夢のないレギオス   作:歯並び悪い

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第五話

ピッ!ピッ!ピピッ!ピピピピピピピピピ!

 

旧式の目覚まし時計が、けたたましい音を立てて鳴り響く。

 

ガシャン!

 

旧式の目覚まし時計が嫌な音を立ててバラバラになる。

武芸者の力でぶん殴られたそれはきっと2度とその用を果たすことはないだろう。

 

 

「あぁ~、嫌な夢見た」

 

目覚ましを粉砕したことなど全く気にも留めずにレイフォンはだるそうに呟きながらも、のそりと体を起こす。

 

なにも学園都市生活の初っ端からこんな嫌な夢見なくてもいいのにな、と心の中で文句を延々と文句並べる。

なんだかやる気が削がれてきた。

 

ふと、時間を確認しようと時計のあった所に目を向けて、かつて嘗て時計だっただろう何かが目に入ると、ただでさえ殆ど無かったやる気が更に無くなっていき、精神が二度寝という誘惑に負けそうになる。

 

しかし初日からサボリはさすがに問題だと思ったのか、持てる限りの自制心を総動員して、なんとか至福の布団空間から抜け出す。

いそいそと白い武芸科の制服を乱雑に着て、カバンを持ち、適当な果物をかじりながらも、だるそうな重い足取りで部屋を出る。

 

登校初日から無気力なレイフォンだった。

 

 

 

 

「ついに、5年生……か」

 

学生で賑わう通学路でツェルニが誇る最強野生コンビが歩いている。

いや、歩いているのは銀髪を短く刈った大男だけで、その肩に燃えるような赤髪をした小柄な女の子が乗っている。

ツェルニ2大ゴリラが一人、ゴルネオ・ルッケンスと野生児で有名なシャンテ・ライテだ。

この2人がコンビを組めば、単独でとめられる者なしと謳われている。

事実ツェルニ最強の武芸者だった武芸長のヴァンゼであると、止められないだろう。

武芸者としての技量も高いながら、最も厄介なのはその息の合ったコンビネーション。

次から次へと襲い掛かってくる必殺の威力が篭められた頸技に対処するのは至難の業だ。

 

だが、個人の力では限界がある。

2人がいくら強かろうと、それだけで武芸大会に勝てるわけではないのだ。

 

その武芸大会が今年やって来るというのだから、ゴルネオは頭を悩ませていた。

ツェルニは崖っぷちな状況だ。

現在ツェルニのセルニウム鉱山の保有数はあとひとつ。

だから今回の武芸大会でもし、負け越すようなことがあれば、ツェルニは滅びてしまう。

いつか去ることが決まっている場所だとしても、自分たちの家とも成ってくれたこの都市が滅びてしまうのだ。

それは、とてもとても悲しいことであり、

そして、何より自分たちが武芸者として無価値であることの証明になってしまう。

そんなことが許されるはずが、自分たちの努力が無駄になるはずが無い!しかし事実として勝てる保証も無い。

 

そんな理想と現実の板ばさみで、もがき苦しむゴルネオの視界にそれは映っていた。

 

ゴルネオが最初に其れに気づいた時は何かの悪い冗談だと思った。

其れは自分の良く知っている“彼“の顔とよく似ていたのだ。

その“彼“はゴルネオが、圧倒的な才能の違い故に苦手意識を持っていた兄と同じ場所に僅か10歳という幼さでたどり着いた人物。その強さに、才能に嫉妬を覚え、そしてやはり憧れを抱いてしまった人物─レイフォン・ヴォルフシュテイン・アルセイフ

 

「急に立ち止まってどうしたんだ?ゴル」

 

肩に立つシャンテの声にすら気付けず、ゴルネオは呆然とその場に佇んでいた。

天剣が、ツェルニにきた。

無気力がオーラとして滲み出るほどに、全身でだるいと表現しているような姿だが

それこそ武芸科の制服を着ていなければ武芸者であると誰も気付けないだろう姿だが

それでも、ゴルネオは確信を持って其れを化け物の代名詞たる天剣だと断定できた。

身のこなし、にじみ出る雰囲気は誤魔化せても、頸は誤魔化せない。

拙いながらも相手の体に流れる剄が判別できるゴルネオが、レイフォンの剄脈の一部の乱れも無く流れる剄を見間違えるはずがないのだ。

 

しかし、何故だ?

