パッチワークとハートの私   作:月日は花客

14 / 48
想像以上におすすめSCPのマシュマロが届いてます。
みなさんありがとうございます!





報告13:密航

 

 その後、いくつかの世間話やおすすめの紅茶の情報を話し、私は表向き本屋の施設を離れました。

 街中の方に戻った頃、耳に付けてもらった金ボタンの中央、小さなガラス玉がついているそこをカチカチと押します。ボタン式になっているのです。

 特定の回数押すと、金ボタンのガラスは緑に光ります。私からはよく見えませんが、小さく「異常ナシ」と機械音声が流れます。

 

 私は喋れないですし、状況によっては目立った音を出す事が悪手となり得る場合もあるので、通信はボタンによる暗号式です。

 押す回数と長さによって、財団へ送るメッセージが変化します。恐らく通話機能を入れなかったので、ここまで小型化できたのかと。

 あくまでも一方通行のメッセージなので、財団の動きはわかりませんが、壊せばすぐ動いてくれるそうなので、然程問題は無いでしょう。

 

 ジョーシーの首輪にも、同じものが付いていますが……使うかは不明です。私と同行している時は私が代わりに押すかもしれませんが。

 見た目としては、可愛らしいピアスにしか見えないでしょう。私はぬいぐるみなので、金のボタンは随分贅沢に思えます。

 この世界ではこういった通信機は少ないでしょうし、通信するものはカタツムリの姿と固定観念がありそうなので、上手く騙せるのではないでしょうか。

 

 なんだか、スパイになった気分です。

 わくわく。

 それにしても、かなり話し込んでしまったので、もうお昼の時間です。別に食べなくても私は問題ありませんが、どうせならこの島のグルメを食べたいところ。

 ジョーシーは、手持ちのネコ缶ですが……。

 

 大通りから少し離れたところでジョーシーに先に餌をやり、私も何か美味しそうなレストランなんかを探すことにしました。

 ……なんだか、より街の中が騒がしいですね。お昼になって人が多くなったからでしょうか。

 

 何を食べましょう?

 オムライス、パスタ、ミートボール。

 でもなんだか、ジャンキーで味の濃いものを食べたいかも……。船生活は、案外野菜が多いです。壊血病予防ですね。

 こういう時は、ファミリー向けの食堂ではなくお酒を提供しているお店の方がそういう料理が多いです。

 おつまみ的なしょっぱさは、なんとも言えない背徳感があります。

 

 ちょうど進行方向に良さげなお店があったので、そこに入ることにしましょう!

 

 *

 

 お店は酒場だったらしく、沢山の人がビールやサングリアといったお酒を楽しんでいます。明らかに私のような小娘は浮いていますが、特に気にせずカウンターに座……す、座って……あ、台座ありがとうございます。

 カウンターの椅子は高いのが難点です。でも、私は猫連れとはいえ複数人のテーブルを使うのは憚られますから、カウンターです。

 

 店主さんらしき男の人は、珍しげに私を見てきますが、気にせず注文します。

 食材の名前はよくわかんないので、ハンバーグらしきものとオレンジジュースを頼みました。提供が早いのは、人で賑わうこのお店の人気の秘訣でしょうか。

 味も美味しいです。私は、ハンバーグはケチャップ派なのですが、たまにはチーズとソースも良いですね。添えられたポテトも、ホクホクしててソースを絡めるととっても濃いです。うーんジャンキー。

 

 ジョーシーはご飯を食べて眠くなったのか、店内の喧騒に耳をぴこぴこさせつつ、ポケットに潜っています。

 食後のオレンジジュースは、ちょっと薄い気がしますがさっぱりして口内の脂の重さを流してくれました。

 

「帰れクズ! おれはあの革命家ドラゴンの息子だぞ!!」

 

 店内に銃声が響きました。

 流石に、火薬の破裂音には視線をそちらに向けてしまいます。喧騒も、震源地以外は静まり返りました。

 どうやら、海賊らしき人が同じく海賊らしき人を撃ったようです。

 二発目が放たれる前に、私はその人の元へ駆け寄りました。

 

「お、おいお嬢ちゃん!?」

 

 店主さんが動揺しますが、何はともかく治療です。

 慎重に弾を取り出し、綿を詰め、四角く切った布を貼り付けます。この世界で主流の銃は、まだ攻撃力が低い鉛玉で助かりました。

 ホローポイント弾なんかを使われたら、除去も処置も簡単にはいきませんから。

 

