剣一つあれば良い   作:オルフェイス

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(◎n◎)<剣はもう一枠いるけど、そっちは別名称でやります。


第一次騎鋼戦争・剣と槍

 

 戦争に出ると決めた時、アルティミアは漠然と確信していたことがいくつかあった。

 まず、自分はこの戦場に立つ以上、決して負けてはいけない、ということ。

 いや、負けるだけならばまだ良い。問題は死んでしまうこと。

 死ねばそこで終わる。【聖剣姫】は、戦争中のアルター王国で大きな支柱となっている。それが壊れでもしたのなら一気に瓦解しかねない。

 これが、第一王女として考えていたこと。

 そして次の確信こそ、アルティミアという人間にとって、ある意味で重要だった。

 

 それは─────彼女の親友との戦い。

 

 この戦場に立つということは、即ち親友であるクラウディアと……超級職である【衝神】と、戦うということ。

 彼女は、それを理解している。

 理解した上で戦うと決めた。

 例え、クラウディアがアルティミアにどのような想いを向けているのかを、知っていたとしても。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

「……ひとまず、といったところかしら」

 

 

 気の緩みから息を吐き出す。

 【獣王】への接近、そして渡された空間隔離用アイテムの使用。

 暴れ回る【獣王】の<エンブリオ>に近づくのは、特殊超級職【聖剣姫】であるアルティミアであっても流石に死を覚悟した。

 とは言えそれも()()がいてこそ出来たことだと、アルティミアは視線の先にいる少女に向けて礼を言う。

 

 

「ありがとう、シシカバネ。助かったわ」

「……」

 

 

 兜を被り白無垢を纏う少女、シシカバネ。彼女はアルティミアの礼にも応えず顔を背けるのみだった。

 

 

(聞いていた通りの性格ね)

 

 

 『好きな相手にはとことん気を許すけど、興味がなかったり嫌いな相手には冷たいから、中々仲良くなるのが難しいガメ』と言いながらシシカバネの頭を撫でて話していた彼のことを思い出す。

 そんな彼女と行動を共にしていたのは、単に彼女のスキルに有用なものがあったためだ。

 風で身を隠し、気配も断つスキル。これがなければ【獣王】……彼女の<エンブリオ>に近づき纏めて隔離することは出来なかっただろう。

 ……アルティミアがシシカバネと二人だけで行こうとした時は騎士たちに止められたが、アルティミアはそこら辺はゴリ押しで進めた。あとで謝る予定である。

 

 

「あとは好きに行動して良いわ」

「ん」

 

 

 短く応答し、シシカバネは言われるや否やその場を超音速機動で走り去っていく。

 アルティミアはシシカバネが去っていった方向を暫く見つめ……振り返り、

 

 【アルター】を、振り抜いた。

 

 倒れる音が響く。

 空間が歪み、隠されていた者たちが姿を現す。

 そこにいたのは、アルティミアのよく知る人物。

 

 

「これで二人きりね、クラウディア」

「───いつから気づいてましたの?」

 

 

 クラウディア・L・ドライフ。彼女がその場にいた。

 

 

「女の勘、かしら」

「まあ、答えになってませんわ? それに……」

 

 

 問われた疑問にアルティミアは勘と答え、それに対してクラウディアは口元に手を当て、

 

 

「嘘ですわよね?」

「ええ、嘘よ」

 

 

 何ら迷うことなくアルティミアの言葉を嘘だと断じる。

 アルティミアも隠すつもりはないのか素直に白状した。

 そしてアルティミアは視線を逸らし、先ほど斬った()()を見つめる。

 視線の先には死体がある。首を斬られ、絶命した誰か。恐らくクラウディアをここまで隠し通しながら連れてきた人物。

 その身体が、光の塵となって消え去る。

 先ほど斬ったのが<マスター>であるという確認が取れたアルティミアは、腰を落とし構える。

 そして超音速機動でクラウディアへと接近し、【アルター】を振り下ろした。

 

 

「もう、折角の再会だというのにつれないですわね、アルティミア!」

 

 

 防御不可の斬撃。

 それをクラウディアは、自身の持つ槍を何ら損なうことなく受け流す。

 それを見たアルティミアは、驚くことなく連撃を繰り出す。

 上、下、右、左。

 時に避けられ、時に受け流される。

 それを成すのは、クラウディア自身の技量によるもの。この場にいる【聖剣姫】であり優れた才能の持ち主であるアルティミアよりも、その技巧は上を行っている。

 そうでなければあらゆるモノを切断する【アルター】の斬撃を受け、槍を損傷させることなく打ち合えるはずがない。

 だが、何度も言うがアルティミアは驚かない。

 過去に皇国に留学した時、彼女とは何度も戦いを繰り広げてきた。アルティミア自身の勝率は一割。槍の技量に加え、こちらの思考を読むことにより九割近い勝率をクラウディアは誇っていた。

