何かしらの番外編では出したいので、お気に入りのジョークSCPをマシュマロに送ってね☆(高度なマシュマロ稼ぎ)
報告35:彼方
「ルフィ様達、本当にもう行ってしまわれるのですか〜〜!?」
しらほし姫が号泣してます。
ルフィさんは、魚人島をナワバリにしていた“ビッグ・マム”という海賊に、喧嘩を売ってしまったようで……一味の皆さんの何人かは、かなり悲壮感に包まれています。
そんな中、船を出してグランドライン後半、「新世界」に足を踏み入れるそう。
四皇というのは、とっても強い海賊とだけしかわかりませんが、要らない不興を買ってしまうのはなんであれ避けたいことですもんね。
ナワバリとして守ってもらっていた海賊に恩人が啖呵を切ってしまって、ネプチューン王達も焦っているみたいです。
新世界は常識が通用しないグランドラインでも、前半よりもっと過酷で厳しい道のりだそう。
「そういえば……カイロスちゃんはどうするの?」
一味の皆さんにも、ミスター達がここに残ることは言ってあります。
ただ、私がどうするかは、伝えていませんでした。
王からは、シャボンディ諸島まで送る船を出しても良いと言われましたが……正直、迷っていたんです。私が進むべきなのはどこなのか。
きっと、財団も財団の方でアノマリーは探していて、安全な海ほどその探索はしっかりと行われているでしょう。
歴戦の海の戦士ですら、簡単に散る可能性のある「新世界」……そこに、財団の手はどれだけ入れているのか。
そして、荒れた海の中、傷ついている人はどれほどいるのか。
ミスター達の選択を財団に知らせる中、私はこれから……。
[折り入ってお願いがあります。私を、サニー号に乗せて行ってくれませんか?]
「えぇ!? カイロスがうちに!?」
[一味の仲間にしてくれとは言いません。ただ、船に乗せて旅に同行させて欲しいのです]
ルフィさんは、仲間にする相手を何かしらの基準で選んでいるみたいです。なので、私が軽々と一員にして欲しいとは言えませんし、私には既に財団という所属先があります。
私一人では、新世界を渡るなんて不可能でしょう。
ですが、今回魚人島の騒動をご一緒して、麦わらの一味の皆さんなら、信用できると感じました。私の異常性を、思想を、肯定してくれる。彼らには彼らの信念があり、それを貫徹する覚悟がある。
並の海賊ではない。
そう、わかるのです。
強さだけでなく、どこか他人を笑顔にするような、誰かを救うことを厭わない性質を感じるのです。
だからこそ、このお願いをすることを決めたのでした。
私の申し出に、ウソップさんやナミさんが驚きます。
「いやいやいや、カイロス! おれ達はビッグ・マムっちゅうヤベー海賊に喧嘩売っちゃったんだぞ!?」
「そうよ、ルフィの旅についてくなんて、命がいくつあっても足りないんだからね!?」
「お、カイロス付いてくるのか? いいぞ!!」
「アホーーーーーッ!!!」
……これが船長の扱いでいいのでしょうか。一味の皆さんと話しているとたびたび思うのですが……。
でも、ルフィさん本人の許可は出ました。あとは、他の皆さんを説得するだけです!
[もちろん、船のことのお手伝いはさせていただきますし、万が一の臓器置換もお任せください。お邪魔にはなりません]
「船の雑用なんかの問題じゃなくて……小さな女の子が行くには、新世界は危険すぎるわ」
「そーそー! ルフィはわざわざ危険な島に行こうとするバカなんだぞ!?」
むむむ、お優しいゆえか中々折れてくれません。
でも私はもう決めたんです。新世界で困っていたり危険なアノマリーを財団に報告しつつ、傷ついた人を癒すのです。
ルフィさん達は、この先もたくさん怪我するでしょうし、危険な道のりなら尚更ついて行きたいです。
私は、少しの間の後、エプロンにいるジョーシーを左大臣に持ってもらいます。
そして、もう一度ルフィさん達に向き直りました。
[それなら、私にも考えがあります。私は私一人で船を出して、一人だけで新世界に行きます!]
