剣一つあれば良い   作:オルフェイス

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(◎n◎)<ここでまた話が戻ります。


第一次騎鋼戦争・獣と武。そして王と王

 

(さて、どうしようか)

 

 

 フィガロは一人悩んでいた。

 彼は先程まで【獣王】と戦っていた。

 未確認の超級武具の鎧を纏い、さらには必殺スキルも使って超ステータスに加えて超防御力を獲得した【獣王】。

 しかし同じく超級武具を持ち【獣王】に迫るステータスと、その超防御力を突破可能な攻撃力を有する超級武具もあって、フィガロは【獣王】と《接戦》を繰り広げた。

 そう、接戦だ。フィガロからすればアレは接戦であり、決して一方的に攻撃を与えているだけ、等とは考えてなかった。【獣王】ベヘモットからすれば明らかに追い詰められていたのは自分自身だったが、そんなことはフィガロは知らない。

 

 話を戻すが、フィガロは今、一人だ。周りには誰もいない。有るのは宙に浮かぶ岩石と、遠くから見下ろす形となる丸い()

 フィガロは思う。

 

 

(ここからどうやって戻ろうかな?)

 

 

 フィガロは現在─────星の成層圏を超えて宇宙にいた。

 

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 今から少し前、ベヘモットが追い詰められた末に一か八かの賭け、かつ、ぶっつけ本番の特典武具と超STRを組み合わせた空間破壊を引き起こした時まで遡る。

 

 その空間破壊は瞬く間に異空間を破壊し─────そして気付けばフィガロとベヘモットは現世へと戻っていた。

 なんということはない。異空間に空間破壊を行われれば、破壊されるのは異空間の方。そして異空間が機能しなくなれば、自ずと現世へ戻される、という仕組みだ。

 その性質上、異空間で起こった空間破壊は空間の復元がされることもなく、ベヘモットとフィガロの負った傷は最小で済んでいた。

 

 最小だったおかげで─────ベヘモットは【トップ】の破壊による解除と両腕の欠損()()で済んだ。

 

 空間破壊及び空間復元は、巻き込まれた対象の強度などまるっきり無視して引き千切る。如何に超防御力、超ステータスを持つベヘモットであろうと耐えられるものではない。

 しかし、今のベヘモットのAGIなら空間破壊を行い、そこから逃れることは可能では、あった。

 だがベヘモットはそれをせず、フィガロを逃さないために自らの腕を差し出した。

 仮に今ここでフィガロを倒し損ね、自分が倒されることになれば……皇国に勝ち目がなくなると半ば確信したから。

 クラウディアからフィガロの弱点の推測を聞かされてはいたが、それでも何処まで平気なのかわからず、全力でやるしかなかった。

 

 

『……っ!』

 

 

 それでも。

 ここまでやって、なお。

 

 

「……」

 

 

 フィガロは、大きな損傷を負わずに生存している。

 いや、ダメージはある。初見の攻撃であり、【獣王】に身動きを抑えられたフィガロは空間破壊の中で生き延びこそしたが、装備品の半数を壊された。

 しかし五体満足。その手に有する超級武具は、ヒビ割れてこそいたが健在だった。

 今も装備品の限界を超えた強化は、継続されている。

 負ったダメージも、既に装備し直していた回復系のアクセサリーで凄まじい勢いで回復している。

 

 

(どうすれば……)

 

 

 ただの攻撃では通じないことは、もう理解した。

 だがもう、ベヘモットは手札を出し尽くしてしまった。

 超級武具、特典武具、必殺スキル、固有スキル。

 今出せる、使える手がもうない。

 今ある手段では、この男は殺せない。

 どうやってこの怪物を相手にすれば─────ベヘモットは状況の打開のために必死に思考を回し、

 

 

『ベヘモット!』

『!』

 

 

 自身の相棒の念話を聞き、咄嗟に動き出していた。

 その先にはフィガロがいる。既に傷を回復させ、超級武具を持っているフィガロが立ち尽くしている。

 

 

(……立ち尽くしてる?)

 

 

 そこで気付いた。

 フィガロが動かない。

 まるで状態異常にも罹ったかのように、硬直して動かない。

 ここにきて漸く、ベヘモットに周囲を見渡す余裕ができた。

 フィガロの周囲……今のベヘモットからすれば一、二歩で到着できるほどの距離には─────

 

 

「うわ! こっちに来た!」

「離れろ、巻き込まれるぞ!」

「あれは……【獣王】!? 何処から現れた!?」

 

 

 <マスター>とティアンが、大勢。

 

 

(今しかっ、ないっ!!)

