(◎n◎)<あと前回の投稿後、評価が一気に増えたので嬉しいです。ありがとうございます。
時間が経過するのは本当に早い。
時間となってから子供達の相手を終え、ギデオンの中央大闘技場に向かって席に座り、待機する。
今は本命の<超級激突>の前のセミイベント、他のランカー達による決闘の真っ最中だ。
ちなみにボックス席もあるそうだが、俺は普通の観客席に座って観戦している。
着ぐるみで。
着ぐるみで。
大事なことだから二回言う。
そのせいなのか、俺の周囲は少し浮いてる。
浮いてるというか、人がいない。俺は特に何もしていないのだが、代わりに二人ほど知ってる顔がいる。いや、二人というか二人と一匹か。
一人は、今は【だぶるかのん】に着替えている俺の頭の上に乗っているヤマアラシ。隣に
もう一人はターバンとか……砂漠で見かけるようなゆったりとした服を着た穏やかな雰囲気の男。
どっちも顔を知ってるし、なんなら男の方は一度交戦したし
ただ、どちらも広域殲滅型なのでここでは大人しくしていてほしいところ。そんなことを思いながら手元の菓子を食べる。
『ボリボリ……いるガメ?』
『thx』
ついでに頭の上に乗ってるヤマアラシにも分ける。
あちらも短く言葉を返し、二人で菓子を食べる。
菓子を食べながらセミイベントの決闘も見ているが、今のところ<超級>が出てないので判断に困る。
……あぁいや、【剣王】なんかは出てる。けど、最終スキルは使ってないから準<超級>とさほど変わりない。
そんな決闘を見て俺が思うのは『こんなに狭いと少しやり辛いな』というもの。
本気でやったら結界が斬れるし、やっぱり今まで決闘に参加してこなくて良かったのだろう、と思える。
今戦ってるのは【大海賊】と【堕天騎士】。上級職と超級職だが、上手いこと渡り合っている。経験と知識、あとは技術的なものだろう。あまり参考にはならないが、面白くはある。
……さて。
『【地神】、お前なんでこんなところにいるガメ』
今のうちに目的を聞いておこうと、隣の男……カルディナの<超級>【地神】に問い質す。
穏やかそうな男だが……こいつは周囲にティアンがいようと目的に支障が出ないのなら平然と巻き込めるタイプだ。
だから、聞かなくてはならない。
目的次第ではここで殺すことも視野に入れる。
「ただの観光だよ」
『お前の妻に言われてだろ』
「さて、どうだろうね」
【地神】はふらりと流した。
今のでだいたいわかったから、もう聞く必要はない。
少なくとも、このギデオンを滅ぼすようなことはしないらしいとわかった。それならまぁ、今は捨て置いていい。
いずれまた戦うことにはなるが、それは今じゃない。
「そういうオールドポンドは、なぜここに?」
『普通にイベントを見に来たガメ。地味に他の<超級>同士が戦うところを見るのは初めてガメ』
と、改めて考えると<超級>並の敵と戦うことはあれど<超級>の<マスター>同士が戦うところは見たことがないということに思い至った。
ここで<超級>とはどういうものなのか、知っておくのも悪くはないのかもしれない。
……そういえばシャワーも戦争で<超級>と戦闘したって話だったな。あの時は確か─────
『ん、そろそろか』
そこまで思考したところで、セミイベントが終わりを告げた。
つまり次が本番。メインイベント、<超級激突>だ。
「ようやくですか」
隣から女の声。
先程からいたメイデンのものだった。
その声には、ありありと不満と退屈が載せられていた。
『つまらんかったガメ?』
「ええ。とても」
至極あっさりと断言してみせたのは、自信の表れか。
……視たところ自信も含まれてはいるが、どちらかといえば当然、自負というのが含まれているか。
自分は強い。最強である、と。本気で思っている。
そんな感じがする。
『極特化型のお前からすれば、比較してしまえばつまらなく感じるものなんだろうガメ』
そんなことを呟けば、ひやりとした圧が僅かに漏れ出て……すぐに収まった。
極特化型と言われたことで何かしら反応して、でもおかしくはないと改めて考えて納得した、ってところか。
……あれ。
『というかここにいるメンバー、もしや全員極特化型か』
今更ながら思い至る。
俺は武器の純粋性能特化型で攻撃力が極端に高い。
ヤマアラシ……【獣王】はステータス極特化。
隣の【地神】もMPに極特化してる。
見事に特化型しかいない。
ここにいる奴ら、全員極端な奴しかいない……?