「ええーーッ!? じょ、ジョーシーはどうすんだよ!?」
[魚人島にはミスター達がいらっしゃるので、そちらでお世話してもらいます。これなら危険なのは私だけです。耐久性には自信がありますよ]
「あら、相当に決意してるみたいよ? 彼女」
「そ、そこまでするかぁ……?」
私はそもそもが頑丈ですし、欠損は縫えば自己補修できます。無茶が効く体です。
と、己を人質に迫れば、ロビンさんが面白そうにニコッと笑いました。
「なー、カイロス乗せるくらい良いだろ? 船が賑やかになる! シシシ!」
「もー……こんなハチャメチャ言われるなんて」
「元々ホーディの懐に突っ込んでった奴だぞ? 度胸は筋金入りだ」
自分の小柄としか言いようがない体で胸を張ると、ナミさんは諦めたようにため息を吐きました。
流石に、私一人の旅と一味に混じっての旅なら、後者の方がマシと考えたのでしょう。
「わかった! わかったわよ! うう、そんな目で見られると弱いのよわたしは……。でも、危ないことは許さないからね!」
[はい! 許可、ありがとうございます。不束者ですが、よろしくお願いします!]
「シシシ! よろしくなー、カイロス!!」
[ルフィさん、サニー号にお邪魔します。改めて、“パッチワークのハートがあるクマ”ことカイロスです! ジョーシー共々、旅にご一緒させていただきます]
私は、左大臣に持ってもらっていたジョーシーを引き取り、エプロンに戻します。ほんのり、左大臣さんの手が名残惜しそうでした。
ジョーシーは、茶番を見るような呆れた目線で、私のエプロン内に大人しく収まりました。
この中で、一番冷静なのはもしかしたらジョーシーなのでしょうか……。
何はともあれ、乗船許可をいただいたので、私もサニー号に乗り込みました。
芝生の感触が、短い間しか乗ってないのに既に懐かしいです。
「オウ! 歓迎するぜ、カイロス!!」
「ヨホホホ、旅の同行者とは、ここで一曲! 『ニュー・カマー』!!」
「カマ……うっ頭が」
「何だこの眉毛」
ふふ、やっぱり麦わらの一味は賑やかです。
多くの方の見送りをいただきながら、船が出航します。
しらほし姫の約束は、私も“約束”したかったですけど、離れて笑うのみに留めておきました。
指を合わせずとも心が応えている、という訳ではなく……ただ、私が次にしらほし姫と出会えるか、わからなかったからです。
ミスター達と笑ったように、私やミスターは、次に会うのは収容室かもしれません。
財団がいつ、私を回収しにくるか……収容の準備が整うか、わからないのです。
あくまでも、この自由なひとときこそ“特例”。本来は、もう遊び終わったテディベアの様に、箱に仕舞われているのが私なのですから。
そう考えると、しらほし姫と私は、少し似ていたのかもしれませんね。
私の場合、「閉じ込められているのが普通」なのですが。
財団の活動は立派だと思いますが、収容室から出られなくなる時を考えると、ちょっと寂しいですね。
サイトが分かれても、気軽に会いに行けなくなりそうですし……SCPのお友達も、この際たくさん作っておきましょう。
ジョーシーの頭を撫でれば、「ンナ〜」と珍しく甘えた声が指を震わせました。
*
『誰でもいいから助けて……ここは』
『パンクハザード!!!』
その後の叫びが血を吐く嗚咽と共に切られました。
いつ見ても不思議な電話の電伝虫さん。緊急信号もあるなんてとっても便利。盗聴とかどうやってるんでしょう。
私とて、助けを求める声には応えたいですが、ロビンさん曰く緊急信号の信用度は50%以下。罠の可能性も高いとのこと。
こういった、人の油断を狙うSCPも多いですから、不透明に信じるのは躊躇ってしまいます。
しかも、そのパンクハザードとは地獄みたいな火の海をつくっている島らしいです。
暑さは平気ですが、火は苦手です。
燃えるのは怖いです……。
ジョーシーも、流石に暑さに負けてエプロンから出ていきました。
「あの連絡したやつ、助けに行こう!!」
「もう手遅れだーーッ!!」
「コエーーー!!」
