剣一つあれば良い   作:オルフェイス

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2体のUBM戦

 

【骨結子骸 シシカバネ】と【砲殻亀 ダブルカノン】の遭遇は、偶発的に発生したものである。

 

 まずシシカバネという(ユニーク)(ボス)M(モンスター)は自然発生したモンスターである。

 とある才能あるティアンが死亡したあとに怨念が宿り、肉が朽ち骨だけとなった段階で動き出した。周囲に同じく埋まっていた骨を集め、自分の体の一部として結合しながら地中から這い出してきた。

 UBMとなったのはその時のことであり、つまり生まれたてのUBMがシシカバネだった。

 

 そしてそのタイミング。偶然にも地上にいたUBMが、お察しの通りダブルカノンである。

 シシカバネはアンデッド。生ある者は全て敵でしかない。

 そのためシシカバネは、生者であるダブルカノンを発見してすぐにダブルカノンに襲い掛かった。結合して形を変えた骨の武器を携えて。

 

 そうしてダブルカノンとシシカバネの戦いは始まり、しかし膠着状態となって延々と勝敗が決しない泥試合と化していた。

 

 ─────そこに、彼は現れた。

 

 自身のエンブリオである剣を手に持ち、悠々と歩いている。先にそれに気付いたのはシシカバネであり、同時に仕掛けるのが速かったのもシシカバネだった。

 先程まで狙っていたダブルカノンを放って彼へと走り出し、その4つの腕から武器を振るった。

 

 骨の剣、斧、槍、刀。UBMであるシシカバネのSTRに、所詮は一つの下級職にしか就いていない彼が敵うはずもない。AGI、END、HPやMPも、全てのステータスでシシカバネは彼の上を行っている。

 

 ─────それでも、なお。

 

 武器を折られたのは()()()()()の方だった。

 

 まず彼は最小限の動きで攻撃を避けると、地面に刺さった武器に向かって同じく剣を振り下ろし、叩き折った。

 最初に刀、剣、槍、そして斧。流れるような動作で、連続して武器を破壊した彼は、そのまま体勢を前のめりにしていたシシカバネに向かって剣を振り下ろし……骨の身体に食い込み、受け止められた。

 

 当然の結果だった。

 

 UBMの武器を生まれたてのエンブリオで破壊したことは称賛に値することだが、それでもシシカバネの防御力、ENDを突破するには攻撃力が足りていない。

 

 シシカバネは刃を折られ使えなくなった武器を、柄しかない状態ながらも先端を向け、至近距離にいる彼に振り下ろした。

 しかし彼は剣を容易く滑らせるように引き抜くと、剣を僅かに添える形で四本腕の攻撃は逸らした。

 彼にとって、例えAGIで劣ろうとこの程度ならば対処可能な攻撃でしかなかった。

 

 そして彼は数歩、後ろへ下がった。

 

 シシカバネは追撃せんと前へ踏み出し─────背後から火を吹く音が響いた。

 爆音と言い換えてもいい。

 ソレはシシカバネを背後から狙い撃ち、容易くシシカバネの骨体を爆撃、粉々にした。

 

 ダブルカノン。このUBMの二対の大砲から硝煙が立ち上っていた。

 

 隙だらけの敵を狙わない理由は、ダブルカノンにはない。故に撃ち、シシカバネを粉砕した。そして標的は一人残っている。

 ダブルカノンは砲身を彼へと狙い、定め、撃ち放つ……そうする前に、彼は既に投擲の体勢に移っていた。

 

 剣だ。彼がエンブリオを孵化するまで使っていた剣。既にボロボロのそれと、ドロップアイテムと思わしき剣を両手にそれぞれ持ち、ダブルカノンの砲身の()に投げ飛ばした。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 ─────ここで話は変わるが、ダブルカノンというUBMについて説明しよう。

 伝説級UBM【砲殻亀 ダブルカノン】は、攻防一体をモチーフにデザインされたUBMである。

 保有するスキルは二つ。

 一つは攻撃力か防御力の、一番高い数値を低い方に加算する《攻加防追》

 もう一つがダブルカノン最大の攻撃である二対の大砲と、その砲弾の生成能力である《ツイン・キャノンボール》

 これらのスキルによりダブルカノンは高い水準で防御力と攻撃力を両立している。ダブルカノンの場合、自前の甲羅による防御力が一番高いため、その防御力が攻撃力に加算されている。

