パッチワークとハートの私   作:月日は花客

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お久しぶりです。
すこし文字から離れていたらブルックの過去が更新されたりエアコンが壊れたりメロンアレルギーが悪化するなどしました。
しかし本編は吹雪の中です。納涼になれば。


報告38:結露

 

「ま、撒きましたかね……?」

 

 首と下半身の無い侍に追いかけられてどれくらい経ったか、私はブルックさんに抱えられていました。

 お姫様抱っこというやつです。ブルックさんの長い腕は、片方だけで私を簡単に持ち上げられます。もう片方は、念のため剣をずっと構えています。

 

 メイは、頑張って走って私たちに着いてきてくれていました。ただ、足元は冷たい氷雪ですから、途中防寒のためにちょっとしたシューズのようなものを作って履かせました。

 肉球が凍傷になるのは、避けたいですからね。メイはこの中で唯一冷えからの被害を受ける生物ですから。

 

 ブルックさんに抱えられながら、私もまた洗面器を抱えていました。SCP-317-FRのためです。

 SCP-317-FRは冷たい吹雪の中既に固体に戻っていましたが、私には攻撃性を示しませんでした。

 ブルックさんに被害が行かないように、私が抱えて行動範囲を狭める必要があったのです。

 

 首無し侍から逃げている途中、早い段階で、私はブルックさんとはぐれかけました。

 なんせ、私と長身のブルックさんでは、コンパスの大きさが違いますから。それに、ブルックさんは脚がお速いです。なので、申し訳ないながらもブルックさんに抱えられる形が安全となったのでした。

 小さな体は、どうにもこういう時は苦労しますね。いえ、ぬいぐるみのままの時よりは大きくなっているのですが……。

 

 逃げたといっても、何処を見渡しても真っ白ですから、安全地帯に逃げれたとは思えません。

 このまま遭難する可能性だってあります。

 しかも、新世界はまともな方位磁石が機能しませんから、白の世界でぐるぐると消耗してしまうかもしれません。

 SCP-317-FR……長いので、ワウとでも呼びましょうか。ワウは現地にいたSCPなので、道案内ができるか訊ねてみましたが……首を横に振られました。

 

「私たち、どこまでサニーから離れてしまったんですかねぇ……おや? なにやら声が聞こえませんか」

 

 吹雪がビュウビュウと激しいですから、私たちの足音さえも消えてしまいそうな中、ブルックさんは何かを感じ取っていました。

 私には、何も聞こえませんが……私には無い鋭敏な感覚が、音を拾っているようです。

 何も無いよりはマシでしょうから、私たちはそちらへ駆け足していきます。

 ワウが揺れる水の中不満げですが、我慢してもらいましょう。

 

「……! ……ロォ!!」

「──!?」

 

 そうしてブルックさんが向かう方向へ意識を向けていると、だんだんと私にも声が……叫びが聞こえてきました。

 ウソップさんの声と……なにやら、複数人の知らない人たち。

 何か不味い状態であることは叫びから理解できましたが、吹雪の先に待っている光景は、初めて人魚を見た時のような衝撃がありました。

 

「ゾロ〜!! ルフィ〜!!」

「このまま撃て!」

 

 人の上半身と、獣の下半身。……ケンタウロス、と呼ばれるでしょう見た目の生物が、ウソップさん達を襲っていたのです。

 極寒の水の中に溺れるウソップさん達を、ケンタウロス達が一方的に攻撃していました。

 

 ケンタウロスというのは、この世界において人種として認知されているものとは聞いていません。

 ブルックさんも、その姿に驚いているようです。つまり、本来存在し得ない生き物……ですが、彼らは健康的に生命活動をして、戦闘行動に及ぶにまで身体を使いこなしています。

 なんの異常現象でしょうか?

