(◎n◎)<はい。
(◎n◎)<新章、始まります。
(◎n◎)<……SP3が発売されてからのほうが良いかとも悩みましたが
(◎n◎)<ペースを崩さないため、投稿します。
追記
(◎n◎)<SP3が出ましたので一部追記修整しました。
最高、最硬、再降、最攻
1年。
それは十二の月が過ぎ去ったことを意味し、長い月日が経過したということでもある。
今日の日付は2044年7月15日。
この日付が、一体何を意味するのか。
それは─────
まぁぶっちゃければ<Infinite Dendrogram>というゲームがサービス開始してから一周年目に突入した、いわば記念日である。
今日からしばらく、連日でアニバーサリーイベントが開催される。イベントは色々あるそうだが、特に分かりやすいのは特別仕様のモンスター。ドロップは換金アイテムや、特殊な装いの装備であったりと様々、らしい。
この機会を逃す手はないと俺は張り切り、現在
なんでドライフにいるのか、というとそこまで深い事情はない。王国にいる知り合いの邪魔にならないようにと配慮しただけだ。
ブックたち四人は俺をパーティに加えてイベントに参加、モンスター討伐で資金と装備を狙っていた。で、俺は単独行動してドライフ皇国にいる。
わざわざパーティを組んでいる理由は、俺の攻撃力が欲しかったからだそうだ。
シャワーのエンブリオで攻撃力を共有すれば一撃必殺でどんなモンスターもワンパン。生産職でも戦えるから便利らしいので受け入れた。
そして俺が王国で戦うと平行に攻撃する関係上、大抵人を巻き込んでしまう。常に人だけを避けて攻撃とか難しいのでやりたくない。
それなら人のいない場所で、と思うかもしれないが、それも最近再会したシュウが人のいない場所でモンスター殲滅すると聞いたのでやめて……なら遠くに行こう、となった。
そうして俺はイベント通知が来ていたこともあって当日になる前にドライフへ移動して……で、モンスターを狩っているわけだ。
『大儲けなのは嬉しいガメ。けどドロップアイテムの回収が面倒ガメー』
迫るモンスターを斬り殺して換金アイテムと素材が転がり落ちる。
ドロップしたアイテムを回収し、辺りを見渡す。
人のいなさそうな場所を選んだので、辺りには当然ながら誰もいない。それでいてモンスターは多いし強い。
流石にUBMには劣るが……沢山いるおかげでドロップアイテムは沢山出るし経験値も旨い。この感じだと今日中にメインジョブも
そう思いながら狩りを続け、移動を続け……ふと、遠い視線の先に人影が見えた。
人型のモンスター、というわけではない。明らかに人の影。それも……三人と一匹、いや違うな。
『男一人、女二人……いや三人か。獣に見えるのは<マスター>で、残りは、エンブリオ。しかもメイデンか。珍しいこともあるもんガメ』
珍しい、と言ったのは主に二つ。
一つはメイデンの<マスター>が揃っていること。あれはレアカテゴリーで出会うことができるのは希少のはずだ。
もう一つは非人間タイプのアバターであること。普通やろうとしない……いや意外といるか? その辺りはわからないが、兎に角少ないのは確か。
しかし遠くからジロジロと見ているのもアレなので気にせずモンスター狩りを続けることにする────いや、そのつもりだった。
『……ん?』
視界から見えるもの。
それを見て、俺はグラムを構えていた。
視線の先、まだ何も変わらない空間がある。
だが
あそこから間もなく、何かが現れる。
そう確信し……予想どおり、
それは、巨大だった。100mは軽く越すだろう。
それは、
それは……とても見覚えのある金属で構成されていた。
金とも銀とも言えない光沢を放つ、恐らくこの世界で一番硬い金属。
最高の金属で構成されたガーゴイルの銘は【一騎当千 グレイテスト・ワン】。
恐らく俺が見てきた中で、一番物理的に硬いであろうUBM。
『
全身を超級金属で構成されているとなれば、あるいは
そして至極当たり前のことだが、俺は超級金属を斬ったことがない。どの程度硬いのか、話でしか聞いたことがない。
神話級金属を容易く上回るほどに硬い、いわば最硬の金属。
それほどの硬度を誇る相手を俺は知らない。
だから
そう考えた時、既に俺は剣を振りかぶっていた。
とうの【グレイテスト・ワン】は、翼を動かし重力から解き放たれたように飛びかけていた。
無重力で空を飛ぶ。そんな機能があるのだろう。
だから逃げられないよう、俺はまず翼を斬り裂いた。
僅かな抵抗感─────しかし、振り切るのに不都合ではなく。
目線の先。
【グレイテスト・ワン】の両翼が斬り落とされたのが、視えた。
