまいますから。

 あの長い曲がり角の迷路を辿るとなると億劫ですが……。

 

「──♪」

「ニャーオ」

 

 新しいお友達に会えたので、私はにっこりです。







◇クマ派を貫くクマ
初めてのSCP仲間と遭遇。安全な子で良かったと心底思った。
この後無事パインの許可をもらいジョーシーが仲間入りする。最近のお気に入りはエプロンのポケットの中。
いうてジョーシーも普通の猫なので、自衛能力が上がったわけではない。無力。
ローに関しては、まぁそんな事もあるよね。みたいな感じ。
たぶんローさんは脾臓は臓器優先度低いし、害の無い綺麗な脾臓で適合者で移植後の諸々が楽な人が見つかってない。肉体も既に脾臓の弱さに慣れてるからもういいや、みたいな。

アンケートは数日で受付終了します。

他SCPの擬人化について。※擬人化した場合仲間になります。

  • 主人公だけでいい。
  • 他のSCPも一部擬人化する。
  • 危険度の高いやつを擬人化する。
  • 危険度の低いやつを擬人化する。
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