魔法少女リリカルなのは  隣を歩く人   作:維伶@供養中

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14 観測の終わり

 管理局によるジュエルシードの回収は、本格化していた。

 

 燐音は、それを距離を取ったまま観測していた。

 直接関与はしない。

 探索魔法の感知範囲に触れない位置を保ちつつ、不自然にならない頻度で移動する。

 

(探索魔法の精度は高い)

 

 感知に引っ掛かるか否かは、距離だけで決まらない。

 行動の連続性、移動の規則性、魔力の揺らぎ。

 それらが一定の範囲に収まっていれば、異常として処理されない。

 

(完全な隠蔽は不要)

 

 管理局が動いたことで、回収速度は明らかに上がっていた。

 その一方で、燐音の知らないところで、金髪の魔導師による回収は停滞し始めていた。

 

 日々は、静かに経過していく。

 

 ──

 

 五月中旬。

 

 海の方角で、大きな魔力反応を感知した。

 一瞬だけ強く、すぐに消える。

 

 規模は大きいが、継続性がない。

 海中に落下したジュエルシードを回収するため、管理局が大規模な魔法処理を行ったと推測できる。

 

(興味はある)

 

 ──だが、まだ早い。

 

 探索魔法の解析は最終段階に入っていたが、

 未完了の状態で不用意に動く理由はない。

 

 ──

 

 五月二十五日。

 

 管理局が使用している探索魔法の解析が完了した。

 

 検知アルゴリズム。

 魔力の照合方式。

 探索範囲の展開パターン。

 

 それらを把握した上で、

 干渉されず、かつ異常として検出されない形での行動指針を構築する。

 

(完了)

 

 これで、探索魔法の内部に入り込んでも、

 燐音が捕捉されることはない。

 

(解析対象、終了)

 

 ──

 

 翌日。

 

 アリサから連絡が入った。

 

「ねえ、庭で大きな犬を保護したんだけど」

 

 大型。

 淡い毛色。

 負傷している。

 

 言葉を並べられる前に、条件は揃った。

 

(特徴が一致する)

 

 フェイトと呼ばれる魔導師が連れていた使い魔と、ほぼ同一。

 偶然と処理するには一致点が多い。

 

「見に来なさいよ。放っておけないでしょ」

 

 断る理由はなかった。

 燐音は同行する。

 

 アリサの家の庭で、

 件の“犬”を確認した。

 

 外見は犬に近いが、

 魔力反応は通常の動物とは異なる。

 

(使い魔)

 

 損傷は深刻だが、致命的ではない。

 応急的な処置は既に行われている。

 

 燐音は手を出さない。

 介入の必要はない。

 

 ──

 

 その頃、なのはの様子にも変化があった。

 

 学校の休み時間、

 短時間だが、誰かと念話を交わしている。

 

(管理局、もしくはユーノ)

 

 会話の内容までは分からない。

 だが、断片的な情報から、

 フェイトと呼ばれる魔導師の身に、差し迫った危険があると判断できた。

 

(救援要請)

 

 ──

 

 五月二十七日。

 

 この日、なのはと当該魔導師の決闘が行われた。

 

 燐音がそれを直接見たわけではない。

 念話の断片、魔力反応の推移、

 そして周囲の異常な静けさ。

 

 それらを総合した結果だった。

 

 儀式魔法。

 大規模魔法。

 

 自身の魔力量では再現不可能な領域の魔法を、

 観測対象として捉えることができた。

 

(有意義)

 

 戦闘の終盤、

 次元を越えたと推測される転移反応が発生する。

 

 だが、燐音はそれを追わない。

 

(観測不能)

 

 自身は次元を越える手段を持たない。

 観測手段も存在しない。

 

(観測の意味なし)

 

 燐音は、その場を離れた。

 

 ──

 

 それから、幾日も経たないうちに、

 明確な変化が現れた。

 

 管理局の活動が沈静化し、

 探索魔法の展開頻度が下がる。

 

 学校は通常通り再開され、

 なのはも、以前と変わらず登校するようになった。

 

 ジュエルシードに端を発した一連の事象は、

 収束したと判断できる。

 

 次元振を引き起こす要因は減少し、

 日常は、表向きには元に戻った。

 

(少なくとも、観測できる範囲では)

 

 燐音は、解析結果を整理し、

 不要になった項目を閉じる。

 

(観測、終了)

 

 だが、削除はしない。

 

 次に同様の条件が揃った場合に備え、

 記録として残す。

 

 燐音は、変わらない距離を保ったまま、

 日常へと戻った。

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