飛びかけた【グレイテスト・ワン】が地面に着地、重さと高さで地面から振動が伝わってくる。
次の攻撃を放とうと再び構え、そして【グレイテスト・ワン】もまた口腔に仕込まれた熱線じみたものをこちらへ放とうと顔を横に向け、
その顔面を、突然現れた巨大怪獣に殴り飛ばされた。
『……えー』
巨大怪獣……先程まで見ていたメイデンのエンブリオなのだろう。UBMなのだ、倒せるチャンスがあるのなら狙うのは間違いではない。
ない、が……正直なところ、俺はこの時点でやる気をなくしていた。理由は二つある。
一つは俺の代わりに戦う相手が出来たこと。態々俺が倒す必要性がなくなってしまった。勿論倒せないという可能性はあるが……俺が見るに、なんとかして倒せてしまいそうだ。
もう一つは……こう言ってはなんだが、あっさりと斬れてしまったこと。俺の攻撃力はグラム装備時は一〇〇〇万オーバー。本当はもう少しあるがこんなものだ。あまりに高い攻撃力で、大概のものは斬れてしまう。
例外は第一王女アルティミアの剣。
俺としては積極的に戦う理由が失せてしまい……そして特典が欲しいわけでもないので座り込んだ。
そして同時、座り込んだ俺にもたれ掛かるようにカバネが顕現し、不思議そうにこちらを見下ろしている。
「いいの?」
『別に良いガメ。他が倒せるなら俺である必要はないガメ』
「……行ってきても良い?」
『駄目ガメ。すぐに死ぬぞ』
「むぅ……」
不満そうに、しかし理解と納得もしているのか反論もしない。
遠くで見つめる先には、未だに殴り合いを続ける怪獣と【グレイテスト・ワン】。その破壊規模は隔絶しておりもっと近かったら俺達も巻き込まれていた。
尾を振るい、拳を振るい、時に口から熱線を放つ。
恐らく射線も気にせず放たれた流れ弾は着弾する前に
未だ、【グレイテスト・ワン】の巨体が罅割れる様子もない。
それこそ明確なダメージとなったのは俺が斬った翼くらいか。
怪獣による超々音速を超えた速さでの殴り合いが延々と繰り返されるだけ……かとも思ったが。
気づけば、歌が聞こえてきた。
歌っているのは、メイデン。既に戦っている怪獣の方ではない。その歌声は、何処か重なって聞こえる。まるで複数人いるかのようだ。
見つめて……気付く。
『あれはリソースを、コストを用意して発動する必殺スキルだな』と。
そして『あれは
発動までの時間は、怪獣が稼いでいる。
歌いながら形成されるのは紫色の凱旋門。
あそこから、あの門を通って死者が蘇るのだろう。
カバネもいつの間にか【グレイテスト・ワン】と怪獣の戦いから門へと視線を集中させていた。
門に光が集中し、膜を作る。
そして、輝きが一際強くなる。
門の内側から出てきたのは─────
人の形をした龍。人という器に無理矢理龍という規格外のリソースを詰め込んだような、そんな存在。
「……【
耳元でジョブの名前がカバネの口から飛び出る。思わず呟かれた言葉に、俺は彼女の顔を見る。
その視線は、件の【龍帝】に注がれていた。決して目を離すまいとする、貪欲な瞳。
視線を戻し、【グレイテスト・ワン】の戦いに戻る。
その【グレイテスト・ワン】は、押さえつけられていた。
動きを、力を、あらゆる抵抗を。万物を砕くであろう尾は動かず、翼は既に斬られ、熱線は防がれる。
【龍帝】は耐性を掻い潜り、絡め取ってしまった。
完全に動けなくなった【グレイテスト・ワン】は、しかしいずれ解放されるだろう。
蘇った【龍帝】には時間制限がある。抑えるだけでは【グレイテスト・ワン】は倒せず、殺せない。
だから……決め手は別なのだろう。
【グレイテスト・ワン】という邪魔者が動けなくなった今、怪獣が、自身のマスターと触れ合う。
『──《
不思議と、声が聞こえてきた。
いや、不思議でもなんでもないか。
一〇〇メートルを越す巨体だ。当然、声だって大きいだろう。それがここまで届いたとしても不思議ではない。
そして何より、先ほどよりも一回りも
より大きく、より強く。
そういう合体があの<エンブリオ>の本質。
それを叶えるための、巨大怪獣か。
ウインドウを開き、
『ちょっと気が変わったガメ』
「?」
きょとんとした様子のカバネの視線を受ける。
『こっちも、ちゃんと真面目にやることにするよ』
別にやらなくても構わないのだろう。
俺がしなくても、あの巨大怪獣が超級金属のガーゴイルを砕くだろう。
だから、これはあくまで俺のささやかな手伝い……のようなものだ。
剣を、【質実剛剣 グラム】を構える。
持ち手を引き、まるで突くかのように。
『《