 

 SCPの仕業か、この世界の摩訶不思議な力なのか……わかりませんが、私の視点からすると、あの身体達は「切除」されたもの同士が無理やりくっついているように見えました。

 そうですね……例えるなら、ハンバーグの半分とアジフライの半分が合わせられているような、ちぐはぐ。筋繊維や神経網が明らかに繋がっていないのに、意思通りに動いている。

 正直、私からするとショックの強い身体です。

 そんなチグハグさなのに、治療の必要な疾患や傷が見当たらないのが尚更違和感を強くさせる。

 

 複数の奇異な肉体たちに眉を歪めていると、そっとブルックさんが私を下ろしました。

 そして、剣を構え直します。

 その動作に、私は介入するべきでは無いと判断して、ワウを押さえながらメイの隣に控えました。

 メイはかなり身体を冷やしていますから、麻袋から温かい飲み物を出してもらい、飲ませます。メイは、自分が取り出したものが自分に使われることに困惑している様子ですが、私が望んだものに変わりありません。

 早く、寒さを凌げる室内へ行きたいのですが……。

 

「ここでお待ちを」

 

 その声とともに、ブルックさんの姿が吹雪とは違う冷気に包まれて消え失せました。

 ちょうど、銃口がウソップさん達に向けられたところですから、妨害するのでしょう。

 黄泉の冷気、というものは私もよくわかりませんが、命の気配に敏感な私が触れるとゾッとする恐怖が湧くものです。

 人にとっても、あの冷たさはひとたまりもないでしょう。

 

 そうして、数秒ののちに銃がいっぺんに暴発しました。

 白い世界で火薬の赤は作り物の目も焼くような眩しさです。

 

「いい所に来てくれた、ブルック!」

「ヨホホ、ちょうどこちらに走る用がありまして。ご無事でよかった!!」

「カイロスも一緒か!?」

「ええ、一緒です!」

 

 浮かぶ氷塊の上に立つ皆さんは、もうほとんど凍りかけでした。どうしてあれで、凍傷の深度が低いのかわからないほどに。

 この世界の人は、かなり耐久性が高いですからね。覇気によって強化されている以前に、身体が怪我に強い気がします。

 銃の暴発なんて、普通の人間なら頭ごと吹っ飛んでいてもおかしくないのに、ケンタウロス達は軽傷で済んでいるほどですから。

 

 パッチワークのハートのクマとしては、怪我の耐性が強くて嬉しいやら、丈夫さゆえに無茶をする方が多くて悲しいやら……。

 それだけ強くならないと生き抜けない世界なのでしょうが。

 

「ふふ……運が良いわね、私たち」

「あんなところに……」

「暖かそうな服!!」

 

 元々灼熱の世界からこちらに来たのですから、四名の方々は皆軽装です。凶悪な顔でケンタウロス達の服を狙っています。

 私が作れれば良いのですが、臓器や部位ではなく服を作るとなると難易度が高いですね……。

 素早く、正確なミシンよりも速い裁縫は、異常性を発揮する時にしか使えませんから。

 ここは追い剥ぎ行為には目を瞑りましょう。明らかに凍傷の被害が酷いのは麦わらの皆さんですから……。

 

「おし! おれはあのコートにする!」

「おれァあの毛皮っぽいのだ……」

「私はヒョウ柄にしようかしら」

「ほあええ! おえお〜あむん!」

「ヒッ……!?」

 

 目の色が変わったルフィさん達が、ケンタウロス達に襲い掛かります。迎撃しようにも、こちらには既にブルックさんがいますから、撃ち落とすにも斬られ凍らされ動けません。

 どちらが非道かわからない絵面ですが、私たち待機組はそちらを見ないように、メイと温かいミルクを乾杯しました。

 

 悲鳴が聞こえますが、そもそもあのケンタウロスの集団はなんなのでしょう?