 

 撃ち放たれる砲弾にも、《攻加防追》によって攻撃力の補正は乗る。

 

 並の存在ならシシカバネのように粉砕される他ない。少なくともそれだけの攻撃力はあった。

 自前の高い防御力は、彼の剣では歯が立たないほどに硬い。生身のENDであれば話は別だが、籠もってしまえば対処もできない。

 

 そしてさらに話は変わるが……《ツイン・キャノンボール》によって生成される砲弾は、どちらかといえばミサイルに近い。

 着弾した時点で爆発する。シシカバネを粉砕したように。

 そして、その着弾とは()()()()()()()()()()()()()()()

 

 《攻加防追》によって攻撃力を高められた砲弾は、命中すればダブルカノン自身の防御力を超えた威力を発揮する。

 

 ─────さて、答え合わせをしよう。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 ダブルカノンは砲弾を撃ち放とうとして─────

 

 ()()()()()()()()()()()

 

『っ!!??』

 

 ダブルカノンの甲羅は弾け飛び、細かな血肉が飛散する。激しい激痛に悶え苦しみの声をあげている。

 

 その隙を見逃すような彼ではない。

 

 彼は走り出す。甲羅が弾け、防御力が消え失せた今が最大の勝機だった。

 ダブルカノンは痛みに暴れる。激痛が走りながらも敵がいることは忘れていない。

 引っ込めていた顔を出し、噛みつこうと首を伸ばす。

 だが、鈍い。彼に攻撃を届かせるには遅すぎた。

 

 彼は伸ばされたダブルカノンの顔に足で踏み、そのまま飛んだ。剣を逆手に持ち、降りる先に見えるのは甲羅が爆散して丸見えとなっているダブルカノンの内臓─────そして、心臓。

 

 飛んだ勢いのまま、彼は心臓に向かって剣を突き下ろした。

 

 如何にENDや防御力が高かろうと、内臓までも強靭には出来ない。そのようなスキルをダブルカノンは保有していない。

 故に決着はついた。

 心臓を刺されたダブルカノンは動きを静止し、そのまま崩れ落ち、その身体を光の塵へ……リソースへと還元された。

 

【<UBM>【砲殻亀 ダブルカノン】が討伐されました】

【MVPを選出します】

【【オールドポンド】がMVPに選出されました】

【【オールドポンド】にMVP特典【はいぱーきぐるみしりーず だぶるかのん】を贈与します】

 

 そして響く機械的なアナウンス。それは戦いの終わりを告げるものであり……

 同時に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「しぶといな、お前」

 

 

 骨だけで脆そうなのに、と付け足しながら、自身のエンブリオを装備して振り返る。

 その視線の先には、数々の骨の欠片が散乱し……

 

 その中心に、ほんの小さな、それこそ最初に見たシシカバネよりも小さな骨が立っていた。

 その骨はボロボロで、今にも崩れ出してしまいそうにも感じられる。

 かつてあった四本腕も二本しかない。

 しかし、その空洞の瞳からは赤い敵意がチカチカと光る。その手には一本の骨の剣が握られ、黒いオーラは薄れているが存在している。

 

 弱っていても、オールドポンドを殺すだけの手段をシシカバネは持ち合わせている。

 

 

「良いぜ、来いよ」

 

 

 彼は構え、同時にシシカバネは走り出す。

 目の前の敵を、オールドポンドを殺すために。

 弱っていてもUBM、その速度は下級職でしかないオールドポンドよりもはるかに速い。

 骨の剣を両手に持ち、速さを乗せて振り下ろす。

 彼は最初にやったように剣を避け、足で剣を踏んで固定し武器を折ろうとした。

 

 

「おぉ?」

 

 

 しかしシシカバネは反応し、逆に力を込めてオールドポンドの足ごと持ち上げ彼の体勢を崩した。

 隙。シシカバネは持ち上げた剣を再び振り下ろし、

 

 ()()()

 

 シシカバネは混乱し、動きが一瞬止まる。

 オールドポンドは体勢を崩された瞬間、片足で飛んで体を捻り地面に足をつかず、浮いた状態でシシカバネの足を剣で掬い上げて転ばせたことを、シシカバネには理解できない。

 

 シシカバネは立ち上がろうと、した。

 ザン、と。シシカバネの頭が転がる。

 

