剣一つあれば良い   作:オルフェイス

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(◎n◎)<ついにここまで来ました。


兆し

 

 いつものように王城へと来訪し、しかし今回はテレジアの元には向かわずにとある人物に会い行く。

 扉を開けば既に座って待つ人物がいた。

 

 

『久しぶりガメー。最近どんな感じガメ?』

「そうね、少なくとも『良い』とは言えないわ。()のことは、聞いてるでしょう?」

『……まぁな』

 

 

 第一王女アルティミア。

 今日は彼女に会いに俺はやってきていた。

 普段はテレジアに会うときにたまに遭遇しては模擬戦する……中々ないような関係性である。

 まぁそれはともかくとして、今回は他人事ではない噂が流れてきたためアルティミアに会いに来たのだ。

 

 

()()()()って聞いたが、実際のところはどうなんだガメ?』

「ほぼ確実に起きる、と思ってもらっていいわ」

『そこまでかぁ』

 

 

 随分と厄介なことになった、と口から漏らす。

 本当にそう、と言わんばかりにアルティミアも頷く。

 戦争へと至ることになる発端は、ドライフ皇国からの宣戦布告からだったという。

 原因は皇国で発生してしまった大規模な飢餓によるものだそうだが、それがなぜ戦争という形となってしまったのか、分かっていないそうだ。

 食料の提供、土地の改善など、王国にも出来ることはあるはずなのに行われた宣戦布告。

 ただ、どのような目的であれ、とあることがきっかけで良好な関係を築いていたはずの皇国との関係は大きく悪化したらしい。

 

 そのきっかけとなったのが、先代皇王の逝去とそれによる皇族同士での皇王の座を求めての内乱。

 

 詳細は省くが、そうした内部争いを経て皇王になったのが……アルティミアの親友、クラウディア・L・ドライフの兄、ラインハルト・C・ドライフであるという。

 

 

「父は皇王と直接言葉を交わしたそうよ。説得も試みた。けれど……」

『結果は全然だったガメ?』

「そうなるわね」

 

 

 アルティミアは力なく頭を振る。

 皇王が戦争を仕掛けたとなれば、何かしらの急ぐ理由があったのは間違いないのだろう。

 それが大飢餓が理由であるのも、恐らく間違っていない。

 

 

『んー……なんで皇王は戦争を仕掛けてきたガメ? 交渉して土地を譲ってもらうとか、方法はあったと思うガメ』

「そうね。例えば、不謹慎ではあるけど旧ルニングス領……【グローリア】に滅ぼされ、人が全く寄り付かないあそこなら皇国に譲り渡しても問題はなかったはず」

『だよなぁ。ってことは飢餓だけが問題じゃなさそうガメ。何か別の目的がありそうガメ』

「仮にそうだとして。皇国は、皇王ラインハルトは一体何を求めているの?」

 

 

 アルティミアの言葉に、少し頭を働かせる。

 正直、こういったことはあんまり向かないし得意ではない。

 見ればわかるが、見なければわからない。俺はそういう<マスター>だ。戦闘ならお任せだがそれ以外は出来ることなら勘弁してほしい。

 あーだこーだと言ったが、結論だけ言うと。

 

 

『わからんガメ。情報が全然足りんガメ』

「……すぐに分かるようならこんなに悩む必要もない、か」

 

 

 アルティミアは目を閉じ、何かを思い返している。

 俺も俺で目を閉じ……実のところ、アルティミアとの会話前に皇王が攻め込んできた理由に心当たりが出来ていた。

 が、そのことを目の前のアルティミアに話すつもりはなかった。

 話してしまえば……もう戻れない。下手をすれば肉親同士で殺し合いをする場面を目撃することになってしまうかもしれないから。

 そうはならないと思いたいし、そもそもさせないつもりだが……俺がいない間に、というのは可能性として僅かながらにも存在してしまう。

 テレジアからの話を聞くに、テレジアの【邪神】としての機能を利用する輩もいるようだし、な。

 まぁある意味、それを利用しようとしているのは()()か。過程も至る結果も、目的も違えど、似通っているのは間違いないのだから。

 

 

『まぁ考えてもわからんもんは仕方ないガメ。勝ってから丸く収めれば良いガメ』

「それもそうね。勝ってから、直接当人に問いかけることにするわ」

『なんか自ら攻め込む気満々ガメ……?』

 

