どこかでまた第二弾書きます。
あらら、人質に取られてしまいました。
さっきの船に乗っていた方でしょうが、アナンタシェーシャとの曝露から復活しているようです。何故でしょう?
基本的に精神汚染は、特にアナンタシェーシャレベルのものは取り除く手段が無いはずです。彼は本来あのまま全てを忘れていく筈。
もしかしたら、この世界特有のミーム汚染対策があるのでしょうか?
それをマニュアル化し一般職員でも使えるようにしたら、かなり便利ですね。自覚しているかは不明ですが、後で聞いてみたいものです。
彼が殺されなければですけど……。
私は現在、口を塞がれ、胴体の辺りも押さえつけられて捕まっています。私の非力さだとまともな抵抗もできません。
そして、左側から銃を突きつけられている状況です。銃はこの世界特有の鉛玉を使用した鉄と木製パーツを組み合わせたもの。
精密製や湿気対策はまだ脆いですが、その一発は頭に撃ち込めば確実に人の命を奪えるでしょう。
麦わらの一味の皆さんも流石に焦っている様子。下手に大技を撃ったりしたらシャボンが割れて即沈没らしいので、仕方がありません。
しかも、なんだか相手の体が流動的で、抵抗しようにも腕がすり抜けてしまうのです。
ジョーシーは甲板の影に隠れているので安全そうですが、私はどうしましょう。
金ボタンを押そうにも、財団の方はここまで来れるでしょうか?
深海1000メートル以下は現在の財団の技術力で来れるかわかりませんね。その後対応できるかも。
ですが、私が捕まったのはある種幸運かもしれません。これでジョーシーや別の人だったら、それこそ詰みだったかもしれませんから。
私も腐ってもSCP。丈夫さには自信があるんです。
[私のことは気にせず、動いてもらって大丈夫ですよ]
「ば、バッキャロー! 撃たれちまうんだぞ!?」
[私、これでも丈夫なんです。ああ、でも、炎はちょっと嫌ですね]
「呑気なこと言ってる場合!?」
炎は、苦手です。燃えるのは、治しにくいです。
今度のパッチワークの素材は、燃えにくい素材にした方が良いでしょうか? 化繊は、焚き火とか、バーベキューの時には、使っちゃダメですよ。
燃えて焦げたところは、切り取って交換しないといけないので、大変なのです。
両手は塞がってないので、メモで大丈夫と伝えますが、皆さんお優しいのでなかなか攻撃してくれません。
銃くらいなら、本当に大丈夫なのですが。
んん、もどかしいです。
ルフィさんに、直接お願いしましょう。この人は、なんだか誰かの「大丈夫」をちゃんと信じてくれる人な気がします。
「ケヒヒヒヒ! お嬢ちゃん、強がりはいけねェ〜〜〜よゥ! 誰だって、頭をズドン!! ってされたらお陀仏さァ」
[ルフィさん、ぬいぐるみって丈夫なんですよ。絶対大丈夫ですから、どうぞ]
「おう、わかった!!」
「ちょ、ルフィ!?」
ルフィさんの腕が伸びて、その先の拳が黒く硬質に変わりました。なんでしょうか、あれは? ルフィさんはゴムの力を持っているそうですが、タイヤゴムみたいに変化したということでしょうか?
侵入者さんが、あわててこれ見よがしに銃を私の頭に押しつけますが、ルフィさんはお構いなしに、彼を殴りつけました。
鈍い音と、火薬の匂いがします。
「カイロス〜〜ッ!?!?」
ルフィさんのパンチが当たるのと、引き金が引かれたのはほぼ同時だったようです。
私の表面が破られ、中の、綿の中に何かが埋まる感覚がしました。人なら、たぶん脳に到達しているかもしれませんね。
ですが、ぬいぐるみに詰まっているのは、綿だけですよ。
チョッパーさんの悲鳴には申し訳ないですが、この通り、無問題です。
侵入者さんは、殴られた後、何回か芝の上をバウンドして、気絶してしまいました。起きたら、アナンタシェーシャの事を聞きたいですが、思い出させたら汚染が再発してしまうでしょうか?