 しかしながら、それはあくまでアルティミアが皇国に留学していた時の話。

 アルティミアは成長している。皇国にいた時よりも、はるかに。きっとクラウディアも成長しているのだろうと、アルティミアは思っている。

 それを踏まえても、なお。

 

 

「そこね」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「ッ!」

 

 

 アルティミアは─────()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 だが、咄嗟に間に合わせたのだろう。アルティミアは斬れこそしたが軽い感触しかなかった。

 見つめる先。クラウディアの持つ槍の穂先の先端が斬られているのが見えた。

 

 

「やっぱり今のは、あなたのスキルね」

「ええ、正解ですわ。こちらからも一つ聞いても?」

「何かしら」

「……どうやって初見のはずの攻撃を捌きましたの?」

 

 

 《パラドックス・スティンガー》、というスキルがある。

 【衝神】クラウディアの開発した奥義であり、突き込んだ槍の()()を変えることができる。

 それにより真っ直ぐ突いたとしても、全く別角度から……相手にとっての死角からでも攻撃が可能となる。

 しかし、この技はアルティミアも知らない技。そして死角から迫る攻撃を咄嗟に避けるでもなく難なく斬り払うなど、難しいどころの話ではない。

 だからこそクラウディアは必ず命中する……最低でもかすりはすると判断したタイミングで、《パラドックス・スティンガー》を放った。

 だがそれは防がれ、逆に穂先を斬られる始末。クラウディアはその理由を聞きたかった。

 それに対してアルティミアは、

 

 

「見えない攻撃、死角からの攻撃、防げない攻撃───王国に戻ってからの私は、そういった攻撃に何度も晒されてきたから。もう()()()わ」

 

 

 慣れている、という言葉で返した。

 アルティミアは脳裏で思い返す。意味の分からないやり方で自分を攻撃してくるカメの姿を。

 透明な攻撃は序の口。死角からの攻撃に、避けられない攻撃、あろうことか【アルター】を()()して斬ってくるものもあった。

 それに対処できなければ、あのカメとまともに試合など出来はしない。だから、対処できるようになるまで鍛え上げた。

 ただそれだけの話だ。

 ……逆に言えば、それがなければクラウディアの攻撃を防ぐことは出来なかっただろう。実のところかなりギリギリでもあった。

 

 

「それとクラウディア。悪いけど私はこの戦いを長引かせるつもりはないわ。今は戦争中だもの」

「もうっ、私との死合中ですのに他のことだなんて……でも、奇遇ですわね。私も、そう時間をかけることができませんの。残念なことに、ですわね」

「本当にね。私も残念に思うわ」

「……あは」

「ふふ」

 

 

 二人でくすりと笑い合う。

 先程まで命を取りかねない戦いを繰り広げたというのに、何処か甘い雰囲気が漂っていた。

 クラウディアは思う。今のアルティミアは随分と好戦的になった、と。同時に楽しそうに戦うアルティミアに見惚れている自分がいることを改めて自覚する。

 アルティミアは思う。こんな形ではなく、別の形で仕合たかった、と。同時に死合だからこそなのだろう、とも考えてしまう。

 

 

(その笑み。ますます惚れ直してしまいますわ、アルティミア)

(楽しい。オールドポンドとの戦いでは得られない高揚……これが戦争中でなければ、どれほど良かったことか)

 

 

 二人は示し合わせずとも、同時に武器を構える。

 

 

「私が勝ったら、貴女を皇国に連れ帰りますわ」

「なら、私が勝てばクラウディアは捕虜ね。皇国との戦争を取りやめられるかもしれないし……出来ることなら、殺したくない」

「あは。そんな顔で言われても説得力ありませんわよ?」

「え。そ、そうかしら……?」

「ええ。とても素敵な顔ですわ。ずっと見ていたいくらい」

「そ、そう」

 

 

 思わぬベタ褒めにアルティミアは頬を赤らめ照れたが、すぐに思考をリセットし、意識を戻す。

 

 

「───クラウディア」

「───アルティミア!」

 

 

 クラウディアが駆け、槍を突き出し。

 アルティミアが()()()、剣を振るう。

 

 

(───あぁ、これは)

 

 

