(◎n◎)<今回の話は、なんとなく考えてて入れたくなったので入れました。
幕間・王国出身■■■■■の憧憬
─────しにたくない。
☆☆☆☆☆☆☆
気付いた時から空腹だった。
身体は痩せ細り、僅かに与えられる
このままだと死ぬと、ぼんやりとした意識の中で理解していた。
でも、どうにもできない。
わたしを死に追いやるのはわたしの片割れ。
……そして、全ての主導権を握っているのも片割れ。
握られた小さな手が離されることはない。
この片割れにとってわたしがなんなのか、知る由はない。
わたしは片割れではあっても、片割れ本人ではないから。
でも、わたしが片割れとして存在するからこそ、片割れの……そして片割れを守る母体の知識が流れ込んでくる。
わたしが生まれながらに考えることができているのは、それが理由。
いやだ
わたしが生き長らえることが出来ているのも、それが理由。
どうして。
けどこの延命も、そう長くは保たない。
今でもギリギリだった命は、いずれは尽きて朽ち果てることになるのだろう。
どうしてわたしなの。
あるいは、それより先に片割れが『誕生』する方が先かもしれない。
母体というカバーが壊れ、本体という片割れが生まれ落ちる。
その反動で、多分わたしは死ぬことになるだろう。
片割れとは違い、脆く、そして弱いこの身体。
わたしは片割れの誕生に耐えることができない。
リソースが尽きるのが先か、反動で死ぬのが先か。
どちらにしろ、わたしは死ぬ。
それはもう、どうしようもなく決まりきったこと……運命とか、そういうのだ
死因は……栄養失調? 流産という扱いになるのだろうか。
そんなことを考えても、意味なんてないけど。
しにたくない。
わたしの中にあったのは、諦観だけ。
どうしようもなくて、どう足掻いても変えられなくて。
死ぬ。
死ぬ。
死んでしまう。
空腹のまま、満ち足りた感覚を知ることもないまま、死んでいく。
ずるい。
きっと片割れはこれから先も生きていくのだろう。
わたしよりもずっと長く、ずっと自由に。
そう望まれて生まれ落ち、
どうせ死ぬなら、こんなこと、知りたくなかった。
わたしには、外の様子を伺うことはできない。
ただ小さな身体を丸めるしかできない。
与えられる僅かな栄養を、身体に循環させるしかない。
片割れから離れることもできない。
片割れは、その手を離してくれない。
もう……いやだ。
………………。
わたしは、いつになったら死ぬんだろう─────
定められた死。わたしにはどうしようもない運命。
─────それを覆されたのは、突然のことだった。
☆☆☆☆☆☆☆
─────あぁ、追い詰められてるんだ。
そんなことを母体の中で考える。
中から外を伺うことはできない。
けど外から中へ衝撃が来れば、何か起こってることくらいはわかる。
母体は今、追い詰められているのだろう。
供給される僅かなリソースの流れが変わった。
ほんの少しだけど、確かに減った。
母体が戦闘を繰り広げ、損傷したのだろう。頭が潰されて第二形態にでも移行したのかもしれない。
このまま行けば、より損傷は激しくなる。
勝つにしろ負けるにしろ、わたしの結末は変わらない。
勝てば傷を負った母体は回復を優先し、わたしのリソースは途切れる。
負ければ片割れが誕生し、その反動でわたしは死ぬ。
わたしの命日は、どうやら今日だったらしい。
戦いの振動に揺らされながら、わたしは心穏やかに揺蕩う。
心なしか片割れの握る力が強くなった気もする。
─────わたしはどのように死ぬんだろう。
─────苦しみたくはないな。
─────出来ることなら、相手には母体に勝って欲しい。
─────そうなれば、わたしは片割れの誕生の反動で死ぬ。
─────少なくとも長く苦しむことはないだろうから。
そんなことを思いながら、わたしはもうすぐ迫る死を待った。
……思えば、随分と長かったように思える。あるいは短かったのか。
