剣一つあれば良い   作:オルフェイス

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(◎n◎)<仮面の女剣士だ。

(◎n◎)<面構えが違う。


アルティミア・A・アルター

 

 それは、テレジアの部屋から出て王城から出ようとした時のことだった。

 

 

『さーて、今日は何をしたもんガメー』

 

 

 今日の予定を決めてなかったために歩きながら何をしたものかと考え始める。

 モンスター狩り。素材集め。あるいはそろそろギデオンに決闘を見に行くのも良いかもしれない。

 廊下を歩きながら頭を悩ませ、角を曲がろうとする。その前に気配を感じて一度足を止め、相手が角から出てくるのを待った。

 

 そうして出てきた人物に感じたのは、まず『蒼い』だった。

 蒼い長髪。いや藍か? どちらにしろ『蒼』という印象に違いはない。

 そして、一番目を引いたのは腰に携えた蒼い剣。

 見たら分かったが、この剣は()()()

 威圧感と、感じ取れるリソース。今までに見てきた武器の中で最強の剣であると断言できる。

 それこそ、俺のグラムなど相手にならない。目の前にある剣はそういうものだと理解できた。

 

 ……より正確に言うと、あれはもはや剣から逸脱している。しかしその剣が『自分は剣』というスタンスを崩していない様子だから、一応は剣として扱って良いのだろう。

 

 剣から目線を外し、蒼い長髪の女を見つめる。

 全体的に蒼のイメージを抱かせる目の前の人物に、俺は心当たりがあった。

 あちらもこっちに気付いたのか、目線を向けてきた。

 

 

「……」

『……失礼するガメ』

「ちょっと待ちなさい」

 

 

 無言が続き、沈黙に耐えきれなくなったので立ち去ろうとしたら止められた。

 足を止めて、彼女の方へと体を向けた。

 

 

「あなたは【剣神】ね? 話は父から聞いているわ」

『そういうそっちは第一王女様、であってるガメ?』

「……聞いていた通り、奇怪な語尾をつけるのね。ええ、あっているわ」

 

 

 俺の質問に彼女は肯定で返した。

 第一王女、アルティミア・A・アルター。

 国王エルドル・ゼオ・アルターの娘の一人。そしてテレジア、エリザベートの姉。

 なんでも隣国のドライフ皇国に留学していたらしいので俺は会う機会がなく、稀に帰省した時もタイミング悪く俺は外にいて出会うことがなかった。

 なんとも妙なタイミングで遭遇したものだと考え、

 

 

「ところで、あなたは師に勝ったと聞いているわ」

『スキルなしの試合だったガメ』

 

 

 話の流れが変わり、アルティミアから告げられた言葉に端的に返す。そこに嘘偽りはなく、ただ事実だけを告げた。

 それに対してアルティミアは、知っている、という様子で頷き、

 

 

「私と、戦ってほしいの」

 

 

 そんなことを言われてしまった。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 アルティミア・A・アルター。

 彼女は、生まれながらの超級職である。

 アルター王国建国の時から存在していた最強の聖剣である【アルター】。

 その聖剣を扱うことを許された今代の【アルター】の担い手、特殊超級職【聖剣姫(セイクリッド・プリンセス)】。

 それがアルティミアだった。

 

 【聖剣姫】として生まれた彼女には、【アルター】を扱うための血統と比類なき剣の才能があった。

 

 その才能は、皇国で出会った彼女の親友との鍛錬でさらに磨かれ、留学期間を終えた彼女は王国へと帰還した。

 そこで聞いたのは、彼女の師であったラングレイ・グランドリアの敗北。それを成したのは超級職に就いた<マスター>であったという。

 スキルなしでの試合ではあったが、敗北であることには変わりない。それも純粋な技巧による勝負だったという。

 だから彼女は気になった。

 果たして、師を倒した相手はどれほどのものなのか。

 彼女は気になり……【アルター】を手に持ち、テレジアと会っているという【剣神】の元へと向かった。

 そして今、彼女は【アルター】を構えて目の前の相手と相対する。

 