 首の骨。その接合部分を斬られたシシカバネは、自身の体の骨を見た。

 

 そして自身に剣を振り下ろそうとするオールドポンド。

 

 それが、シシカバネに見えた光景(■■)だった。

 

【<UBM>【骨結子骸 シシカバネ】が討伐されました】

【MVPを選出します】

【【オールドポンド】がMVPに選出されました】

【【オールドポンド】にMVP特典【死子幼蕾 シシカバネ】を贈与します】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 中々に紙一重の戦いだったのではなかろうか。

 

 手に入れたMVP特典とやらを装備しながら、そう思う。

 今の俺はダブルカノンを思わせる機械の甲羅とそれに合体している二対の大砲を背負った亀の着ぐるみの姿をしているのでシュールだが、一旦置いておこう。

 

 まずダブルカノンだが、正直なところ自爆してくれるのかは賭けだった。何せ投げ入れた剣に着弾してもそのまま弾き飛ばして砲撃される可能性もあった。

 そして自爆したとしてもダメージが少ないという可能性も当然ながらあった。特に今回は上手く行き過ぎたと思うほどだ。

 

 そしてシシカバネもそうだ。あいつのステータスは俺よりもはるかに高い。ダブルカノンもステータスが高いのはそうだが、あいつはENDに尖ってる感じだったのでまだ対応は可能だった。しかしシシカバネの方はAGIが高い印象だった。

 

 下手をすれば対処が間に合わず殺されていた。

 

 それに俺の剣で斬れないとなれば、残念ながら自力で倒すのは……残り()()の事も考えれば、不可能に近かった。

 だからシシカバネを誘い、ダブルカノンの砲撃に当たるよう調整した。

 

 上手く行ったから良かったが、ダブルカノンがこちらを先に狙う可能性や別のスキルを使うことも考えられた。

 シシカバネが倒れず、何らかの防御能力を持っている可能性もあった。

 

 もしも、もしも、もしも。考えればきりがない可能性が無限にあった。

 

 本当に紙一重で、運が良かった。

 

 ………………よしシリアス終わり。手に入れた特典見ていくか。

 

 まずはダブルカノンの特典を見ていく。詳細を見ずにそのまま装備したからな、今のうちに確認しておこう。

 そうしてウィンドウを開いて見てみたわけだが……

 

 

『ふむふむふむ』

 

 

 防御力+500……今の段階だとかなり有用。

 《ツインボール》……一日に一度、砲弾を自動生成する。で、背中の大砲で撃て、ということか。

 そして《撃加守追》。自身の最大攻撃力の数値分、着ぐるみに防御力として加算する、というもの。

 

 全体的に見たら防御力特化に見える。というかこっちは籠って撃てとか、そういう意図を感じる。まぁ便利だし使うけど。で、次はシシカバネ……なんだが……こいつはアクセサリー……なのか? とにかくそれを落とした。

 

 見た目は、拳大の真っ黒な蕾?のある指輪。たぶん蕾だろう名前からして。なんかつける指の制限があったり、スキルの一つが???になってて見れなかったりしている。そして何より……

 

 

『これ装備できないしむしろデメリット発生してるんだが』

 

 

※装備制限∶合計レベル501以上

《パワードレイン・リザーブ》

 所有者のHP、MP、SPの自然回復分、経験値の1割を吸収し、ストックする

 

 

『…………………現状ゴミ装備では?』

 

 

 何やら意味深なスキルや名前を考えても、そう結論づける他なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちなみに。

 それから1週間後、俺は超級職に就いた。

 




(●_●)<………

【死子幼蕾 シシカバネ】
 装備制限から超級職必須、HPなどの自然回復の実質的な無効に経験値を吸収、さらに現在使用不可スキルの起動条件など、とてつもなく重たい条件付けがされているため現在使用不可。一応、オールドポンドの将来性にアジャストされている。

【はいぱーきぐるみしりーず だぶるかのん】
 装備制限なし、防御力+500、砲弾生成とそれによる遠距離攻撃、スキルによる防御力アップなど、シシカバネと比べて遥かに使い勝手が良い。オールドポンドの将来性と、武器以外初心者装備しかないことからアジャストされた。

グラムの必殺スキル

  • 我が剣に曇りなし
  • 剣一つあれば良い
  • 神剣
  • 一剣万象
  • 剣の理
  • 全なる一刀
  • そんなものはない
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