剣一つあれば良い   作:オルフェイス

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幕間・■河出■■■ターの心理

 

 最初に目にしたモノを、今でも思い出せる。

 それを見て思ったことも思い出せる。

 それを見て、()()()は生き方を定めたから。

 

 わたしはそれを、美しいと感じた。

 

 

◇◇◇◇

 

 

 (リュ)(ロン)。それがわたしに名付けられた名前。

 とはいえ、それを自分の口から告げることはないだろう。

 わたしは表向き、耳が聞こえない、というていで過ごしているから。

 だからわたしは言葉を喋らず、わたしの事情を知る人達も呼ぶことはあれど何かを伝えたい時は近づいてくる。

 

 なんでわたしは耳が聞こえないことになっているのか。

 

 結果的にそう思われているだけだけど、そうなるように誘導したのはわたしの意思。

 幼い頃から音にも反応せず、言葉も喋らなければ自然と耳が聞こえないと思われるようになる。

 

 ……とはいえ、音への反応は生き物にとって反射で反応してしまうものだから、幼い頃に乳母には喋って音を遮断する方法を学んだけど。

 その時の乳母、大層驚いてたなぁ。わたしが喋れて耳が聞こえることを知ってたのは、双子の兄だけだったから。

 

 それで、何でわたしは耳が聞こえないことにしたのか、だけど。

 それは、兄を忌むべき者として扱う血族が嫌いだったから。

 それならわたしは反抗期になってやろう、と思ったのだ。

 音が聞こえないふりも、自ら話そうとしないのも、それが理由。

 ……恐らく、父にはバレているだろうと思うけど。

 

 そういう考えでわたしは今を生きてきたし、兄と一緒に過ごした。

 わたしだけが呼び出されて兄が来ないなんてこともよくある話で。

 だから余計に反抗期は続いた。

 態度を改めない限りは、こうすると決めてたから。

 

 どうしてそんなに冷たくするのかも理解できるけど。

 だからって認められない。

 だから()()する。

 わたしがそう決めた。

 

 だって。

 ─────<マスター>は自由。

 らしいから。

 

 

◇◇◇◇

 

 

 窓を眺める。

 人が歩いているのが見える。

 色とりどりで、千差万別。

 老若男女、誰一人として同じ色を持つ人はいない。

 わたしは昔から、こうやって人を眺めるのが好きだった。

 唯一の趣味だと言って良い。

 この世界の人はわたしが知っているものよりもさらに特徴的で独創的で、飽きがない。

 

 何もしない時間は、こうやって眺めるのが日課となっていた。

 

 

『ヨう。何見てるんダ?』

 

 

 そんなわたしに声をかける人物がいた。

 振り返れば背の高い、顔に札を付けた人がいる。

 名前は迅羽(シュンユー)。【尸解仙(マスター・キョンシー)】の超級職に就き、<超級エンブリオ>を保有する<マスター>だ。

 そして、わたしの知り合い……友人でもある。

 わたしは言葉は話さず、窓の外を指さす。

 

 

『人でも見てたのカ?』

 

 

 小さく頷き、再び窓の外へと視線を向ける。

 なんで見ているのかは、わからないだろう。

 そこは話してないし、伝えていない。

 わたしが()()見ているのかは、今は兄しか知らない。

 

 

『相変わらず人を見るのが好きだナ。まぁそれはいいとして……お前の兄貴のことダ』

 

 

 振り返り、見上げる。

 正直な所、普通に会話する時くらいは迅羽もテナガアシナガ(大きな義足と義手)を外しても良いのではないか、と思っている。

 でもそれは彼女のコンプレックスが由来だろうから、思っても口に出すことはない。

 それに迅羽は必要なときはちゃんと外すから問題はない。悪役ロールになり切ることはするけど、本質的に良い子だから。

 ()()()()()()

 それで、兄の話となれば……何のことかは察しはつく。

 だから予め兄に書いてもらった返事用の紙を、迅羽に手渡した。

 

 

『だろうナ』

 

 

 中身を検めた迅羽はわかっていたように頷く。

 お前ブラコンだしナ、と続けて呟く迅羽にわたしは否定も肯定もしなかった。

 端から見ればそう見えることも重々承知している。

 ……兄が家族に愛されて育っていれば、多分こんな風にはならなかっただろうけど。

 じっと迅羽を見つめる。

 昔、迅羽と初めて会った時はわたしの無言のメッセージを送っても気付けなかったけど、今では慣れたのかある程度は察するようになってくれた。

 

