色々あって、今は4月。
ギデオンでは愛闘祭なるイベントがあるらしい。今盛り上がっているそうな。
なので行こうと思う。というか行った。
あの<フランクリン・ゲーム>が起こってから、何かと事件が起こっているのは聞いている。
王国外もそうだが、ここ最近だと王国内でのカルチェラタンで量産型煌玉馬なるものを生産できる遺跡が発見されたり、何なら件のレイ・スターリングが【魔将軍】と戦って勝利したことも動画にあった。
日数的にも初心者のはずなのに超級職を倒したのは明らかに異常だが、それよりもその戦闘動画がサイトに載せられているというのが気にかかった。
何がどうなっているのかわからないが、誰かに目をつけられているのは間違いないのだろう。
……話がだいぶ逸れたな。まぁそれはともかくとして、だ。
『賑わってるガメー』
愛闘祭、という名前と由来だけあってこの機会にカップル成立を求める者たちも多くいるそうだ。そのためなのか男女ペアが多いこと多いこと。
それにアルティミアもギデオンに来て現在は迎賓館にいるらしく……話を聞くにレイとフラグが建っているのは察せられた。完全に矢印が向いていて少し面白い。
他にもエリザベートが黄河の第三皇子との婚姻話が挙がっているとは聞いている。アルティミアから聞いた。
なんかこっちに来てる俺の知り合い、全員未成立ペアができているようで凄いことになっている気がする。
あぁちなみに、斯くいう俺も今回は一人で来てはいない。
『初めてのギデオンはどうだ?』
「……そう、ね。こんなに大勢の人を見たのは初めて。少し、戸惑っているわ」
『ま、歩いているうちに慣れるガメ』
腕の中に乗せるように抱えている小さな少女。
普段は着ない、夜空色のドレスを身に纏っている。
抱かれていることに照れているのか、少し反応はぎこちない。
初めてだらけで好奇心よりも困惑の強いらしい
そう、テレジアである。
なぜここにいるのか、と思うかもしれない。普通連れ出せるわけもないのたから。
とはいえ、特に深い理由があるわけではない。俺が連れ出したいと思い、連れてきただけだ。
本来なら病弱で通っている彼女が外に出れるわけもない、が……そこは【MDQB・
代わりに指輪状態のカバネがずっと不機嫌そうだか、そこは抑えてほしい。
今回は念のため【邪神】は斬らず、【
何やら注目を集めながら俺達はギデオン内を出歩いていた。
『うーん、でもどうしたものか。何処から回ったものか迷うな』
とはいえ行き先も定まっておらずブラブラ歩いているだけである。
途中騎士らしき人物とすれ違い、一瞬通り過ぎて二度見三度見されたがそれ以外には特に何もない。なんか忍者に引きずり込まれていったような気もするが多分気の所為……ということにしておこう。
「闘技場は?」
『おお、確かに。なんかイベントもあるって聞いた気がするし行ってみるガメ』
「
テレジアの提案に乗ってそのまま移動。
何処がどの闘技場なのかもよく分かってなかったが、看板から見るに第三闘技場という場所らしい。
そうして中に入ってみれば……なんかすごい豪華だった。
内装がとかそういうのではなく、集まっている人物が。
以前ギデオンに来た時に見かけたことのある海賊帽子を被った【大海賊】。
なんか八人くらいに分身している【猫神】。
黒い翼を生やしてゴスロリに身を包み空を飛んでいる【堕天騎士】。
何やらマスクなライダーでバイクに乗って駆けている【疾風騎兵】。
そして炎に身を包んだ……というか炎そのものな【強力士】。
皆が皆、ランカーたちである。
【剣王】とか他のランカーはいないが、このイベントには向いてない……いやあるいは、別の用事で参加できなかったのかもしれない。
そして布陣が見るからに野球をする構えである。
上から順にセカンド、センター方面、ライト方面、レフト方面、ピッチャーに位置している。
他にもランカーがいるので豪華どころの話ではない。