 男の人を撃った、大柄な海賊さんは、そんな私を睨みつけます。

 銃口が向けられますが、ジョーシーに当たらないよう身を屈めてバスケットを近くに寄せました。私なら当たっても痛みはありませんし、補修できますが、ジョーシーはそうはいきませんからね。

 

「なんだぁ、この小娘は……テメェ、おれは女子供にも容赦しねぇぞ!!」

 

 引き金に指をかけた姿に、場内が騒然となります。何発でも撃てば良いでしょう。縫い直せば無傷ですから。

 しかし、弱きものにも簡単に凶器を向けてしまうその心は、どうやって癒せばいいのか、私にはまだわからないのです。

 それもまた、時間しか解決しえないものなのでしょうか。

 

「チッ、夢見がちな世間知らずかよ。失せな!!」

 

 お、撃たれませんでした。ラッキーですね。

 非力ですが、撃たれた人の腕をなんとか引っ張って、お店の隅っこに避難させておきます。傷自体は治したので、問題無いでしょう。撃たれた部位も致命傷になる箇所ではありませんでした。

 店内のピリリとした空気が一瞬緩みましたが、私はまだ彼らをじっと見つめます。

 簡単に人を撃った彼らが、また人を撃たないとは限りません。あの調子なら、まだ……可能性は高い、というのが悲しいところですね。

 

 大柄な男は、今度はカウンターにいるオレンジの髪をした女の人に声をかけました。

 私の隣に座っていた人です。大丈夫でしょうか……何かあったら、すぐに治療に動くつもりで構えます。ジョーシーは、安全のためにバスケット内に隠れてもらいました。

 

 しかし、女の人はそのお誘いを断りました。それはもうキッパリと。

 女の人が銃を向けられます。こういう時、事前に防ぐように動けないところが、歯痒いです。

 私は、「傷つけられた後」しか活性化できませんから。

 スカートのパニエを掴み、走りやすいよう身を低くします。

 

 ですが、その銃口はポロリと床に落ちてしまいました。

 

 オレンジの女の人に銃を向けた水玉の服を着た女性が、大きなハエトリグサ? と思しき植物に食われたのです!!

 突如生えた巨大植物は、一瞬アノマリーかと思いましたが、違うようです。この世界特有の種でしょうか。ちょっと紛らわしいですね。

 

「そこのかわい子ちゃん、一緒に来てくれる?」

 

 植物を観察していると、いつの間にか近くに来ていたオレンジの彼女と、その連れらしき長いお鼻の男の人が、私に話しかけました。

 なにか? と首を傾げましたが、なんだか店内に嫌な予感がして、手を引かれるままお店を出ます。あ、ハンバーグとオレンジジュースのお代払ってない……。

 

「かっこよかったけど、あんな危ない真似しちゃダメよ?」

 

 美人なその人がきらめくウィンクを私に飛ばした瞬間、さっき出たばかりのお店が雷に包まれました。天から降ってきたわけではなく、あの中で“発生”したようです。

 はわ……な、中の人は無事なのでしょうか……。

 

 知覚範囲では、活性化はしていないので、おそらく過度の火傷や心肺停止には、なっていない……?

 気絶してる人は何人かいるようですが。

 

 呆気に取られていたら、あの二人もどこかへ去ってしまいました。なんだか派手な体験をしてしまいました……この世界の人、凄い……。

 とりあえず、気絶している店長さんのところに、ハンバーグとオレンジジュース代、そして騒ぎを起こした謝罪で色をつけたお金をポケットにねじ込んでおきました。

 食い逃げにはなってない……ですよね?

 

 大柄の男が気絶から起き上がり、忌々しげに叫びました。

 いけません! あのお二人が危ないです、それにきっと、他の人も巻き込まれるはず。

 こっそり尾けていけば、彼の暴挙の被害者を治せるかも……。流石にさっきのように目の前に庇い立てはしませんが、きっちりしっかり治してみせます!

 

 ジョーシーは引き続きバスケットの中にいてください。危ないので、外に出ちゃダメです!

 怒り心頭な男たちは、銃を構えながら捜索を開始しました。

 私も、建物、人、植物に隠れてついていきます。

 人を悪戯に傷つける行為は、見逃せません!