「私もコエーーー!!」
ルフィさんはあの島に上陸することが、もう脳内で確定してるみたいですね。罠を疑わず助けに行く姿はとても眩しいです。……興味をそそられるから、という理由もある気がしますが。
私も行きたいですが、炎は私の数少ない弱点です。耐火性もそこそこ高くはあるものの、やはり布製ゆえにどうしようもない怖さが……。
「あーもー! こうなったらクジよクジ! 当たった人がルフィに同行して!」
「天の女神よ、おれに救いをーーッ!!」
「テキトーに作った。アタリは色付き」
「おれ絶対行きたくないぞ!?」
なんだかクジ作りが手慣れている様な気がしますが、案外どのメンバーが選出されても気にしない信頼からくるものでしょうか。
私も引こうとしましたが、止められました。私とジョーシーはお留守番確定みたいです。しょんぼり。
皆さんと一緒なら、勇気を出して火の海に飛び込めたんですが……。
「はーい決まり決まり! あくまでも偵察よ、何も無かったらすぐ帰ってきて!」
「おう! サンジ弁当作ってくれ!!」
「深海魚の肉使って作ってやるよ」
「誰か代わってくれェーーッ!!」
選出メンバーはルフィさん、ゾロさん、ロビンさん、ウソップさん。
ウソップさん以外は、島の探索も怖がっていないみたいです。
ウソップさんの交代枠にアピールしてみましたが、私はそもそも代打選択肢に無いのかスルーされてしまいました。またもしょんぼり。
「偵察用ミニメリー! 四人ならコイツが丁度だ、行ってこい!」
「メリー〜〜! 行くぞ、パンクハザード!!」
サンジさんからお弁当を受け取り、ルフィさん達は雲の道を進んで島の中に入っていきました。
遠くには火山も見えるほど燃え盛った島ですが、中には一体何があるんでしょう。
火のSCPも、厄介なのが多いですねぇ。本命の能力とは別口で炎が扱えるものもいますし、予想しようにもまともに観測できるかどうか。
暑すぎて蜃気楼すら見えますもん。
「――?」
おや、暑さに耐えかねたジョーシーが見当たりません。
涼しい室内に行ったんでしょうか?
私も流石にチリチリと揺れる炎に目が疲れてきた気がします。少しでも火から離れられる室内に移動しましょう。
サンジさんはキッチンでデザートを作ってるみたいですが、ここにはいませんね。
あまり部外者が船を彷徨くのも避けたいですし、変な場所に行ってないと良いのですが……。
皆さんの部屋や個人的なスペースを避けて、涼しそうな場所を探ってみます。
アクアリウムのある広間は、水槽も相まって、なんだか他の部屋より温度が数度低い気がします。
水槽の影のゆらめきも、爽やかな感じで、上の熱気が嘘みたいです。
なんとなく、ここが今のサニー号で一番涼しい気がします。水もあって、火の気配が遠いです。
並べられたテーブルの下を見ていくと、隅っこの、壁とアクアリウムに一番近いテーブルの下に、ジョーシーが丸まっていました。
確かに、ここはかなり涼しいですね。灼熱とは縁遠い位置です。
起こすのも忍びなく、サンジさんの料理ができるのもまだ先でしょうし、なんとなくジョーシーの寝顔を眺めていました。
黄緑の首輪と通信機の金ボタンが、私のものと同じく光っていて、お揃いが嬉しくて、にっこりしちゃいます。
この色の首輪を選んでくれた財団員さんには感謝しないとですね。
ここまで賑やかで元気だった船上とは違い、静かで落ち着いた雰囲気。
ジョーシーの寝息だけがBGMの世界で、私はのんびりとテーブル下の冷たさを享受するのでした。
◇火は怖いクマー
マッチ程度の火では焦げもしないが、パンクハザードの炎は実質的に海軍元帥の悪魔の実による炎なので、本能的に恐怖を感じている。たぶんサンジの悪魔系の技も怖い。
新世界一人旅はあくまで動揺を誘うための釣り糸なので、本気でやるつもりは無かったです。釣られクマー(釣る側)
人の姿になってお友達がたくさんできて嬉しい。
もうほぼ消えかけてる設定ですが、元人格になった転生前の人も友達少なかった(病院生活)ので、誰かと一緒にいること自体が嬉しいタイプです。