頭の中に埋まった弾丸数発を、反対側のこめかみを叩いて取り出します。ポロッと出てきた鉛玉には、血の一滴もついていません。
ただ、ほんのすこし綿の糸が絡まっていました。
バスケットの中から綿と布を取り出し、補修します。穴の大きさは小さいので、すぐ縫えてしまいます。ちくちく。
最後に玉留めして糸を抜けば、布の模様は皮膚の色に変わり、髪が生えていた部分にはちゃんと髪が生えてきます。
私は、肌色も服も私の身体の一部ですが、肌なんかにあたる部分は、補修するとその色に変化するようです。
服はパッチワークになりますが、肌は血色の良い白い肌を保つわけですね。
そもそもこの服を脱ごうとしたことがないので、服が覆っている部分の中は肌がちゃんとあるのか、綿が詰まっているのかはわかりません。
胴体とか、服の下はすぐ
私が頭を縫っている間に、侵入者さんは樽の中に詰め込まれていました。ろぎあ? だから縄で縛っても意味無いそうです。
私の様子に、皆さん驚いた顔をしていましたが、いち早く我に帰ったロビンさんが、何か考えるように頬に手を当てました。
「貴女の故郷にいる、不思議な生物を『アノマリー』と言うのだったわね」
[はい、生物だけではなく、無機物や人工物を指すものでもあります]
「貴女も……また、アノマリーの一種なのかしら。生物以外も指すとするなら、それこそぬいぐるみ、とか」
鋭いロビンさんの考察に、私はにっこり笑います。「悪魔の実の能力者なのだろう」「人の姿をしているのだから、アノマリーでは無いだろう」という先入観を素早く捨て、情報を当てはめる能力は、なかなか簡単なことではありません。
彼女が財団職員になったら、とても優秀な博士になるかもしれませんね。
私は最初に、伝えましたものね、“カイロス”ではないもう一つの名前を。
[はい、私はアノマリー“パッチワークのハートがあるクマ”。現在は人型をしていますが、クマのぬいぐるみです。ジョーシーと同じく、危険性はありません。ご安心ください]
「クマの……ぬいぐるみだぁ?」
「おれァてっきり能力者かと……」
「本人の話し方から、悪魔の実よりアノマリーの方が馴染み深いと察せれたし、海水を恐れていない様だったからもしかしたら……と思ったのよ」
ロビンさんがニコニコと笑みを深めますが、もしかしたら、という割には確信を持ったセリフだったと私は思います。
ルフィさんやゾロさんはアノマリーってなんだ? という顔をしていますが、サンジさんがほっといて良いという顔をしました。
ルフィさんは侵入者さんの入った樽の上に座って、グラグラ揺れて遊んでいます。中に入っていたら酔いそうです。
悲鳴と命乞いの声が聞こえてきますが、まずはアナンタシェーシャの事について聞く事にしました。パンチの傷も、流石に樽の中に居られると詳しく見れなくて治しにくいというか……。おそらく自然治癒で治りますし。
私はメモに[貴方の船は皆さん心神喪失状態のようでしたが、なぜ貴方は無事なのでしょうか?]と書いて、樽のほんの少しの隙間に差し込み入れました。
すると、声が止み、読んでいるらしい沈黙が流れます。
「それを教えて、ケヒヒヒヒ、何になるんだァ? 情報戦は重要なんだぜ? アンタらをこれ以上有利にしちゃあ〜〜ダメでしょうよォ」
「教えないならルフィがもっと樽揺らすってよ」
「もっとグラグラさせるか! フランキー、樽も一個持ってきてくれ!」
「アーーーーイヤ! イヤ! イヤ! 便利なニュースは皆さんに伝えないとですよねェ〜〜オエッ、お、教えます教えますゥ〜〜ッオゲェ〜〜〜!!??」
……なんだか、手のひら返しの速さに情けなさを感じてしまいます。でも、案外こういうタイプが生き残るのですかね?
