剣一つあれば良い   作:オルフェイス

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(◎n◎)<……なぜかこうなったよ。

(●_●)<いいの、これ?

(◎n◎)<良くはないかなぁ。でもこうなっちゃったよ。


【■■王】

 

 歩く。歩く。無心に歩く。

 邪魔する相手もいないため、酷く静かな道を歩く。

 命の気配がない。

 リソースの流れがない。

 ここには、この()には何もいない。

 ……ある二つの生命を除いて。

 この山の名前は、<天蓋山>。

 天竜の巣窟、<境界山脈>。その中央に存在する山。

 そして世界に名を轟かせる三大竜王の一体、【天竜王】が統べる命なき山である。

 

 

『……ずっと見てくるのはやめるガメ』

『クク、すまんな』

 

 

 後ろから見つめてくる()()()()()が、俺の言葉に応えた。

 

 

『見ていて楽しいガメ?』

『ああ、飽きぬな。お前が無心になって歩く様は笑えてくるぞ?』

『あぁそう』

 

 

 半透明の竜。こいつはなんでも面白がる。

 いつの間にか俺が【邪神】を斬ったことも把握し、その辺りから目をつけられていたらしいとは本竜の口から聞いていた。

 そうして暫く無言で歩き続け、()()へ到着する。

 <天蓋山>の山頂、そこに存在する【天竜王】の玉座。そこには二体の竜がいた。

 

 

『来たな、オールドポンドよ』

『呼ばれたから来たガメー』

 

 

 見上げるほどに大きな白い竜と、その竜に控える人の形をした……《人化》した竜。

 白い竜は【天竜王 ドラグヘイヴン】。

 《人化》した方は【輝竜王 ドラグフレア】。

 どちらも神話級のUBMであり、【天竜王】に至っては本来のモンスターのレベル上限を超えた存在、<イレギュラー>と呼ばれる領域の生き物だった。

 ……こいつを生き物と呼んでいいのか、疑問ではあるが。

 

 さて、俺がなぜ【天竜王】と知己なのか、不思議に思うかもしれない。

 というか俺の方からこいつに接触することなど、本来はあり得ないはずだった。

 具体的な理由を言うと【天竜王】の住む<天蓋山>への侵入は、発覚した時点で王国の法で極刑になる。つまり<監獄>送りになるわけだ。

 じゃあなんで俺はこんな場所にいるのかと言うと……呼ばれたから、としか言えない。

 

 【天竜王】との遭遇は、テレジアにドレスを贈る前まで遡ることになる。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

『ほう、我が写しが見えるか』

『なんだお前』

 

 

 互いに相手を見て、最初に出てきた言葉がこれだった。

 開口一番、俺は半透明な竜が近づいた段階で斬り捨てた。

 ここまで接近を許したこともそうだし、何より異質な気配であることを視認したから。

 最初はそれで消えたのだが、追加でこっちに移動させたらしく別の大きさの竜……分身か何かを寄越してきた。

 その竜は笑っていて、俺としては面倒な奴に絡まれたという認識だった。

 

 

『ククク……、こちらを視認してすぐに斬ってきたのは、お前が初めてだよ』

『……お前何だガメ? ドラゴンでもないしアンデッドでもないし……そもそも、生きてるのか?』

『─────ほう?』

 

 

 何が気に入ったのかは知らないが、奴はその後、自身のUBMとしての名を名乗ると<天蓋山>へ招待してきた。

 突然出てきたビックネーム。

 その時の俺は、一度王城へ出向いて国王本人に許可を貰いに行った。もちろん<天蓋山>へ入る許可である。その間、ずっと【天竜王】の分身はついてきている。

 

 最初は断られたが、【天竜王】に呼ばれたと言うと、特例として許可されて俺は<天蓋山>を登ることになった。流石に【天竜王】を下手に刺激したくはなかったようだ。

 山を登り、山頂に到着し、【天竜王】と遭遇して……そのまま【輝竜王】と交戦した。

 攻撃される前に意識を刈り取ったが。

 それを見ていた【天竜王】はクツクツと面白そうに笑っていた。

 何が面白いのか、俺にはわからないことではあったが。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()

 そう確信させるには充分だった。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 これが俺と【天竜王】のファーストコンタクト。

 以降、俺は分身経由で【天竜王】に招かれるようになった。

 【輝竜王】との交戦は【天竜王】の差し金であったようで、【天竜王】からは軽い謝罪……いや、謝礼を貰うことになった。

 

 正直その時の俺が求めてやまないものであったため、遠慮なく受け取って使()()()

