既に時は2月。だいたい一ヶ月近く経過していた。
一ヶ月前のあの時、俺はモンスター狩りに行こうとしたのだ。経験値も貯まるし素材もお金もゲットできる。Qのエンブリオの特性を考えればあればあるだけ困らないだろうからな。
ただ、向かっている途中でシシカバネがいないことに気付いて探せば、ガチャを回しているシシカバネの姿が。
しかも俺のリルを使って。思わず引き剥がした。
既に五〇万リルを入金したらしく、シシカバネの手元には五つのカプセル玉が。
「開けよ?」
そんなことを首を傾げながら言われたが、俺はひとまず拳骨を落として『やりたいならちゃんと言うガメ』と叱った。
涙目になって頷くシシカバネを抱えながら、俺は一つのカプセルに『大変巨大なため、街から出て空けてください』という文章があったのでフィールドに出てカプセルを空けたのだ。
一つを残し、先に他の四つを開封したが、あんまり良いのは出なかった。精々ステータスが上がるアクセサリーが良かったくらいだろう。
でも最後が問題だった。
開封すれば、見上げるほど大きな巨木が現れた。遠くにいたモンスターも巻き込んで潰してたので相当巨大。
そうして出たのが【アムニール】の枝だった、というわけだ。
枝を引いたシシカバネは「ぶい」とピースサインを作ってたが、もう何も言えず、とりあえず指輪にして収めた。「あー」なんて言うんじゃない。
しかし、枝が出たのは大変好都合ではあったのでアイテムボックスに入れてから家に一度帰宅し、預けてからモンスター狩りを再開した。
四人にも予定はあるし、俺は俺でテレジアとの交流もある。
おかげで装備作成の打ち合わせがあったとしても一ヶ月近く掛かってしまった。
……そういえば最近、シュウと会うことがないな。いや、アイツにも事情はあるだろうし遭遇しないとしても不思議じゃないか。
それはともかく、この一ヶ月で準備は粗方終えたと言って良いだろう。
どんなコンセプトで、どんな性能で、何を求め、どのように作って貰いたいのか。
必要な素材も集め尽くした。メインはアムニールと、ハロモナス・ティタニカエと魔天シャワーの【プレゼント・フレア】で量産したとある金属。あと最上位素材をいくつか。
つい昨日、準備を終えた四人に作って貰い、出来上がった装備を受け取ったばかりだ。
全てのリソースを注ぎ込み
何かあったら修復したりアップグレードすれば良いしな。
「というわけで、はい、プレゼント」
「……今日は着ぐるみを着てないのね」
「うん。まぁ、こういう時ぐらいはな」
俺は今、プレゼントを収めた箱型のアイテムボックスを持ってテレジアを訪れていた。
ドーは気を利かせたのかここにはいない。今は俺とテレジアの二人きりだった。
そんなテレジアは、アイテムボックスよりも俺の顔をじっと見つめている。
「どうかしたか?」
「いえ」
静かにこちらに手を伸ばし、何か触れたい部分でもあるのだろうと顔を近づけると、テレジアの小さな手は俺の頬に当たり、触れる。
「あなたがこんな顔をしてるって、初めて知ったから」
「……ずっと着ぐるみ着てたしな」
「いつも顔を見せてほしいわ」
「じゃあテレジアと会う時は着ぐるみは脱ぐことにするよ」
しばらくずっと見つめられ、ようやく手を離されて視線がアイテムボックスへと向けられる。
そっと差し出せば、テレジアは両手を出して受け取り床に置いた。
そして、こちらを見上げてくる。
「開けてもいい?」
「どうぞ」
アイテムボックスの蓋が開けられ、テレジアが中に手を入れる。
そうして取り出されたのは、俺が要望した通りのドレスだ。
夜空色、と称せば良いのか。
黒だったり、深い青だったりと、色合いとしては暗め。
キラキラと金とも銀とも言えない光沢を放つ装飾が施され、星のようにも、あるいは天の川のようにも見える。
「綺麗」
「そいつは良かった」
「けど、私には大きすぎるわ」
「そこら辺は大丈夫。身体に合わせて自動調整されるからな。俺は外に出とくから、試しに着てみてくれないか?」
「……少し、待ってて」
バタンと扉が閉まり、ふと横を見れば部屋の前に居座っていたのかドーが床に寝転がっていた。
屈んでドーの頬を突きながら待っていると「入っていいわ」と声が聞こえたので入室。
見えたのは、ドレスを着たテレジアの姿。
問題なく身体に合わせて大きさも調整されたらしく余っている部分はない。
そして、幼くとも綺麗だ。
「あの……どう?」
「綺麗だよ、テレジア」
「………ありがとう」
顔を俯かせる。
照れているらしい。赤くなった頬が見えた。
……流石に幼女だとは言え、潜在能力はあるんだよなぁ。つまり可愛い。そしてこれから可愛くなると考えれば……そういう意図ではなかったが、強い装備にしたのは正解だったか。
「普段は着れないけど……大事な時には、着るから」
