夢のないレギオス   作:歯並び悪い

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なんだかこのレイフォンのキャラが固まらないので。
このレイフォン根源的なものを書いてみた。






※グロい表現がありますので、ダメな人は注意してください。


閑話

夢だ。

自然にそうと分かる。

こういうのをなんと言ったっけ?

…まあ、なんでもいいや。

 

 

それにしても、随分と嫌な夢だ。

 

この時ほど世界を恨み、憎んだことはないだろう。

この時ほど自分に怒り、悔やんだこともないだろう。

 

本当に、嫌な夢だ……

 

 

 

 

 

 

 

 

いずれ、そうなることは、分かっていた。

なにせ自分はある程度の未来が分かっていたのだから。

この滅びかけの世界に生まれたときから、それこそ此処に生きる誰よりもこの世界に詳しいのではないだろうか。

 

だから、それが来ることは分かっていたのだ。

未然に防げないことは分かっている。

だから覚悟だけはしていたつもりだった。

 

 

─グレンダンの食糧難

 

 

 

 

 

 

今世の自分の体は随分と高性能で、すでにスペック面で全てが前世の自分の上回っていた。

体を動かすことが楽しくて、

前世じゃできなかった動きができるのが楽しくて、

そして何よりもそこから更に成長しているのが実感できるから、

俺は武芸というものに熱中していた。

 

外力系衝頸も内力系活頸も拙いながら扱う程度にはできるようになり、

まるで限界が見えず、

どこまでも強くなれるような、

毎日が希望に満ち、輝いているような気がしていた。

 

俺が世界の平和を守るんだ!なんて夢見がちなことも言っていたきがする。

当時はまだ現実を知らず、舞い上がっていたのだ。

言葉のとおり、なんだってできる気がした。

 

 

 

 

絶望は5歳のときにやって来た。

食料の生産プラントで原因不明の病気がはやったために、都市が食糧危機に陥ってしまったのだ。

だれもが少しでもエネルギーを消費しないように、食べる量を少しでも減らすためにただただ家の中でこの危機が過ぎ去るのを待つ。

道を行き交う人も、

公園で元気に遊ぶ子供の姿もなく、

都市は死んだように静まり返っていた。

 

この食料危機に対してグレンダン政府はすぐに対応し、食料はすぐに配給制となったが、その量はとてもではないが足りるものではなく、特に俺のいた最下層の市民居住区は悲惨なものだった。

 

1週間過ぎたあたりからだろうか。

配給される僅かな食糧では限界に達し、生えている植物の葉っぱを食べる人が出てきた。

やがてその植物もなくなっていき、1ヶ月たった頃。

チラホラと裏通りで死体が捨てられ、やがてその死体消えていく。

誰かに持ち帰られ、食べられたのだ。

 

そこからは本当に地獄だった。

 

かつて、お金だの恋だので悩んでいた自分が恥ずかしく、

武芸者の力に舞上がっていた自分がバカらしくなるほどに、

それは凄惨たる地獄だった。

食料の奪い合い、死体の取り合いが頻発し、治安どうこう問題ではなかった。

人々がその日を生き抜くことに必死になり、都市が都市としてまともに機能していなかったのだ。

 

当然俺がいた孤児院も無事では済まなかった。

俺が事前に溜め込んでいた食料のおかげで、暫くは何とか食いつなぐことができたが、

兄弟たちに配給された食糧はスズメの涙ほど。

次第に限界が訪れた。

 

食糧危機が公になってから、養父さんは食べ物をほとんど口に入れることはなかった。

 

内力系活剄

これのおかげで、熟練の武芸者は飲まず食わずでも1ヶ月は戦い続けられる。

 

日がな一日、ただ道場の真ん中で座禅を組んで過ごす。

その姿をみて、俺は何かに心を打たれた気がして……

そして、活頸なら自分もできると真似をして、しかしすぐに自分の未熟さに打ちのめされた。

 

日に日に衰弱していく家族たち。

ただただ無言で佇む養父。

兄、姉たちに向かって「お腹がすいたよぉ」と弱弱しく告げる年の近い兄弟たち。

そして、日に日に数を減らしていく兄弟たち……

 

それを見ていられなくて、でもどうしようもなくて、ただただ自分の無力感をかみ締める毎日。

今思えばこの食糧危機のおかげで随分と活頸がうまくなった。

 

武芸者でもある自分への食糧配給は多かった。

それをできるだけ兄弟に分け与えようと必死に活頸を続けたのだから上手くもなるだろう。

 

 

 

 

 

そう、ある程度の武芸者は活剄を続けていれば、食べ物ほとんど食べる必要がないのだ。

食料の配給は一般人よりも多いというのに、である。

それは仕方のない事だと言うことは理解している。

武芸者は一般人からはかけ離れた存在だ。

その身にもつ力は何も武力だけではなく、権力もまたしかり、である。

武芸者の数が他の都市よりも圧倒的に多いグレンダンであろうとそれは変わらない。

ならば、その権力を持つものたちが権力を使わずにいられたのだろうか?

都市を守るため、平和を守るために犠牲になる。

そんな綺麗ごとではどうにもならない現実の前に人は我慢することができるだろうか。

もちろん、当時はただの一般市民に過ぎない自分にはそうだったと言う確証はない。

でも、今でも自分にはそれがどうしようもなく真実に思えしまう。

 

 

どちらにしろ、権力を持つ武芸者が一般人よりも食料の配給が多いのは仕様がないことなのだ。

 

 

理解は、できる。

でも納得はできない。

一部の人が飢えを我慢するだけで、ただそれだけで衰弱し、死んでいった家族がもしかしたら助かっていたかもしれないのだ。

都合のいい考え方だということは分かっている。

無茶苦茶な理論だということも分かっている。

でも、どうしても、許せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、思えばこのときからだろうか、

 

無能な権力者を嫌うようになったのは……

無力な武芸者を嫌うようになったのは……

 

─グレンダンという都市が嫌いになったのは……




5000字とか言っておきながら、3000にも届きませんでしたorz
本当に文章を書くというのは難しいものです。

これからもがんばって続けていきますので、どうか見捨てないでいただけたらうれしいです。

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