スパイの方の猫ちゃんはこっちに来ているのでしょうか、来ていない方が彼にとっては幸せなんでしょうか。
「み、緑の液体よォ! 露天商から買った、秘薬っつう薬を使ったのよォ〜〜! そしたら、おかしくなってた頭がスッキリ冴えて、身体も前より動くようになっちゃったりしてェ〜〜!!」
「秘薬ねぇ……なんか嘘くさいけど」
「ホントホント! 本当なのよ信じてェ〜〜!?」
うーん、緑の液体……財団関係で緑のものって、案外多いんですよね……。
海外では、毒は緑のイメージが強いのでしたっけ? だからでしょうか。
SCP関連なのか、この世界関連なのかはなかなか判断しづらいです。
とりあえず、一つに決め打ちして聞いてみましょう。
[貴方はこれまでの行いを「競争」と認識していますか?]
「そりャ、麦わらの一味を殺せばデッケェルーキーがひとつ沈む事になる! そしたら、この
うーん、まだ微妙なところですが、SCP-1853を利用した……かもしれませんね?
曝露者が競争と判断したものならなんでも力を強く発揮できる。代わりに、他者に対し攻撃的になったり、物事の全てを競技として見るようになる……。そういう血清です。
便利アイテムといっちゃ便利アイテムですが、攻撃性が高くなるのがネックですね。協調性が欠けてしまうパターンがあります。
SCP-1853によってミーム汚染を退けられるとは聞いたことが無いのですが、この世界の現象と同時に作用したのか、変異したのか……財団の報告を待ちましょう。
露天商が秘薬として売っていたとなると……その露天商はSCP-1853の詳細を把握していたんでしょうか? それともでっち上げて売ったんでしょうか。
効果が広まってしまうと、まだ血清が財団以外の者の手に渡ってしまっていた場合非常に危険ですね。
なかなか難易度が高そうですが、財団には回収してもらわないと。
この世界、個人の力がかなり強いので、物理的な力があれば割と好き放題できてしまうんですよね……。
そんな世界で、人としての能力を数段階上げてしまうSCP-1853は厄介です。
天竜人という逆らえない象徴があるとはいえ、あっちはあっちで最近は
禁止リスト、どれくらい新しく作られているんでしょうか。
巻き込まれたくないので、なるべくマリージョアには行きたくないところです。いつか行く事にはなるのかもしれませんが……どうか彼の大暴走にかち合いませんように!!
「何かわかったのかしら、カイロスちゃん」
[あまり……ですが、穏便にトラブルが落ち着いてよかったです]
「穏便じゃねぇよ〜! お前撃たれたんだぞ! ホントに大丈夫なのか!?」
チョッパーさんが泣きながら抱きついてきました。少女の体だと、チョッパーさんからの飛びつきは受け止めるにも一苦労です。
心配させてしまったのは申し訳ないですが、治せるなら無傷! なのですよ。
残機とか、入れ替わりは使わないのでご安心を。
[私の異常性は「治療」です。また、私自身ぬいぐるみですので、この身体は綿と布でできています。一撃で消し飛ばされなければ、まず補修は可能です]
「……痛くないのか?」
[触覚は存在していますが、痛覚はほぼ機能していません。故に、銃で撃たれても、針で縫っても無痛です。ぬいぐるみは頑丈ですよ]
「だ、だからって、あんまり自分を蔑ろにしちゃ、ダメなんだからなァッ!」
[それに関しては、申し訳ないです]
私は頭を撃たれても治せますが、人は頭を撃たれると治せないので……。
脳さえ、脳さえ大丈夫なら、私がいくらでも治せます。だからこそ、脳に危険が及ぶ時には、私が身代わりになってさしあげたい。
SCP-2295は人を治します。
SCP-2295は、人を治せないと悲しいです。
悲しくならないなら、銃の一発や二発、簡単に耐えて見せましょう。
子どもから大人まで、私は抱きしめたいのです。縋りたくはありません。
[では、危険な時はちゃんと助けを呼ぶことにします]
「おー! カイロスが危ない時は、おれが駆けつけてやるぞ!」
ですが、独りよがりになってもいけませんね。
私自身もまた、不滅なわけではありませんからね。
◇人質クマ〜><
深海に入ってから怒涛のSCP発見に嫌な予感がしてる。
マリージョアのニュースが最近異様に多いのも嫌な予感がしている。
博士の奇行には巻き込まれたくないが、自分の知らないところでアイドルにプロデュースされかけていた。
チョッパーが「治すひと」という役なので個人的に気に入っている。戦うのが強い人より守ったり治すのが強い人が好き。