 

 

 状況を理解し、ベヘモットは全速力で駆け出す。

 周りへの被害など気にせず、ただ一撃を与えるために。

 今のフィガロは動けない。

 ベヘモットが聞いていた通り、フィガロは一人でしか戦えず、そしてティアンを殺せない。クラウディアの推測通りだ。

 今ならどんな攻撃も通る。

 そう確信したベヘモットは、残る身体でどのように攻撃するのかを思考した。

 

 

(噛みつくのは駄目だ、反撃だけは出来るかもしれない。押し潰すのは他ごと巻き込む。そうなればフィガロが復活する。腕は使えない以上殴るのは無理。あとは……)

 

 

 加速した思考の中、ベヘモットは思いつく。

 

 

(なら、こうする)

 

 

 ベヘモットはフィガロへと接近し……足を振り上げる。

 それは恰も、サッカーボールを蹴る姿勢に似ていた。

 しかし異なるのは、蹴られるのが人間(フィガロ)であり、蹴るのが怪獣(ベヘモット)であり、飛ばす先が横ではないこと。

 

 ベヘモットが振り上げ、そして凄まじい速度で蹴り上げられた足は、身動き一つ取らないフィガロへと命中し、

 

 その身体を、はるか天高くまで押し上げた。

 

 何処かの場所で【破壊王】が【神獣狩】を重力圏外まで蹴り飛ばしたのと、同じように。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 そうして、フィガロは宇宙空間にいた。

 

 

(しばらくは耐えられるけど……強化が切れたらデスペナルティだろうね)

 

 

 しかしフィガロは生きている。

 ダメージは受けている。だがそれは超強化された回復系アクセサリーで補い耐えている。

 宇宙空間にいることで様々な状態異常がフィガロを襲っている。それも同じく超強化された耐性系アクセサリーがフィガロへの状態異常を防いでいる。

 フィガロは、普通なら死ぬはずの宇宙空間で生存していた。それも数十秒以上。

 

 

(あぁ、でも【クローザー】を使えば戻れそうだ)

 

 

 【絶界布 クローザー】の結界で足場を作り、それを蹴って宙を進む。

 強化が切れる前に、フィガロは星に到着して帰還することが出来るだろう。

 だが。

 

 

(……けど、もう戦争には参加できない)

 

 

 フィガロはもう、戦争に戻るつもりはなかった。

 隔離するための異空間が破壊された今、フィガロは十全に戦うことはできない。

 その異空間が破壊された場合も想定し、アルティミアからはその場合は戦争からリタイアしても良いと契約を交わしているため裏切りにはならないが……それでも、惜しむ気持ちがある。

 せめて【獣王】は倒しておきたかったと自答し……今回の戦いは、自身の負けだと納得する。

 

 納得したから、フィガロは信じて託した。

 空に舞い上がる中、下を見つめることで気づけた人物に向けて。

 

 

(あとは任せたよ、フォルテスラ)

 

 

 

▼◀▼◀▼◀

 

 

 

『……』

 

 

 天高くまで蹴り飛ばされたフィガロを見て、ベヘモットは緊張の糸が切れそうになった。だが、すぐに持ち直して周囲を見渡す。

 そこは未だに戦場の中で、ティアンと<マスター>が入り乱れて戦いを繰り広げている。

 

 

(まだ、終わってない)

 

 

 気力を奮い立たせ、ベヘモットは戦場のど真ん中……ではなく、味方のいない王国側へと足を踏み出そうとした。

 

 

(残りは三分弱。腕は使えないけど、今のステータスなら踏み潰す……ううん、走るだけで王国を壊滅させられる)

 

 

 勿論それは、相手のカウンターを考慮しなければの話にはなるが……それでも数多くの敵を踏み潰す事ができるだろう。

 かつて自身が願ったこと。しかし、今は手段としてしか存在しないこと。

 それをベヘモットはする。

 他ならぬクラウディア(友人)のために。

 もう()()()()()()()()。細心の注意さえ払えば負けることはない。そう考えて、

 

 ()()()と、そう何かが壊れるような音が足元で聞こえた。

 

 

『?』

 

 

 足元を見る。

 ベヘモットの今の巨大な足が見える。周囲にはティアンの死体や武器防具が散乱し……

 自身に剣を振るい、その剣を壊した男が見えた。

 

 ─────悪寒が走る。

 その男のことを、ベヘモットは知っていた。

 そして、だからこそ疑問に思う。

 警戒していた。忘れてもいなかった。だから周囲を見渡した時にいないことも確認していたのだ。だというのに。

 なぜそこにいる、と。

 咄嗟に足を繰り出そうとしたが、全ては遅かった。

 

 

「『──《超克を果たす者(ネイリング)》』!」

 

 

 男と女の宣言が響く。

 今のベヘモットを対象に使わせてはならない必殺スキルを、使わせてしまった。

 

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 なぜ彼───【剣王】フォルテスラが、ベヘモットに気付かれることなく足元まで接近することができたのか。