 

 明らかに()る気な内容に、アルティミアは意気揚々と頷いた。

 

 

「ええ。私も戦争に参戦するつもりでいるもの」

『第一王女様自らガメ? いや士気は上がりそうだけど……』

「私が【聖剣姫】であることを明かせば戦争に参加する王国民の士気は確実に上がる。私が出ないという選択肢はないわ。問題は<マスター>の方。何かしら手を打てれば良いのだけど……」

『いやぁ、<マスター>もアルティミアが参加するとなれば士気上がりそうなもんだけどなぁ……アルティミアは美人だしガメ』

「褒めても何も出ないわよ? というより、そういった言葉はテレジアに言ってあげなさい」

『種類は違うけどちゃんと伝えてるガメ』

 

 

 俺の言葉にくすりと笑みを零し、しかしすぐに顔を引き締める。

 

 

「お父様は、きっと私が出ることに賛成してくれないわ」

『……だろうな。好き好んで娘を死地に出向かせようなんて、思わないだろ』

「そうね。優しい人なのよ、お父様は。私もそんなお父様を愛している。守りたいモノが沢山ある。そして、守るための力が私にはある」

『……』

 

 

 【聖剣姫】。そして【アルター】。

 両方の力を持つアルティミアは、間違いなく<超級>の領域にいる。

 並の<マスター>など相手にならない。それこそ<超級>、あるいは相性の良い準<超級>が必要となる。

 だが、それだけ強くても絶対などない。

 ティアンは、<マスター>とは違って不死などではない。

 

 

「でも、私一人ではきっと敵わない。相手に不死身の<マスター>がいるんだもの。何処かで命を落とすということは、十分にあり得る」

『あぁ』

「だから、私はあなたの力を借りたい。どうか、王国のために戦ってほしい」

 

 

 彼女は、真剣な眼差しで俺を見ている。

 真摯な目だ。嘘偽りを言うつもりなどないと、そう思わせる。

 そもそもそんなものは必要ではない、ただ頷いてほしいという気持ちが出てきている。

 俺はそれに応えたいと思う。

 それは請われたからではない。俺自身にも守りたいものがあるからだ。

 王国という国に、知り合いのティアンたち。そしてテレジア。

 奪わせるつもりも、壊させるつもりも微塵もない。

 だからこそ思ってしまう。

 

 

『なーんで親子でこうも意見が違うかね……』

「……それは、どういう意味?」

 

 

 アルティミアが訝しむ。

 俺は少し間を置き、その問いに答えた。

 

 

『───国王からは、()()()()()()()()()()()()と頼まれた』

「なっ……」

 

 

 絶句した様子の彼女に、俺は出来うる限り感情を出さないようにしつつ淡々と話していく。

 

 

『と言っても【大賢者】越しだ。実際にどんなことを思ってそのことを伝えたのか、俺にはわからん。けど理由については話された』

「……その理由について、聞かせてくれる?」

『いくつかあるが、まず一つ。破壊規模だ』

「破壊規模?」

 

 

 そう、破壊規模。

 何処から知ったのかは知らないが、【大賢者】は【剣神】のスキルに《剣撃張離》があることを知っていた。

 それに以前、俺は最低限どのくらいの攻撃力を発揮できるのかも漏らしている。そこから【大賢者】は国王エルドルに進言し、齎される事になる破壊を危惧した……のだろう。

 

 

 

『まぁ実際は何を斬るのか斬らないのか、俺は調整できるわけなんだが……その辺りは信用してもらえなかった。それが一つ。二つ目は<マスター>という存在を貶めないため……だそうだ』

「……?」

『より正確に言うなら、<マスター>という存在を戦うための存在と思わせないため、だな』

「あ……」

 

 

 そこまで聞いて、アルティミアは何かに気付いたように声を漏らす。

 国王なら、エルドル・ゼオ・アルターならば、そう考えてもおかしくはないと思ったのか。

 

 

『詳しい話は聞かされなかったけど、国王は<マスター>を特別視しているみたいでな。正直、<マスター>は<マスター>で自由にやってるんだから考えすぎだと思うけど、国王にとってはそうでもないんだろう』

