(◎n◎)<これからも頑張らせていただきます。
それは、王城内でテレジアがモーターを
既にドー……ドーマウスとテレジアしかいない、王城の一室。
そこを
行ったのは改人の統率者として王城に潜入した【盗賊王】ゼタ。彼女は少し前に迅羽を排除し、反応の途絶えたモーターのいる場所へと近づき、そのまま依頼達成のために攻撃を仕掛けた。
必殺スキルによる核融合反応。
それは王城の一室を消し飛ばすにあり余る威力を発揮し……
「……生存?」
ゼタの呟いた先。
視界の先には、
核融合によって生まれた灼熱地獄を耐えた黒い球体。
それが他ならぬテレジアの手によるものだとは、ゼタは知らない。そして原理は不明だが、あの球体のせいで中に攻撃が通っていないのだとも判断した。
実際は【邪神】の機能である異物に対しての無敵化によってダメージがないだけで、球体……《竜王気》を丸く固めて中が見えないように黒くしたものそのものは、通常の《竜王気》と同様の効果しかない。
尤も、その《竜王気》も【邪神】の無敵のおかげで異物からの干渉であれば不動の状態で維持することが出来ているのだが。
ゼタはダメージらしきものが見受けられない球体を前に、他の攻撃を行い破壊が出来ないか試しだした。
しかし、どのような攻撃であってもその球体が揺らぐことも、ヒビが入ることもなかった。
ゼタの<エンブリオ>、ウラノスによる空気砲弾や純粋酸素による有毒化、及び酸素を抜いての窒息、他にもジェムや武器の投擲など様々な方法を試した。
(……通じている様子がありませんね)
だが、その全てが通じていないと判断してゼタは考える。
空気砲弾は球体に当たれど欠片一つ欠けることはなく、純粋酸素と無酸素による状態異常は数分が経過しても反応一つない。物理攻撃、ジェムによる他属性による攻撃もまた同様に。
(この球体の中にいる何者かが、依頼の人物である可能性は高い。しかし……これでは顔の確認も出来ない)
もう一度、必殺スキルを使って破壊を試みるか。
ゼタは考えこそしたがすぐにその考えは放棄した。
防御、減衰、無効化が球体の効果ならばまだ良い。
だが仮に効果が吸収であり、それを反撃に転用できるとするなら……ゼタが放った核融合反応の威力を思えば、これ以上の追加投入は自殺行為でしかない。
ならば今ここにいる人物は放って、自身は本来の目的を先に遂行しておくべきか。
一瞬、そう考えて、
『よう』
後ろから声をかけられ、僅かに意識の空白ができる。
動こうとした時には、もう遅かった
キン
鋭い高音が響き、ゼタの視界が
(まさ、か)
斬られた───そう自覚して、ゼタの視界は地面に落ち……
ゼタは死亡した。
☆☆☆☆☆☆☆
「……はっ」
現実に戻ってきたのだと理解し、荒くなりかけた呼吸を務めて平静にし、ゆっくりと、しかし最小限に息を吐く。
「失敗、した」
汗を垂らし、ギアを取り外す。
これで丸一日、再ログインは不可能になった。
そして依頼も……全て遂行できていない。
確認及び排除、そして
それどころかゼタ本人の目的の『珠』も得られず、更には戦力であった改人たちも一人残らず失ってしまった。
失敗も失敗、大失敗としか言いようがない。
思わず涙目になったゼタ。
気分を紛らわせる目的もあって、今は”監獄“にいるオーナーへメールを送るために身体を起こした。
☆☆☆☆☆☆☆
『ひとまず、これで侵入者は全員排除できたな』
ほっと一息ついたのは、亀の着ぐるみ【だぶるかのん】を装備したオールドポンド。
外の様子から敵がいなくなったことを察知したのか、黒い球体として編まれていた《竜王気》は解かれ、ドーマウスに乗るテレジアが姿を現す。
「おかえりなさい。そっちはどうだった?」
『危うく自爆されかけたけど斬った。勿論エリザベートは無事だ』
「そう。エリザベート姉さまも、あなたも無事で良かったわ」
微笑むテレジア。
オールドポンドは顔を逸らし、視線を別の方向へ向ける。
剣を持ち上げ……すぐに下ろし、紋章の中に収納する。
何を視ていたのか察したテレジアは「そちらは気にしなくていい」とばかりに首を振った。
「あなたがいつも近くにいるわけじゃないから、人手が欲しかったの。だから、
『ふーむ。ま、とりあえず大丈夫そうならいいよ』
ドーマウスに乗るテレジアを両手で持ち上げ、片手で支え座らせる。
オールドポンドがドーマウスに目線を向ければ「こっちだ」とばかりに先に歩き出し、彼もそれについていく。
