【完結】ぬ〜べ〜ご立派様   作:烏何故なくの

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2話 不良は割と好きな方(#19 魔の13階段)

 

 小学生のいこいの時間、昼休み。

 克也は学校の裏庭で一人、ぼんやり自分について考えていた。

 

 職員室のゴミ箱で拾ったタバコを吸いながら、自分のクラスでの立ち位置を考える。

 不良である克也は、5-3組から自分だけが浮いている気がしてならなかった。

 

「……」

 

 負のループにはまった思考を止めるために、タバコを地面に捨てる。

 足で火をもみ消そうとするより速く、伸びてきた緑の触手がタバコを掴んだ。

 

 見覚えのある色に、思わず驚いた声を出す克也。

 緑色のスライムがゆっくりと克也に歩みよってくる。

 

 

「また会ったなやんちゃボーイ。たしか克也とか言ったか?」

「そ、そうだけど……どうしたんだよ、そんなに縮んじゃって……」

「まあちんこじゃからな、縮みもするんじゃよ。体調不良とかじゃないぞ」

 

 そう言って、灰耶は克也をじろじろと見る。

 居心地の悪さを感じた克也はぶっきらぼうに言葉をぶつける。

 

 

「なんだよ、俺をチクるつもりか……?」

「いやいや。お主も体に悪いとわかっておるんじゃろ? 別に何も言わんよ。ただ、波長が合ってきたなぁと思ってな」

「波長……?」

「ワシは普段人間の目に入らんように術を使っておるのじゃが、ぬ~べ~の教え子には見つけられやすいんじゃ。そのうち5-3組の生徒全員がワシを視認するようになるかもな」

 

 喋るイチモツを目撃することになるとは5-3の女子は災難だ。

 そんな言葉を飲み込むだけの理性が克也にはあった。

 

「それにしても、モテたい盛りの年でタバコか。歯が黄ばんだり口臭のことだったりを考えるとなかなか覚悟がいる選択だったじゃろ?」

「えっ。き、黄ばむのか……?」

「知らんかったのか? タールとか歯につくんじゃぜ」

「それは……嫌だな」

 

 知らなかった事実に驚きながら、克也はぼんやりと居心地の良さを感じていた。

 灰耶はタバコを咎めなかった。絶対に怒られると思っていたのに。

 

 考えれば、灰耶はちんこの悪魔になってしまうくらいのドスケベ野郎だと自分で言っていた。

 いい子ちゃんな生徒だったとは思い難い。

 

「タバコより気持ちええ遊びでも教えてやろうか?」

 

 そう笑う灰耶はどこか不良っぽい笑みを浮かべている。

 克也が返事をしそうになった時、廊下から足音がした。

 低学年の生徒が裏庭に遊びにこようとしている。

 

「やべっ、逃げないと! その話はまた今度な!」

 

 克也はタバコの箱をポッケに突っ込み、窓から校舎の中に入る。

 

「……なかなかのやんちゃボーイじゃったな。さて、ワシも除霊の準備せんとな」

 

 灰耶もまた、生徒の間を通り過ぎて校舎の中へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 日が暮れかけている。

 5-3のクラスの中で、克也は全国一斉の模試のため、補修を受けていた。

 

(やってられね~ぜ……)

 

 克也は補修を抜け出し、答案を盗むことにした。

 職員室に忍びこむと、そこには同じ不良の生徒が。

 克也は意気投合し、不良のチームに入ることにする。

 

 しかしそれは、学校に伝わる怪談『魔の13階段』の罠だった。

 

「よく来たなぁ……」「不良は不良どうし」「仲良くしようぜ」

 

 狙った相手を『血の部屋』に引きずりこみ、仲間にする不良生徒たちの怨霊『魔の13階段』。

 カンニングをしようとした克也は目をつけられてしまったのだ。

 

「たっ、助けてくれ~! 俺、こんな奴らの仲間はいやだ!」

「克也!」

 

 ぬ~べ~と広たちは怪しい動きをしていた克也の跡をこっそりつけていた。

 鬼の手が、屋上への階段に作られた異空間『血の部屋』へ繋がる裂け目を作る。

 

「克也を放せ! さもないと……!」

 

「やれるもんならやってみろよ」「知ってるんだぜ、てめえが子供には手だしできないこと……」

 

 悪霊が子供であるという一点が、『魔の13階段』の除霊を困難にしていた。

 しかし、ぬ~べ~は不敵な笑みを浮かべる。

 

「そうか、ならしかたないな……。やってしまえ! 灰耶!!」

 

 ぬ~べ~の言葉とともに、巨大な緑色の杭が『血の部屋』の裂け目に突き刺さった。

 

挿入(はい)るぞ~。なんじゃ、稚拙な結界じゃのう」

 

 灰耶は四本の腕を動かし、『血の部屋』の中をまさぐる。

 

「うむ。この程度ならワシが問題なく乗っ取れるわ。顕現しろ、【コクマの塔】………」

 

 血のプールのような空間が、岩石でできた迷宮へと姿を変えていく。

 そして床の上に、数冊の本が置かれていた。

 ぬ~べ~がそれを手に持ち読み上げる。

 

「『むっちり女教師にありがちなこと』。お、いい趣味してるじゃないか」

「ぎぇ———————っ!!??」

 

 不良の怨霊の一人がひっくり返った。

 その後もぬ~べ~が本を読み上げるたびに、怨霊たちから悲鳴が上がる。

 

「うひょひょ。【コクマの塔】は望むものを映し出す場所。お主らの癖はまるっとお見通しじゃ!」

「あんまりだぁ~!」「不良からメンツ取ったら何が残んだよ!!」

 

 教師にオカズを読み上げられる苦痛に耐えきれず、不良の怨霊たちが『血の部屋』から次々と抜け出ていく。

 抜け出た怨霊を、ぬ~べ~が経文で捕まえてしまう。

 

 この日から『魔の13階段』の噂は語られなくなっていった。

 

 

 

 

 

 

「……タバコより気持ちいい遊びって、型抜きかよ……」

「ゲーム性があると楽しいじゃろうが」

 

 『魔の13階段』の話が解決した次の日。

 灰耶が作り出した【コクマの塔】の内部で、克也は灰耶と型抜きをしていた。

 

 克也は思う。

 結局、灰耶はいい子ちゃんだった。

 タバコを吸ってたくらいでは怒らない、どこか心に余裕のあるいい子ちゃんだっただけで。

 

(……灰耶はたしか13歳だったよな。俺もそれくらいになれば、もっと余裕ができるんだろうか)

 

 そんなことを思いながら、克也は切った型抜きを口に運んで、「あのさ」と声をかける。

 

「もっと楽しいことしようぜ。なんか、こう……俺の願望を読み取った、すっげえエロいグラビアとか出せないのか?」

「お主……だいぶ誘惑しがいがあるお盛ん具合じゃな。割と好きじゃけど」

 

 型抜きをした日から、克也は灰耶と時々遊ぶようになった。

 

 

 

 

 

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