マーラ様の女神形態に対して独自の解釈が含まれます。
ペルソナ能力と一部設定を混ぜています。
「うーむ……」
ぬ~べ~は職員室で悩んでいた。
原因は自分へ愛を向けてくれる雪女、ゆきめの存在だ。
「寿命も違う、子供はどうなる、ゆきめくんの山で暮らすなら童守小まで通勤三時間だぞ……」
人間と妖怪。種族の差はあまりに分厚い。
しかし、付き合わない理由はいくらでもあるのに、ぬ~べ~は悩むことをやめなかった。
考え事をしながら裁断機を使っていると、ぬ~べ~の懐から財布がぽろりと落ちる。
叫ぶ間もなく、ぬ~べ~の給料が無残な姿になろうとした時だった。
横から伸びた緑の触手が財布を受け止めた。
「は、灰耶先生……!」
「先生はお主じゃろ。貧乏神を喰ってから、貧乏の気配を察せるようになった気がするんじゃ」
「貧乏神の力を部分的に使えるのか……? 末恐ろしいな……」
戦慄するぬ~べ~に財布を渡しながら、灰耶はぬ~べ~に囁く。
「妖怪と付き合うならとことん人外の力を頼ってはどうじゃ? ワシなら尽きない精力くらい与えてやれると思うし。移動に関してだってそういう妖怪に手伝ってもらうとか……」
「簡単にいうがどれも危険すぎるだろ。魔王の力をマムシドリンク代わりになんか恐ろしくてつかえないぞ」
灰耶の言葉を否定しながら、ぬ~べ~は訝し気な目をする。
「前から思っていたが……どうしてそんなにゆきめに肩入れするんだ」
「そりゃ人間らしい妖怪って、ワシの未来の姿じゃし」
ぬ~べ~は思わず口を閉ざす。
(俺よりゆきめくんの方が灰耶には寄り添ってやれるのかもな……)
あくまで生徒のためになるなら、ゆきめともっと関わってもいいかもしれない。
ぬ~べ~が自分の心の落としどころを見つけた瞬間だった。
職員室のドアが開き、5年生の生徒がぬ~べ~を呼びにきた。
「大変だよ鵺野先生! 律子先生が雪の妖怪にさらわれちゃった!!」
強力な妖気を追い、ぬ~べ~は童守町の外れにある北山神社へとたどり着いた。
そこにあった鳥居も本殿も氷塊の中に沈み、鳥居の内側にはぽっかりと洞穴が口を開いている。
「この感覚、ゆきめが中におるな……?」
「いったい本当に何が……。ゆきめが人さらいなどするわけがない!」
灰耶の言葉に、ぬ~べ~は唇を嚙みながら答える。
ぬ~べ~たちが洞穴に入ろうとした寸前、人影が洞穴の中から見えた。
下着姿の律子先生は、足裏が傷だらけになるのもかまわずぬ~べ~の元まで懸命に駆けてくる。
「鵺野先生……ゆきめちゃんが、中に……。妖怪に人間になれるとだまされてやったことなの。いま、その妖怪にゆきめちゃんが殺されそうに……」
言葉を聞いた瞬間、灰耶はチャリオットを震わせ洞穴の中に全速力で走りだした。
周囲から迫ってくる冷気を、体から立ち上る憤怒の熱で溶かしていく。
数秒と立たずに、氷柱で磔にされたゆきめが見えてきた。
ゆきめの妖気を吸いつくしていた一つ目の妖怪、一本ダタラが杖を振る。
「チッ、邪魔が入ったわ。貴様から殺してやる!!」
洞穴内の氷柱が、一斉に灰耶を襲った。
半分は灰耶が纏う炎で溶けていくが、半分は緑の体に突き刺さっていく。
「ぐはは、死ね! 死ね! 死……」
暴力の快感に笑っていた一本ダタラは気づく。
灰耶は、少しも速度を緩めない。
氷柱の雨を浴びながらサボテンのようになった体で、灰耶の体が一本ダタラを撥ね飛ばした。
「ぐぁああっ! この、三流妖怪が……ぁあぁッッッ!!」
一本ダタラがセリフを言い終わらないうちに、灰耶の手が一本ダタラの舌を掴んだ。
「ゆきめに『人間になれる』などとのたまったイカ臭い舌はこれか?」
「あ、あるるあっ!!」
躊躇いなく、灰耶の手が一本ダタラの舌を引っこ抜いた。
一本ダタラはまけじと氷柱を操るが、灰耶の爪の方が速い。
頭から下まで真っ二つにされ、一本ダタラは地面に転がった。
「ゆきめ!」
ぬ~べ~は、灰耶が戦っている間にゆきめを助けだしていた。
しかし、氷柱を取り除いても、ゆきめの体からはどんどん妖力が抜けていく。
ぬ~べ~に他人を癒すことはできない。鬼の手の中にいる美奈子先生は霊力によるヒーリングを扱えるが、妖怪のゆきめに効果はない。
「死ぬな……死なないでくれ! ようやく自分の気持ちに気付いたんだ、君を、愛しているんだ……!!」
