【質実剛剣 グラム】
<Infinite Dendrogram>というゲームがある。
ざっくり言うと世界初が沢山あるVRMMO、らしい。
親がニュースで見たとかなんとかで俺も知った。
そんな俺は古池グラス。日本生まれのハーフである。
趣味はないが、得意なことは棒切れを振るうこと。一時期剣道も齧っていたがすぐにやめた。
そんな感じの俺だが、<Infinite Dendrogram>というものに興味を惹かれている。
なんでもモンスターやらジョブ、エンブリオというものがあるそうな。
無限の可能性、だったか。エンブリオは自身の経験とパーソナルから自分だけのエンブリオが誕生するらしく。
そこでまぁ、気になった。
俺のエンブリオは、一体どのような形になるのだろうと。
気になってしまったからには、もうやるしかないと思ったものだ。
伊達に暇ではなかった。
貯金は貯める一方だったので問題なくゲームを購入し、早速ログインしてみた。
そこでアバターの造形やらなんやらを管理AIという運営のサポートを受けつつ進行して。
とりあえず天地という刃の国と紹介されていた場所を選んで、いざ。
─────そう思ったら、なぜか空の上から落とされた。
演出をするにしても、これはないだろう。
俺はそう思いながら地面に落下していった。
「さて」
天地に降り立った俺は、まず何をしようかと考えた。
ジョブを取るか。
観光するか。
基本的にエンブリオが目覚めるまではジョブは取らずに好きに動く、というのが一般的らしい。
でも俺はそんなことよりも戦ってみたい。
そうすれば俺のエンブリオも自ずと戦う形になってくれるだろう。
そんなわけで【剣士】になってみた。
下級職は就職に条件がないものが多いらしいのでさっくりと就けた。
武器はアバターを作る時にロングソードを貰ったのでそれを使う。
というわけでバトルフィールドへGO。
「ふむ」
まず出くわしたのは狼の群れだった。
名前は……ティールウルフ、か。
とりあえず群れってことは一体ずつの戦闘力は低いのだろう。
まずは倒す。というわけで倒した。雑魚でしたね、はい。
ゲームのモンスターと言えど弱点は同じで助かった。
大抵の生物は首を切れば死ぬ。真理である。
辺りを見てみれば俺と同じようなマスターと呼ばれるプレイヤーがチラホラと。
恐らくエンブリオであろう独特な武器を持っていた。俺も早く使ってみたいものだ。
そう思いながらモンスターを斬り殺していく。
モンスターが弱いせいか、すぐに急所を狙い斬り伏せることが出来てしまう。
ならば、もっと奥へ。強いモンスターのいる場所へ。
そう考えてしまうのも不思議ではない、はずだ。
進めば進むほど人は消え、モンスターが増える。
立ち塞がるもの全てを斬り殺し、【剣士】のレベルはどんどん上がっていく。
結構な時間が経過しているのだろうとは、なんとなくわかる。
しかし俺は楽しくなっていた。
何処まで進めるのか、何処までやり遂げられるのか。
デスペナルティを受ければ丸一日ログインが出来なくなるという。
別にそうなっても良いか、と気楽に考えた。
進んで、進んで……本当にいつの間にか、というべきか。
俺の手にはボロボロのロングソードではなく、新品同然の剣が握られていた。
無骨な剣。ただ相手を斬る為だけにあるかのような剣。
【質実剛剣 グラム】
それが俺のエンブリオだった。
俺は……まぁ丁度良いかと武器を換えてモンスターに挑み続けた。
やることはエンブリオが出てきたとしても変わらない。
なぜかスキルの一つもなかったのが気にかかったが、それも先程と変わりないと考えれば気にすることでもないかと思えた。
そういうわけなのでモンスター狩りを続けた。強いやつもいれば弱いやつもいた。モンスターを斬り殺すこと、さてどのくらい時間が経過したのか。
ふと時間が気になり見てみれば、流石にログアウトしなくてはならない時間になっていることに気がついた。
まだ続けたい気持ちはあったが、それは明日以降でも出来るのだと納得させて街へと戻ってログアウトする。
それが俺の、<Infinite Dendrogram>を初めてプレイした一日だった。
☆☆☆☆☆☆☆
そして翌日。
俺は再び<Infinite Dendrogram>の世界へと降り立ち、モンスターを狩り始めた。
段々と戦い方がわかってきて、剣の振り方がわかってきて、俺は楽しくなっていた。
抑圧されていたものが解放されたような感覚。一言で表すなら、そんな感じだった。自覚していなかったが、俺は剣を、武器を振るのが好きなのだとわかった。
それで、まぁフィールドで探索を続けてジェノサイドしてたわけだが。
なんか見つけた。闘っているのが、2体ほど。
一つは亀。ただしデカい。少なくとも現実の亀よりもはるかにデカい。そして何より機械的だ。頭や足は生物的だが、甲羅は機械的で二対の大砲が内部から生えている。
もう一つは死体。というか骨だ。スケルトンってやつだろう。四本腕で、それぞれの腕に異なる武器を持っている。どれもボロボロだが、黒いオーラを纏っている。
そいつらが闘っている。
【砲殻亀 ダブルカノン】
【骨結子骸 シシカバネ】
見えたのはそんな名前だった。
今まで遭遇してきたモンスターとは名称が明らかに違う。何か、特別なモンスターであるのは間違いなかった。
状況は膠着しているようだが。
シシカバネの攻撃はダブルカノンの甲羅に当たってはいても弾かれている。生物的な部分を狙おうとしても顔を引っ込めているせいで狙えない、ように見える。
ダブルカノンも明らかに火力がありそうな大砲でシシカバネを狙っているが、頭と手足を引っ込めて動きが鈍く、狙ってもシシカバネのAGIに追いつけず、適当に放たれた砲弾も避けられている。
互いが互いを殺せる手段を持っていても、互いの長所が相手の攻撃の邪魔をする。
故に長期戦になり、互いを殺せない。
……よし。
「行くか」
立ち上がり、剣を構える。
俺はそう決めた。
【質実剛剣 グラム】
TYPE∶アームズ 到達形態∶I
能力特性∶性能特化
スキル∶なし
ステータス補正∶なし
装備補正∶攻撃力+1000
グラムの必殺スキル
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我が剣に曇りなし
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剣一つあれば良い
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神剣
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一剣万象
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剣の理
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全なる一刀
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そんなものはない