「はぁっ!!」
昼間の童守公園で、人払いの結界を展開しながら玉藻と灰耶はしのぎを削っていた。
マーラ形態の灰耶の爪が、玉藻の体を一文字に切り裂く。
しかし切り裂いた玉藻の姿が陽炎のように揺らめいて消える。
「お主の幻視の術にも慣れてきたぞ!!」
灰耶は切った玉藻が幻影だと理解すると、動じることなく【
「ふ、手の内を晒しすぎたか」
灰耶の死角に隠れていた玉藻は飛びのいて灰耶から距離を取る。
その瞬間、横から灰耶の緑の炎とはちがう、紅蓮の業火が玉藻を襲った。
「助太刀するよ、灰耶!! このバカ狐、あんたの野望もここで終わりだ!!」
紅蓮の主、いずなは勢いよく叫ぶと、玉藻にくだ狐をけしかけた。
玉藻と灰耶は沈黙し、お互いを見る。
「これは……お前の援軍ということか? 魔王の少年」
「え~、頼んだ覚えは本当にない……いずな、どうしたんじゃ急に」
くだ狐を片手間であしらいながら、玉藻は怪訝な顔をする。
灰耶はいずなが何か勘違いをしているのだろうと予想し、いずなに直接訊ねることにした。
「こいつは医者に化けて子供の目を見えなくさせてる邪悪なやつなんだ!! 私が退治してやる!!」
「ああ……私の妖気によるヒーリングをみて勘違いしたわけか。面倒な……」
ため息をついてあきれる玉藻。
いずなはまだ玉藻の言葉を信じられてないようなので、灰耶も玉藻の援護に回る。
「玉藻は無害……とはいえんが、真面目に医者をやっておるぞ。ワシは玉藻に戦いの稽古をつけてもらっていた所じゃ」
「嘘……本当に善良な妖怪なの? あ。もしかして、灰耶みたいにぬ~べ~の手下なのか?」
玉藻は殺気を滲ませながらいずなを睨みつけた。
「訂正してもらおう。私は鵺野先生のライバルだ」
「わ、悪かったよ。そんなに怒るなって……」
冷や汗を流しながら、いずなは灰耶に疑問をぶつける。
「でも、なんで戦いの稽古なんかやってんだ? 灰耶はそのままでも強いじゃないか」
「あー、ぬ~べ~の親父さんがワシの力不足で死んだんじゃよ」
「え?」
「今はとにかく力が欲しいんじゃ」
それだけ言って、灰耶は玉藻に向き直った。
玉藻も武器を構え、戦闘態勢になる。
自分より強い存在が、さらに強くなろうと戦いを繰り返すのを見て、いずなの心は大きく揺さぶられた。
いずなも半人前から抜け出そうと努力は積み重ねていたが、ここまでの必死さは無かった。
「わ、私も……特訓に入れてくれないか?」
口をついて出た言葉に、いずな自身驚いていた。
「へへへ……たまにはいいよな……これで灰耶に美味いもの食わせてやろう」
霊能力でパチンコで大勝ちしたぬ~べ~は、暖かくなった懐を擦りながらウキウキ気分だった。
コンビ二弁当を食べようと童守公園の前を通ったとき、ふと公園の中から気になる声が聞こえてきた。
「それ、ことわり玉じゃない? 幽体を医学的に解剖するとことわり玉っていうのが体を機能させててさ」
「ふむ。ゆきめの右腕が再生せんのはワシがことわり玉ごとゆきめの幽体を食っちまったからか……。じゃあワシのことわり玉を移植すれば、ゆきめの腕はまた再生するんかの」
「不可能ではあるまい」
いずな、灰耶、玉藻が意見を出し合って、何かを話している。
(な、どういうメンバーだ……?)
異色の組み合わせを、思わずじっと見つめてしまうぬ~べ~。
それに気づいた灰耶が声を張り上げた。
「お、ぬ~べ~! ちょっとワシと遊んでくれんか? 新技【羅刹モード】を試したいんじゃ」
「ちょ、怖いぞ灰耶。今はちょっと(パチンコのし過ぎで)目が疲れてるからまた後でな」
灰耶の押しの強さに、一歩下がるぬ~べ~。
そこにいずなが割り込んできた。
「灰耶! 私とやろうよ」
くだ狐を構えながら、いずなは臨戦態勢だ。
「お、いいのか?」
「私だって強くなりたいんだ。みてろよぬ~べ~。あんただってすぐに追い越してやるからな!」
いずなの言葉を聞き、マーラ形態の灰耶がビキビキと固くなり、戦意をたぎらせる。
「……わかっているとおもうが、魔王の少年。小娘と戦う時はしっかり手加減を……」
玉藻の言葉が終わらないうちに、マーラのチャリオットがいずなを轢き飛ばした。
いずなはきりもみ回転しながら、べちゃりと地面に叩きつけられた。
3秒ほど痙攣して、ばったり動かなくなる。
「……やべっ」
灰耶の言葉が無音の公園に響く。
30分後、いずなは玉藻のヒーリングとマレーナ形態の灰耶の【