パッチワークとハートの私   作:月日は花客

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禁断のTale二度撃ち。
財団君も頑張ってはいるんです。






Tale:ざいだんもがんばってます

 

「主任〜……もう嫌です、私本部じゃなくて支部の職員になりたいです……」

「気持ちはわかるが我慢してくれ、ロメン研究員。本部の人間は極力異動は無しになっている」

 

 財団本部はマリージョアに程近い島にある。

 近辺を人工の霧で覆い、人工物の配置によって意図的に島を避けるようにカモフラージュされている。本部は当たり前だが財団の中で一番敷地面積が広く、収容しているアノマリーも多い。

 そして、その危険性もまた、高いものが多い。なにより、まだ地球時代よりも規模が確立されていない今、中核を担う本部の安定は必須だ。

 その為、本部に配属された人間はテストの中でも優秀であり、突発的な現象にも強いエリートだ。簡単に異動はできない。

 

「本部の職員はスーパーエリートって言いますけどね、現実は、ブライト博士のお守りじゃないですか!!」

「今はブライト“聖”だ。あの人の行動は奇想天外だが、研究自体はとても優秀な人で、財団には不可欠の存在なんだぞ」

「でも主任、その人に『ロリコン』って呼ばれてたじゃないですか」

「…………」

 

 その言葉に、主任は押し黙った。

 彼は、現在SCP-2295の担当研究員の一人として、管理を任されている。

 SCP-2295はこの世界で「変異」が確認された特殊なSCPであり、地球ではクマのぬいぐるみで、意思疎通も困難だったが、今はなぜか少女の姿をとり明確な人格がある。

 故に、彼女の特別収容プロトコルが見直され、担当チームが結成されるに至ったのだ。

 

 彼女と直接会話したエージェント・BKの報告書からもわかるが、彼女は姿形が変容してもその優しさを失わず、寧ろ行動範囲が広がったことにより更なる健気さの発現を見せている。

 他者を気遣い、安心させ、癒す。

 SCPの中でも珍しい人間への献身と無償の愛は、本部担当のSCPの中でも極めて安全で優しいものだ。

 

 故に、彼女の担当に配置された職員は他のチームからなにかと羨ましがられている。

 

 やれ「かわいくて無害な女の子とお茶会してる」だとか。

 やれ「何の危険性もない良い子の優しさを独占している」だとか。

 「ロリコン」「ペドフィリア」「アリスソフトの住民」「keyの主人公」「ロリっ娘ASMRとか内部で流通してんだろ」だとか……。

 

 どうやら本部の他チームは随分とストレスが溜まっているらしい。定期カウンセリングの機会を増やすべきか。

 

 そもそも主任は地球時代……SCP-2295がクマのぬいぐるみだった時から実験に参加していた職員だ。別に彼女が美少女になったからといって欲目があって志願したわけではない。

 少女……外見から確認できる発育状況から小学校二、三年生ほどなので幼女とも取れるSCP-2295を邪な目で見る奴が、担当チームに配属されるわけがないだろう。

 

 あと彼女は発声が不可能なのでASMRはできない。メモにかわいらしい丸文字でちまちまと言葉を伝えてくる様子は微笑ましいが。

 主任は断じてロリコンではなかった。なんなら既婚者だ。嫁は年上だし警備隊に配属されているくらいには逞しい女性である。

 娘ほどの外見年齢に精神年齢をもつSCP-2295に邪な感情など抱けるわけがない。

 

 だがしかし、傷つくものは傷つく。

 主にそんな目で見られていることが。

 風評被害が過ぎる。おそらく訴えたら勝てるかもしれないが、それは相手が平民だった場合の話で、相手は天竜人。心労が計り知れない。

 

 それに、SCP-2295の担当とはいえ、その業務内容はSCP-2295より他のアノマリーに関係するものが多い。

 現状の財団は、危険性の高いアノマリーを優先的に確保、収容している。オブジェクトクラス自体はSafeでも、漏洩すれば甚大な被害をもたらすものも多くある。

 そして世界各地でアノマリーが確認されている以上、エージェントのやりくりや人員配置にはどうしても余裕が無い。

 

