パッチワークとハートの私   作:月日は花客

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カリブー海賊団、正直すまんかった。





報告15:忘却

 

「それで、おれ達のことなんだけど」

 

 ひとしきりピザで盛り上がった後、金髪のお兄さんたちが切り出しました。

 今は、もう皆んな身体を楽にして芝生の上や用意されたガーデンチェアに座っていて、飲み物やお菓子を囲んでいます。

 船長さんは、いまだにピザを食べていますが。

 

 私は、芝生の上、トナカイさんの隣に座って、ストローでアイスカフェオレをいただいています。氷がクマさんの形に削られていて、思わず手を叩いて喜んでしまいました。

 金髪のお兄さんが満足そうに笑っていたので、お兄さんが削ってくれたのだと思います。

 

「うちは『麦わらの一味』で、アレが船長のルフィ」

「ピザうんめ〜〜!!」

 

 金髪のお兄さんが作った特大ピザと、ピザボックスから出したピザを二刀流しています。どこにあの質量が消えているのでしょう。

 

「おれはサンジで、コックな。あの緑のはマリモ。覚えなくていい」

「ゾロだコラ、やんのか??」

「絶対に刀出さないでよアンタ」

「麗しくしっかり者の女神がナミすわぁん♡ ウチの一流航海士だ」

 

 片目の刀のお兄さん、さっきからちょっと気になるんですよね……。その、目が……。

 刀傷での失明なら、治せます。元の瞳の輝きは取り戻せませんが、羊毛フェルトで眼球としての機能は取り戻すことができるでしょう。

 後で、聞いてみるとしましょう。

 

「鼻の長いのはウソップ。狙撃手だ。ナミさんとウソップにはシャボンディ諸島で会ってるんだよな?」

「おお、銃を向けられてもちっともビビらずに、ニセルフィを睨む姿はシビれたぜ。いや、肝も冷えたけどな」

「勇気のあるお嬢さん! この船にいる限りは、我々が守りますのでご安心を!」

「あの骨はブルック。能力者でガイコツになってるけど、怖い奴じゃない」

 

 ヴァイオリンを鳴らしたガイコツことブルックさん。なぜ動けてなぜ喋れるんでしょう。食べたピザ、どこに行ったんでしょう。

 でも、よく考えたら私も似たようなものでした。人のこと言えません。

 驚きはしましたが、なんだかピザを食べている時にとても優しい気持ちが伝わってきたので、怖くはありません。

 今の彼はこのガイコツの状態が正常なようで、私が近づいても活性化しないようです。

 

「おれはチョッパーだ! 船医をしてるから、体調が悪くなったらおれに言うんだぞ!」

 

 お鼻の青い小さなトナカイさん。お医者さんなら、私と近い存在ですね。

 小さな蹄と握手したら、毛皮の部分がふわふわしていました。ぬいぐるみみたいで、かわいいです。クマ派は揺らぎませんけど。

 

「おれ様がフランキーよ! 船大工で、この船サニー号はおれが作ったんだぜ」

「フランキーはサイボーグだが一応人間だ。たぶん」

 

 フランキーさんも、なんだか随分と……肉体と機械が融合してます。背中は肉体部分が多いようです。彼が傷ついてしまった時、私は上手く彼を治せるでしょうか……腕とか、もうほぼ機械なので、私の異常性が使えるかどうか……。

 チョッパーさんは、彼も治療できる知識をお持ちなのかしら。

 

「ンそして、最後に我が船の黒髪の天使ィ♡ ロビンちゃんだぁ♡」

「考古学者よ。どうぞよろしくね」

 

 ニコッと手を振ってくれたので、振り返します。海賊というとなんだか男の人ばかりと思っていたので、女の人がいて少し安心しました。

 今の私は少女ですから、同性というのは少しでも親近感が湧くものです。

 紹介された船員さんは、とても愉快で、優しそうです。怖い人たちという予想は、すっかり剥がれてしまいました。

 

[よろしくお願いします。諸事情で喋ることができないのが残念ですが、このメモで皆さんと交流できることを嬉しく思います]

「喋れないのは、病気か? なにかおれにできることあるか?」

[チョッパーさん、お気遣いありがとうございます。この場合、私は後天的に発声ができなくなったのではなく、先天的に声帯に当たる器官が存在しません。それは私の瑕疵にはなりませんので、ご心配は無用です]

「そうか……でも、おれカイロスのキレイな字見るの好きだぞ!」

[私もチョッパーさんのお優しい言葉に暖かい気持ちになります]

 

 チョッパーさんとは、なんだか気が合いそうです。小さい身体で、人の命のために頑張る姿はきっと素敵なものなのでしょうね。

 ジョーシーもさっきから不機嫌ではありますが、チョッパーさんの言葉には少し耳を傾けているようです。

 

[こちらはジョーシー。肉体が半分しかありませんが、これが正常です。それ以外は普通の猫と変わりありません。女の子で、チーズが大好きですが、一度食べると止まらなくなるので与えないでください]

「世界には半分しかねぇ猫もいるんだな」

「撫でてもいいかしら」

[断面のあたりを撫でられるのが好きです。ですが、撫ですぎても嫌がるのでお気をつけて]

 

 私はロビンさんを安全と判断し、ポケットからロビンさんの腕の中へジョーシーを預けました。

 ロビンさんはその細い指でジョーシーの断面を程よく撫でます。余程テクニシャンなのか、すぐジョーシーからゴロゴロと喉音が聞こえてきました。

 ナミさんが羨ましそうにロビンさんを見ています。

 

「にしても、ずいぶん潜ってきたな」

「ざっと1000メートルは超えてるな、まだまだ深くにいくぞ」

「太陽の光も、薄くなってきたなぁ……」

 

