(◎n◎)<最初はリリアーナ書こうとしたんですけど、筆を動かしていたら最終的にラングレイになってた。なぜだ。
─────剣戟音。
激しく斬り合う音が響く。
「おぉぉぉ!」
剣を手にし、斬りかかるのは【
超級職としての高ステータスを発揮し、動かない相手を一方的に攻め立てる。
優位に立ち、攻勢に出ているように見える。
しかし真実は違う。
険しい顔をしているのは攻めているはずのラングレイで、涼しい顔をしているのは攻められている方だった。
相手もまた同じ武器を持ち、しかしその場から動くこともせずにラングレイの剣撃を逸らし、弾き、絡め取り、時に反撃する。
二人の戦闘が始まってから、ラングレイは一度たりとも相手に対して攻撃を当てることができていなかった。
あくまでこれは試合であり、スキルを封じ、彼の愛機にして愛馬である【
これが実戦であれば、戦いの行方もまた異なるものになっていただろうとラングレイは考える。
(だが……!)
だがそれは、今の試合には全く関係がない。
そして何より、全力ではなくともラングレイは本気だった。自身の持ちうる技術でもって、相手を打ち倒さんと果敢に攻めていた。
本気で戦って、それでもなお敵わぬ差が、自身と相手に存在する。
同じ条件、同じ超級職、そしてAGI以外では勝っているはずのステータス。
それを覆すのは相手の圧倒的な技巧によるもの。
その技巧が、決して埋めることのできない差としてラングレイを阻む。
ラングレイの剣が突きを放ち、それを同じ突きで相殺される。
そして剣先が、ほんの僅かにズラされる。そのズラされた剣のベクトルはラングレイの身体を止めることはなく、前へと突き進む。
至近距離に近づいた相手は、既に剣を振り上げていた。
(……これが<マスター>……いいや、【
ラングレイがそう改めて認識した時には、既に剣は振り下ろされラングレイの持つ剣が真っ二つに斬り裂かれていた。
剣を斬られ、試合継続が困難となる。
この試合はラングレイが負け、相手が勝利した。
ラングレイの、
☆☆☆☆☆☆☆
「如何でしたか。グランドリア卿」
「……【大賢者】様」
疲労を回復させているラングレイに、【大賢者】と呼ばれた老人がラングレイの隣に移動する。
その言葉は、文字通り「彼と戦ってみてどう思ったのか」ということを聞こうとしていた。
それに対してラングレイの告げられる言葉は一つだけだった。
「凄まじい、としか言い表せません」
それは相手が<マスター>だったから、などというありふれた理由ではない。
相手が超級職……【
今も、ラングレイと戦ったあとでありながら彼は戦いを続けるだけの余裕があるようだった。
『もっと攻めてくるガメー。そんなんじゃ近づくことすら叶わんガメー』
「ぐっ、なんて物量……っ!」
「スキルも使わずになぜこれほどの芸当が可能なんだっ!?」
部下である【聖騎士】たちを一切近寄らせず、あろうことかスキルも使わずに遠距離から攻撃して追い詰める始末。
それを見つめながら、ラングレイは事の発端……自身が【剣神】と戦うことになった理由を思い返し始めた。
始まりは、目の前にいる【大賢者】の言葉からだった。
『本人だとは理解していますが、せめて《看破》を使っても見えるようにはしてください。これではもし不埒な輩が同じ格好で侵入してきても判別できません』
そう【剣神】に苦言を呈し、彼も『御尤もガメ』と理解を示して承諾。王城に入城する時は自身の特典武具を一度外して見てもらうことを約束した。
その時に《看破》を防いでいたのが特典武具であることが明らかになり、それを【大賢者】が深く聞いたことで神話級であることも判明した。
それも単独討伐で。
《真偽鑑定》で嘘をついていないことは証明され、ラングレイはそれを聞いた時にとても驚愕したことを覚えている。
そしてそれを知った【大賢者】が、一つの提案をした。
【剣神】と【天騎士】の試合である。
ラングレイには断る理由はなかったために承諾し、【剣神】である彼も『久しぶりに超級職と戦えるのは良い経験になるガメー』と言って試合には乗り気だった。
折角だからと【大賢者】は弟子を呼び、ならば自分もとラングレイは部下の【聖騎士】たちを呼んで観戦させることとなった。
そうして始まった一度目の試合は……スキルもアリとしてしまったために、ラングレイにも何が起こったのかすら理解できずに気絶させられる、という醜態を晒すことになった。何が何だか分からなすぎて、いつの間にか負けていたことに呆ける他なかった。
あまりにもあまりな決着に【剣神】自身が『さ、三本勝負でやろう』と言ってくれなければ、近衛騎士団の騎士団長としての威厳は保てなかっただろう。
そうして改めて始まった三本勝負は、【剣神】の提案でどちらもスキルなしで試合をするということになった。
アクティブ、パッシブ、装備スキル、その全てを禁じて技術のみで仕合う。これならば<マスター>の持つエンブリオはステータス補正以外は全て封じられるが、自身にあまりに有利な提案にラングレイとしては申し訳なさすら覚え、
─────それが思い上がりであることを、初手で自身が何もできずに剣を斬られたことで理解させられた。
一勝目を取られ、二勝目も十何合かの打ち合いで剣を斬られ、続く三勝目は幾分長く保ったが、結局同じ方法で敗北を喫した。
