「なぁオイッ! あの海坊主もアノマリーってやつなんじゃないのか!?」
[すごいですねぇ、私初めて見ました]
「違ったああああ!? 深海のバケモンだあああああ!!」
更に海底へ向かい、太陽の光も届かない深海。
途中、海の怪物クラーケンに遭ったり、ルフィさんたち3人が逸れたりとトラブルもありましたが、なんだかピンチでも愉快で楽しいです。
深海関連の情報は、案外侵入者さんことカリブーさんが持っていました。
この船が沈んだら自分も死ぬと考えたんでしょうね、細かく深海について教えてくれましたよ。
ですが、隙あらば船を乗っ取ろうと私や誰かを人質に取ろうとするのはいただけません。チャンスを逃さない血清の作用が働いているのかもしれませんが、問答無用でコテンパンにされる様子はあまり楽しいものではありません。
さて、今も、目の前の海坊主さんがサニー号を狙っています。
チョッパーさんやウソップさんの悲鳴がすごいです。
隣に自分より慌てている人がいると落ち着く現象なのかもしれませんが、なんとなく、この程度の苦難ではこの船は沈まない気がして。
巨大アンコウや海坊主、幽霊船なんて、この世界にいるんですねぇ。地球では小さな窓かカメラからの映像でしか見れないような深海が、甲板から一望できるなんて夢のようです。
なんて、のんびりしてたらルフィさん達が戻ってきました。
「スルメはもうおれ達の仲間だ! あと、コイツも!」
「ヒェッなんだこのドデケェ怪物はぁ〜〜!?!?」
「とても巨大だけれど……オオグソクムシかしら」
クラーケンは、私はSCPで心当たりが無かったので、現地の生き物と思ったのですが……この大きな大きなオオグソクムシは、SCPでしょうか? それとも、現地?
クラーケンほど大きく、甲殻と脚を持つそれは、黒い瞳で私たちを観察しているようです。
複数体いるらしく、後ろにあと3体ほど控えています。彼ら……? は、なにやらジェスチャーをして、同族同士でコミュニケーションを取っているようでした。
うーん、既存の生物が元ネタとなると判断が難しいですね。
[もしかしたら、そちらの方はアノマリーかも。名称は“水の咎、息子の罪”]
「随分と詩的な名前じゃねぇか。なんか伝説でもあるのか?」
[彼らというより……彼らを研究していた男が由来、かもしれませんね。浪漫のある話ではありませんよ]
「ふぅん、こんな深海にいる虫を熱心に研究してる奴も居るのか。酔狂な奴だな」
推察ですが、SCP-6994ですね。
一応、オブジェクトクラスはKeterなんですけど……元記事を読むと、なんとも複雑な気持ちになります。実際はExplainedとしても問題はないかもしれないくらいには。
知能は高いですし、現状ルフィさんに従っているようなので、余程のことが無ければ危険性は薄いでしょうか。
彼らが人を殺したのも……知能が高い故の好奇心っぽいんですよねぇ。残念ながら私は彼らと対話することはできないんですが。
「海なのに、こんな虫って感じの生き物もいるんだな……」
「カニやエビと同じようなものよ? あれらもよく見てみると虫に近い見た目だと思うわ」
「ってことは、コイツら美味いのか!?」
ルフィさんが涎を垂らしてSCP-6994にグルリと顔を向けました。
その様子に、言葉がわからなくても何を考えられているのかわかったんでしょう、彼らの顔色がどことなく青褪めた気がします。
かわいそうに……。
[オオグソクムシはカニやエビのように肉は厚くありませんし、味も不味いと聞きますよ]
「そうなのか……じゃあ食わねぇ!!」
「まず、得体の知れない生物を食べないで欲しいんだけど……」
あ、でも日本だとごく一部で食用に加工されてましたねぇ……。天然のオオグソクムシは確か海底火山の毒素などを蓄積している可能性が高いので、むしろ毒らしいですけど。
養殖なんでしょうかね? たしか私の知っているものだとお煎餅になっていましたね、私は食べたことないんですが。
これはルフィさんには言わないでおきましょう。
[そもそも海底火山付近の生物は火山の毒素を摂取しているので、食用にできないのでは?]