まぁ一部いないランカーもいるが、それは温情というやつだろう。
既に何人もの挑戦者がいるようだが、あまりにも鉄壁の布陣すぎて誰もクリアできていない。
『面白そうだし参加してみるガメ』
「がんばって」
『おう、行ってくるガメー』
何やら報酬も出るようなので早速参加料を払って挑戦。
特殊挑戦なるものもあるようだが、指輪は既にあるし贈るなら<MDQB>に作ってもらうのでそれは良い。
テレジアを抱えて挑戦者の列に並び、その時を待つ。
……なんか【猫神】から視線が来てぎょっとした様子が伺えたが、やっぱりテレジアのことは知っているらしい。
いざ順番が周りバットを手に持てば、じっと送られる数々の視線。
先に発したのは【強力士】ことビシュマルだった。
「……【破壊王】か?」
『全然違うガメ』
「着ぐるみ常用してる人なんて【破壊王】以外で初めて見た」
「破壊と熊の化身チャイルドマウンテンの同胞。さらには末端の言霊も等しく……それはそうと夜纏いし幼子の装いは可憐なりや」
「えーっと、あーうん、出来れば聞かないでね。本当ならここに来るはずのない子だからー……いや本当になんでいるの?」
ビシュマルの言葉には否定して返しておく。他は他でヒソヒソと会話をしている。なんならバイクの方も止まっている。
それはそれとして俺がバッターボックスに立つと全員が配置に着き直した。
ビシュマルもピッチャーとして構え、ボールを放とうとしている。
今回はイベントの制限でスキルが使えないので自力でボールを捉えなくてはならない。
まぁそれ自体は大した問題ではない。スキルがなくてもボールを捉えることはできる。
「ふ、誰かは知らないが年齢差カップル! 俺の炎の魔球で粉砕してやる!」
『流石にこの年齢差まで行くと犯罪だと思うガメ……』
そして放たれた炎の魔球。物理的に燃えてる。
─────しかし、見えている。
ストレートではなく変化球。
捉えることは容易い─────
『あっやべ』
振り抜いた時点で失敗を悟った。
ボールは既に通り過ぎている。
バットに弾かれて前方へ向かうことなく、後方へと流れていってしまった。
ちらりと後ろを見れば、
うーん、やっちゃったな。
誤ってボールを
「え、どうなったの?」
「燃え盛る魔球は亀の化身によって両断され双貌となり果てた。審判は如何に?」
『……スキルは、使ってないようだ』
「そんなのありかよぉぉぉ!?」
ビシュマル、崩れ落ちた。
【猫神】ことトム・キャットは……既に分身を向かわせて予備のボールを取りに行ったらしく一体だけこの場にいない。
『えー、これ続けても良いやつガメ?』
『いや……少し、時間をくれ』
【疾風騎兵】マスクド・ライザーに言われて暫く待つ。
開催者側の議論の結果、『どうしてか判定はセーフだったけど明らかに起こってる事象が事象なので失格』ということになった。
『残念無念ガメ』
再び抱えたテレジアに頭を撫でられた。流石に幼女に慰められるのは恥ずかしかった。
帰り際に「イチャイチャするむぐぐ」というくぐもった声が聞こえたが、そのまま闘技場を出て別の場所に行くことにした。
進む途中で出店があったので飴を買って二人で食べる。テレジアは初めての飴だったのか新鮮そうに食べていた。
闘技場でのイベントこそ求めた結果にはならなかったが、テレジアに色んなものを見せられたのは良かった……と、思いたいものだ。
☆☆☆☆☆☆☆
「おっと! そこにいるのは【破壊王】……だな! しかもカップルか……粉砕してやるからバッターボックスに───あいや待て、タイム。なぁ、【破壊王】に打たれたらさっきみたいにボール壊れないか?」
『それは……あり得るな。流石に全力で打つとは思いたくないが……そこは本人と相談しよう』
「(色んなところで影響残してるなー【
(◎n◎)<バットでボールを斬っちゃう系主人公。
(◎n◎)<ちなみにそれを見ていたロリーズは初めて見た一面だったのでかわいいとかそういった風に思ってました。