(◎n◎)<次の目標は総合評価4000を目指そうと思います。よろしくお願いします。
着ぐるみ姿の元凶……正体を現した皇国の<超級>、Mr.フランクリンは、これ見よがしに事を進めていった。
まず正体を現したフランクリンは、自身の超級職【大教授】と<エンブリオ>の合わせ技で作り出したと思われるモンスターを使い……エリザベートを人質に取った。
その時にはエリザベートの意識はなく、そのため抜け出すことは叶わない。
その時にはフランクリンを狙って斬ろうかとも思ったが、両隣と頭の上の人物たちの存在があり、また、即座にエリザベートに命の危機があるわけではないと察して様子を窺った。
……中にはエリザベートという人質がいながら魔法を放った<マスター>もいたが、当たる前に俺が斬ったので事無きを得た。
まぁ斬らなかったとしてもダメージは転嫁されていただろうが。
そしてフランクリンが宣言したのはギデオンを舞台にしたゲーム。ギデオン全体に封置されたモンスターの入ったジュエルが、時間経過で全てばら撒かれるというもの。
当のフランクリンは説明を終えるとすぐにエリザベートを連れて姿を消し、それを合図として闘技場内にいた戦える者たちが動き出した。
「あなたは動かないのですか?」
『流石にほっとくわけにもいかんガメー』
片や<エンブリオ>が超巨大で動き回るだけでギデオンを瓦礫の山と成り果てさせることのできる【獣王】。
片やあまりに膨大な魔力でギデオンを地中に埋めることもできてしまう【地神】。
【大教授】のテロも、確かに止めなくてはならない事態だ。しかし上記二人と比べてまだ対処が容易でもある。俺じゃなくても止めることは不可能ではない。
だが、もし【獣王】と【地神】の片方が、あるいは両方が暴れることになれば……もう【大教授】のテロがどうとかのレベルではなくなる。
特に【地神】。
こいつは、【獣王】よりも何かの拍子で暴れかねない。
少し前の問いかけでギデオンを滅ぼすつもりはないとは分かったが、かといってそれで手出しをしてくることはない、と断言はできない。
動きたいが、動けない。
それが今の俺の状況だ。
今ではないが、いずれ戦うことを考えれば……カバネを出すのも少し躊躇われる。
ギデオンにいる<マスター>。
そしてティアン……エリザベートに着いてきたリリアーナたち近衛騎士団。
彼ら彼女らに任せるしかない。
……あぁいや、他にも出来ることはあったか。
『じゃあ早速』
剣を……グラムを抜き放ち、斬る。
結界を……より正確には時間停止を行っている機能を斬る。
そうすれば結界は作動し、二人の超級が動けるようになる。
【超闘士】と【尸解仙】。
そして……今は何処にいるのか分からない【破壊王】ことシュウ。
ひとまずこれでギデオンが滅びる、なんてことにはならないはずだ。
……【超闘士】は仲間がいると動けないし、【尸解仙】はそもそも所属している国が違うので動かない可能性があるが、戦力が浮いているということは余裕があるということ。
動けなくても、動いてないだけで意味がある。
ここからは本当に他に任せるしかない。
『ボリボリ』
『かりかり』
そんなわけで俺は頭の上の【獣王】とお菓子を食べている。
なんかデジャブを感じるが、多分気の所為。
そうこうしている間にも状況は動き出している。
まず観客は動くに動けず闘技場の席などで留まっている。
次に<マスター>だが、どうにか闘技場から出てフランクリンを追おうとしているが、出ようと思っても結界に阻まれて出れてない。フランクリンの細工によるものだろう。
ただまあ……それもあくまで一定レベル以上の強者を遮ることしか出来ないようだが。
つまり一定レベル以下の弱者……初心者と呼べる<マスター>達は結界の外へ出ることが出来たようだ。
その中にはシュウの弟であるレイ・スターリングも含まれているのが見えた。
……今更気付いたが、弟の装備、初心者にしては強すぎないか? 恐らく初期も初期だろう時期に特典武具を二つも持ってる奴なんて……いたな、俺が。
