夢のないレギオス   作:歯並び悪い

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プロットもなにもないので後々修正することになると思います。


第一話

不吉を感じさせるような赤錆びた空

 

命の芽吹きもなく、ただただ荒廃した大地

 

滅びかけの世界で目的もなく延々と彷徨う自立型移動都市レギオス。この世界において唯一人類に残された小さな小さな楽園。大気中を漂う汚染物質に触れるだけでたちまち死に至ってしまう人類を保護する最後の砦だ。

 

 

 

 

 

 学園都市ツェルニに到着したばかりの放浪バスから乗客が我先にと飛び出していくなか、一人だけだるそうな足取りで人波の流れをさえぎる男が居た。

 

「あぁ~、ここがツェルニか、案外悪くなさそうだな~」

 

やる気が一切感じられない間延びした声を発しながら、右手でゴシゴシと眠たそうな目をしきりに擦り、左手で大人2人が入りそうなサイズの旅行かばんを軽々と持ち、伸びをする。

そのまま放浪バスから気だるげな足取りで、後ろではしゃいでいる同乗者の早く降りろという視線に気づきながらも、それを気にも留めずにゆっくりと階段を降りていく。

やがて前方の通行者との間にスペースができ、狭い通路で後ろの同乗者に押しのけられ追い越されたが、やはりそれを気に止めず、相変わらず周りよりも3割ほど遅いスピードで歩いていく。

 

 ホテルにたどり着くと旅行かばんをぞんざいに地面に置き、着ていたコートを脱いでシャワーも浴びずにそのままベッドへダイブし夢の世界へと旅立った。

 

 

 

 

 

 

 

『なんだこのおっさんは』

 

それが目覚めてからの第一声だった。

いやその頃はまだ声をまともに発することもできなかったのだから、第一想とでも言うべきか。

 

目が覚めていきなり目の前に飛び込んだのは血まみれのおっさんの顔だった。

 

その時の俺はずいぶんと可笑しな顔をしていたのだろう。

赤ん坊の顔の区別なんていまだにできないが、きっと当時の俺ははっきりと可笑しいとわかるぐらいには可笑しな顔をしていたはずだ。

その後、おっさんの名前がデルク・サイハーデンと知った時にはきっともっと変な顔おしていたに違いない。

 

そのときは疲れがたまっていたのか、はたまた別のなにかの要因かすぐに目が開けていられなくなり意識を失った。

 

後日、目が覚めたとき目の前にいたのもやはりデルクで、その厳しい顔に意外とマッチする優しい微笑みを浮かべながら、これまたやさしく語りかけてきた。

 

「目がさめたか、お前の名前はレイフォン・アルセイフだ」

 

どうやら俺の名前を教えてくれたらしい。

そう俺は某小説のいつまでも煮え切らない主人公さん、レイフォン・アルセイフになったのだ。

 

 

 

 

 

 

コンコンッ

無愛想なノック音がだだっ広い高級感が漂う部屋に響く。

ツェルニ生徒会長執務室。ツェルニの最高権力保有者である生徒会長の仕事部屋に訪れるものでこうまで無遠慮なノックをしたものなどいままでに何人いただろうかと、生徒会長であるカリアン・ロスの頭にどうでもいいことがよぎっていた。

それを振り払い、態度からして友好的でない相手に気を重くしながらもそれを表に出さないように、努めて愛想のいい声でノックの相手を促す。

 

 

ドアが開き、やはり無遠慮にずかずかとこちらに向かって歩いてくる相手にさらに一段気が重くなる。

連日生徒会長としての激務を笑顔でこなしてきた貴重な経験がなければカリアンの丹精な作り物めいた顔にしわがいくつかできていただろう。それほどに現ツェルニ生徒会長カリアン・ロスはこの相手に対して緊張していたのだ。

 

レイフォン・ヴォルフシュテイン・アルセイフ

 

武芸の本場とも武芸者の理想郷とも名高い槍殻都市グレンダンにおいて最強12人に授けられる称号『天剣授受者』をわずか10歳というグレンダン史上最年少で授かった少年だ。