「海底火山って毒があるのか!?」
「あー、クソジジイが深海の魚はシンナー臭いとか何とか言ってたような……」
生存環境も極限なので、可食部位も多くないですし、案外漁師さんには嫌われていることが多いです。あのかわいいメンダコも、漁の網にかかると舌打ちされるんだとか。
食用にできないものには厳しい日本人のサガが出ている気がしないでもありません。
「海底火山といえば、あれだよな?」
「そうね、今まさに噴火しようと揺れている、あれね」
「へぇ〜海底火山って怖いんだな〜」
「…………」
「噴火するぞぉおおおおお!?!?」
火山の火口は今まさに溶岩を弾け出さんと輝いていて、どこからか地響きも聞こえてきます。
ルフィさんたちの帰還により少し緩んでいた空気が、一変して緊迫感のあるものに戻ってしまいました。
噴火は、もう避けられないほどに近くなっています。ナミさんから指示が飛ばされ、スルメさんも海坊主さんも、SCP-6994たちも大急ぎで火山から離れていきます。
皆さん一斉に同じ方向に逃げるのは、緊張感が足りませんがどこか愉快ですね。
「その水の咎……? ってやつは、なんか特別な力とか持ってないのかよ!?」
[頭が良いです]
「じゃあ今は意味ねぇなッ!!」
スルメさんが船を持って運んでくれてます。全力ダッシュでなかなか揺れますが、そんなことを言っている場合では無いですね。
SCP-6994の方が、脚の構造故なのか走り方の問題なのか、スピードはあるのですが……彼らにサニー号を持ってもらうとなると、どうしても「捕食」の位置になりますからね。
ですが、SCP-6994たちのうち二匹は、わざと遅れて前方に岩が飛ばない様にガードしてくれているようです。一匹でも生存させるための、盾の知恵でしょうか。
これによって、結果的にサニー号も岩の衝突を免れています。
「おおー! フライ、スシ、ありがとなー!!」
「エビみたいな名前つけられとるー!?」
「崖、飛び込んで!!」
「断崖絶壁、絶体絶命〜〜〜!?!?」
噴火の規模は凄まじく、大量の岩石がこちらに向かってきます。
なんとかフライさんとスシさんが庇ってくれていますが、防ぎきれなかった岩がゴロゴロとこちらに……!
「っ、必殺! 緑星!!」
後続SCP-6994の二体が崖を飛び降りたタイミングで、ウソップさんが何かを撃ち出します。
それは、即座に巨大な植物へと成長し、数秒ですが岩石を食い止めてくれました。その隙に崖壁から離れれば、岩肌に沿って落ちる岩石から逃れることができます。
「ナイス、ウソップ!」
「どんなもんよ!」
ウソップさんも鼻高々です。元々長いですが。
「! 待て、まだ上から岩が!!」
フランキーさんの声に上を見やると、私たちの頭上、すぐ上に、大岩の一つが落下してきています。
海流に乗ってしまったのか、勢い余って飛び出したのか。
崖から飛び出したばかりの今の今では、避ける動作はスルメさんにはできません。
あわや、直撃──
「ナベェーーー!!?」
ナベ、と呼ばれた一匹のSCP-6994が、勢い良く飛び出しその体で落ちる大岩を受け止めました。
甲殻類とはいえ、流石に火山による流石の威力には耐えられなかったのか、バキバキと殻が砕ける音がします。
ですが、なんとか大岩を弾き、サニー号とスルメさんは大岩の脅威から抜け出せたのでした。
「ナベー! 大丈夫かー!?」
「とにかく今は崖の下に無事に着地することを考えて! 無事の確認は後よ!!」
「おそらくこの崖の下は確実に海底一万メートル……魚人島はもうすぐです!!」
暗い、暗い、崖の下。
真っ暗な、光も何も無い闇に呑み込まれた、と自分の手の場所すらわからなくなった時でした。
暗黒のトンネルを抜けると、そこは魚人島だったのです。
天使のはしごが、強く上からかかっていました。