俺の言葉に異論が出てこなかったのか、頭の上も両隣も少し無言になっていた。
「オールドポンドも同じように特化した<エンブリオ>を?」
『おう、剣ガメ。攻撃力なんか三〇〇万オーバーしてるガメ』
「「……」」
『……言って良いの?』
【地神】がすかさず聞き出してきた内容に、俺は偽りなく答えると、ぽつりと上から少女の声が漏れ出る。
ヤマアラシこと【獣王】……そもそも名前知らないな。兎も角今まで沈黙、というより言葉らしい言葉を喋っていなかった【獣王】が喋った。つい零れた、という感じか。
俺は《真偽鑑定》には反応しないことを知らないとはいえ、不思議に思うものだろう。
【地神】も聞ければ御の字程度に考えていたはずだ。
それでも俺が敢えて漏らしたのは……単に、問題がないからだ。
『聞いたところで対策なんて打てんガメ。それはそっちも同じガメ?』
メイデンが持つ自信と同じように。
俺も俺で、自信がある。負けない、勝てるという自信が。
いくらでも対策なんて打てばいい。
打たれた上で、全て上から捻じ伏せる。
それだけだ。
「どうやら、他の有象無象とは違うようですね」
メイデンの視線が、初めてこちらに向く。
向けられるのは敵意。
恐らく、<マスター>の意向がなければすぐにでも襲いかかっていた、それほどの凶暴性。いや、単純性か。
シンプル故に厄介。
手綱が握られている状態の今はまだ良いが、こいつが放し飼いにされようものなら……何をしでかすか、わかったものじゃない。
と、アナウンスの声が響いた。もう始まるようだ。
『さーて、どんなものかお手並み拝見ガメー』
向けられる敵意は放っておき、もう間もなくで始まる<超級激突>を観戦しようと、
「なっ……!?」
すぐに剣を収め、何事もなかったように見せる。
……今は暴れさせるつもりもないし、するつもりもない。
予想通りと言うべきか、警戒を解いたふりをしたらすぐに引っ掛かったな。
単純で、だから分かりやすい。
「っ、き、さま……!」
『さっさと腕を拾ってくっつけるガメ。それとも、今ここでやり合うか?』
『……レヴィ』
こちらに強い敵意を向け続けたメイデン……レヴィは、【獣王】の言葉に一旦は矛を収め、血が出ないように斬った腕の断面をくっつけ合わせ、そこにポーションをかけて治した。
予想通りHPも膨大。だから弱いポーションでもたった一つで回復できたらしい。とはいえ回復系の特典武具もあったみたいだから、ポーションを使ったのはフェイクか。
回復したレヴィは、しかし未だに俺への敵意を外さない。こうなるくらいだったら装備だけして防御力で受け止めれば良かったか?
『何もする気がないなら大人しくしておくガメ』
「……」
視線を外して闘技場を見る。
レヴィはこちらから視線を逸らさず見つめ続ける。もう一度攻撃をしないのは、これが隙なのか誘いなのか判別できないからか。
あるいは、やれば殺られると理解しているのか。
『sry』
『ん? あぁ、気にしてないガメ』
頭の上から呟くように言われた単語に一瞬何のことかと考え、すぐに謝罪かと納得する。
単語のチョイスからして英語圏。そして使ってるアバターが人間じゃないというのは───いや、そこは考えるべきじゃない。
すぐに逸れた思考を元に戻し、観戦に集中する。
隣からは敵意。もう片方からは興味の視線を向けられ、闘技場が色めき立つ。
『会場の皆様ぁ! お待たせいたしましたァ!! これより本日のメインイベント、<超級激突>を開始致しまァす!!』
そんなアナウンスと共に、選手が入場してくる。
<超級激突>が、始まった。
(◎n◎)<下手をすればレヴィアタンはこの場で処されてました。
(◎n◎)<傷つけられたレヴィですが、敵意とは裏腹に好感度は悪くありません。ベヘモットも同様。
(◎n◎)<なおファトゥムは知ってますが、ベヘモットは薄っすらオールドポンドの正体を察し始めてます。