 船は、どんどん海の深くへ潜っていきます。クジラや大型の魚類が辺りを遊泳し、天然の水族館のように、その姿を近くで見ることができました。

 シャボンディ諸島も、もうかなり遠く離れたでしょう。

 

 直角に沈んでいるわけでもないので、位置も随分ズレているのではないでしょうか。流石に、どこまで流されているかはわかりませんが……。

 迫力のある海の生き物達に、はしゃぐルフィさんたちが微笑ましいです。

 ジョーシーは、完全にロビンさんの手の中で溶けています。完落ちってやつです。

 

 この辺りで、一度ゾロさんにお目々のことを聞きに行こうか……という時でした。

 別の海賊船が、サニー号の近くに寄ってきたのです。

 敵襲かと皆さん構えましたが、なんだか、それにしては相手の船が静かでした。

 

 シャボンの中、甲板が見える程近くというのに、鬨の声も、逆に敵意が無いと伝える声も、ありません。

 甲板にいる人は、皆異様でした。

 ある者は膝をつき、ある者は膝を抱え、ある者は手すりに頭を打ちつけていました。

 明らかに普通ではない光景に、こちらの何人かが呻くような声を出したのが聞こえます。

 

 顔がはっきり見えるほど接近しているわけではないのに、私には、その人たちの瞳孔が、まるで絶望して死んだ遺体のように開ききっているのがわかりました。

 その惨状に、私の何か、危機感か予感といったものが、はっきりととある番号を頭に浮かび上がらせたのです。

 

[皆さん、一度あの船から限界まで離れてください]

「どうした、カイロス、何かあったのか」

[詳細な説明は今は省きますが、彼らはある存在と曝露した可能性があります]

「バクロ?」

「有害物質なんかと接触したって意味だぞ!」

 

 この存在がシャボンディ諸島近海にいるなんて、正直嘘でしょうと言いたいところです。

 ですが、か細く聞こえてくる「ここはとても暗い」「おれは……おれは誰だ?」「暗い、わからない、なにもなにもなにも」という嗚咽が、()()が存在していることを明らかに示唆しているのです。

 私は即座に財団に「アノマリー発見」「THAUMIEL」「危険」の信号を送りました。座標は恐らく私のボタンから算出し周辺が捜索されるでしょう。

 

「なんだかわからんが、お前はあの船があーなった原因を知ってんだな?」

[はい、ですが、アレはあまりにも危険です。また、外科、内科的な医学アプローチは無意味と言えるでしょう。心苦しいですが、接触せず応対しない事が一番の安全策かと]

「何!? 何!? 何がいるの!?」

「怖えよ!! この辺りに何がいるんだよ!!」

[恐らく我々は対象の接触範囲には入っていないかと。ですので、このまま進めば一先ず安全です]

 

 ミーム汚染は、あまり医学的観点から見るべきではありませんが、強いて言うなら脳に作用するものです。

 それは、悲しいことに私では治せません。

 私は、SCP故に高いミーム耐性を有していますが、サニー号の皆さんは現状不明。

 もしかすると、この世界の人間はミームに汚染されやすいとか、そういう特徴が潜んでいるかもしれないので、隔離が一番。

 

 会ったばかりの私の指示を大人しく聞いてくれる事がとても有難いです。彼らも、本能的になにか……あの船が危険であると理解しているのでしょうか。

 

「なー、あれって、()()()()()()()みてぇだけど、大丈夫なのか?」

 

 ふと、ルフィさんがそんな事を言いました。

 

[残念ですが、止めるのは不可能です。じきに……()になるかと]

「そっか」

 

 なんだか、あの人たちに起こっている現象を……汚染内容を、わかっているような言葉でした。

 いえ、彼は、知らないはずです。

 曝露された様子も無い。あの行動や言葉が、理解できるはずないのに。どうして、“消えていく”ことを知っているのか。

 わかりません、わかりませんが、ただ私は、神に呑まれゆく隣の船を、苦く眺めることしかできないのでした。

 

 船を引く牛のような生き物だけが、自分が繋がれた海賊船に一体何が起こっているのか、困惑したようにただまともな光を瞳に宿しています。

 

 SCP-3000“アナンタシェーシャ”

 オブジェクトクラス「THAUMIEL(財団の切り札)

 

 この世界は……そしてただウツボだけが残るのか?

 

 わかりませんね、私も、誰も。








◇早速遭遇THAUMIELガール
人が住んでいる島がある(恐らく)近海にいる財団の切り札、怖くない?
尋常じゃない船内の様子と聞こえる言葉にSCP-3000の存在を確認。即財団に通報した。偉い子。
でも太陽光の光が曇ってないし、サニー号のみんなが悪寒なんかを感じていないので、少なくとも現在地付近には居ないと推定。ミーム汚染の万が一の感染を防ぐためになるべく距離を取らせた。


☆ワンピ世界でのミーム汚染の扱いの話☆
精神に影響を及ぼすミーム汚染。
勿論パンピーは曝露したら即汚染されます。体を鍛えてようがメンタルに自信があろうが汚染されます。
そこから、覇気を使えるようになるとある程度耐性ができます。財団で言うミーム耐性がそこそこ高い人くらい。
更に覇王色も持ってると、ミーム耐性がガッと上がります。多少曝露してもなんのその。正気を保てます。
また、人(ワンピで言うところの人扱いされてる種族)以外の、海獣なんかは汚染されません。(チョッパーはたぶんヒトヒトの実の影響で汚染はされる。ちょっと耐性はあるかも)
そして、同じSCPにはミーム汚染が効きません。これもこの小説内での設定です。

ざっと
一般人<見聞色、武装色持ち<覇王色持ち<SCP
の認識でお願いします。

因みにSCP-3000はマシュマロからのリクエストでした。ありがとうございます。
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