「うれしい……私、幸せです……」
ぬ~べ~の腕の中で、ゆきめはゆっくりただの雪へと変わっていく。
それを見て、灰耶は察した。
(ワシは、ゆきめが死んじまったら、ゆきめのことをすぐに忘れてしまう)
灰耶は手に入らないものに執着しない。執着できない。
ゆきめとの思い出も、少し経てば色あせて記憶からなくなる。ゆきめの声も、顔も、なかったことになってしまう。
思考を巡らせる灰耶の視界に、一本ダタラの死体が入った。
「う、ぉおおおおぉっ!!」
灰耶は一本ダタラの死体を持ち上げ、噛み砕いた。
突然のことに呆気に取られるぬ~べ~に咀嚼音を響かせながら灰耶は吠える。
「雪女は冷気で体を治す! ……強い冷気の力を、ワシが使えればいいんじゃろ!!」
一本ダタラを飲み込んだが、即座に体に変化は起こらない。
灰耶はゆきめの近くまで頭を下げ、聞く。
「……もらうぞ」
「あげるわ」
ゆきめの声を聞くと同時に、ゆきめの右腕に灰耶は食らいついた。
とたん、強烈な吹雪が逆巻く。
台風ほどもある風圧が発生し、ぬ~べ~は弾き飛ばされた。
ぬ~べ~はゆきめの方へ手を伸ばす。
しかし視界の全てが白くなっていき、ゆきめの姿は見えなくなる。
そびえたつ灰耶のシルエットだけが確認できた。
そのシルエットに、血管のような青い線が走っていく。
青い線が増えるとともに、灰耶のシルエットが縮んでいった。
唐突にあらわれた吹雪は唐突に止み、北山神社にはいつもの光景が戻った。
一本ダタラが放った氷柱も、さっきの吹雪による残雪すらない。
(……氷の力が、一か所に集まったんだ)
ぬ~べ~は、神社の境内の真ん中でゆきめをお姫様抱っこする女性を見つめた。
180cmはある、女性にしては長い背丈。
夜の闇を塗り固めたような黒のワンピースに、人の闇を塗り固めたような黒の髪。
光を反射しない死んだ鹿のようなうつろな目で、常人なら見つめられるだけで背筋に氷柱をつっこまれたように感じるだろうが、ぬ~べ~は彼女に一切恐怖心を抱かなかった。
女性が、ゆきめと同じ顔をしていたからだ。
「……灰耶、だよな?」
「おう! ゆきめはどうにか治せたぞ! 右腕は戻らんかったが……」
女性が、外見からは想像もできないようなケロッとした声で話すので、ぬ~べ~は思わずずっこけた。
声は違うが、口調は完全に灰耶だ。
「おっ、おま……どうしたんだそれ! マーラの姿はどうした!!」
「今のワシは魔王
笑って胸を張る灰耶を見て、気が抜けたぬ~べ~はその場に座り込む。
「前から器用だったけど、どんどんなんでもありになっていくなお前……」
「なんじゃい。こんなワシだからこそゆきめを助けられたんじゃろ?」
ぬ~べ~は涙目で、笑いながら灰耶に告げる。
「はは、そりゃそうだ……。……ありがとう! 本当にありがとう!! お前のおかげで、ゆきめは……ううっ、グスッ」
「どーも。コンゴトモヨロシクな、地獄先生」
灰耶はぬ~べ~に手を差し伸べ、ぬ~べ~はその手を取った。
マーラ様の女神解釈が流石に突飛すぎると思うので解説させてください。
マーラが女神である説を探して、バーバラ・ウォーカーが書いた神話・伝承事典に「魔王マーラは老婆の女神マーラの伝承から作り出された」「スラヴ人によればマーラあるいはモーラは夜に人の血を呑む女の精だった」という記述を見つけました。
スラヴにはモーラという吸血鬼の伝説があります。
ライドウの「マーラは夜に人の血を吸う恐ろしい破滅の女神だった」という記述と似ていること、神話・伝承事典のスカサハ=スカディ説などをメガテンが採用しているところから、マーラの設定は神話・伝承事典を参考にしているのでは?
マーラの元になった女神はモーラ? と、モーラと呼ばれる女神を探して、地域によってモーラともマーラとも呼ばれる女神マレーナに行きつきました。
参考↓
https://en.m.wikipedia.org/wiki/Morana_(goddess)
https://mythus.fandom.com/wiki/Morana
マーラ様の女神形態が見たすぎて狂った人の戯言です。
メガテンの解釈とは外れていると思います。
普通に老婆の女神マーラが魔王マーラの女神形態という可能性の方が高いと思います。