巨大なシャボンが島を覆い、辺りをクジラや海王類が回遊しています。底は砂のようで、その白さが光をより強く反射しているのです。
ある人がみたら天国に来たと勘違いするかも知れませんね。それ程までに美しく、神秘的な光景が私たちを迎えたのです。
スルメさんは、我々をそっと砂地に降ろしてくれました。
「あ、ナベ……それに、フライとスシも」
「ボロボロね……」
私たちを庇ってくれたSCP-6994たちは、その殻や脚の一部を大きく破損させていました。ひび割れや、折れた部分が痛々しく、光の反射しない瞳はどこか苦しさを訴えているようです。
唯一無傷の、彼らの中でも身体が一際大きいリーダーらしき個体が、彼らを労るように触角で傷を撫でていました。
「守ってくれて……あ゛り゛がどな゛ぁ〜〜!!」
「虫って言ってごべ〜ん!!」
「身を挺して守ってくれたこと……オゥ! 忘れねぇぜッ……!」
傷自体は、おそらく数度の脱皮で回復するでしょうが……その前に脱皮不良を起こしそうで怖いですね。治してあげたいです。
ですが、さすがの私でも海底一万メートルの水圧に耐えれるかは自信がありません……。
せめて、魚人島内でどうにか治療できないでしょうか。
スルメさんには負荷をかけることになりますが、私たちが魚人島に入国した後、あの4体を運んでもらえないかお願いしてみましょう。
少なくとも、リーダーはあそこから動く気配が無さそうですから……。
そう、目の前の重症者の事を考えていた時です。
サニー号の前方に、巨大な海獣の群れが立ちはだかりました。深海は巨大な生物が多くて、感覚が麻痺しそうです。
スルメさんやSCP-6994より大きいそれらは、魚人が使役しているようで。
なにやら傘下に下れと言っていますが……よくわからない契約は、しないに限ります。
一ヶ月で解放と言われていたのに、記憶を消されてもう一ヶ月……を永遠に続けることになりますよ。
私にとってこれが初の魚人との遭遇なのですが、なんだか敵対的な空気で残念です。
麦わらの一味の皆さんは、お初では無いようですが……。
あんな理不尽さが魚人にとっての当たり前、とは考えないようにしましょう。なんだか明らかに異常みたいですし。
「そこのオオグソクムシはお前らがやったのか? 人間ってのは非情だなぁ! ハモハモハモ!!」
「……あぁ?」
「相手にしないで、ルフィ!」
[ルフィさん、彼らは私が治してみせます。まずは、この状況から抜け出しましょう]
恐らく彼らの狙いは人間である麦わらの一味の皆さん。こちらに気を向ければ、SCP-6994達に手出しはしないと予想しました。
彼らを広い場所に移動させ、私が縫えば甲殻は復活できます。なんとか……なんとか堪えてください!
でも、私もちょっとムッとしたので、あの人たちにはあっかんべーしておきます!
やーい! 貴方なんかブライト聖の標的になれば良いんです!!
「突入するぞ〜〜〜!!!」
そうして、シャボンを突き抜けて無理やり入国した先。
私は、洗濯されるぬいぐるみの気分を味わったのでした……。
◇やーい!おっまえんち、サイト13〜!!
元記事からしておそらくSCP-2295が治せるのは「人間のみ」の可能性が高いのですが、この世界は人間の定義が馬鹿広いのと、彼女には沢山のものを治していってほしいので、この小説では「生物なら治療可能(生物系SCPも含む)」にさせていただきます。
チョッパーだけ治せないとか悲しいので……。
本人は他人を害することが嫌いなだけで、普通に怒りの感情はあります。怒ったからって他人を叩いたりはしませんが、内心でちょっとチクチクしてたりします。
SCP-6994はサイズ感がよくわかんなかったのでクラーケンサイズになりました。
オオグソクムシのお煎餅はたぶん竹島水族館に売ってます。