「是非ともそうしてほしい。あと、出来れば着なくても近くには置いておいてくれ」
「それは、どうして?」
「
テレジアの目が見開かれる。
このドレス、装備としては今のところ弱い。
ステータス補正はSPとMPに特化させているが、上昇する数値は低いし防御力も同様。
ただ、リソースを吸収して成長し、性能を高める機能がある。
テレジアの自動成長の仕様を考えれば、実にピッタリだと言えるものを作ってもらった。
破壊されても吸収したリソースを使い自動修復するような性質も持たせている。消し飛ばない限り、このドレスは永遠にテレジアの元に有り続ける。
例え俺がいない間であっても、テレジアのことを守ってくれるだろう。
「……あなたは、どれだけ私の心を揺さぶれば気が済むのかしら」
ポツリと呟かれる。
そして、そっと自身の胸に手を置いた。
「嬉しくて、胸が裂けてしまいそう」
その声には、確かな喜びがあった。
俺にはそう感じ取れた。
喜んでくれたのなら素材を集めてきた甲斐があったというものだ。
「胸が裂けるのは困るが、喜んでくれたなら何よりだよ」
「生涯の宝物にするわ」
「そこまで?」
「そこまで」
まだ一桁年齢なのにそんな……いや、それだけの年数しか生きてないからこそ、か?
まぁテレジアの人生もこれから長いこと続くのだ。宝物の一つや二つ、今の段階であったとしても構わないだろう。
喜びの、楽しい思い出を思い返せるのは良いことだろう。
悪い記憶を思い出すよりもはるかに健全だ。
「だから責任取ってね」
「うん?」
「離れないで、ってことよ」
「あぁ、なるほど」
なんかその年齢の子供が出しちゃいけない言葉と声音を聞いた気がするが、きっと気の所為だろう。
……なんかアイテムボックスの中で【シシカバネ】が暴れているが、ひとまず抑え込んでスルー。あとで出してやるから。
それから暫くテレジアと会話した後、俺は名残惜しげにするテレジアと別れて城を出た。
とりあえずドレス作成に大きく貢献してくれたあの四人に報酬を渡すために歩き出す。
今後は作ってほしいものはないので、今度は俺が彼女たちの要望を聴く番だ。ひとまずお金は全財産の八割近い十数億ほど渡しに行くつもりである。
そうして四人を探しに出かけ、お金の問題で一悶着あったが俺にとって達成感のある日が過ぎていった。
「────ずっと、ね」
【MDQB・
オールドポンドが製作を依頼したドレス。魔天シャワー、百々目、Q・デモンストランドム、■■が要望に応えようとした結果、初期性能こそ低いが上限が非常に高いえげつない装備になった。
流れ込んだリソースを吸収して性能を上げる機能があり、段階的にスキルを解放していく。さらには破壊されてもリソースを消費して自動修復される。
ステータス補正はSPとMPに特化し、さらにMPとSPを貯蔵する機能がある。
未開放スキルが貯蔵スキルと吸収スキルの他に八つあり、最終的に全て解放されると超級武具に匹敵、あるいは上回る装備へと変貌する。
まさしく神の装備。
しかし一応制限もあり、レベルは関係ないが超級職でなければならず、装備枠も頭やブーツ、両手武器枠以外はアクセサリーも含め全て埋まってしまう。
名称は漢字をオールドポンドが考え、ルビはQが考えた。
ちなみにテレジアは部屋にドレスを飾るようになり、それを《鑑定眼》で見ちゃった人は腰を抜かした。
(◎n◎)<張り切りすぎましたね。
(●_●)<……私も欲しいから造ってもらう。
(◎n◎)<これ、まだサービス開始してから一年も経過していないんですよね……オールドポンドが頑張りすぎて盛りすぎた。
(◎n◎)<……でも一番やばいのって、これアップグレードできることなんですよ。特典武具でもない装備品だから。
(◎n◎)<そしてテレジアの好感度もオーバーフローした。もう逃げられないゾ
グラムの必殺スキル
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我が剣に曇りなし
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剣一つあれば良い
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神剣
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一剣万象
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剣の理
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全なる一刀
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そんなものはない