其れが分からない。

このタイミングで天剣がツェルニに来たのはそれこそ比類なき幸運であるが、だからこそ解せない。

 

だが、天剣そのものに苦手意識をもつゴルネオが、何故ここにいる?と聞きにいく勇気がとっさに出るわけも無く、ゴルネオの悩みの日々はしばらく続くことになる。

 

 

 

 

 

 

教室にたどり着いたレイフォンは最後列の座席に直行し、すぐさま突っ伏した。

無尽蔵の体力もつ武芸者であるはずだが疲れきって見える。

登校するという事への精神的ストレスなのだろうか、とにかくレイフォンは精神的に疲れていて今すぐにでも惰眠を貪りたく、しかしそれは近くに座っている男子生徒に遭えなく邪魔されてしまう。

 

「よ、よう、君も昨日緊張で眠れなかったのか?実は僕もなんだ。あ、僕の名前はエドって言うんだ。これからよろしくね」

 

睡眠を邪魔された上に見事な勘違いをかまし、更に自己紹介まで仕掛けてきた目の前の太り気味な男子生徒。

新しいクラスで何とか友人を作ろうとする姿が微笑ましくて、懐かしくて、嘗ての自分を思い出させてくれる。

故に円滑な関係を築くためにもあいさつを返す。

 

「あ~、俺はレイフォンでいいよ。これからよろしくな。じゃ、俺は寝るから、おやすみ~」

 

 

円滑な関係の構築を済まし、レイフォンは今度こそ夢の世界へと旅立った。

 

 

 

 

 

 

「おい、起きろレイフォン。」

 

まるで深い深い水底から、浮上するような心地よい感覚。しばらく其れに身を任せ、しだいに意識がはっきりしてきて……

視界に入ってきた太り気味の男の姿にテンションが水底を突き抜けるほどに駄々下がりした。

 

「ふわぁ~、おはよう、エロ。今日はもう終わりか?」

 

気を取り直しつつ、わざわざ起こしてくれただろう男に一応あいさつしつつ尋ねる。

日の高さからしてまだ昼前だろうが、クラスメイトと思われる者たちが教室からどんどん出て行くためだ。

 

「ああ、今日は初日だから午前で終わり。本格的に授業すんのは明日からだ。たくっ、結局一回も起きなかったな」

 

説明をしてくれた先輩の引きつった顔を思い出し、呆れながら言うエド。

 

「ああ、俺は一日の9割を時間睡眠に費やせるプロのニートだからな。それよりエド、帰って作んのめんどくさいし昼飯食いに行くか?」

 

レイフォンが誇らしげにダメなことのたまうが、其れをエドは見事にスルーする。

 

「ああ、行くよ。この前うまい店見つけたからそこでいいだろ?」

 

レイフォンも特に意見は無いようで、二人は教室を出た。

 

 

 

 

 

「よお、新入生たち、昼飯か?俺も一緒についてっていいか?」

 

校門をちょっと出たところで美形の男に声をかけられた。

その男は長い金髪を後ろで一つに束ね、白い武芸科の鋭角的なフォルムの制服を着、甘いマスクの上に軽薄な笑みを浮かべて立っていた。

その姿が実に様になっていて、周りの女子の目線を釘付けにしていた。

 

そして、其れを見て、エドは何かを思うよりも、条件反射的に心の中で叫んだのだ。

 

 

─モテは滅びろ!




最近おもうんだ、
この話には何かが足りないと。
僕は考えて、考えて、考えて、考え抜いて、そして気付いたのだ

そう、戦闘シーンが足りないと!


というかまともな戦闘描写って未だに書いたことない
人生で一度もない
そして今回も戦闘はない

これはひとえに僕の力不足によるものです。まじで。
そんでもって暫く戦闘がないままが続くかもしれません。
これもひとえに僕の力不足によるものです。まじでごめんなさい。

そして願わくばいつか戦闘描写が出てくるまで見捨てないでください。
切実にお願いします。

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