願いの物語シリーズ【或る役者の妄言】   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第4話『やぁ! 諸君。僕こそが世界的俳優。ジョージ・ウィルソンだ。今日はよろしく頼むよ』

陽菜と話をしてから少しして、今日ヒナちゃんねるの配信があると聞いた僕は、このままお邪魔する事にした。

 

そして、陽菜に紹介して貰って彼女が兄と慕う立花光佑とも話をする。

 

彼は配信で見ていた通りの好青年で、さらに野球の動画で見た様な力強さも感じた。

 

何よりも。

 

「やはり」

 

「どうかしましたか?」

 

「君のお母さんは朝陽という名の女性では無いかな。旧姓は藤堂。藤堂朝陽」

 

「……っ! どうして母の事を?」

 

「昔の知り合いさ。幼馴染と言った方が良いかな」

 

「また、か」

 

「うん?」

 

「貴方も母に何か用があるのですか?」

 

「まぁ用があると言えば……いや、無いかもしれないな」

 

「え?」

 

「ここに来るまでは、陽菜と会うまでは有ったんだよ。確かに。僕はずっと朝陽と共に生きてきたからね。それに里菜の事も愛している。でも、今は陽菜の事を第一に考えたいんだ」

 

「……」

 

「だから……正直なところ、今朝陽に会ってもパンクしてしまうかな。僕はそれほど頭が良くないからね」

 

「そう、ですか」

 

「うん。でもまぁ。そうだな。もし朝陽と話す機会があるなら、今度君や陽菜を交えて話をしようと言っておいてくれ。昔話を子供にするのも悪くないだろうとね」

 

「……分かりました」

 

光佑君との話はそれほど盛り上がらず、彼は終始困った様な顔をしていた。

 

なんだかそれを申し訳なく思いながらも、僕はこのままでは駄目だなと彼の背中を叩く。

 

「さ、元気を出すんだ!!」

 

「う、わっ!」

 

「これから君の大事な妹、そして僕の大切な愛娘の配信があるんだろう? そんな辛気臭い顔をしてどうする。まぁ、話をした僕も悪かったが」

 

「い、いえ。申し訳ない。俺も、なんかおかしな事言っちゃって」

 

「いやいや。大切な家族に何かがあったら不安なのは誰でも同じさ。という訳で、気持ちは切り替えていこうじゃないか」

 

「そうですね」

 

「うむ。朝陽譲りの良い笑顔だ。よし。では我らがお姫様の為に頑張ろう。光佑」

 

「えぇ!」

 

僕は光佑と手を握り合い、スタジオへと向かう。

 

中では真剣な顔をした陽菜がスタッフを今日の配信について話をしている様だった。

 

そして、僕と光佑が入ってきた事に気づくと、光佑に笑いかけて手を振ってから、僕にも気づいて視線を逸らしてしまう。

 

「なんて事だ。もしかして陽菜に嫌われているのだろうか」

 

「いや、年頃の女の子はみんな父親に対して距離を取りたがるらしいですよ」

 

「本当なのか。光佑!」

 

「えぇ。俺の知る限り俺の父は親として完璧な人でしたが、妹の綾からは一緒に洗濯しないでとか、一緒にご飯食べたくないとか、お父さんの後にお風呂入りたくないとか言ってましたから」

 

僕は陽菜に同じ様に言われた事を想像して、気分が悪くなった。

 

さながら地獄である。

 

「父は、辛いな」

 

「今度飲みに行きましょうか」

 

「助かるよ。是非その完璧な父にも会わせてもらいたいものだな」

 

「まぁ母に会う時に呼んでおきます」

 

「助かる」

 

僕はイマイチ距離感の掴めない陽菜と親子になる為に、より一層気合を入れる事にした。

 

そしていよいよ配信が始まる。

 

既にソファーに座っている陽菜と光佑を見ながら僕は陽菜に呼ばれるタイミングを待つのだった。

 

「はいはーい。今日も元気にヒナちゃんねるやっていくよー!」

 

【来たのか!?】

 

【遅ぇんだよ!!】

 

【待ちかねたぞ!! 少年!!!】

 

【陽菜ちゃんは女の子やが】

 

【この前の配信から独特なテンションしてる奴が増えたな】

 

【可愛い女の子が自分と同じ作品に興味を持ったと知って暴れてるオタクの図】

 

【逆に嫌いになるのでは……?】

 

【アフォだから】

 

「いきなり元気だねぇ。さて、さてさてさて! 今日はなんとゲストさんをお呼びしてます」

 