視てみるに進む先にはテレジアを探すリリアーナがいる。既に解決したとはいえ安否確認は必要で、伏兵がいる可能性も僅かではあるがゼロではない。
『あとは、
アイテムボックスの中に指輪が戻ってきていないことから、恐らく無事なのだろうとオールドポンドは推測していた。
カバネが戻ってくれば事態は把握できる。戻すだけならログアウトして再びログインすれば指輪は戻り、確認も済む。
しかし今も戦闘中ならば下手にログアウトは出来ない。そうすればカバネは消えてこっちに戻ってきてしまい、状況が悪化する可能性があった。
流石のオールドポンドでも、そこまで手を広げて知ることは出来なかった。
アイテムボックスに戻ってないかと空いている片手で探ってみれば、出てきたのは召喚に使い今は手元になかったはずの【ドラグウォール】。
召喚時間を過ぎて自動的に戻ってきたと理解し、付け直して装備する。
「きっと、大丈夫よ」
『ふむ?』
そんなことをしているオールドポンドに、テレジアがオールドポンドを見上げて呟く。
「アルティミア姉さまに今は【アルター】はないけど、神話級特典武具がある。シュウもいるし、彼の弟の……レイもいるわ。あなたが行かせたシシカバネも、あなたを困らせたくないでしょうから全力を尽くしてくれる。あとは……」
唇に指を当て、トン、トン、と、付けては離す。
「もし仮に、アルティミア姉様が連れて行かれたら……その時は、私が連れ戻しに行こうと思うの」
『……それ、【邪神】だとバレるじゃないか?』
「
テレジアの言葉に、オールドポンドは目を見開いた。
クスクスと笑うテレジアは、そんなオールドポンドの反応を楽しそうに見つめていた。
「このドレスに、ドー。最低でもこの二つがあれば、お出かけしても問題にはならないと思うの。それで私が【
一度言葉を止めた幼い少女の手が、亀の着ぐるみを着用した
「きっと、あなたが守ってくれるでしょう?」
『期待が重いなぁ』
あまりに重い信用と信頼を向ける眼差しに、思わず弱音が漏れたオールドポンド。
しかし彼は、それを『出来ない』とは言わなかった。
『その時は、何処までも付き合うさ』
「お願いね、あなた」
笑うテレジア。
しかしふと思い出したように「あ、でも」と声が出る。
「アルティミア姉さまが自爆覚悟で私を殺しに来られるのは駄目ね。その時はどうしようかしら?」
『いやぁ、大丈夫じゃないか?』
「そう?」
「【邪神】だとバレて、世界が危ないとなればもしかしたら」と考えるテレジアだったが、オールドポンドの考えは違った。
テレジアはアルティミアの妹で、家族だ。父親も失った今、アルティミアはギリギリまでテレジアを殺す選択は選べない。いいや、選びたくない。
それに何より、
『今のアルティミアに、可能性を諦めるって選択肢はないからな』
レイと出会った彼女は、可能性が僅かでもあるのならそれを信じる。
信じて行動し、その可能性を掴み取ろうとするだろう。
……なお、その結果としてレイへの攻勢や告白未遂もしているという「僅かな可能性を掴み取る」という行為が恋愛方面にも向けられているのだが、そんなことオールドポンドは知らない。
テレジアでギリギリ「もしかして」と思うレベルである。
まぁそれは
「なら、私もそれを信じるわ。他でもない、あなたが言うのだから」
そう締めくくったテレジアを抱えていたオールドポンドは、ドーマウスが立ち止まったことで同じように歩みを止めた。
視ればテレジアを探していたのだろうリリアーナの位置が近い。間もなくリリアーナもこちらを見つけるだろうと判断でき、オールドポンドはテレジアを離してドーマウスの上に乗せて、
乗せて……
乗せ、
…………
『……』
「……」
テレジア、無言の抵抗。
彼女はオールドポンドの着ぐるみを掴んで離そうとしない。
どことなく頬が膨れてる気がする。
この些細な戯れは、リリアーナがやってくるまで続いたという……
(◎n◎)<この光景を見たリリアーナは「イチャつくくらい余裕があったのなら良かった」と安堵してました。天然。
<ゼタ
(◎n◎)<死にました。殺されました。
(◎n◎)<でも今の皇国でならセーブポイント潰されてないと思うので、”牢獄“にいない可能性はある。
(◎n◎)<まぁ収監されたとしても今の分岐的には問題ないです。
(◎n◎)<さて、これにて今章は終わりです。
(◎n◎)<次の章もお楽しみください。
(◎n◎)<───恐らく次でこの物語を一区切りするので。