 【アルター】を持たなければ勝ち目がない、とアルティミアは考えていた。

 自身の親友のように、才能という点で相手が勝っていたとしても不思議ではない。【天騎士】ラングレイに勝利したという事実は、彼女にそう考えさせるに値するものだった。

 彼もまた、自身の獲物を手に構えた。

 無骨な剣。しかし、アルティミアの知る限りで【アルター】に次ぐ業物であると直感的に理解できた。

 

 

『こっちはブローチはいらんガメ。それに斬られたらブローチは意味なさそうだし、最悪デスペナになっても仕方ないガメ』

 

 

 そう言いながら、オールドポンドは自身の装備を変えた。

 

 

「……それは?」

『決戦用装備……のようなものユキ』

 

 

 アルティミアの疑問にオールドポンドが答える。

 それはアルティミアの知る【剣神】の情報にはなかった姿だった。

 真っ白な着ぐるみ。一言で表すなら、『雪だるま』というかつて<マスター>から伝えられた文化に似ているとアルティミアは思った。

 同時に語尾が変わったのを聞いて「それは鳴き声なのかしら」と疑問に思ったが、言葉として出すことはなかった。

 

 ─────というより、()()()()()()()()()()()()()()()()()から、口に出すことが出来なかった。

 

 

『《忌死改征(ファイナル・オーダー)》』

 

 

 その呟きと共に、彼の握る剣からの圧が膨れ上がった。

 咄嗟に【アルター】を構え、防御体勢をとってしまうほどに。

 今までに感じたことのないほどの威圧感が、オールドポンドの握る剣に生まれていた。

 

 

(……なに、これ)

 

 

 固唾を呑んだ。

 動けない。

 下手に動けばこちらが殺されるのではないか。そう錯覚してしまう。

 アルティミアは今、()を如実に感じ取っていた。

 

 

『さ、始めようユキ』

「っ、ええっ」

 

 

 オールドポンドの言葉に我に返り、咄嗟に応えたために思わず声が裏返る。

 アルティミアは自身を落ち着かせ、言い聞かせる。

 アレがどれほどの武器であろうと、【アルター】に敵うことはないと。

 それは事実であり、決して覆ることのない絶対。

 仮に打ち合ったところで斬られるのはオールドポンドのグラムであるのは確実だ。

 

 ─────担い手がオールドポンドでなければ。

 

 

『あぁそれと、一つ謝っておかなきゃいけないことがある』

「……何かしら」

()()()()()()()()()()─────《魔剣(グラム)》』

「─────《抜剣(リリース)》!」

 

 

 オールドポンドがアルティミアに接近して剣を振り下ろすのと。

 それに合わせてアルティミアがリミッターを解除して【アルター】を振り上げたのは、殆ど同時だった。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 【MDQB・KE】の装備スキル、《忌死改征(ファイナル・オーダー)》。

 効果∶H()P()()()()()()()()()()()

 使用してから五分間、オールドポンドのHPが減るほど彼の指定したスキルの倍率が倍増する装備スキル。

 オールドポンドはグラムにH()P()を注ぎ込んでHPを減らしつつ攻撃力へと変換することで、《忌死改征(ファイナル・オーダー)》を最大限発揮できるほどにHPを減らした。

 

 この効果を受けたのは【剣神】の保有するスキルレベルEXの《剣強化》。

 その倍率は、HPを最大まで減らしたことで十倍……即ち3()0()0()0()()にまで上昇。

 

 そして<超級エンブリオ>【質実剛剣 グラム】の攻撃力は、全エンブリオ一の()()()()

 

 それによってグラムの攻撃力は九三〇〇万オーバーにまで達していた。

 

 そこから更にHPを、そしてMPやSPすらも注ぎ込んで攻撃力を上げたことで攻撃力は一億を突破。ダメ押しとばかりに【シャツァン】による封印強化、そして《魔剣》の自壊強化も加わった。

 

 その結果、何が起こるのか。

 

 その答えは、すぐにわかる。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

「『─────』」

 

 

 アルティミアとオールドポンド。

 互いに言葉は発さず、ただ目の前の()()を見ていた。

 

 無傷の【アルター】。

 ヒビが入り、今にも砕け散りそうなグラム。

 