 【輝竜王】はなすすべなく倒されたことに何か言いたげではあったが、父親である【天竜王】の意向に逆らうほどでもなかったようで何も言ってこない。

 もしかしたら再戦でもしたいのかもしれないが、多分二度目であっても普通に俺が()()()()するだろう。勿論そんなことは直接口に出して言わないが。

 

 

『それで、何で呼び出したガメ?』

『何、我の()を使った装備は、どのような物に仕上がったのか気になってな』

 

 

 【天竜王】はそう告げてきた。

 先ほど、謝礼を受け取ったと言ったと思うが。

 俺が手にしたのは【天竜王】の牙だった。

 神話級の【竜王】の、しかも<イレギュラー>である【天竜王】の牙。手に入れようとして手に入るものではない。

 多分、単純なレア度で言えば【アムニール】の枝よりもレアだ。

 そういうわけなので遠慮することなく俺はドレスに牙もぶち込んだ。おかげでテレジアのドレスは最高級を超えた最高級品に仕上がった。

 

 ……でも【天竜王】の一部を素材にぶち込んだりしたら相当に変な仕上がりになりそうだったと、今更ながら思う。既に入れてしまったので変えようがないのだが……

 

 

『噂に聞く超級武具に匹敵しそうだとは思うガメ』

『で、あろうな』

 

 

 ククク、と楽しそうに笑う【天竜王】。自分の素材を使われても笑っていられるとか、どんなメンタルなのだろうか。気にしても仕方のないことではあるが……なんか仕込んでないだろうな?

 

 いや、流石に何か仕込んでたら見てたらわかるか。

 

 そう考えていると、

 

 

『して、オールドポンドよ』

『なんだガメ』

『幼子は好みか?』

『は?』

 

 

 【天竜王】の言葉に、一瞬フリーズする。

 

 

『お前に娘でもくれてやろうかと考えてな。我の見た限り、お前の周囲には幼子が多かろう?』

『おい世間体って言葉知ってるか?』

『クク、知らんなぁ』

『この野郎……』

 

 

 一瞬殺意が湧いた。

 が、こいつはだいたいこんなものなので抑え込む。というか本気でこいつを殺しに行ったら天竜種そのものが敵に回る。そうなれば王国の安全は保証できない。

 俺が守れるのは王都だけになるだろう。

 

 

「父上、冗談も程々になさってください」

『半ば本気ではあったがな』

『本気でやめるガメ』

『ククク……、まぁ、お前が慌てる姿を見ただけで良しとしよう。機会などいくらでもあるからな』

 

 

 ……その、【天竜王】の娘がどんな竜で、どんな存在なのかは知らないが。

 こいつが勧めるくらいだ。きっと普通の竜ではない。

 【輝竜王】に【雷竜王】、【風竜王】など、俺の知る<境界山脈>の【竜王】たちは、ある意味では普通だ。天竜種であり、王であるのだから。

 となれば、それとは違う竜。少なくとも王ではないだろう。

 少し考え……すぐにやめた。

 どうせ会うことはない。それこそ、殺し合いにでもならない限りは。

 

 

『来て早々悪いけど、俺はここで帰るガメ』

『なんだ、もう少しゆっくりとしていけば良いものを』

『どうせ()()()()()()()()()()()だろ』

『ククク、バレたか』

 

 

 楽しそうに、【天竜王】は笑う。

 呼んで、()()と会わせる。今回【天竜王】が呼んだのはそれが理由だろう。

 止めないのは、既に会わせたい誰かはこちらに向かって来ていて帰る途中で遭遇するからか。

 誰なのかはわからないが……どう帰ろうとしてもあっちの方を誘導するだろう。会合は確定的だ。

 そして、誘導できるとなればあの半透明な分身を視認できている、ということで……間違いなく、普通の精神の持ち主じゃない。

 ……あるいは、別の手段があるのかもしれないが。俺には言ってないこともあることだろう。

 

 身を翻し、その場を立ち去る。

 後ろからの視線を感じながら、その足を止めることはなかった。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 そうして歩いていたわけだが。

 

 

「おや」

『おっ』

 

 

 一人で歩いていた男と遭遇した。

 こいつが【天竜王】が会わせたかった男であるのは間違いなさそうで……見た目は、普通の男に見えた。

 眼鏡をかけた、平凡な青年。

 なんとも、まぁ。

 

 今までの人生の中で、一度も見たことのない人種であると一目でわかった。

 

 同時に、『【天竜王】は気に入りそうだな』、とも。

 

 