 クラウディアがそれに気づいた時、既に敗北は決定していた。

 クラウディアの意識が途絶え……槍を落とす音と共に、倒れ伏す。

 後に残ったのは【アルター】を振り切ったままの体勢で静止したアルティミアのみ。

 そのアルティミアも【アルター】を降ろし、息を吐く。

 

 

「……得物の差に、なってしまったわね」

 

 

 そう呟くと倒れるクラウディアを確保しようと近づき、

 

 

「───いいえ、()と貴女の実力の差です」

 

 

 声が、後ろから聞こえた。

 一瞬の空白が生まれる。

 なぜ、ありえない─────そこまで思考が及び、振り返ろうとする。

 しかし、その隙を()が見逃すことはなく。

 

 

「───《 ()()()()()()()()()()()()()》」

 

 

 放たれた馬上槍が、振り返ろうとしていたアルティミアを背後から貫いた。

 意識が途切れようとする中、アルティミアは倒れながら後ろを見た。

 そこにいたのは、クラウディアによく似た顔立ち……いいや、瓜二つの人物。

 その手に馬上槍を持ち、感情を悟らせない能面……それを崩して歪めている。

 

 

「ラ、イ……ハ……」

 

 

 その者の名前は、ラインハルト・C・ドライフ。

 アルティミアは最後にその名前を呟き……意識を失った。

 馬上槍……【鎮昏渦 ドリム・ローグ】による非殺傷攻撃が、アルティミアの意識を眠らせた。

 

 

「……」

 

 

 ラインハルトは倒れるアルティミアに近づくと、優しく抱き上げる。その手には未だに【アルター】が握られていて、彼女の手から【アルター】を離させる。

 クラウディアにも近づき起こそうとするが、アルティミアの技術によって【アルター】で斬られたクラウディアが起きる様子がないと悟ると立ち上がる。

 

 

「……」

 

 

 【アルター】は背中に。アルティミアは腕に抱えて、ラインハルトはジュエルからモンスターを取り出す。

 【大教授】Dr.フランクリンに作成を依頼した運搬用の象型モンスター。そのモンスターは器用に長い鼻を使って気絶しているクラウディアとアルティミアを背中に乗せて歩き出し、その姿を消す。

 

 

「……」

 

 

 ラインハルトはそれを見送り、馬上槍を手に持ち見つめる。

 

 そして、自身の額に馬上槍の柄を叩きつけた。

 

 額が裂け、血が流れる。ジクジクとした痛みが走るが、今のラインハルトには()()()にもならない。

 ()()()()()()()()()()()()()()()ラインハルトは、アルティミア確保のためにクラウディアと共に彼女を探し、見つけ出した。

 先に()()であるクラウディアがアルティミアとぶつかり、戦闘不能ないし死亡すれば次はラインハルトが出るつもりではあった。

 しかし、不意打ちでアルティミアを倒したラインハルトは……酷い自己嫌悪に陥っていた。

 だから一瞬、気付くのが遅れた。

 

 風が、ラインハルトの身体を撫でる。それだけで気づくには充分で……しかし、遅かった。

 

 

「っ!?」

 

 

 馬上槍を振るう。

 その先で、()が打ち合わされる。

 

 ─────【ドリム・ローグ】ごと斬り裂かれ、片腕を奪われた。

 

 咄嗟に距離を取ったラインハルトは、予備の槍を片手に《瞬間装備》で呼び出し、目の前の敵を見る。

 

 白い少女。白い服……白無垢と呼ばれる衣装を纏う、ティアンでも<マスター>でもない存在。

 少女は喋ることなく刀を向ける。

 しかし、その()は自身の成すべきことを成す。

 

 

『【衝神(ザ・ラム)】、【機械王(キング・オブ・メカニズム)】、特殊超級職【機皇(インペリアル・マシン)】確認候』

「……へえ」

 

 

 兜……【試製滅丸星兜】の告げた三つの超級職の名前に、初めて少女は言葉を出す。

 

 

「良い獲物」

 

 

 少女……シシカバネは、手負いとなったラインハルトへ向けて《吸神権能(ドレイン・ファンクション)》を発動させ、襲い掛かった。

 




(◎n◎)<当然のように矛盾が発生しましたけど問題ありません。
(◎n◎)<戦争に参加してる<超級>は二人だけですが、戦争に手を貸している<超級>は三人ですから。


<シシカバネ
(◎n◎)<【星兜】のスキルを応用して影法師みたいに超級職を探させて一番近い超級職のところに向かったら鉢合わせた。
(◎n◎)<特に助ける意図があったわけではないが、オールドポンドの願いもあったので助けに行くつもり。
(◎n◎)<そして、一番渡しちゃいけないスキルがシシカバネに渡ることになる。
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