【おぉ!】

 

【久しぶりだな。誰が来るんだ?】

 

【そら前回に引き続き、プラモ作る回だし、オタク君やろ】

 

【前回の放送に長文呟きをしてた火野坂が怒りの乱入か!?】

 

【笑う】

 

【火野坂が来るとどうなるんだ?】

 

【知らんのか。燃え尽きる】

 

【なるほど炎上タイプじゃなくなってノーマルタイプになるのね】

 

【もえつきるの効果はノーマルじゃなくて、タイプが無くなる。ノーマルになる訳じゃない】

 

【なんか別のオタク君生えて来て笑う】

 

【色んな奴が居るんだなぁ(しみじみ)】

 

【まぁ視聴者が多いからね。必然的にそうなるわな】

 

【で? ゲストは誰よ】

 

「えぇーっと、ゲストは……! はい! お兄ちゃんですっ!」

 

「えっと、はい。どうもゲストの立花光佑です」

 

【???】

 

【は? え? なに?】

 

【ヒナちゃんねる史上ここまで意味不明な回があっただろうか】

 

【その人ゲストやない。レギュラーや】

 

「あっ、そ、そうだね。うん。分かってるよ。えっと、今日のゲストは! その、ゲストはぁ!」

 

【なんや凄い引っ張るな】

 

【え? どんな大物が出てくるの?】

 

【陽菜ちゃんが動揺するレベルです】

 

【宇宙人かもしれん】

 

僕はモニターから目を離し、急いで陽菜を見ると、助けを求める様な顔をしていた。

 

その顔を見て、僕の父親ハートが燃え上がり、僕はその場から勢いよく飛び跳ね、カメラの正面に降り立った。

 

無論、二人の体にはぶつからない様に気を付けながらだ。

 

そして、やや大げさな仕草で、ソファーに座ると足を組み、堂々と笑いながらカメラを見つつコメントの反応を追う。

 

「やぁ! 諸君。僕こそが世界的俳優。ジョージ・ウィルソンだ。今日はよろしく頼むよ」

 

【……】

 

【……】

 

【……】

 

【はぁあああああああ!!!!?】

 

【まっじかよ!!!】

 

【そん、ばっ、はぁ!? はぁあああ!!?】

 

「ハハハ。大盛況じゃないか。陽菜。光佑。作戦は成功の様だね!」

 

僕はあえて大袈裟に声を上げながら二人の肩を叩き、笑う。

 

それを見て、陽菜は落ち着いたのか。スイッチを入れて、夢咲陽菜というキャラクターの演技をしながら笑った。

 

「まぁまぁかな。でもあんまり暴れちゃ駄目だよ。ビックリしちゃったんだから」

 

「ハハハ。いやーすまない!」

 

「ん! 許してあげる!」

 

「感謝いたします。我が姫」

 

「くるしゅうない!」

 

【うぉぉおおお!! マジでジョージ・ウィルソンじゃねぇか!】

 

【どういう繋がりだよ!!】

 

【ヒナちゃんねるもここまできたか(後方古参面)】

 

「僕がここに来た理由かい? 大した事じゃ無いよ。僕の友達が陽菜のファンでね。配信を見せてもらったんだ。それで彼女のキュートさに心を射抜かれてしまってね。ここまで来たって訳さ」

 

【どういう行動力してんねん】

 

【推しに会いたくて海を渡り来た男】

 

【いやでも流石のジョージ・ウィルソンって感じ。俺らじゃ会いたいって思っても会えないからな】

 

【そらそうだろ】

 

【いや、でもいくらジョージだとしても、そうそう簡単には会えんだろ。陽菜ちゃんは引退してんのやぞ】

 

「ふふ。種明かしをするのは楽しいね。何。大した事じゃ無いさ。僕は山瀬耕作と古い有人でね。彼の娘である佳織とも友人なんだ。そして、佳織の紹介で陽菜に会えたって訳さ」

 

【とんでもねぇ繋がりだった】

 

【このまま人脈辿っていくと大野でも佐々木でも会えるのヤバイな】

 

【陽菜ちゃん経由でアイドルにも会えるし、もはや会えない人間のが少ないだろ】

 

【どこぞの王族も居るしな】

 

【そして今日、遂に世界で最も有名な俳優とも繋がりが出来た訳か】

 

【どこまで広がっていくんだヒナちゃんねるの世界は】

 

僕は盛り上がるコメント欄を見ながら、笑う。

 

陽菜は凄い子なのだ。

 

それを世界中が知っていくのを嬉しく思うのだった。

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