 ああいった人体改造系のSCPは確かに系統として存在するのは記憶にありますが、大抵は改造された本人が相応の苦痛を味わうことが多いです。

 けれど、彼らは自身の体の変化に自覚的で、かつ有用と考えているように捉えられる行動をしています。

 そして、小隊を組めるほどに安定して行えるとなると、あまり心当たりはありません。

 そして、私のSCPを感知する第六感のような力が、反応していませんから。

 

 おそらく、現地の方の仕業でしょうが……明確に戦闘員として改造しているところを見ると、あまり良い目では見られません。

 あのチグハグさは、パッチワークとはまた違う異質さがあるのです。

 私の力と、客観的には似たり寄ったりかもしれませんが……私としては、同じにして欲しく無いというか……。複雑です。

 

 彼らの「余り」は何処へ行ったのか。

 それを考えてしまうのも、少しあります。

 では私が疾患のある内臓をどこへ消えさせているのか、と問われると、黙るしかないのですが。

 う〜ん、同族嫌悪? では無いと思うのですが……。

 

「カイロスー! おお!? おまえも暖かそうな服着てんなァ!!」

「な、なんか狼とよくわからん生物が見えるんだが、近づいても大丈夫なやつか??」

「へぇ、着替えられるんだな」

「あら、かわいいわね」

 

 追い剥ぎが終わったのか、ルフィさん達がこちらへ駆けてきました。

 ウソップさんは何やら怯えていますが、ワウはちゃんと私が押さえていますよ。

 ロビンさんは、ニッコリと笑って私の頭を撫でてくれました。えへへ。

 

[サニー号の襲撃により、ジョーシーと離れ離れになってしまいました。こちらは、狼の方が“やさしい子”ことメイ。カワウソが“液体カワウソ”ことワウになります]

「ジョーシーも連れてかれちまったのか……」

「猫ちゃんを攫うなんて、ひどい人たち……。肋骨を全部砕いてやろうかしら」

「コエェよ!?」

[メイは私たちにとって安全ですが、瞬間移動の性質上彼女に『ありがとう』等感謝の言葉をかけないでください。どうしてもの場合、撫でるなど動作でお願いします。ワウは]

 

 と、ここまで書きかけたところで、ワウが私の手をすり抜けてロビンさんの元へ脱走してしまいました。

 引っ掻かれてしまう、と腕を伸ばしましたが、ワウはロビンさんには攻撃せず、黙って抱かれました。何か、波長が合ったのでしょうか? ロビンさんは嬉しそうにワウを撫でています。

 

「なんだァ? 懐っこいな!!」

「へぇ〜どれどれおれもイッテェーッ!?」

 

 ロビンさんには大人しく撫でられていたのに、ウソップさんが撫でようとしたらその手を思いっきり引っ掻いてしまいました。

 ロビンさんと私以外はお触り厳禁なようです。固形の今なので攻撃的なのが原因ではあるでしょうが、引っ掻かれたウソップさんやブルックさんはちょっと不憫ですね……。

 

「ワウって言うのね。ひんやりしてるけど大人しくてかわいいわ」

「めっちゃガッツリ爪剥かれましたけどォ!? 見てこの赤い線!!」

「ふふふ」

「してルフィさん、これからどうします?」

 

 ニコニコのロビンさんを視界の端に、ブルックさんが問いかけます。

 確かに、合流はできましたがこのままここに居ても冷えるだけですね。

 私もどうするのか視線をルフィさんに向ければ、なにやらまた、やんちゃなことを考えてそうな笑みが返ってきました。

 

「ケンタウロスって、カッケーよな!!」








◇ネーミングはわかりやすさ重視
液体カワウソがロビンに懐いたのは単純に気に入られたから。
カイロスの能力とオペオペの能力は近くて遠い類似性があるので、本人としては同一に見て欲しくないけど似てるのも理解できて複雑な気持ちって感じです。
癒せる力をあえてケンタウロス集団といった戦闘用に用いてる所が引っかかってるのかもしれない。
カイロスは基本撫でられるの大好き。ぬいぐるみなので。
次回は攫われ組の描写予定。
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