エリザベート・S・アルター
「とつぜんなのじゃが、かくまってほしいのじゃ」
『本当に突然ガメ』
それは、テレジアの部屋から出て廊下を歩いていた時。
金髪ロールな幼女の名前はエリザベート。テレジアの姉である第二王女である。
以前にエリザベートが脱走した時に鉢合わせてなぜか一緒に逃げることになってしまった時のことを思い出し、ひとまず近くの部屋に入って話を聞くことに。
「ダッソウしたのじゃ」
『自認ありとは困ったものガメ。今日はいつまでやるガメ?』
「むろん、つかまるまでやるのじゃ!」
『うーんお転婆』
いや、一桁年齢の幼女なんて普通はこんなものか?
うちの親戚の子もこのくらいはしゃいで……いやあの子はおしとやかに振る舞おうとしてたか。すぐにバレたので路線変更してきたけど。
「オールはかえりなのじゃ?」
『まぁそんなところガメ』
「ありがとうなのじゃ」
『ん?』
突然の感謝に、話が繋がっておらず困惑した。とはいえその疑問もすぐに解消された。
「テレジアとしたしくしてくれているときいている。だからカンシャするのじゃ」
『ああ……俺は、俺のしたいことをしてるだけガメ。礼は不要ガメ』
正直、感謝されるとむず痒い。
仮に俺が逆の立場なら同じことをしていただろうが……それはそれ。
本当に感謝されることじゃないし……言えないことも多いからな。
特にテレジアが【邪神】であることなんて、言えるはずもない。
『……あぁそうだ。折角だし、これをあげるガメ』
「む?」
ふと思いつき、アイテムボックスからそれを取り出す。
黄色い宝石を埋め込まれた、比較的簡素なペンダント。
それをエリザベートに差し出す。
彼女もそれを手に取り、首を傾げた。
「これは?」
『ペンダントガメ』
「それはみればわかるのじゃ。ぷれぜんと、なのじゃ?」
『そうそう、贈り物ガメ。もちろんただのペンダントじゃないガメ』
「ほうほう」
じっと視線は手の中のペンダントに向けられ、『ひとまず装備してみるガメ』と告げてエリザベートにペンダントを付けさせる。
『それは【アキュミュラシオン・ジョーヌ】って言うガメ』
「ふむ」
『効果はSPを蓄積していつでも取り出せるようにするガメ。数値で言えば一万くらいは溜め込めるガメ』
「ふむ?」
エリザベートはペンダントを見つめ、再び首を傾げた。
「わらわはジョブには就いておらんぞ?」
『良いことを教えてあげるガメ。SPやMP、HPを使うのに
「……んん、いいたいことがよくわからないのじゃ」
まぁそうだろうなと頷く。
この世界の人々は、まずジョブに就いてスキルを行使し、その代償としてMPSPその他諸々を支払う。
スキルを介さず、ジョブを介さず使おうなどと誰も思いつかないし、考えない。
なぜならその必要がないから。
……恐らく直接操作を可能とした者もいたのだろうが、難解であるが故に広まることはなかったのだろう。
だが、難解であることと不可能であることは、全くの別物だ。
『まず見てみるガメ』
俺はそう言って両手を突き出す。
右手に
それらを操り玉状に形成、わかりやすく色を付けてエリザベートに見せる。
『右手がMP、左手がSPガメ』
「このタマがそうなのじゃ?」
『おう。そして、SPやMPを操るのに俺は
「……そんなことがカノウなのじゃ?」
『出来る。それこそ、エリザベートでもな』
「わらわでも?」
MP玉とSP玉を操り、周囲に動かす。
その速度はMP玉が速く、SP玉が遅い。そうなるように意図的に操作している。
『MPは外に及ぼす力、SPは内に及ぼす力、と考えれば良いガメ。まぁMPやSPを逆に扱っても良いが、あんまり効率的ではないガメ』
「う、うむ」
理解できないことを必死に理解しようと玉を見ているが、流石に見ただけで習得できるほど簡単ではない。
そして、今のエリザベートに必要なのは【アキュミュラシオン・ジョーヌ】で貯め込めるSPの使い方。今はMPは置いておいて良い。
なのでエリザベートの手を取り、SPを流し込んで感覚を刺激する。
「これは……なんだかあったかいのじゃ」
『SPを感覚的に理解できるように流し込んで刺激してるガメ。今すぐには扱えなくても、いずれ分かるようになるガメ』
「うぅむ……わらわにもあつかえるのか?」
『エリザベートなら使う方向性を間違えなければ問題ないガメ』
「ほうこうせい?」
手を握り、SPを流し込みながら説明を続ける。
『人には、得意不得意があるガメ。ジョブの才能のようなものガメ』
「それはわかるのじゃ。【騎士】になれるものと【魔術師】になれるものはちがうのじゃ」
『そうそう。つまり自分に合った方向性に鍛えないと才能の無駄遣いガメ。エリザベートなら、多分隠れたり足を速くしたりすることにSPを使えば良いガメ』
「それはたのしそうなのじゃ!」
エリザベートが楽しそうにしているが、それはあくまで取得できたらなので念押ししておく。