思い返すほどの過去はなく、ただ暗闇の中で微睡むだけ。
何かできたのかもしれない、と思っても、すぐに何もできなかったと考える。
わたしの生に、何か意味はあったのだろうか。
誰にも、何も残せずに死んでいく。
片割れは……唯一ここにいる他者である片割れは。
わたしを、知っていたのだろうか。
……どちらでも良い。
どちらにしろ─────あぁ、ようやく終わる。
『────《
─────最後の最後、そんな声が聞こえてきたような気がして……わたしの視界を、光が覆い尽くす。
そしてすぐ後、ずっと離されなかった手が力を無くしたようにように離れていく。
「ぁ」
初めて、声を出した。
何が言いたかったのか。なんで声を出そうとしたのか。
─────この喪失感はなんなのか。
わからないまま、わたしは崩れ落ちた。
「……、……?」
眩しい。
最初に感じたのはそれで、次に感じたのは様々な情報だった。
風が吹くのを肌で感じる。
風が身体を撫で、ぶるりと身体が反射的に震えて寒いと感じる。
肌で何か固いものがあるのを感じられる。
鼻にツンと刺激するような、なんとなく好きじゃないと思える匂いが漂う。
人の匂いがする。獣の匂いがする。怖い匂いがする。
口の中に入った土が気持ち悪く、思わず吐き出す。
舌に乗せられた土の味は否応に感じさせられる。
手足が自然と動く。
土を握りしめ、立ち上がり……フラフラとよろけて、力が入らず座りこむ。
「……」
─────生きてる。
身体が動く。呼吸ができる。目を開けることができる。
……死んでない。
本当ならわたしは死ぬはずだった。
それほどわたしは弱っていて、脆かった。
なのにわたしは生きてる。
なんで─────
悪寒。
肌に突き刺される、明確な殺意。
未だに光に慣れていない目が、殺意の先を見据える。
黒い靄がいた。
多分、人……<マスター>。
その手に持たれているのは、拳銃……リボルバー?
銃口が、こちらに突きつけられている。
「───」
死ぬ。
身体は動かせない。
そもそも間に合わない。
生まれたばかりのこの身体は、栄養が、リソースが足りてない。
足りていたとしても、きっと避けられない。
銃口から一発の弾丸───モンスターが放たれる。
弾丸のような形をした、餓鬼のようなモンスター。
<エンブリオ>、ガードナー。
咄嗟に考えられたのはそれだけだった
その弾丸は動けないわたしの額に真っ直ぐ進み、
「───っらぁぁ!!」
黒い大剣が、迫るモンスターにぶつかって軌道を逸らした。
そこでようやく、そこに人がいたのだと気付いた。
男の人だ。黒い大剣を持って……でも、身体はボロボロ。血が出てるし顔色も悪い。
でも。
その瞳は、とても熱かった。
熱くて……優しい瞳。わたしにはそう見えた。
そして、彼はわたしを庇うように背を向けた。
もう動けないはずなのに。
母体と戦っていたのは、きっと彼だ。
激戦だったのだろう。そうでなければボロボロになることもなかったはずで。
「──逃げろ」
背中越しにそう言われ、わたしはようやく覚束ないながらも立ち上がり、そのまま駆け出した。
一度、振り返る。
彼の背中が見える。
その背中を、瞳に焼きつける。
そして前を向いて、今度は振り返ることはなかった。
わたしは……何も考えずに走り続けた。
息が荒い。
身体が焼けるように熱い。
力が少しずつ抜けていく───どれだけ、走ったのか。
次第に体力は尽きて、前に進む力は失われていった。
倒れ込むように動きをとめ、呼吸を整える。
「ひゅー……ひゅー……」
掠れた呼吸が漏れ出る。
心臓が激しく脈打っている。
思考が薄れる。
身体は酸素を必要としていて、とにかく必死に呼吸を続けた。
息が少しずつ落ち着いてきて、もう一度走ろうと立ち上がろうとした。
けど……出来なかった。
身体は既に限界を超えていて、もう動くこともままならなかった。
木に凭れ掛かり、視界がぼやける。
目を閉じる。