 Dクラス職員は反抗心が強く、無駄な犠牲も多い。

 その為、未発見のアノマリーを捜索する人材が足りなかったのだ。

 そんな中、白羽の矢が立ったのがSCP-2295である。

 極善とも言える安全性、理性のあるデリカシーも兼ね備えた穏やかな性格、そしてSCP故のある程度の破壊耐性や修復可能の身体。

 そしてこれはすべてのSCPに共通するのか不明だが、彼女はアノマリーが近くにいた場合、ほんのりとだがその気配を察知し、またどの様なSCPかをある程度把握しているらしい。

 他SCPの番号や異常性をなぜ彼女が知っているのかは不明だが、これ以上の逸材はなかった。

 

 だから、SCP-2295及び彼女に懐いているSCP-529を、外部捜索員として特例で単独行動を許したのだ。

 他者を傷つけることを酷く嫌い、冷静で自身の立場をよく理解している彼女は、アノマリーを探すのに適任だ。

 

 ある種収容違反と捉えられても仕方がないが、財団の現状に顔を向けると、ぬいぐるみの手でも借りたいほどなのだ。

 勿論情報の規制はかけるし、彼女が意図的に人間を害した場合直ぐに確保に走る様にはしている。

 できる限りのサポートもしていく予定だ。

 

 そうして送り出してから、早々に彼女はSCP-3000の存在を確認した。

 更にはSCP-6994など、次々と未確認だったアノマリーを発見していく。

 通信が入るたび、我々担当チームは座標の検索とオブジェクトクラスから対応の会議、そして収容のための手続きに追われるのである。

 

 そのため、彼女との関わりは彼女につけた報告用端末の単語くらいしか無く、彼女が見つけたアノマリーの対応の方が業務の大半である。

 残念ながら、彼女にお茶会に誘われたことなど一度も無いし、他チームが羨む癒しイベントはほぼゼロと言って良い。

 

 そんな中に、ブライト聖の奇行が挟まるものだから、罵倒され損なチームでもあるのだ。この担当は。

 何が悲しくて、SCP-3000の対応の書類を作成している時に「ロリコン」と罵られなければならないのか。

 ストレートな言葉はしっかり心にヒビを入れるんだぞと怒鳴ってやりたい。

 

「この前なんて、SCP-2295の信号から推定アノマリーの報告書を作ってただけなのに、ブライト博士が作った缶バッジとクリアファイルについて問い詰められるし!」

「ランダムブラインドかつシークレット有BOX買いしても全種揃うかわからないクソ仕様だったしな」

 

 それをテディベアがトラウマになっているサイト24の連中に売りにいくんだからタチが悪い。

 前のマリージョア三分の一崩壊事件といい、優秀さのために日々の平穏を犠牲にしている気がしてならない。

 

 主に被害に遭っているのは海軍と天竜人だが、それの後始末をするのはいつだって財団なのだ。単純に増える業務量には時たま殺意が湧く。

 

「……まぁ、でも、サイト24やサイト19よりは、圧倒的にマシ……なんでしょうかね」

「いや、それは──」

 

 どうだろう、と言いかけたところで、けたたましく警報が鳴った。

 パターン青、ブライト聖のやらかしだ。

 

『ブライト聖がマリージョアにSCP-1568-JPを設置しました。手の空いている職員は対応を要請します』

 

「あの野郎、性懲りもなくまたマリージョアにSCP置きやがって!!」

「今月10回目の収容違反ですよ、もうやだぁ〜〜!!」

 

 様々な部署から、ブライト聖への罵倒と共に職員が飛び出してくる。

 天竜人はその特性上非常に上から目線であり、また自己中心的だ。

 正直、好ましい奴らではないが、SCPにより落命するのを許可できるほどではない。そもそも我々の理念に反する。

 

 マリージョアでニヤニヤと挑戦を観察しているであろう首飾りの目立つ男を想像し、禁止リストに加わる文面を推敲する。

 何が財団本部だ、こんなの、あの問題児の尻拭いの組織だろうが!!

 

 ただでさえ秘密主義から海軍にも政府の一部からも怪しまれているというのに……やはり、我々の癒しはSCP-2295しか居ないのだろうな……。

 主任の瞳は、光が無く遠いどこかを見つめていた。

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