【完結】ぬ〜べ〜ご立派様   作:烏何故なくの

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12話 焦熱の狂宴コンボ(#132 ぬ〜べ〜・玉藻共同戦線)

 

「童守町が最近不味そうなんじゃ。神の性質を持った存在が町の地下をうろついている。お主だって無事じゃすまんぞ。……そういうわけじゃから、これ5万で売ってくれ」

 

 童守寺で、灰耶は童守寺の和尚と交渉をしていた。

 灰耶の懸念は最近感じる異質な気配。下水をうろついている神獣だ。

 神獣に対抗するため、灰耶は和尚の蔵にあった霊能アイテムを購入しようとしていた。

 

「いや~、5万じゃなぁ……。事件を解決するにはわしの寺のアイテムが必要なわけで……それを考えるともっと色をつけてくれてもいいんじゃないかのう」

「く……! 7万でどうじゃ」

「まいどあり~!!」

 

 和尚の強欲さに根負けして、灰耶は貴重な7万を出してしまう。

 事態は差し迫っているのだ。いつ死人が出てもおかしくない。

 

 和尚からアイテムを受け取り、町に出ると、暗雲が空を覆っていた。

 雷が降り注ぎ、街路樹や車が手当たり次第破壊されている。

 

「やっこさん怒っておるな。なにか目標があるのか?」

 

 神獣の元へと妖気を辿り向かう灰耶。

 しかし向かう最中に、もう一つ大きな妖気を感じとる。

 顔を上げると、狐の頭に人間の体を持った、高位の妖狐がビルの間を跳んでいた。

 

 妖狐の胸に秀一が絶望の顔で抱かれているのを見て、灰耶の殺意が鎌首をもたげた。

 

「ちょいと新技でも試してみるかの」

 

 灰耶の口から、赤い糸が編まれて出来上がった縄が溢れた。

 糸美と出会った経験から、灰耶は魅了の術は触手などから魔力を流し込むよりも、魔力そのものを糸状にして相手にくっつけ持続的に流し込む方が効率的だと理解していた。

 

 赤色の縄は妖狐の元へ飛んでいき、妖狐をくびろうとする。

 

「む……!」

 

 妖狐は縄が首にかかる寸前で縄を手で弾き飛ばすが、触れてさえしまえば【魅了魔法(マリンカリン)】が相手に流し込まれる。

 頭を抑え妖狐がよろめいた隙に、灰耶が触手で秀一を奪った。

 

「大丈夫か秀一!」

「は、灰耶くん……! 助かったけど、玉藻先生は敵じゃないんだよ……」

 

 秀一を心配する灰耶だが、秀一は絶望した顔で妖狐のことを庇う。

 

「僕が悪いんだ。僕が昔下水に流した亀が、神様の力を得て僕に復讐しようとしてるんだ……。だから、僕が死ねは……」

「そういうことだ」

 

 魅了の術から抜け出した妖狐、玉藻は冷徹な瞳で秀一へと歩み寄った。

 玉藻の尻尾に炎が逆巻く。尻尾を擦り合わせて起こす火輪尾の術だ。

 

「魔王……いや、この気は人間か? 私はこの街を罔象女の神獣から救おうとしている。邪魔はしないでもらおう」

 

 尾を構える玉藻。

 

「待て! 玉藻!!」

 

 灰耶もそれに応戦しようとした時、走ってきたぬ〜べ〜が間に割り込んできた。

 ぬ〜べ〜は灰耶のそばに立ち、秀一を玉藻から隠すように腕を伸ばす。

 

「何故です鵺野先生。その子一人が死ねば町は……」

「黙れ! 人間は何人死ねば何人助かるなんて数で考えたりしない!! 計算なんかないんだ、お前は人間の心がわかっちゃいない!!」

 

 ぬ〜べ〜の言葉に、悩ましい顔をする玉藻。

 玉藻の目的は人間の愛を知ること。

 町を救い、町の人々を愛することが目的だったが、ぬ〜べ〜の言葉に自分の説の根底が揺らされたのだ。

 

 冷たい空気が流れる中、だんだんと神獣の気配が地面の下から近づいてくる。秀一に反応しているらしい。

 今にも戦闘が始まると悟った灰耶は、二人に呼びかける。

 

「ま、正直ワシの意見としては妖狐側じゃが。今は必殺のアイテムがある。ここにいる全員で協力すれば、勝率は高いんじゃないかのう」

「相手は神獣だぞ……? いや、鵺野先生の無限に強くなる力と、魔王の力があれば……あるいは?」

 

 玉藻は思案を巡らせていたが、ひび割れる地面を見て首さすまたを構える。

 コンクリートがクッキーのようにひび割れ、数多の首と憤怒の人面をかたどった甲羅を持つ巨大な亀が現れた。

 

