【完結】ぬ〜べ〜ご立派様   作:烏何故なくの

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13話 ケツを拭かれる年じゃない(#170 ぬ〜べ〜・ゆきめ 愛の最終決着!? の後)

 

「鳴介……その娘と幸せに暮らせ。その子供ともうまくやるんだ」

 

 霊能者、無限界時空はそう言いながら鉢巻を外した。

 体中に巻き付けたしめ縄をほどきながら、時空は走る。

 

「ま、待て—————っ!!」

 

 灰耶は叫ぶことしかできない。

 マーラの体にあった触手は全てひしゃげ、どくどくと血が溢れている。

 満身創痍で立ち上がることもできない。

 

 灰耶には何もできなかった。

 ただ、時空の最後を見届けることしか。

 

 

 

■■

 

 

 

「一体どうしたのだ。私をこんなところまで呼び出して」

「来てくれるとおもったぞ、玉藻」

 

 深夜の公園に、玉藻は灰耶に呼び出されていた。

 部屋に入るなり男根の魔王が窓から侵入してきたので、玉藻はそれなりに心労を被った。

 

「お主の目的は愛を知って、ぬ~べ~の無限に高まる力を得ようというんじゃろ?」

「そうだが」

 

 灰耶は鉤爪を打ち鳴らした。

 

「強くなることが目的なら、体を鈍らせるわけにはいかんじゃろ。定期的にワシと遊んでいかんか」

 

 玉藻は目を細める。

 その提案には一理あるが、他者にいいように利用されるのはごめんだ。

 

「子供の癇癪に付き合う気はない」

「あ゛? 誰が子供じゃ」

「子供でなかったら愚図だ。自分の暴力衝動に他人をつきあわせるな」

 

 声に殺意が乗った灰耶に臆することなく玉藻は言葉を続ける。

 人間の「愛」とは程遠い灰耶に見切りをつけ、玉藻はその場を去ろうとした。

 

(……いや、人間の愛を完全に理解できていないのが私だ)

 

 玉藻は愛が理解できていないが故に、ぬ~べ~の行動を卑怯だと罵ったこともある。

 見切りをつけるのは速いかと、玉藻は足を止めた。

 

「……せめて理由くらい話せ」

 

 玉藻の言葉に、灰耶はうなだれる。

 数秒の沈黙の後、ぽつぽつと言葉を吐き出し始めた。

 

「ぬ~べ~と付き合っておる、ゆきめ、雪女がいるんじゃが。ゆきめを作った山神が、『ゆきめを連れ出すことは自然の掟に反する』っつって祟りを振りまきだした。ゆきめを無理やり生かしたワシも怒りの対象で、ぬ~べ~とゆきめとワシで、怒りを鎮めにいくことになったんじゃ」

 

 灰耶は一度息を吸って、怒りをこらえるように手のひらに力を込める。

 

「ワシらは山神に殺されかかって……それを、時空が、ぬ~べ~のおやじさんが……出しゃばって! 人柱になって事態を収めおった!!」

「……命を救ってもらったのだろう。感謝をするべきではないのか?」

「当事者でないヤツに命を捨てて助けてもらって、それでどう喜べってんじゃ!!」

 

 灰耶がごちゃ混ぜになった怒りを燃えあがらせ、吠えた。

 

「力が……力が欲しい!! 魔王の姿を得ておいて、このざまじゃ終われん!! 世界を意のままにできる力がっ欲しいッッ!!」

 

 欲望を絶え間なく吐き出す灰耶を見て、玉藻は口角を上げた。

 鵺野先生のような美しさはないが、灰耶のエネルギーは凄まじく増大している。

 この感情なら理解できる。自分のために生きる、妖怪の感情だ。

 利他のような自己愛。

 

「面白い……。こい。相手をしてやる」

 

 研究のために、玉藻は灰耶の意見に乗ることに決めた。

 夜の公園で、玉藻の首さすまたと灰耶の爪がぶつかりあう。

 

 

 

「く……術の技量では叶わんな……」

 

 玉藻の極小の結界で体を拘束され、マレーナ形態の灰耶は地面に転がった。

 対する玉藻も疲労の色を隠せないようすで、地面に片膝をつく。

 

(はぁ、はぁ……。炎を吸収し、首さすまたをはじく外皮。その上異なる形態へと変わるとは。侮れん……)

 

 玉藻が荒い呼吸を繰り返していると、灰耶がマレーナの手を玉藻に向けた。

 

「【回復魔法(ディア)】」

 

 とたんに玉藻の体から疲労が抜けていく。

 女神の力によるヒーリングに、玉藻は驚いた。

 

「その形態は死神ではないのか? なぜ回復の力が使える」

「最近わかったんじゃが、神話の解釈によっていろいろ能力の応用ができるんじゃ。ヒーリングもその一つ」

 

 マーラに変形し、巨大化することで結界を破った灰耶は玉藻に背を向ける。

 

「今日はお前さんの勝ちじゃ。また遊んでくれ、玉藻」

「フッ……いいだろう。アディオス、魔王の少年」

 

 再び戦う約束をして、二人は公園を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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