 

『ま、アイツのことは任せロ』

 

 

 そう言う迅羽に、わたしは頷き返す。

 何が言いたいのか、何を伝えたいのか。事情を知っていればある程度は理解できる。

 わたしもついていければ良かったけど、諸々の事情があり行くことができない。

 わたしにできるのは、迅羽に兄を託すことぐらいだ。

 ……あの兄ならば、大抵の相手は下せるだろうけど。

 それでも不死身じゃないし、万が一もあり得る。

 わたしがいない以上はリカバリーも出来ないし、その辺りは任せるしかない。

 

 腕を突き出す。

 迅羽も何も言わずに拳……義手を突き返し、トンとぶつけ合う。

 ……ちょっと恥ずかしくなったので、顔を逸らす。

 

 

『じゃあナ』

 

 

 手を振りながら迅羽は立ち去っていく。

 それを見送ったあと、わたしは再び窓を見る。窓の先にいる人たちを見つめる。

 

 そして、自身の手を見つめる。

 

 手の甲に存在する紋章。エンブリオの証。

 それには上部に両目、下部に両手、そして両手が包み込むようにしている丸いシルエットをした何かがある。

 その紋章はわたしのエンブリオを……何に、何をするのかを表している。

 目は見るためにあり。

 手は握り、掴み、持ち、離し……つまり作業をするためにある。

 そして丸いシルエットは、干渉する対象を表している。

 

 わたしは、時々思うことがある。

 

 あの日、あの瞬間。

 ()()()()()()()、何か変わったのだろうか、と。

 そう、思わない日はない。

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 

 昔、昔。

 あるところに古龍人と呼ばれる種族がいた。

 今も血を繋ぎ、しかしとある国の皇族以外に血が流れないように厳重に管理されていた。

 

 とある夫婦がいた。

 国を収める皇帝と、その妻。

 彼と彼女の間には子がいた。

 そして彼女のお腹には五人目……いいや、五人目と()()()の子供がいた。

 その誕生は祝福される……そのはずだった。

 

 【龍帝】という特殊超級職がある。

 古龍人といく種族に稀に生まれ落ちる、生まれながらにして就くことが決定づけられるジョブ。

 そのジョブの特性は、何よりレベルを引き継ぐということ。

 最新は即ち最強。

 それが【龍帝】というイレギュラーだった。

 

 ─────その日、母の腹から出てきたのも【龍帝】だった。

 しかし、赤子に膨大な力の制御などできるはずもなく。

 制御できない力は、容易く母の体を引き裂き、殺してしまった。

 そうして生まれたのが、皇帝の五人目の子供である【龍帝】。

 そして、そこに隠れるようにして息を止めて生まれたのが、六人目だった。

 

 五人目と六人目は双子だった。

 

 皇帝は妻を殺した【龍帝】を疎んだが、同時に生まれただけの六人目には愛情を注いだ。

 しかし、物心付く頃には六人目は五人目であり自身の兄である【龍帝】に懐き、愛情を注ぐが五人目を疎む父と兄弟姉妹には懐かなかった。

 

 そして、六人目は【龍帝】とは違う意味で特別だった。

 

 耳が聞こえない……ということになっている六人目は、生まれながらにして手の甲に紋章を宿していた。

 当時は、かの者たちは数が少なかった。

 記録として残されている中で一番有名だったのは、当時の【龍帝】と【覇王】と競い合った【()()】。

 

 手の甲に紋章。

 

 それは─────<マスター>であることの証明だった。

 

 

 六人目……【龍帝】蒼龍(ツァンロン)人越(レンユエ)の双子の妹である彼女の名前は、緑聋(リュロン)人別(レンビエ)

 

 生まれながらの<マスター>であり……生まれながらの<超級>である。

 

 

 




緑聋(リュロン)人別(レンビエ)

(◎n◎)<最初に言っておくと。
(◎n◎)<緑聋は間違いなくマスターだし、ティアンでもある。
(◎n◎)<けど不死身でもなければ万能の才能もない。
(◎n◎)<管理AI?
(◎n◎)<緑聋の誕生を知ってからすぐに緊急会議を行ったよ。それほどの異常事態。


【■■心理 プ■■■■】
TYPE∶テリトリー系列
(◎n◎)<とりあえず今はこれだけ。


(◎n◎)<それとすみません、少し休みをもらいます。ストックが心許なくなってきたので……1週間、長ければ2週間ほど間を空けます。ご了承ください。
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