にしても戦闘シーンって書くの難しいものですね。
なかなかうまくいかないものです。
あと、設定なんかを纏めたのをチラ裏に投稿してみました。
外伝みたいな感じのどうでもいい話を載せる予定なので、暇つぶしに見てやってください
「お前たちには今から戦ってもらう」
武芸科の初授業。
カッチリした体型の先輩が開口一番にそんなことをのたまってくれた。
「ふわぁあ、めんどくさいなぁ、普通初回は説明回って相場が決まってるだろうに」
あくびをしながら文句をいうレイフォン。今は午後の授業で、つまり今までずっと寝ていたのである。明らかに寝起きと分かる顔で、弛緩した体でめんどくささを表現するレイフォンは周りから少々浮いていた。
「言いたい事は分かるがレイフォン、演技でも少しはシャキッとしろ。目を付けられるぞ」
見かねたのかレイフォンと一緒に来ていたナルキが注意する。
周りの同級生はナルキも含めて皆背筋を伸ばし、期待やら、決意やらに瞳を輝かせている。
其れに対してレイフォンは、だるそうに背筋を曲げ、瞳からはやる気所か精気すら感じられず、あまつさえ左手でしきりに目を擦っているのだ。
今前で喋っている先輩には見えずらい所にいるが、見つかれば目を付けられることは間違いないだろう。
「あぁ分かったよ、にしても皆なんでこんなやる気満々なんだよ。一般教養のやつらもう下校だぞ?俺らだけとか不公平すぎだろ。」
そう、武芸科生徒は一般教養科目を履修した上で、更に武芸科の科目があるのだ。一般教養科生徒も後々専門授業が増えてくるのだが、少なくとも1,2年のうちは武芸科の方が断然授業数が多いのである。
レイフォンは其れに対して不満を漏らしつつも、一応はナルキの言う通り背筋だけは伸ばす。レイフォンにとって教師役の先輩に見えないようにだらけるのは朝飯前なのだが、ナルキに注意されるのがめんどくさいのだ。
「そういうな、私たちは都市を守ることが使命なのだ、其れを思えばこれぐらいの事当然だろう。」
それは武芸者たちにとっては子供の頃から聞かされてきたこと、正論中の正論、当たり前な事なのだが、レイフォンの心には響かなかった。
なにしろレイフォンにとって学園都市の武芸科で教わることなど何もないのだ。今まで自分が培ってきたものは言うに及ばず、グレンダンにおける基礎の段階にすら至っていないモノを学んでもしょうがないのである。
だからレイフォンは、ああ。と気の無い返事を返すのみに留める。いっても仕様が無いことなのだから。
そうこうしている内に、レイフォンの番が回ってきた。
知らない男子生徒と向かい合い、レイフォンは今までの癖で意図せずとも、相手の情報が脳に浮かび上がってくる。
細身の長身の男だ。筋肉の付き方からして獲物は槍か棍。体を流れる剄の流れは今この場に集まっている武芸者の中ではまあまあ洗練されている方、どちらかと言えば衝剄が得意と思われる。
レイフォンからすれば稚拙を通り越して幼稚なものだが、どうやら期待の新人らしく、先輩も注目しているようだ。レイフォンを見て、勝てると踏んだのか、ふっと鼻で見下したように笑った。
当然これには自他共に認めるほどに人間が出来てないレイフォンが我慢できるはずも無く……
当初順当に負けてやるつもりだったが、今ではどうやって苦しませて勝とうかという事に思考の大半を裂いている。
「はじめ!」
教師役の合図が響き渡り、それと同時に相手がレイフォンに突っ込んでくる。
左頬に襲い掛かる剄の篭められた右ストレート、それを左に身を捻って掠らせながらもギリギリかわす。
相手はそのまま体勢の崩れたレイフォン接近し、勢いのままに肩から体あたり。まともに受けてしまい体が浮くレイフォン。
間髪入れずに襲い来る左拳から繋がる内股刈り。よく訓練されているだろう一連の動作は流れるように自然でスキが無く、そして力強い。
崩れた体勢のまま、ボディを捌く。だが、足を取られてしまったレイフォンは体が後ろに倒れていき、同時にさらに一歩接近してくる相手。この一撃で試合を決めるつもりなのだろう。地面に打ちつけようと右拳を構えながらも、自らの必勝を確信したかのように口元を歪める。
事実その拳には先ほどよりも剄が篭っており、十分に上体を捻った体勢が其処から繰り出される威力をうかがわせる。
誰もがレイフォンの敗北を確信した瞬間だった。
そして拳を振り下ろそうとし、相手の足の間にレイフォンの刈られなかった右足が自然と入り……
──ドスッ
「ぐがぁっ!」
うめき声響き、レイフォンがドザッと音を立てて地面に体を打ち付ける。
周りの観戦していた者はみな静まり返っていた。
そして、パンパンと身に付いた土を払いながらもレイフォンは立ち上がり、相手が地面に崩れ落ちた。
「うおっ、超ラッキー」
そんなことを呟きながらもレイフォンはもがき苦しむ相手をほっといてナルキのいる辺りへと戻っていった。
▼
「おのれ!汚染怪人!もう許さんぞ!」
懐から赤い錬金鋼を取り出し、ポーズを決めてから腰につけたベルトのバックル部分に差し込む。
ガチャッっと音がして、錬金鋼がベルトに嵌り、
「レストレーション!!!」
叫び声とともにベルトに差した錬金鋼から赤い光があふれ、その光が収まった後其処にいたの者は赤いスーツとヘルメットに身につけていた。
「愛と勇気で都市を守る!正義の守護者ブゲイジャー!此処に参上!!覚悟しろ汚染怪人!お前の野望は俺が食い止める!!」
そうポーズを決めながら自己紹介してブゲイジャーは怪人へと猛スピードで突っ込んだ。
放課後、家でテレビを流しっぱなしにしながら、レイフォンは机に向かっていた。
テレビで流れているのは正義の武芸者が世界征服をたくらむ悪の汚染怪人を倒すという何の捻りも無い番組なのだが、これが意外と視聴者受けがいい。
娯楽の少ない都市だからこそ、こういう物でも人気がでるのだろうか、子供の頃から似たようなのを何度も見たことがある。
老若男女問わず皆の話題によく昇るが、あいにくレイフォンは興味が無かった。
レイフォンにとっては前世も会わせればそれこそ飽きるほど見たものであり、使い古されたネタなのだから、左から右へと聞き流すのも仕様が無い。
そして、机には一冊のノートが置かれており、表紙には『予言の書』と汚い字で書かれていた。レイフォンが子供の頃、出来心と必要に駆られて書いたものである。今では見るだけで恥ずかしくなる表紙だが、それを手にとって開き、目的のページを探す。
「幼性体が来るのは小隊戦の夜か。もうすぐだな」
近づいてくる闘争に思いを馳せながら……