それは無形の動力炉。【グレイテスト・ワン】を動かす、文字通りの心臓。しかし無形である以上、通常の物理的方法で影響を与えられるはずがない。
普通は、そうだ。
形なきものすら斬れる俺なら、攻撃力さえ足りれば手を届かせられる。
そして心臓がなくなれば……【グレイテスト・ワン】は動くことすら出来なくなる。その耐性を、機能を、大部分の効力を発揮できなくなる。
あぁ、ついでに
これでもう、【グレイテスト・ワン】を守る防御力は失われたに等しい。
その結果はすぐに現れた。
貫かれ、傷をつけられ、機能を失った動力炉は魔力を暴走させて【グレイテスト・ワン】の口から大量の、膨大な魔力を流出させる。
身体を震わせる【グレイテスト・ワン】は、両膝をつく。
そんな【グレイテスト・ワン】に向け、姿を変えた巨大怪獣が飛びかかり……
その圧倒的な腕力でもって、【グレイテスト・ワン】の身体を一撃で砕いてみせた。
【<SUBM>【一騎当千 グレイテスト・ワン】が討伐されました】
【MVPを選出します】
【【オールドポンド】【ベヘモット】【ベネトナシュ】がMVPに選出されました】
【【オールドポンド】に【心騎中核炉 グレイテスト・コア】を贈与します】
『え?』
訪れたアナウンスに、思わず声が出る。
<SUBM>という単語やMVPが複数選ばれているという点。
確かにリソースの多いUBMだとは思ったが、まさか普通のUBMとは違うとは思ってもみなかった。
MVPが複数選出されたのは、もしかしたら特典武具も複数貰えるということなのかもしれない。
そう思いつつ早速手に入れた特典武具を見てみようとして……取り出せないことに気付いた。
ないのではない。
『
今までに見たことのないタイプの特典武具……いや超級武具に、天を仰ぐ。
正直なところ、これに関してはじっくりと考えたいので後回しにする。
【グレイテスト・ワン】が倒れた今、わざわざここに居座る必要もない。
狩りを続ける……こともできるが、今はグラムが壊れてしまっているので広範囲殲滅が出来ない。
ウインドウを開き、再び時間を確認。ブックたちがログアウトすると言っていた時間は過ぎている。なら先にログアウトしておこうとカバネに伝えておく。
『カバネー、俺はログアウトするガメー』
「どのくらい?」
『色々するからこっち時間で三時間後、くらいガメ?』
「……早く戻ってきてね」
『わかってるガメー』
ポンポンと頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細めるカバネ。ここら辺見てると猫みたいだな、と思いながら手を離し、俺はログアウトボタンを押してこの世界から去った。
☆☆☆☆☆☆☆
【
『あれは一体誰だったのだろう』と。
【
『アレは
そして、両名ともに疑問が浮かぶ。
『なぜ
その疑問も、両名ともが思い浮かんだ『枠が限られていて入れなかった』という推測で決着した。
それでも疑念は拭えなかったが。
【獣王】は鎧を。【冥王】はモンスターを。
そして
【獣王】と【冥王】は自分たちが超級武具を保有していると認識し、誰とも知らない亀は入っていないと誤解する。
【剣神】は三人が超級武具を得たのだろうと正しい認識をしている。
このすれ違いが今後、どのような形で振り注ぐのか。
それは未来を予知する■でさえ、知る由もない。
【心騎中核炉 グレイテスト・コア】
(◎n◎)<作者はずっと考えていた。
(◎n◎)<片割れに貯め込む機能はあるのに、なぜ動力炉の機能がどちらにもないのか、と。
(◎n◎)<無形の動力炉とか明らかにスキルになって然るべきでは? スキルには表記されずに含まれた可能性はありますが。
(◎n◎)<兎も角、そんな思いから生まれた【グレイテスト・コア】。
(◎n◎)<でもこれ単体だと意味がない。オールドポンドの周りに生産職がいることからアジャストした。
(◎n◎)<実は【コア】と似てるやつが<エンブリオ>にいる。
グラムの必殺スキル
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我が剣に曇りなし
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剣一つあれば良い
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神剣
-
一剣万象
-
剣の理
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全なる一刀
-
そんなものはない