そして天剣を授かる瞬間をカリアンは目撃していたのだ。

カリアンには当時の光景が今でもありありと目に浮かぶ。

出場していた武芸者は皆、彼の武芸者に対しての印象を覆すほどに猛者だった。

武器を打ち合うだけで会場の端まで響く衝撃、奇奇怪怪な頸技、

家の事情で高名な武芸者の試合も幾度か見たことがあるが、武芸者ではない自分にも明らかに今まで見てきたそれとはレベルが違う者たちの競い合いに当時若かった自分はずいぶんと興奮を覚えていた。

その興奮を一瞬にして冷めさせたのがレイフォンだった。

かつて見たこともないほどの猛者たちを、まだ青年とすら呼べない子供が身の丈に合わない刀で文字通りなぎ倒していくのだから。

その荒唐無稽でいて、ある種芸術のような光景に魅入られ、驚きも興奮も通り越して涙が流れた。

その後衝動に突き動かされるまま、わざわざ会いに孤児院にまで尋ねた。

 

 

ゆえにその名をカリアンが忘れるはずもなく、入学希望者にてその名を偶然見つけたときは柄にもなく自分の頬を力いっぱいつねったのはいい思い出であった。

そう、過去形なのだ。

確かに今のツェルニにとってレイフォンが入ってきたことは宝くじを一枚だけ買ったら一等賞があたったほどの幸運である。

しかしレイフォンの見るからに非協力的な態度を見、過度な期待をしてはいけないのだろうと思ったのだ。

 

「ここに君を呼んだのは感謝を伝えようと思ったからだよ、君のおかげで一般人に被害がでなったのだからね。レイフォン・アルセイフ君」

 

 

武芸者、それは人間が進化した種とも神様からの贈り物とも言われている。

一度身に付ければ落ちることのない筋肉、技を覚えれば忘れることのないからだ、一般人とは次元が違う身体能力と反応速度。

ただ戦うためだけに存在しているような人間変異種とも言うべきものだ。

 

その武芸者同士がケンカをすれば、近くにいた一般人は無事ではすまないだろう。

本気の戦いともなれば余波だけでも骨折するほどで、運が悪ければ死すらもありうる。

 

その件の武芸者たちは入学式のそれも一般人がたくさんいるところで本気のケンカを始めたのだ。

もっともダイトを抜いた瞬間に急に吹き飛びそのまま気絶したのだが…

 

 

「あの武芸者同しのケンカのことなら、俺じゃないっすよ」

 

敬語にもなってない言葉遣いでぞんざいに応じるレイフォン。

 

「ああ、こちらとしては罰するつもりはないよ、ただ感謝をしたいだけさ。だから白を切る必要はない」

 

「あ、そうっすか。じゃあ用件はそれだけみたいだし、もう帰りますね~」

 

レイフォンにもう少しなにか反応を期待していたが、当人は一切の敬意が感じられないような形すらなってない敬語で話を早々に切り上げ帰ろうとする。

カリアンは少々予想外の態度にあわてて引きとめようとして

 

「まあ、まちたまえレイフォン・ヴォルフシュテイン・アルセイフ君。武芸者が2人退学して武芸科に空きができたんだ。そして君はその二人よりも圧倒的に強い。どうだい、武芸科に転科してくれないだろうか」

 

「あ?……あぁ、あんときの銀髪か、髪伸びてたから分からなかったよ。道理で知ってるわけだ。でも、もうヴォルフシュテインじゃねえよ」

 

言外に断りドアの方へと振り向こうとする。

どうやら会った時のことを覚えていたらしいレイフォンは形だけの敬語すらやめていたが、カリアンにとっては覚えていてくれたことが予想外らしく言葉使いのことなど気にならない。

 

「覚えていてくれて光栄だよ。わたしは過去のことを詮索するつもりもない。それで、武芸科には転科してくれるのかい?」

 

「さっきの返答で嫌だと言外に言ったつもりだったが、わかんなかったのか?なんで俺がわざわざガキのお守りしなきゃいけねぇんだ」

 