しかも、その内の一つは意思を持つ特典武具ときた。カバネと同じ特典武具は今までログインしてきた中でも初めてだ。
内心そんなことを考えながら見ていたが、すぐに見えないところにまで行ってしまった。フランクリンを追ってテロを止めに行ったのだろう。
そして暇になったのでお菓子を食べて上にいる【獣王】にあげたりしている時だった。
見覚えのあるシルエットが近づいてくるのが見え、お菓子を食べる手が止まる。【獣王】も気付いて視線を向けていた。
『おっす、久しぶりクマ』
『おぉ、シュウじゃないかガメ。元気してたガメ?』
『まあな。そっちも久しぶりだな、ファトゥム』
「お久しぶりです、シュウ」
来たのはシュウだった。
挨拶もそこそこにシュウが何か言おうとして、俺の頭の上にいた【獣王】が飛び乗ってシュウの頭の上に席替え。頭の上が寂しくなった気分である。
『流石に熊の着ぐるみはモテるガメ』
『亀の着ぐるみも悪くないと思うクマ』
『いざというときは雪だるまの着ぐるみにシフトチェンジするガメ』
『……特典武具クマ?』
『ノー。市販品……というか特注品ガメ。超強いガメ』
『その話、あとで詳しく』
なんかガチトーンでお願いされ、思わず『お、おう』と押されてしまったが、それはともかく。
『で、実際問題どうするんだ。俺はここにいたほうがいいだろ?』
『ああ。弟達が解決に向かってるから、
頭の上に乗っていた【獣王】を両の手で掴み降ろすと、再び俺の頭にセットインする。獣王は面白そうに『XD』と鳴いていた。
『最悪、フィガ公や迅羽もいる。任せていいか?』
『安心するガメ。もしそうなったら二人の出る幕はないガメ。シュウはどうするガメ?』
『俺はまだ出ない。俺が出るのは、あいつらでもどうしようもなくなったときだ』
『……生産系って後出しで何出してくるか分からないしな』
『ほんとにそれクマー』
フランクリンは非戦闘職。本人の戦闘能力は圧倒的に低い。
だが、それを補って余りあるモンスター製造能力で好きな戦力をいくらでも作り出せる。
シュウは広域殲滅型。数を揃えるフランクリンとは比較的相性が良い。
俺も広域殲滅型だしフランクリンが軍勢を出してきても問題ないが……ここにいる二人のことを考えれば、俺が残ったほうがいい。
……レヴィからは剣呑な目付きで睨まれてるが、なんか俺の言葉で気に入らない言い方でもあったのだろう。
『じゃ、俺は準備してくるクマー』
『おー、いってらー』
互いにそう言い合い、シュウがその場を立ち去る。
心なしか頭の上の【獣王】が残念そうな雰囲気を醸し出している気がする。
ま、それは一旦置いとくとして。
『良かったのか、話さなくて』
隣に居る【地神】……ファトゥムに問いかける。
明らかに知りあいである雰囲気だった。
何か話したいこともあったのではないかと思い聞いてみたが……当のファトゥムはいつものように穏やかだった。
「いや、これで良かったよ」
穏やかそうにそんなことを言って、
「───あれ以上話してたら、手合わせしたくなっていただろうから。けれど、流石にこの街は
そんな物騒なことを、これまた穏やかに言ってのけた。
実際、ファトゥムならそれができる。
こいつと全力で戦う時、俺は早期決着を心掛ける必要がある。
どれだけ時間をかけようと勝つ自信はあるが、それは周りの被害を考えなかったらの話だ。
最悪、大陸の形が変わる。
……それはきっと、頭の上の【獣王】を相手にしても同じことになるだろう。
『ひとまずフランクリンは任せるしかない、か』
しょんぼりしている【獣王】にお菓子をあげながら、そんなことを口にする。
攫われたエリザベートは心配だし、それを助けに行ったリリアーナのことも心配だ。
けど、あそこにいるのはリリアーナ達だけではない。<マスター>がいる。
そして何より、シュウの弟がいる。
それなら、どんな絶望的な状況であろうと覆すことだろう。
俺はそう思ってる。
『頼んだぞ、スターリング兄弟』
闘技場に映し出されている映像を見ながら、誰に言うでもなく呟いた。