『と言っても一朝一夜にできることじゃないガメ。どんなことも、時間をかけて覚えていくものガメ。あらゆる行動は、全て自分を鍛えるための勉強ガメ』
「べんきょう……」
じっと、握られた手を見つめるエリザベート。
一度手を離し、SPの流れが途切れる。
『一度動かそうとしてみるガメ』
「……むん!」
エリザベートは手を力ませ、動かそうと試みた。
しかし残念、SPが動いた様子はなくエリザベートはこちらを見上げた。
「うごかせないのじゃ」
『最初はそんなもんガメ。俺もすぐに習得はできなかったガメ』
「……オールはどれほどであつかえるようになったのじゃ?」
『ん? 実戦しながらやってたら数時間で使えるようになったガメ』
「…………」
じっとりとした目を向けられる。何故だろう。
しかしやる気が出たのか、すぐに自分の身体に集中して感覚を思い出そうとしている。
目を閉じ、内側に目を向けて集中する。
才能を感じさせる。
俺が予め感じ取って操りやすくしたが、この様子だとすぐに─────
そう思っていると、エリザベートの身体から僅かにSPが波打った。彼女は目を見開き興奮したように紅潮している。
「できたのじゃ!」
『流石、ガメ。とはいえまだ初期段階。SPも少ないから本格的に事象を引き起こすには、そのペンダントからSPを引き出す必要があるガメ。それが出来るようになってからが、本番ガメ』
「うむ!」
このままエリザベートが修練を続けていけば、SPを駆使して誰にも見つからないように脱走したり隠れたりすることが出来るだろう。
……そうなったらエリザベートを守らなくてはならない護衛たちが悲惨なことになるかもしれないが、エリザベートに自衛の手段を覚えさせるのは悪いことでは……ない、と良いなぁ。
『じゃあ俺は帰るガメ』
「む、もうかえるのじゃ? いや、そういえばかえっているトチュウだったのじゃ。ひきとめてすまなかったのじゃ」
『気にしなくて良いガメー。ところでエリザベートはどうするガメ? まだダッソウ続けるガメ?』
「わらわは……わらわも、そろそろもどることにするのじゃ」
『そうしたほうが良いガメ』
なんか周囲から響く音が大きくなってるし、本格的に捜索に入っているようである。長く引き留めすぎたのは、こちらも同じだった。
「またキカイがあればおしえてほしいのじゃ」
『それはもちろんガメー』
扉を開け、エリザベートに手を振って別れる。
彼女もすぐに廊下の角を曲がり、大きな声がこちらにも響いてきたが、無事に見つけられたようである。
ちなみに後に、俺がSPの扱い方を教えたせいでエリザベートは隠形技術が格段に向上し自ら姿を現さないと誰にも見つけられないほどとなっていたが、そんなことはその場にいない俺には知りようもないことであった。
そしてエリザベートが
(◎n◎)<修行パートともいえる。
(◎n◎)<天災児をさらに飛躍的に成長させちゃったオールドポンド。後にテレジアがこのことを知り、拗ねてオールドポンドを困らせたりした。
<エリザベート
(◎n◎)<SP操作技術を取得した。
(◎n◎)<そして隠形技術が高まり隠れているのを繰り返していたら超級職の条件を満たした。
(◎n◎)<就職しなかったのは、父に相談して、その上で「いまのわらわにはひつようのないものじゃ」と判断したため。
(◎n◎)<ただ、それはあくまで『今は』なので、未来はどうなるのかわからない。
<【アキュミュラシオン・ジョーヌ】
(◎n◎)<テレジアへのプレゼントのための試作品。その内の一つ。
(◎n◎)<しかし【永遠】がアクセサリー枠を全て埋めてしまったので渡されることがなかった。
(◎n◎)<SPを蓄積するスキルと、蓄積されたSPを少しずつ増やしていくスキルがある。
(◎n◎)<……でもSPを取り出す効果がないから、自前の操作技術が必要になる。
(◎n◎)<おかげで装備者にメリットがないということで装備制限などは全く付くことがなかったので、オールドポンドはエリザベートに贈った。
グラムの必殺スキル
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我が剣に曇りなし
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剣一つあれば良い
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神剣
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一剣万象
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剣の理
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全なる一刀
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そんなものはない