『んー……名前でも聞いたほうが良いガメ?』

「そうですね。では、この私から名乗りましょう」

 

 

 何を話せば良いのか困り、名前でも名乗ったほうが良いかと考えたが、それはあちらが先に名乗り出した。

 

 

「この私は【犯罪王(キング・オブ・クライム)】ゼクス・ヴュルフェルと言います」

『……【剣神】オールドポンドガメ』

 

 

 明らかに悪そうな名前が……いや、聞き覚えしかない名前が出てきた。

 【犯罪王】ゼクス・ヴュルフェル。名前や姿、一切を隠さない王国のPK。あるいは最悪の犯罪者。

 改めて【天竜王】の気に入りそうな奴だと再確認し、ふとあちらの目が少し見開いているのが見えた。

 

 

『なんだガメ?』

「いえ、聞き覚えのある名前でしたので。そうですか、あなたがシュウの言っていた……」

『シュウの知り合いガメ?』

「ええ。……その語尾はシュウから?」

『おう。ある意味染まったガメ。これも中々悪くないガメ』

「なるほど」

 

 

 意外にも……意外にもじゃないか。とにかくゼクスはシュウの知り合いであったらしい。

 最近は会えてないが、今頃何をしてるのやら。

 ゼクスと対面したときは戦闘になるかと警戒していたが、毒気を抜かれるほどあちらに悪意がない。

 悪意がないのに【犯罪王】になんて就けるのか。その実例が目の前にいるのだからそういうものなんだろう。

 しばらく話していたが、ゼクスが気付いたように視線を遠くにやって、視線をこちらに戻した。

 

 

「すみません、話をしたいのは山々なのですが、知り合いに呼ばれていまして」

『俺は今帰るところだったガメ。長く止めてすまんかったガメ』

「いえ、それはこの私も同じことですから……それでは、この辺りで」

『おう』

 

 

 ゼクスはそう言って俺の横を通ろうと近付く。

 一歩。ゼクスが横にズレる。

 二歩。ゼクスが前を進んでいく。

 三歩。ゼクスが横を通り過ぎ、

 

 

『盗ろうとするのは勝手だがな』

 

 

 通り過ぎようとしたゼクスの腕を()()

 それは地面へと落ち、べチャリと潰れた。

 そしてもぞもぞと蠢き出し、黒い粘体へとその姿を変え……すぐに溶けて消えた。

 

 

『盗らせてやるつもりはないぞ。ちゃんと許可を取るガメ』

「……、なるほど。()()()でもダメージを受けますか。失礼しました」

 

 

 ゼクスは腕の断面を蠢かせ、すぐに手を再生させた。

 ……治った、って感じじゃないな。

 残った体積を腕に回して形を取り繕った……ってところか。

 そう推察しながらゴソゴソと頭を掻き、ピンと頭から取ってゼクスに差し出す。

 差し出したのは髪の毛。ゼクスにとっては、恐らくこのくらいで十分だろう。

 

 

『欲しいならやるガメ。多分コピー系だろ、お前は』

「……少ない情報から的中させたのは、シュウに続いて二人目ですね。ですが、よろしいのですか?」

『よろしいガメ。実は自分とも戦ってみたいと思っていたガメ』

「そうですか。ですが、受け取れません」

 

 

 ゼクスは、しかし毛を受け取ることはなく通り過ぎていく。

 

 

「この私は【犯罪王】ですから」

 

 

 そう言って、今度こそ【天竜王】のいる方向へと去っていくゼクスの背を見て、俺もまた、王都へと帰還するべく足を運んだ。

 

 

 




<【天竜王】
(◎n◎)<明確に認識し出したのは【断竜王】を討伐した時。

(◎n◎)<目をつけたのは【邪神】のジョブを斬った時。

(◎n◎)<ある意味、お気に入りの中で一番目をかけている。


<【犯罪王】
(◎n◎)<場所が場所なら交戦してた。

(◎n◎)<でもここが<天蓋山>であることを考え

(◎n◎)<「極刑を犯した人を倒すのは悪じゃないな」「見逃したほうが悪かな」

(◎n◎)<って考えて交戦をやめた。

(◎n◎)<でも仮に交戦してもオールドポンドは天敵なので逃げることになってたかもしれない。

(◎n◎)<ちなみに斬った腕が溶けたのはHPが消滅したから。斬撃だとこうなる(と思われる)。

グラムの必殺スキル

  • 我が剣に曇りなし
  • 剣一つあれば良い
  • 神剣
  • 一剣万象
  • 剣の理
  • 全なる一刀
  • そんなものはない
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