 その答えについては非常に簡単だ。

 ()()()()()()()()()()()

 彼は、ただそこで待っていただけだ。

 【獣王】が消えた段階で、【獣王】が消えた場所に陣取っていた。

 

 彼は親友の勝利を疑わなかった。しかし、話を聞いて強制的に決闘場を破壊される可能性は考えた。

 だから備えた。もしそのような事態になれば、フィガロは負けると知っていたから。無駄骨となる可能性も想定してなお彼はそこにいることを決めた。

 

 【獣王】が現れた反動で押し潰されたことでブローチを壊されこそしたが、それでも死ぬことなく生き残った。

 そして、大きな隙を晒したベヘモットに向け、自身の<エンブリオ>を振るい破壊させ……彼は必殺スキルの発動条件を満たした。

 その本領が今、発揮される。

 

 

☆☆☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 繰り出した足は地面を抉り大量の土と岩石を高速で飛ばし、その先にいた命を消し飛ばしていく。だが、その時には既に殺そうとした男はいない。

 

 

「《オーヴァー・エッジ》!」

 

 

 その宣言と共に、砕けた剣から再構成された光の刃が伸長。ベヘモットの全長も超える長さの光の刃が、彼女の足を斬り裂かんと水平に迫る。

 それを、ベヘモットは咄嗟に飛んで避けて()()()()

 

 

(しま、)

 

 

 それは、避けようがない攻撃だった。

 今のベヘモットはとても大きく、端的に言うと当たり判定がとても広い。どのような攻撃でも避けられない限りは外すことがないだろう。

 だから地面スレスレとなるような攻撃を放たれれば、飛んで避ける以外の選択肢がない。

 

 飛んで動けない僅かな時間。

 光の刃は、未だに伸長している。

 

 

「《ソード・アヴァランチ》!」

 

 

 【剣王】の奥義、自身の周囲全てを刃によって斬断する超連続剣《ソード・アヴァランチ》が、空に浮かび動けないベヘモットに向けて放たれる。

 《ソード・アヴァランチ》は自身のAGIの一〇倍近い速度で剣が振るわれる。その性質上、脆弱な剣では瞬く間に壊れてしまう強力な奥義。

 しかし必殺スキルを発動させたフォルテスラのエンブリオ【ネイリング】ならば耐えられる。

 そして彼の必殺スキルは、フォルテスラに【ネイリング】を破壊した者のAGIと、物理防御力に物理攻撃力を、物理攻撃力に物理防御力を加算する。

 つま。このスキルが発動している間、フォルテスラは相手の物理防御を必ず破れる物理攻撃力と、相手の物理攻撃を必ず防げる物理防御力、相手の速度を必ず上回る速度を手に入れることになる。

 

 そして何度でも言おう。彼の《ソード・アヴァランチ》は自身のAGIの一〇倍近い速度で振るわれる、と。

 故に、今のベヘモットでも視認が不可能な光の刃の斬撃が彼女の巨体を斬り刻み……バラバラにした。

 

 その死が覆されることはなく……光の塵となって消滅した。

 

 

『やったね、団長!』

「……ああ」

 

 

 自身の相棒の声を聞きながら、フォルテスラは上空を見上げる。

 

 

(……今回は引き分けだな)

 

 

 そう、内心で呟く。

 仮にこれが決闘だったなら、負けていたのはフォルテスラだと自覚していたからこその判断だった。

 相対していた時点で必殺スキル使用時でなければ。

 相手が【レヴィアタン】ではなく【獣王】であったなら。

 相手が超級武具を残していたのなら。

 勿論この中にはフォルテスラが知らない手札が含まれているため、彼は全てを想定していたわけではない。

 だが、相手の手札を出し尽くされていなければ負けていただろうと認識している。

 だから引き分け。

 フォルテスラはフィガロと自身の競争をそう結論づけ、周囲を見渡す。

 まだ戦争は終わっていない。

 そして今の自身には過去最大のステータスが載せられている。

 

 

「やるぞ、ネイリング」

『オッケー、団長!』

 

 

 剣を構え、駆け出す。

 ここにはいない、もう参加できない友を想いながら。

 彼は未だ折れぬ剣を持ち、戦場を駆けた。

 

 




(◎n◎)<【獣王】ってフォルテスラと相性が悪いんですよね。かといって悪すぎるわけではないんですが、手札を出し尽くした後なのが痛かった。

<超級
(◎n◎)<実のところ秘匿してた。
(◎n◎)<<超級>になって新しいスキルも増えたけど、【猫神】との相性が決して良いわけじゃないので勝てないと判断して隠す方向に。
(◎n◎)<知ってるのは一部の人間だけとなり、おかげで戦争中は準<超級>としては認知されながらもフリーとなりました。
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