 

「探せお前ら! あの二人組を殺して見せしめろ!!」

 

 やはり、何度目かの被害者をこっそり治療しながら、男の動向を追います。

 どうやら痛めつけるためか、悲鳴を聞くためかはわかりませんが、彼はわざと急所を外しているようです。

 それが良いのかは判断しかねますが、それによって治療が短時間で済むのも事実。

 なんとか、男たちに気づかれず撃たれた人を治せています。

 

 私の力を見た人も、男が近くにいる以上騒げませんし、あるいは恩を感じてくれているのか、小声でお礼を言って去ってくれます。

 ですが、油断はできません。

 次の彼の標的は、大きな荷物を背負ったコートの人のようです。

 ぶつかっただけで土下座か死? 大袈裟と思いましたが、よく考えたら顔を見ただけで問答無用で殺してくるSCPとかいるので、まだ有情ですね。

 SCPと比べられるのも、どうかと思いますが。

 

 ひっそりと事を見つめ続けていると、何故か……男たちが倒れました。気絶、しているようです。

 外部的な衝撃や傷由来ではなく、威圧感による精神的ショック……畏怖? 恐怖? わかりませんが、命に別状は無いただの「気絶」でした。

 コートの人が何かしたんでしょうか……というか、なんだかさっきからバスケットが軽いような……。銃創は傷が小さいので、そこまで布を使った記憶は無いのですが。

 

「──!?!?」

 

 ジョーシー!? え、ジョーシー!?

 なんで、コートの人の荷物に入ろうとしているんですか!?

 ダメっダメですよジョーシー、人の荷物を漁っちゃいけません!

 チーズがあっても食べちゃダメですよ、ジョーシー!!

 

 ああっ私の身長だとジョーシーが登った先まで手が届きません!!

 コートの人も気づいていませんし、というか半身猫のジョーシーはあまり人前で出すわけにはっ……!

 ジョーシーっ、めっ! めっですよジョーシー!

 あああ、戻ってきてください……その荷物の中に何があるというのですか、ジョーシー……。

 

 *

 

 大変困りました……。

 コートの人、あの大柄の男と合流してしまいました……。ジョーシーは、もうすっかり荷物の中に我が物顔で収まっています。本当、突然一体どうしたんでしょう。

 周りも、すっごく騒がしくなってますし。

 

 私はなんとかコソコソ隠れて気づかれていませんが、ジョーシーがいつ危ない目に遭うか心配でたまりません。

 ですが、今私が表に出ても無力なのは事実……。

 

 っ、また銃声……活性化範囲にはいませんが、辺りの悲鳴から死亡が推察されます。

 救えなかった命が、目の前に……。その死を悼むことしか、今の私にはできません。

 あわ、あわ、私はどうしたら……??

 

()()()を狙え! PX-5!!」

 

 瞬間、眼前に光が広がりました。

 ギリギリ、私は範囲からズレていたようですが……あれ、ビームですよね? 銃が鉛玉なのに、なんでビームはあるんですか、この世界!?

 ジョーシーが入っている荷物もとい、コートの人がもろに攻撃範囲内にいたので、内心叫んでしまいましたが、どうやら避けてくれたようです。

 ジョーシー! 無事ですか、ジョーシー!

 

 も、もうここはダメです!

 ジョーシーのためには、私も腹を括らなきゃいけないようです!

 たくさん人が傷ついていますが、おそらく海兵さんが捕縛後ある程度治療はしてくれるかと……!

 モモンガさんが、インペルダウンで罪を償わせるため、捕縛した海賊の一定の重傷は海兵が応急処置を施すこともあるって言ってました!

 今回は、そちらの医療班さんたちに任せます!

 

 ジョーシー、わ、わ、私も今そちらに行きますからねっ!!

 中にチーズがあっても、食べちゃダメですよ、ほんとーに!!

 

 *

 

 そうして、様々な騒動が連続して続く中、ジョーシーと一緒に荷物の中に隠れたのですが……。

 

「出航だァ〜〜!! 行くぞ、魚人島〜〜!!」

 

 これ、明らかに、密航……になっちゃいます、よ……ね……??








◇密航しちゃったクマ
ジョーシーは自分よりも耐久が無くただの猫ちゃんなので、ジョーシーが危ないと自分の時より動揺する。
今まではお利口さんだったジョーシーの暴走にパニック。荷物に潜んでまさかのサニー号入場。
これから、どうなっちゃうの〜!?☆☆(少女漫画風味で)


こっから原作沿いになっていきます。
また、アンケート結果により「擬人化は主人公のみ」に決定しました。
投票してくださった方、ありがとうございました。

他SCPの擬人化について。※擬人化した場合仲間になります。

  • 主人公だけでいい。
  • 他のSCPも一部擬人化する。
  • 危険度の高いやつを擬人化する。
  • 危険度の低いやつを擬人化する。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。