 

どうやら機嫌を損ねてしまったようでカリアンの方へ向きなおされた顔が僅かに顰められていた。

少々性急すぎたかとカリアンは反省する。しかしそれでも意思を変えるつもりはなく、

 

「確かに君にはわざわざ武芸科に所属するほどのメリットはないのかもしれない、しかしそれでも私は君に武芸科に来てもらいたいのだよ。ツェルニは今セルニウム鉱山があとひとつしかないんだ。これが何を意味するかわからないはずはないだろう?」

 

「……」

 

「誰がこのようなシステムを作り出したかは知らない、だが現実として都市の命、セルニウム鉱石を得るための鉱山を武芸大会で奪い合わなければならない以上、君ほどの武芸者を放置することは私にはできないのだよ。それに、私はこの都市を愛しているんだ。愛しているものが……たとえ、二度とその土地を踏む事がないかもしれないとしても、失われるのは悲しい事だと思わないかい?

 愛しいものを守るために手段を問わぬというのも、愛に狂う者の運命だとは思わないかい?レイフォン君」

 

 

「だから武芸科に転科しろと?結局それで俺にはなんのメリットがあるんだ?」

 

カリアンの演説はどうやらレイフォンの心には届かなかったらしい。相も変わらず礼儀が微塵も感じられない─むしろ悪化している─態度のまま、転科に応じる気もなさそうだ。

 

だからカリアンは仕方なく用意していた手札を切る。

 

 

「君の奨学金は確かBランクだったね。武芸科になりさえすればAランクに上がり学費は全額免除になり、就労活動もいまよりずっと楽になるはずだ。これでも足りないなら多少なら便宜を図れないわけでもないが、なにかあるかい?」

 

本当ならばツェルニの財政から考えても出費は控えたい。学園都市というものはそこまでお金を持っているわけではないのだ。

しかしそうもいかないだろう…

レイフォンほどの武芸者だ、お金に興味が全くないのであれば奨学金で満足してくれるのかもしれないが、もしそうでなければ…

カリアンはただただ祈ることしかできなかった。例え今までも態度からして、その祈りは何処にも届かないだろうと分かっていながらも、祈らずにはいられなかったのだ。

 

「クッ…ははははは!」

 

どうやらカリアンの祈りはやはり聞き届けられることはなかったらしい。

まるでカリアンを嘲るかのようにレイフォンは突然吹き出し、しばらく部屋に笑い声が響く。

しばらくして笑い声も止み、レイフォンはカリアンに向かって指を1本立てて話す。まだ笑いの余韻が抜けきっていないのか、顔はにやにやといやらしい笑みを浮かべながら。

 

 

「面白いことをいうな、お前は。学費程度で都市の命が買えるなどと本気で思っているのか?10億だ。俺を雇いたいなら10億は用意しろ。そしたら武芸科にも入ってやるぞ?」

 

悪夢のごとき一言がカリアンの鼓膜をふるわせた。




僕は小説を読むにあたって、きっと他人よりも矛盾だったり、ご都合主義が気になって気になって仕方がないタイプです。だからそういうのができるだけ少ない話にしていけたらな~とか思っています!


ところでレギオスって設定しっかりしてるようで意外と突っ込みどころありますよね、ツェルニの武芸者の総数とか結局どうなってんだろうか
ウィキとかで300とかそれぐらいだって見た覚えがあるんだけど
小隊に所属してる人数の平均6人だと仮定してそれが17あるだけで102になるわけだからエリートもなにもないって言う…
しかもほとんどの小隊員が上級生だとすると…

というわけでこう言う所の詳しい情報を持ってる方はぜひ教えていただけると助かります!



このお話は僕が夜中に暇つぶしで書いた適当な作品です。
きっと違和感や、誤字脱字そのたもろもろがあると思いますので感想で教えてもらえるとすごくうれしいです。
普通に感想をもらえたらもっと嬉しいです!
でもって褒めてもらえたら泣いて喜びます!


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