「それでお父様は、あなたを参加させるつもりがない、と?」

『視た感じ、参加させない云々は【大賢者】の意思が多分に含まれている気がするけどな。けど、最終的に決断したのは国王本人の意思だろう』

「話は、わかったわ。お父様があなたを戦争に参加させるつもりがないことも。でも、あなたの意思はどうなの?」

『参加するつもりだった。けど出来なくなった』

「……!」

 

 

 アルティミアの顔が苦々しく歪む。

 わかってる。こっちに期待した分、参加できないとなれば少なからず失望するだろう。

 俺だってただ説得されたくらいなら間違いなく戦争に参加していた。

 だが……()()()()()()()()()()()()()()()()()となれば話は別だ。

 そのことも、【大賢者】本人の口から聞き出せた。というかあの感じからして【大賢者】はテレジアの正体に勘づいていた。

 

 だからこそ皇王の目的の一つを知ることができた。

 だからこそ、こっちの動きは制限されてしまった。

 

 皇王がテレジアを狙っている可能性が高い以上、何らかの形で誘拐・暗殺を決行してきても不思議ではない。戦争そのものが(ブラフ)であったなら、取り返しがつかない。

 そして、この行いで俺の【大賢者】への不信感はかなり高まっている。

 何かを企んでいる。

 それがわかったのが、今の状況においての俺にとってプラスだ。

 それだけしかプラスがない。

 

 

『俺は王城に残ることになる。戦争にも参加できない。……ごめん』

 

 

 頭を下げる。

 本来ならば参加するべきだと分かっている。

 テレジアだけを守ったところで、彼女の環境を守れなければいつか崩れ去る。

 守ろうとしても、<マスター>は常にこの世界に居ることができるわけではない。どんな場面であれ、離れなくてはならない時が来てしまう。

 俺だけではテレジアは守れない。

 だというのに俺はテレジアしか守れない。

 最悪。それだけが思い浮かぶ。

 

 

「……王城は、守ってくれるのね?」

『それは保証する。何人たりとも通しはしない』

「その言葉、信じるわ。おかげで私も心置きなく戦える」

 

 

 そう言って気持ちを切り替え、覚悟を決めたように呟くアルティミア。

 ……本当なら、目の前にいる彼女も絶対に守り通さなくてはならないんだけどな。

 テレジアに、悲しい気持ちになどさせたくないから。

 だから、俺も俺で手は尽くす。

 

 

『神話級に匹敵するモンスターが一体。それに加えてENDが一〇〇万、他のステータスが一〇万のゴーレムが約1000体ほど』

「……それは」

『俺がいない代わりに追加できるかもしれない戦力だ。なんとかして説得してみせる』

「───感謝するわ、オールドポンド」

 

 

 アルティミアはそう言って、立ち上がる。

 

 

「私も、ギデオンでの()()を頼ってみる。参加する可能性は低いけど、決して0じゃないから。あんまり時間がないから、ここで失礼するわね」

『おう。こっちも任せろガメー』

「ええ。そちらもね」

 

 

 そう言ってアルティミアは部屋を出ていき、俺も俺で立ち上がるとアルティミアに続いて部屋を出る。

 

 

『まずはシャワーの説得と……あと、()()もだな。戦争までに何処までやれるか』

 

 

 独り言ち、歩きながら手の中に出した指輪を撫でる。

 

 

『カバネ、お前にも頼らせてもらうぞ』

 

 

 俺の言葉に反応するように、【シシカバネ】の指輪が小さく震えた。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 そうして物事は動き出す。

 

 【聖剣姫】の参戦。

 【剣神】の非参戦。

 【シシカバネ】の投入。

 後の”鉄人大隊(メタル・バタリオン)“魔天シャワーの参戦。

 新たに<超級>となった【剣王】の参加。

 そして─────極めて限定的ながらも<超級>【超闘士】の参戦。

 

 これによって、戦争の()()は大きくその様相を変えることとなる。

 

 





(◎n◎)<オールドポンドからの【大賢者】への印象が悪くなって察し始めました。
(◎n◎)<ちなみになんで【大賢者】がオールドポンドを戦争から排除しようとしたのかと言うと
(◎n◎)<『強すぎるから』です。
(◎n◎)<参加を取りやめることになったことに管理AIも少しホッとしてます。
(◎n◎)<『いつの間にか死んだ』では上手い具合に精神を刺激できないので……
(◎n◎)<なおその代わりに魔天シャワーが参戦することになる模様。
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