言い訳のしようがない完膚なきまでの敗北。
一戦ごとに戦う時間が長くなったのは、単に【剣神】が攻め込まなくなり守りに徹するようになったから。つまり手加減をする余裕すらあったのだ。
そうしてラングレイ……【天騎士】と【剣神】による試合は終わり、【剣神】はそのまま近衛騎士団の【聖騎士】たちとの集団戦に移り、今に至る。
ラングレイはそれらを思い返し、ふと「なぜ【大賢者】様は【
「【大賢者】様。なぜ、彼に私との試合を勧めたのですか?」
「……そうですね。理由は幾つかありますが、まず挙げるとすればエリザベート殿下です」
「エリザベート殿下?」
疑問を浮かべるラングレイに【大賢者】は続ける。
「エリザベート殿下の脱走が多くなっていることはご存知ですね?」
「ええ、まあ……お恥ずかしながら、全く対処できていない状況です。一体どのようにして抜け出しておられるのやら」
「それです」
「それ、とは?」
ええ、と【大賢者】は頷き、
「エリザベート殿下が脱走を成功させる一番の理由は、彼にスキルを介さずSPを操り、事象を引き起こす術を学んだからと殿下本人から聞き及んでいます」
「スキルを介さず、ですか? まさか、そんなこと、………」
思わずラングレイは聞き返し、如何に才能が溢れていようとそんなことができるはずがない……と、そう思いかけて。
目の前で戦いを繰り広げ、スキルを封じているにも関わらず
「……そのようなことが可能なのですか?」
「可能か不可能かで言えば、可能でしょう。かの先々代【龍帝】も、魔法職ではないにも関わらず数々のオリジナル魔法を扱っていたと聞き及んでいます。それを彼が出来たとしても、何ら不思議なことではありません。並大抵の才能では、不可能な御業でしょうが」
「……」
ラングレイは思わず【剣神】を見つめる。
剣の技巧。それだけでもラングレイを圧倒するほどの才能を見せた。
それだけではなく、SPを直接操り遠距離への攻撃にまで転用している。
自身にそのようなことが可能か。それを考え……考えてみても、できるかどうかなど見当もつかなかった。
思考に耽るラングレイは、自身を【大賢者】が見つめていることなど気付かず、彼の言葉で現実に引き戻される。
「弟子たちには、良い刺激になったでしょう」
「! もしや、彼らに観戦させていたのは」
「もしも話が本当であれば、これほど絶好の機会はないと思ったからですよ」
真偽の確認と弟子への発破。それらを兼ねた自身と【剣神】の試合。
それに気付いたラングレイは「抜け目のない人だ」と内心で思いながら、改めて【剣神】を見る。
気づけばカンストにまで達している【聖騎士】たちはリタイアし、今は後方で控えていたカンスト未満の騎士団員が【剣神】と試合を繰り広げている。
その中には、自身の娘であるリリアーナも含まれていた。
「行きます!」
『よっしゃ来るガメー』
剣を構えて向かっていく娘を見て、ラングレイは思う。
もし自身が引退したとして、【天騎士】を誰かが継ぐことになるのなら。
それは出来ることなら、自身の娘であるリリアーナであって欲しい、という我儘。
もちろん他に【天騎士】となれる候補が他にいる以上、そうなる可能性は低いが……かといって、0ではない。
リリアーナが【天騎士】となり、近衛騎士団の団長になる可能性は存在する。
そこまで考えたラングレイは我ながら親馬鹿だと苦笑しながら、立ち上がる。
「おや、行くのですか?」
「はい。やられっぱなしというのもアレですので、せめて一泡吹かせに行こうかと」
「……少しは落ち着いたのかと思ったのですが、君は相変わらずのようですね、グランドリア卿」
苦笑する【大賢者】の言葉を受けながら、ラングレイは戦う娘と部下たちの元へと向かう。
一対一では現状勝ち目がないことはわかりきっているため、ラングレイはまだ動ける部下たちを纏め上げ、近衛騎士団として【剣神】へと挑むべく剣を手に取った。
試合はラングレイを含めた近衛騎士団が全員戦闘不能となるまで続けられ、一時的に王城の守りに支障を来すという事態になってしまったが、近衛騎士団全体の技術向上には成功する。
そして【大賢者】もまた
いずれ来る■■との決戦に備えて─────
(◎n◎)<ちなみにこの交流戦的なもので2人ほどオールドポンドの交友関係が増えた。
グラムの必殺スキル
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我が剣に曇りなし
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剣一つあれば良い
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神剣
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一剣万象
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剣の理
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全なる一刀
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そんなものはない