『う ら み は ら さ で お く べ き か』

 

 罔象女の神獣が殺意をたぎらせる。

 瞋恚の炎で体を焦がしながら、多数ある亀の頭の一つが大口を開け、雷の力を装填した。

 

「ぬ~べ~!」

「ああ!」

 

 灰耶は持っていた箱をぬ~べ~に渡し、ぬ~べ~は経文を灰耶に渡す。

 渡された経文を全身に巻き付け、灰耶は全力で神獣にタックルを見舞った。

 

「【地獄突き】ぃっ!!」

 

 神獣はタックルにより何本かの首がちぎれ飛ぶが、破壊されながら体を再生させる。

 体内にある罔象女のご神体が、無限に力を供給しているのだ。

 

 神獣の首が三つもたげられ、灰耶は三方向から雷の槍を同時に投げつけられた。

 回避もできずに直撃。玉藻は灰耶の死を確信する。

 

「こんなもんか、神獣!! もっと刺激が強くないと逝けんなぁ!」

 

 しかし、灰耶は直撃を受けながらも戦闘を続行し、【地獄突き】を連発した。

 体の表面は傷だらけ、しかしダメージは芯までとどいていない。

 燃えつきてところどころが炭化している経文を見て、玉藻は理由を悟った。

 

(なるほど……経文を体に巻き付け、鵺野先生が霊力を遠隔でかけることで、防弾チョッキのように経文を使ったのだ)

 

 攻撃を受け止めきれる灰耶の様子に、秀一を生贄にしなくとも勝機を見出した玉藻は、首さすまたで雷を放っていた神獣の首を切り飛ばした。

 

「協力しよう、魔王。この町は私の研究対象でね。荒らされるのは困る」

「思いのほか話がわかるではないか。では、先ほどの狐火を使ってくれんか? ワシごと燃やしてくれていい」

「……本気か? お前ほどの格の存在だろうと、私の炎は燃やし尽くすぞ」

「作戦があるんじゃ」

 

 疑問は残るが、考えている時間はない。

 玉藻は空海レベルの霊能者ですら焼き尽くせる、超熱の火輪尾の術を放つ。

 炎は灰耶もろとも神獣を飲み込んだ。

 

『じ ゃ ま を す る な』

「ううううっ……!! ふぅ……。良質な炎の力じゃわい」

 

 苛立たしげに叫ぶ神獣と対照的に、灰耶は業火に撫でられるたびに傷が癒えていく。

 【炎吸収】の力により、攻撃を仕掛けながら回復しているのだ。

 灰耶は先ほどよりもビンビンに固くなった触手を伸ばし、神獣の足を拘束した。

 

「いまじゃぬ~べ~!」

「ああ!」

 

 動けなくなった神獣にまたがり、ぬ~べ~が神獣の首に輪っかをつける。

 本来は腕輪なのだろうサイズの輪には、鬼の顔が彫られていた。

 輪っかが付けられたとともに、神獣の体から上る妖気が抑えられていく。

 

 ぬ~べ~は、神獣がただの亀になっていくのを、油断なく見据えていた。

 

「童守寺の倉庫にあった御鬼輪だ! 罔象女の力を完全に抑えることはできないだろうが、そこまでパワーダウンしてしまえばもはや俺たちの敵ではない」

 

 平均的なミドリガメのサイズにまでなった神獣は、悔しそうに首を震わせる。

 神獣が縮んだのを見て、秀一がぬ~べ~の前に飛び出した。

 

「ご、ごめんよ! 本当にごめん!! 僕、償うから……」

『な ら ば 死 ね』

 

 最後の力で秀一に攻撃しようとした神獣に先制して、ぬ~べ~が鬼の手で神獣の甲羅を叩き割った。

 

「……僕、僕……」

「少なくとも、謝ったのは決して間違いじゃない……。そこは、胸を張っていいとおもうぞ」

 

 涙目でうつむく秀一に、ぬ~べ~はよりそう言葉をかけた。

 

 秀一のケアをするぬ~べ~を横目で見ながら、玉藻は灰耶のことも同時に観察していた。

 

(……鵺野先生のような愛は感じないが、私よりは人間に近い精神の持ち主……面白い研究対象だ)

 

 薄く笑みを浮かべる玉藻に、灰耶は嫌そうな顔をする。

 

「なんじゃじっとこっちを見て。……ま、今回は助かった。ありがとうの。ワシは灰耶じゃ」

「玉藻だ。童守病院で医者をしている。今は人間の愛を研究していて、鵺野先生とはライバルの関係にある」

 

 玉藻と灰耶。

 二人はお互いを警戒しながら、形だけのあいさつを交わした。

 

 

 

 

 

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