 ()()()()()()()()()()()【アルター】。

 【アルター】を剣身に留めたグラム。

 

 【アルター】に対しての偉業を成し遂げたグラムは、すぐに《魔剣》による反動でヒビが広がり、そしてその身を崩壊させた。

 

 残るのは持ち手のみ。

 オールドポンドは無言でそれを見つめる。アルティミアは驚愕の眼差しでそれを見ている。

 沈黙が続き……オールドポンドが両手を上げて、

 

 

『いやぁ、俺の負けユキ。完敗ユキ』

「……え」

 

 

 自身の敗北を、認めた。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 アルティミアは一人、廊下を歩いていた。

 

 あの後、敗北を認めたオールドポンドは何一つ負けたことなど気にする様子も見せずに、アルティミアが止める間もなく王城から出ていってしまった。

 アルティミア自身、確かに武器を破壊された以上は勝利と言えなくもないだろうとは理解はできる。

 

 だが、納得はできなかった。

 

 あの時、あの瞬間。

 オールドポンドには【アルター】ではなくアルティミア自身を狙う選択肢があった。

 たった一度でもブローチを発動させてしまえばそれで勝ち。

 スキルは封じておらず、遠距離から狙う手もある。

 わざと負けるような相手ではないことはラングレイからは聞き及んでいる。

 

 だからアルティミアは納得できなかった。

 ─────いいや、逆に認めていた。自身の敗北を。

 そう思う一番の理由は、やはり【アルター】。

 【アルター】でオールドポンドのエンブリオを切断出来なかったこと。

 【アルター】による切断を受け止められたこと。

 その事実が、アルティミアの心を重くした。

 

 ……………などと、長々と話したが。

 アルティミアの心情をわかりやすく簡潔に、結論から言うと。

 

 彼女は今、とても()()()()()いた。

 

 アルティミア自身も意外なことに、彼女は負けたことに悔しさを覚えリベンジに燃える性質(たち)だった。

 負けず嫌い、と称しても良い。

 アルティミアの親友、クラウディアとの鍛錬では悔しさなど覚えたことがなかったが……その時の自分は【アルター】を持っておらず、そしてクラウディアの得物が槍だったからかもしれない。

 本気でやろうとして負けたと認識したのは、今回が初めてのことだった。

 故にいつかリベンジするのだと、アルティミアはその瞳に熱を宿し、滾らせる。

 

 そして、必ず本気を出させるとも。

 

 そのために、次にしたいことも考えついていた。

 アルティミアは自室の扉を開けて部屋に飛び込むと、机の引き出しからあるものを取り出した。

 それは……()()だった。

 アルティミアはその仮面を手に取り顔に装着すると、すぐさま身を翻して部屋を出ていった。

 

 

 それから一週間後。

 ギデオンに新進気鋭の《仮面の剣士》と呼ばれる女傑が現れ、ランカーを撃破していったりしていた。

 

 




(◎n◎)<アルティミア∶ギデオン√

(◎n◎)<オールドポンドと戦ったせいで彼女の戦闘への欲求と苛烈さを引き出してしまった√になります。

(◎n◎)<おまえのせいです。あーあ


<【アルター】
(◎n◎)<今のオールドポンドだと《断刻》と《忌死改征》、【シャツァン】と《剣強化》、あと《魔剣》とかを使ってようやく剣を止めることができた。

(◎n◎)<刃からじゃなくて側面から斬ってたら話は違ってただろうけど、敢えて挑んだのでこれが限界になりました。本人的には満足してます。

(◎n◎)<なおアルティミア。


<オールドポンドへの矢印
アルティミア「倒したい相手。いつか目にもの見せてやる」
エリザベート「テレジアと仲良くしてくれたり、知らないことを教えてくれる着ぐるみの人」
テレジア「■してる。だから■されるならあなたが良い」

(◎n◎)<エリザベートを除いた王族の情緒を壊してますねぇ……

グラムの必殺スキル

  • 我が剣に曇りなし
  • 剣一つあれば良い
  • 神剣
  • 一剣万象
  • 剣の理
  • 全なる一刀
  • そんなものはない
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