休息が必要だと、身体は訴えかけている。
そして同時に、リソースが足りないと欲している。
周りに食べられそうなものはない。
あるのは草木。あと石とか土。
……お腹を紛らわすくらいは、出来るかもしれない。
そう思いながら手を伸ばして……こちらに向けられる視線に気付く。
「……」
『わふ!?』
視線の先に、藪の中から顔を出す犬がいた。
ふわふわしてて、なんか色々装飾品がチラホラ。
頭上には【群狼王 ロボータ】の文字が浮かんでいた。
……<UBM>、らしい。
明らかに弱そうだ。食べられるのだろうか。
そんなことを考え……でも、なぜだか手を出す気にはなれなかった。
見た目が弱々しいからなのと、最後に見た彼の事を思い出したからかもしれない。
「……」
『クーン……』
【ロボータ】は藪の中から出てきて、何処か心配そうな眼差しをして見上げてくる。
<UBM>なのに、他人の心配をするのか。
少し呆れてしまい……気が緩んだからか、目が自然と閉じられていく。
わたしの意識は、暗闇の底へと落ちていって─────
夢を、見た。
誰かが、誰かと戦う夢。
目の前に見えるのは、わたしを庇った彼。
その彼が鬼気迫る表情でこちらに駆けてくる。
わたしは……ううん、母体は何度も彼を打ちのめす。
それでも彼は諦めない。
何度も殴られようと、どれほど傷付こうと、彼は止まらない。
そして最後は、腹部に向けて黒い大剣を振るい、そのまま消し飛ばして破壊した。
わたしは、それが夢だと認識しながらも何度もその光景を見返し、瞳に焼きつけた。
何度も、何度も。
決して忘れることがないように。
わたしの心の奥底に刻み込んだ。
『部下一号ー!』
『はいはいどうしましたかボ……何処で拾ってきたんですか、それ』
『なんかいたのである!』
『なんかって……どうするんですか、ボス』
『配下にしたいのである。 ここに置いていくのも可哀想なのである』
『……わかりました。ボスの言うことですからね。私が背負って行けば良いですか?』
『ちっこいからそれで良いと思うのである』
『ボスよりは大きいですけどね』
『ふぐぅ』
☆☆☆☆☆☆☆
【■■■ ガルドランダ】は死んだ。
そして二つのモノを残した。
一つ、特典武具。
【ガルドランダ】を打倒した彼の者に贈られ、そこには【ガルドランダ】の意識が残された。
いつの日か、自身の片割れとの再会を強く願っている。
もう一つは命。
【ガルドランダ】のコアが決して離すまいとしていた、弱くも愛おしい【ガルドランダ】の片割れ。
片割れたる彼女は【ガルドランダ】を打倒した彼の者に命を救われ、率いる王である【ロボータ】に拾われた。
憧憬は彼女の中に刻み込まれた。
それ故に、彼女が【ガルドランダ】と同じ力を持つことはないだろう。
その才能も、弱者である彼女は【ガルドランダ】などとは比べ物にならないほどに天と地ほどの差がある。
しかし。
王に拾われたことで、彼女の朽ち果てる運命は変化した。
彼女は力をつけ、憧憬を胸に秘め、そして至ることだろう。
【ガルドランダ】とも異なる鬼へと─────
<???
(◎n◎)<【ガルドランダ】の体内というかコアと一緒にいた片割れ。ジャバウォックも知らなかった。
(◎n◎)<【ガルドランダ】よりも肉体が弱い。そして母体の主食が肉体に合わなかったので本来なら餓死するか、【ガルドランダ】誕生の反動で死ぬはずだった。
(◎n◎)<しかし彼の者ことレイの与えた固定ダメージがコアのみを破壊したことで死の運命から逃れた。
(◎n◎)<そしてロボータファミリーに拾われたので、今は弱くてもこれから強くなる。
(◎n◎)<まぁもうぶっちゃけちゃうと<UBM>にはなる。名前ももう粗方決めてあります。
<【ガルドランダ】
(◎n◎)<片割れに対しては執着心に近しい愛情を抱いていた。
(◎n◎)<でもこのまま誕生してたら片割れは死んでたので悲しみと怒りに狂い、正気に戻れない狂鬼と化していた。